メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 装甲機甲型 サーベルタイガー<SABRE TIGER>

■サーベルタイガー(トラ型) データベース■

 発売年月 1986年7月  発売当時価格 1980円  動力 モーター

 型式番号 EPZ-03

 スペック 全長15.6m 全高9.1m 全幅5.7m 重量78t 最高速度200km/h 乗員1人

 主な武装
  3連衝撃砲 連装ビーム砲 接近戦用ビーム砲(×2) 高速キャノン砲(×2) 高圧濃硫酸噴射砲 全天候自己誘導ミサイルランチャー 
  レーザーサーベル(×2) 全天候3Dレーダー

 特徴
  レッドホーンに次ぐ中型タイプで、レッドホーンより小型軽量化されている。その分出力は落ちるものの、その機動性はレッドホーンに勝るものがある。
  まさに白兵戦向きの機体と言える。


前後より

大型高速ゾイドの始祖、サーベルタイガーです。
今でこそ高速ゾイドはゾイドを代表する一大勢力になっていますが、発売当時は大型ゾイドといえば「機動力よりもパワーを重視したもの」が常識の時代でした。
その時代において「高速」というカテゴリーを開拓し軽快なフットワークで戦ってみせたサーベルタイガーは、歴史的意義の非常に大きい機体です。

マンモス、ゴジュラス、レッドホーン、アイアンコング。
大型ゾイドがとにかく「重量感」「パワフルさ」を売りにしていた時代において、力強さの中に圧倒的なスピード感を兼ね備えたサーベルタイガーが登場した事は、そうとうな衝撃でした。

サーベルタイガーは市場に大好評をもって迎え入れられました。ゾイドシリーズでは、全ゾイド中、販売個数No.1を記録しています(バリエーション含)。
余談ながら、初期の大型ゾイドのパッケージは、ゾイド星特有の青紫の空を背景にしたものが多く、夜的なイメージでした。
しかしサーベルタイガーのパッケージでは、はじめて青いさわやかな背景が使われ、以降の定番となりました。

高速というカテゴリーを築いた事と共に、パッケージでもサーベルタイガーは革新的な存在だったのです(詳しくは箱のコラム参照)。


側面より

デザインはまさに見事という出来で、細部に至まで隙がありません。ゾイドデザインの最高峰の一つだと思います。
随所に帝国機らしい曲面が取り入れられており、全体的に非常に流麗、芸術的ですらあります。
この流麗なラインは、高速機という設定に大きな説得力を持たせています。
その一方で流麗な装甲の隙間から覗くむき出しのメカ部分も目立ち、そのコントラストが非常にバランス良く、美しいと思います。

「流麗な曲面装甲と露出したむき出しのメカ」というと、首のカウルまわりがとても好きです。

ゴチャゴチャとしたリアルなメカを覆う流麗なカウル。
サーベルタイガーのデザインの魅力が、この部分に詰まっているように思います。

体型は、後のHMMシリーズ等に比べると「太い」とも言われますが、これ位ドッシリしている方がパワーがありそうで、個人的には好みです。
実際のトラのバランスを見ても、そこまで細くありません。むしろガッシリしていて非常に太い、マッシヴなものです。

HMMシリーズは、あれはあれで良いのですが、スリム化・小顔化する事に捕らわれすぎている印象も受けます。

武装は、コンパクトながら非常に強力にまとまっています。
火力としては胸部の3連衝撃砲や背部の連装砲、帝国共通武器セットなどです。
これらの配置が、スピード感を殺さない程度、しかしそれでいて存在感はキッチリと示すような配置になっており、絶妙だと思います。
背部の主砲は、砲を旋回させられる点でも優れています。

欲を言えば仰角も変えたかった所ではありますが、それは出来ません。
しかし取り付け基部の形状から推測するに、実物は仰角も変更可能である風にデザインされていると思います。


フェイス

頭部は非常に精悍なデザインをしています。
デザインは極めて完成度が高いと思います。
猫科動物の頭部を的確に再現した面構成は見事で、なおかつメカ的なディティールの入れ方も適度適量になっています。
また、デカールが貼りやすい面が用意されているのも、個人的にありがたい点です。

画像は、現生のトラと古代トラ・スミロドン。見比べると、モチーフのラインを高レベルに的確に捉えている事が分かります。

長く伸びたレーザーサーベルが特徴的で、攻撃的で獰猛なイメージを感じます。
一方、目つきがそれほど険しく無い事もあり、全体的には比較的無表情であるとも思います。
サーベルタイガーの顔は、寡黙な中に鋭さを備えた、クールだけど熱い、そんな相反する要素を持った顔だと思います。

頭部にコックピットがあります。ハッチを空けると、中に1名のパイロットが乗っています。

サーベルタイガーのパイロットはこの1名のみです。
帝国大型ゾイドとしては、初の1人乗りゾイドであり、それゆえ非常に操縦技量の試される機体だと思います。

サーベルタイガーの就役は、ヘルキャットより少し後です。
おそらく、ヘルキャットパイロットの中で技量優秀な者が、選抜してサーベルタイガーのパイロットになったのではないか等と想像します。


ヘルキャットと共に

先にも書きましたが、就役はヘルキャットの少し後です。
史上初の実用高速ゾイドはヘルキャットで、史上初の大型高速ゾイドがサーベルタイガーです。

小型のヘルキャットは格闘用装備をほとんど持たず、もっぱら偵察や奇襲を任務としますが、大型のサーベルタイガーは強力な牙と爪を持ち、戦闘もばりばりこなします。
高速ゾイドの始祖はヘルキャットですが、サーベルタイガーはヘルキャットの不満点を見事に解消し、決定版として君臨していると思います。

デザイン的には共通性が見られます。
脚のデザインなどは特に、ヘルキャットのものを大型複雑化させて作ったのがサーベルタイガーの脚部になっており、技術的なつながりを感じさせる見事な処理です。
反面、頭部デザインはあまり共通性が見られません。
ヘルキャットは共通コックピットを使う関係で限界があったと思います(その中で最大限素晴らしい処理をしているとは思う)が、制約の無いサーベルタイガーは思い切りこる事が出来たのだと思います。

サーベルタイガーが就役した後は、両機はよくペアを組んで戦っています。
デザインに共通性があるけども、ヘルキャットはやはり小型機然としているしサーベルタイガーは大型ならではの作り込みがある。
このペアはまさに絵になる素晴らしいペアだと思います。


ギミック

電動ゾイドなので、電池を入れてスイッチを押すと元気に動きます。
さすがに高速ゾイドとはいえ、走るギミックは搭載されていません。しかし「これゾイド!」と胸を張って言える、素晴らしいギミックは搭載されています。

連動ギミックは、口を開閉させながら歩行するというもので、連動数としては最小の部類になります。
レッドホーンが口を開閉させ武器を回しながら前進していたのと比べると、退化した感じもします。
しかし個別でそれぞれの機構を見ると、目を見張る素晴らしい仕上がりになっています。

口の開閉は、かなり大きな角度で行われます。
開きすぎるくらい開きますが、レーザーサーベルで敵にかぶりつく印象を上手く与えており良いと思います。

また、サーベルタイガーの口の開閉は、他のゾイドにはあまり見られない特徴があります。
多くのゾイドが持つ口開閉ギミックですが、大半は上あごか下あごの片方だけが動くようになっています。
動かない方は固定されています。
しかしサーベルタイガーでは、上あごも下あごも、両方動くようになっており、大きな特徴です。
もちろんこの事が、口が大きく開く事に貢献しているのは言うまでもありません。

そして真骨頂は脚の動きです。
サーベルタイガーの長い脚は細かくパーツ分けされており、関節ごとの連動を仕込んだ複雑な構造になっています。

これにより、サーベルタイガーは、歩行時に非常にリアルな動きを見せるようになっています。
関節が動き、ネコ科動物特有の運足が再現されています。
これは、さすがゾイド。ゾイドにしか出来ないこだわりの動きと言えるものです。

こういった点があるから、口の開閉と歩行だけのギミックですが、かなりの満足度を感じる事が出来るゾイドになっています。

手動ギミックはコックピットの開閉と火器類の角度を変えられる位で、これは少し寂しい感じもします。
ただ総合的に見ると、やはり素晴らしい脚の動きもあり、ゾイドらしいギミックを有したゾイドであるとは思います。


戦歴

サーベルタイガーの戦歴は、非常に勇ましいものがあります。
その高速でもって敵を翻弄。自分より遥かに敵を叩き潰し、更に、最強・格闘王と謳われたゴジュラスとも互角の格闘戦を演じ、手痛いダメージを与えてみせた。
その姿は強烈でした。

また何度も、ウルトラザウルスと交戦した機体でもあります。
ウルトラザウルスは最強の戦闘力を持ちながら、巨体ゆえに動きが鈍くサーベルタイガーとの相性は悪い。
学年誌の方だと、手痛いダメージを与えている様子も描かれました。

巨大ゾイドに一歩も譲らない活躍は、まさにスーパーヒーローといった感じでした。
まあ、「当時の共和国大型ゾイドが巨大クラスしか居なかったから」という点もあるとは思いますが…。

登場からしばらくの活躍ぶりは凄まじく、「サーベルに遭遇した場合、極力交戦を避け、直ちに空軍に援護を求めよ」との発令が共和国全軍に通達された程でした。
しかもその上、その空軍のエースであるところのサラマンダーを叩き落した事まであるのだから、そのインパクトたるやまさに凄まじいものがありました。

しかし、さすがに圧倒的機動力で敵を翻弄する強力なゾイドとはいえ、サーベルタイガーはアイアンコングのような主力兵器ではなく、あくまで局地戦用ゾイド。
いかに孤軍奮闘しようとも、悲しいかなウルトラザウルスを擁する共和国は、徐々に帝国を圧迫。ついに祖国は滅亡が避けられぬ状態となります。
この時、サーベルタイガーは、帝国皇帝を逃がす為の捨て駒を自ら買っており、最初から勝敗の分かりきった戦いに自らを投じて、壮絶な最後を迎えます。

サーベルタイガーの描写を見ていると、もちろん強いのは強い。勇ましい描写も多いのですが、それと同じ位、散り際で見せた機体だと思います。
帝国皇帝を逃がす時間稼ぎの為、捨て駒を自ら進んで引き受け、倍する共和国部隊を相手に大打撃を与えた。
基本的に、戦いは勝利する側がより映えるように描写される事が多いと思いますが、ことサーベルに関しては、負けてもなおいっそう輝いて見えた。
これは、非常に貴重な事だと思います。


改造バリエーション

サーベルタイガーの特徴の一つに、豊富な改造バリエーションが挙げられます。
後のグレートサーベルは有名ですが、それ以前にも数多くのバリエーションが戦場に登場しました。

個人的には、長距離狙撃型のザ・スナイパーが大好きです。

砲部分の作りこみは、リアリティがあり素晴らしい仕上がりだと思います。また、カラーリングもエース機を思わせるものにニヤリとします。
この機体は、小学一年生のバトルストーリーに登場しており、ガイサックやグランチュラなど共和国小型ゾイドを次々と狙い撃っています。
その後、改造ゴジュラスと対決しています。実はその改造ゴジュラスというのは、ゴジュラス9バリエーションの一つ、長距離ミサイルタイプのゴジュラスだったりします。
ストーリーは、「ザ・スナイパーが次々と共和国部隊を狙撃する」→「ザ・スナイパーを倒すため、ゴジュラスの改造が進む」→「ようやく改造が完了したゴジュラスは、背中のミサイルを発射した」というような感じです。
遠距離砲の撃ち合いというのは、ゾイドでは極めて珍しい描写です。おそらくこれは、学年誌の中でも、最も離れた位置から交戦したエピソードの一つだと思います。
残念ながら勝敗は描かれないまま、次号は別の話になっています(学年誌では勝敗を描かない事は珍しくない)。

牙を大きくした強化タイプも好きです。寒冷地仕様を思わせるカラーも似合っていると思います。
上の画像は小学五年生に登場したものですが、人気があったのか、他の学年誌にも登場しています。

これは小学一年生に登場した時のもので、やはりゴジュラスと交戦しています。
この改造タイプはとても好きなので、ゾイドバトルストーリーに未収録だったのが非常に惜しまれます。

改造ゾイドの多さは人気のバロメーターでもあります。
そういった意味で、この改造バリエーションの多さから、改めてサーベルタイガーの人気が伺えるものでもあります。


戦場の赤いイナズマ サーベルタイガー

今では、サーベルタイガーの誇った性能は過去のものとなりつつあります。
更に高速高機動なゾイドは、それこそ膨大に誕生しました。
ギミック面も、後の高速ゾイドの多くがサーベルタイガーと同じ脚部構造を採用したので、当然同じ動き。それにより、ありがたみは若干薄れてしまったようにも思います。
始祖というのはそれだけで誇るべきだと思いますが、それでも様々な点で見て弱くなったのは否めません。

しかし、ことデザインや残した戦歴の魅力は、今でも全く色あせていないと思います。
むしろ、高速機が乱発されるようになった今だからこそ、振り返ってみると、サーベルタイガーの凄さがより際立っているようにも思います。
まさに傑作機だと思います。

個人的に思うのは、サーベルタイガーの意思を継いだゾイドがどんどん生まれて欲しいという事です。
それは表面上の「高速機」という事を模倣したゾイドを作れというわけではなく…。
サーベルタイガーは、それまで「大型ゾイドと言えば重パワー」が常識だったゾイド界に、新たに「高速」というカテゴリーを見事に切り開いてみせました。
そのフロティア精神は凄いと思います。

サーベルタイガーが切り開いた高速機という人気カテゴリー。そこに乗っかったゾイドが出るのは当然ではあります。
しかしいつまでもそこに安住するだけでは更なる発展がありません。いくら人気カテゴリーとはいえ、いつかジリ貧を迎えるだけのように思います。
様々なフロンティア精神を持つゾイドが生まれ、もっともっと未知の、新しい、魅力的なカテゴリーを開拓していって欲しいと願います。
そういう精神をもってこそ、サーベルタイガーの意思を引き継いだゾイドになるのではないかと思います。


バリエーションモデル

 メカ生体ゾイド グレートサーベル

 機獣新世紀ゾイド セイバータイガー

 セイバータイガーホロテック

 セイバータイガー スペシャルカラーバージョンゴールド


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