パッケージの中のメカ生体ゾイド

ゾイドの魅力の一つに、パッケージがある。
一般的なプラモデルのパッケージは絵で構成されているのがスタンダードだが、ゾイドのスタンダードは写真による構成だ。
雰囲気たっぷりのジオラマによるパッケージが、たまらなく魅力的だと思う。

売り場で沢山のゾイドパッケージを眺め、ものすごいワクワク感を抱いていたのを、鮮明に思い出す事が出来る。
個人的に、ゾイドほど魅力的なパッケージを持ったプラモデルは、なかなか無いと思っている。

今回は、その中でも特に、メカ生体ゾイドの箱を研究したいと思う。
メカ生体ゾイドは、実に8年間も続いた長期シリーズだけに、よく見ると、年代ごとに少しずつ箱デザインが変化していっている。
ここでは、リリースされた全ゾイドのパッケージを掲載しつつ、その研究をしてみたいと思う。

では早速、見てみよう。

-1983年のパッケージ-
メカ生体ゾイドが幕を明けた年。メカ生体ゾイド元年とも言えるこの年のパッケージ一覧は、以下の通り。

この年のリリースは10種。

小型ゼンマイゾイドのパッケージは、全て縦長で構成されていた。また、「つるし箱」の形式だった。

上部には、「ZOIDS」のロゴが大きくプリントされたタグを持っている(一覧の画像ではタグ部分は省略している)。

ジオラマは、青か青紫の空があり、大地は乾いた感じになっている。
まるで未知の星に降り立った探査機を思わせるもので、初期の頃の、SFテイスト抜群の世界観が色濃く反映されていると思う。

大型ゾイドのパッケージはビガザウロとマンモスのものの2種。さすが大型ゾイドだけに、小型ゾイドと比べると豪華な感じがする。
この内、ビガザウロのパッケージは絵が採用されている。おそらく、大型ゾイド特有の特別感・高級感を出すために、絵を採用したのだろう。

しかしこれは、後に引き継がれなかった。
大型第2弾・マンモス以降は、絵ではなく写真が使用されている。この理由は公式見解がなく不明であるが、推測すると以下のような事ではないかと思う。

 ■商品の見栄えが素組みでも非常に高かったから、わざわざ絵を使用しなくても、充分な高級感を出す事が出来た
  '83年の玩具という事をふまえれば、ゾイドの完成度はオーパーツと言える程である。
  絵よりも、むしろ写真でダイレクトに伝える方が、インパクトもあり良いと判断されたのではないだろうか。

絵を採用した以外でも、幾つかの特徴を持つ。
 ①動きを伝える
  ビガザウロの絵に注目すると、首の動きを伝える描き込みがある。ゾイドが「動くプラモデル」である事をアピールしてのものであるのは明白だ。
  加え、英語で商品のあおり文句が入っているのも特徴となっている。
  あおり部分の文字は
  「Watch the Zoids Bigsauru lumber along,bolts and gear movig, its head raising and lowering. It will send chills up your spine.」
  訳すると、
  「ゾイド・ビガザウロを見てみよう。ボルトとギアが使われており動くんだ。ビガザウロの頭は上下に動く。その動きはキミをゾクゾクさせてくれるぞ」
  というような感じになる。とにかく、動きを伝える事に死力したのは確かだろう。
  第2弾マンモス以降は、動きを強く伝えるパッケージではなくなった。しかしそれは、ビガザウロが「ゾイド=動く」という事を世に広め、それが認知されたからだろう。
  つまり、第2弾以降はわざわざ伝えなくても、「ゾイドといえば動く」という事が分かりきっている状態だったのだと思う。

 ②機体の向き
  ビガザウロは、右向きで描かれている。これは非常に特徴的で、第2弾マンモス以降は、大型ゾイドは一貫して左向きで写される事になった。
  ただ'90年にリリースされた幾つかのゾイドだけは、例外的に右向きになっている。

 ③機体名のレタリング
  機体名が、「ZOIDS」と同じレタリングで書かれている。
  また頭には、必ず「ZOIDS」が入っている。この点は、第2弾以降もしばらくの間、大型ゾイドのパッケージに引き継がれている。

背景は、小型ゾイドのものと似ている。ただ乾いた荒野があるだけだった小型ゾイドと違い、宇宙基地を思わせるドーム等が描かれている。
これは、母船機能を持ち指揮管理を行うビガザウロ=後方に居る という事だろう。

大型ゾイド第2弾・マンモスのパッケージは、写真が採用されている。また、機体の向きはビガザウロと逆になり、以降のスタンダードを築いた。
動きを伝える要素は無くなっているが、理由は先に書いた通りだと思う。
背景は、小型ゾイドのものに近い荒野になっている(岩などの造りは豪華になっているが)。
後方で指揮管理を行うビガザウロと違い、マンモスはパワフルに暴れまわる重戦闘機械獣。それゆえ、後方ではなく前線のイメージで作られたのだろう。

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-1984年のパッケージ-
この年は、伝説の名機ゴジュラスや、初の帝国ゾイドが誕生し、ゾイドワールドは一気に広がりを見せた。まず、この年のパッケージ一覧から。

この年のリリースは12種。

小型ゼンマイゾイドのパッケージは、前年と同じレイアウトを維持している。
ただこの年は、帝国ゾイドが参戦した年でもある。帝国側ゾイドは、共和国側(従来のもの)に比べ、ジオラマの背景に少し差がある。
空の色合いに注目して欲しい。帝国側の空の色は赤っぽく、共和国ゾイドとの良い対比になっていると思う。

背景の岩などは、前年より大きく造り込みが上がっている。
フロレシオス以降のゾイドは、前年の大型ゾイド・マンモスのパッケージ並の作り込まれた背景で撮影されている。

'84年は、小型ゾイドの中でも一回り大きい「重装甲スペシャル級」が誕生した年でもある。
同級は高級感を出す為か、パッケージの左上に専用のロゴマークを付けているのも特徴となっている。

大型ゾイドのパッケージは、前年のマンモスのレイアウトを引き継いでいる。
機体の角度は、左向きである事と共に、巨大感を伝える事が意識されているように思う。ただ個人的に、ゴルドスとレッドホーンはあまりいい角度でない気もするが…。

ゴジュラスのパッケージは、大型ゾイドとして初めて縦型レイアウトを採用した。
当然、ゴジュラスが縦長の機体であるゆえの選定だったと思う。しかし次弾以降、「大型ゾイドは必ず横長のパッケージを使う」のが、シリーズの統一方針になった。
それは横長の機体でも縦長の機体でも区別なく、全て横長のパッケージを使うようになった。
結果的に、ゴジュラスは縦長のパッケージを持つという意味で、非常に特殊なゾイドとなった。
ゴジュラス以外の大型ゾイドで縦型を使用したのは、唯一、後年のキングゴジュラスのみである。

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-1985年のパッケージ-
この年は、帝国初の巨大ゾイド・アイアンコングがリリースされ、両軍の戦いが激化の一途を辿った。まず、この年のパッケージ一覧から。

この年のリリースは5種。意外にも、この年はゾイドのリリースが最も少なかった年である。
小型ゾイドのパッケージは、前年と同じレイアウトを維持している。

大型ゾイドのパッケージも、前年と同じレイアウトを維持している。
ただ、ゾイドの撮影角度は、前年より飛躍的に上手くなっているように思う。特にアイアンコングの絶妙な角度は特筆モノと思う。

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-1986年のパッケージ-
この年は、従来の常識を打ち破る超巨大メカ・ウルトラザウルスが登場した。まず、この年のパッケージ一覧から。

この年のリリースは13種。

小型ゾイドのパッケージは、前年と全く同じレイアウトを維持している。
ただ一点、スネークスのパッケージのみ異質である。というのも、スネークスのパッケージには、スネークスが二機並んで写っている。
他の機種は全て1機のみで構成されている事と比べ、非常に特徴的だ。これは、後で深く掘り下げたいと思う。

大型ゾイドのパッケージは、上半期は前年と同じレイアウトを維持した。
この内、グスタフは両軍共に使用するゾイドなので、ロゴも青・赤混在のものになっているのが特徴的だ。
そしてもう一つ、グスタフのパッケージは特徴的な事がある。
グスタフは、トレーラーにゴドスとスパイカーを載せている。更に、商品には付属しないクレーンアームも搭載している。
「そのゾイド1機だけで構成していない」というのは、スネークスとも共通する特徴だ。
メカ生体ゾイド期において、パッケージに他の機体や複数の機体、付属しない装備を入れたのはこの2機だけである。
この事は、スネークスと同じく、後で深く掘り下げたいと思う。

サーベルタイガーのパッケージは、朝日を思わせるまばゆい光が差し込んでおり、煌びやかに輝いているのが特徴的だ。
空の色は、濁りのない真っ青な色になった。この点は、後のゾイドに引き継がれてゆく事になる。

そして下半期、大型ゾイドのパッケージは、大きく変化した。
前期型(というかゾイドマンモス以降の構成)と比べると、どこが変化したかが分かりやすい。
まず、ゾイドの写真の角度が真横に統一されるようになった。
背景も、ほとんどの機体がサーベルタイガーのものと同じ、さわやかな青空を使用するようになった。
そしてロゴも変化している。「ZOIDS」の部分は従来と同じだが、機体名は専用のレタリングではなく、普通の書体になっている(Impactを使用している)。
箱の右側には、そのゾイドの魅力を伝えるミニ枠が追加された。この構成は、以降長らく、ゾイドパッケージのスタンダードとなってゆく事になる。

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-1987年のパッケージ-
この年は、帝国最大最強メカ・デスザウラーや、初の異スケールモデル・24ゾイドが登場した。まず、この年のパッケージ一覧から。

この年のリリースは16種。

小型ゼンマイゾイドのパッケージは、前年と同じレイアウトを維持した。
この年で、小型ゼンマイゾイドのリリースは終了した。代って、中型ゼンマイゾイド(Hiユニットゾイド)が登場している。
Hiユニットゾイドは、つるし箱ではなく大型ゾイドと同じような通常箱で販売された。

Hiユニットゾイドのパッケージは、86年下半期以降の大型ゾイドパッケージを流用したようなレイアウトになっている。
そのおかげで、ゾイドシリーズ全体のパッケージが、統一された雰囲気を作る事に成功している。
機体の角度は大型ゾイドのように真横で統一されておらず、比較的自由な角度で写されている。
背景は、やはり爽やかな青空が多くなっている(ただウオディックのものは青空というより水中と捉えるべきだろうか)。

大型ゾイドのパッケージは、前年下半期以降と同じレイアウトを維持している。
やはりバックは青空のものが多く、ゾイドの角度も側面となっている。
ただ、ディメトロドンとシールドライガーは、真横ではなく、やや角度が付いている。また、この2機はミニ枠も無い。
「超大型ゾイドは真横アングル+ミニ枠を付ける。それ以下は角度をつけて撮影する+ミニ枠は無し」という統一だったのかもしれない。
ただ、いかんせん比較検討するには数が足りないのが悔やまれる。

24ゾイドのパッケージは、86年下半期以降の大型ゾイドパッケージと共通するレイアウトになっている。しかし背景は異質だ。
非常にデザイン的な大地で、バックも空ではなく黒で撮られている。24を特別なクールな雰囲気で打ち出したかった事が強く伝わってくる。
このパッケージは、帝国ゾイド軍団が初登場した際の広告に、共通するものがあると思う。

右側にのぞき穴があり、付属フィギュアが見えるようになっているのも大きな特徴だ。これは、ミニ枠の代わりのものと捉えるべきだろう。
機体の角度は、やや斜めの角度で統一されている。

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-1988年のパッケージ-
この年は、マッドサンダーが登場し、ついに帝国VS共和国の戦いに終わりが見えたてきた年である。まず、この年のパッケージ一覧から。

この年のリリースは17種。メカ生体ゾイド期で、最も多くの種類のゾイドがリリースされた年である。

Hiユニットゾイドのパッケージは、前年と全く同じレイアウトを維持している。この年のものは、全てバックが青空になっている。

大型ゾイドのパッケージは、やはり前年と同じレイアウトを維持している。ただ、微妙な変化はあった。
グレートサーベル以降は、全てのパッケージにミニ枠が付くように改定されたようだ。ディバイソンのものと比べられたし。
また、超大型ゾイドの撮影アングル=真横の縛りが消えたようで、マッドサンダーは斜めから写されている。
またマッドサンダーは、ミニ枠が右ではなく左に付いているのも特徴的だ。

24ゾイドのパッケージは、前年のクールな背景からうって変わり、青空と岩山で構成するという、通常ゾイドと同じ背景になっている。
また、のぞき穴が廃止されたのも特徴だと思う。しかし兵士のフィギュア自体は、やはり大きく打ち出されている。
むしろ、前年ののぞき穴からフィギュアを覗かせる形式は、陳列状態によっては箱の中でフィギュアが揺れ、のぞき穴から上手く見えない事もあった。
より兵士を上手くアピールするために変更されたと捉える方が正解だろう。

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-1989年のパッケージ-
この年は、暗黒軍が参戦し、新たなる戦いに突入した。まず、この年のパッケージ一覧から。

この年のリリースは12種。

Hiユニットゾイドのパッケージは、従来通りのレイアウトを維持している。
強いて言えば、3月からゾイドは新展開(暗黒軍の参戦)を迎え、それに伴いZOIDSのロゴも刷新された。
3月以降リリースのヘル・ディガンナーとカノンフォートは、ZOIDSの文字が新ロゴになっているのは特徴と言える。

この年は、小型モーターを使用したゾイドが登場した年でもある。
従来のHiユニットゾイドと同程度の大きさでありながら、動力にモーターを使用したシリーズで、当時はニューシリーズとして大々的に宣伝された。
(※以降、本コラム内では小型モーター級と呼ぶ)
小型モーター級ゾイドは、パッケージを新たなるデザインで構成した。
背景からは、空が消えた。かわりに自軍のロゴを大きく写している。また右半分は斜め線で断ち切り、金属を思わせるテクスチャーが貼り付いている。
かなりデザイン的なレイアウトで、'87年の24ゾイドと同じく、クールなものを目指した事が伺えると思う。
機体名は、英語ではなくカタカナ表記が大きくなっている。

大型ゾイドのパッケージは、大きく変化している。「ZOIDS」のロゴが変ったのはもちろん、背景から青空が消えた。
夕焼けが多く採用され、爽やかな背景から渋めの背景に変化した。その為、大きく印象を変えている。
また、サラマンダーF2以降は、機体名が英語ではなくカタカナで表記されるようになった。
この年のゾイドのリリース順は「ダーク・ホーン→ガンブラスター→小型モーター級4機→サラマンダーF2」なので、小型モーター級の登場と同時に、機体名表記はカタカナになったとして良いだろう。

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-1990年のパッケージ-
この年は、キングゴジュラスが参戦し、いよいよメカ生体ゾイドは終焉に向かっていった。まず、この年のパッケージ一覧から。

この年のリリースは11種。
この年は、動力を廃止し、代わりに変形機構を持ったトランスファイターゾイドがリリースされた。

トランスファイターゾイドのパッケージは、絵で構成されている。
絵というとビガザウロが思い出されるが、写実的に描かれていたビガザウロと違い、かなり自己主張が強い感じで描かれている。
ポーズもパースも大げさにつけてある。特にサンダーカノンは凄まじい自己主張だ。変形機構を備えたゾイドシリーズだけに、間違っていない気もするが…。
また、「射てバーストミサイル!」といったあおり文句も大きく入っている。
低年齢層向けを狙ったシリーズなので、ある意味、無理からぬ事ではあろう。しかしあまりにも従来のシリーズから比べ、違和感があるのは否定できない。

トランスファイターゾイドのパッケージは、もう一つの特徴がある。それは、小型ゼンマイ級いらい、久々のつるし箱形式になった事だ。

上部タグの部分には、「ZOIDS」のロゴもあるが、それ以上に大きくトランスファイターシリーズのロゴが載っている。
この「TF」のロゴも、かなり低年齢向けな感じがする。

モーターゾイドのパッケージも、大きく変化している。
小型モーター級と大型ゾイドのパッケージには差が無くなり、全て統一されたレイアウトになった。

写真ではなく絵で構成されたものが多くなった。
ゴッドカイザー、アイス・ブレーザー、ガン・ギャラドは絵になっている。オルディオス、キングバロン、バトルクーガーは写真だが、一部にレタッチが施されている。
画材はエアブラシと思われる。その為、絵特有の重厚感を出したというより、写真と区別が付かないほど写実的な仕上がりになっている。
背景は、岩山も空も消え、異空間のような感じになった。

全機、トランスファイター級と同じく、「スーパーウイングスタンバイ!」のようなあおり文句が入っているのも、この年のパッケージの特徴だ。
あおり文句を入れるのは、この年に始まったものではない。
例えば、'87年デスザウラー「帝国軍超巨大メカ」、'88年サンドスピーダ「メガトプロスとの合体可能」、'89年ギル・ベイダー「ビームスマッシャーで破壊せよ!!」
というように、あおり文句が記載されている事自体は、いくつか前例があった。
しかし'90年のあおり文句は、とにかく派手で目立つように、前面に押し出されている。

一部の機体は、絵(またはレタッチした写真)に動きをアピールしたような描き込みもあり、ある意味、ビガザウロへの原点復帰を果たしたようにも感じる。

ただ、とにかくパッケージ全体が派手派手で、従来のシリーズから比べ違和感があるのは否定できないだろう。
箱の外周には、自軍の国章を使用した枠模様が付いている。これは当時大ブームだったファンタジーRPGの影響があるように思える。
というか、この時期のゾイドは、モチーフに幻獣を多く使った。それ自体が、ファンタジーRPGの影響を大きく受けた結果とも思う。

最終ゾイドであるキングゴジュラスとデス・キャットは、パッケージが再び写真に戻っている。
両機とも、機体名が専用のレタリングで構成されており、ある意味、最終ゾイドらしい豪華さを誇っていると言える。
ただデス・キャットのロゴは、最終ゾイドという格別さが感じられない、安っぽいロゴな気もする。
というか、デスキャットのロゴは、アタックゾイドのロゴに酷似している……。暗黒軍最終ゾイドなのに。

キングゴジュラスは、最終ゾイドに相応しい豪華絢爛なロゴだと思う。
また、ゴジュラス以来の縦箱を採用しており、大型ゾイドとしては2番目にして最後の、縦箱を使用したゾイドとなった。
キングゴジュラスが、ゴジュラスという名を受け継ぐだけでなく、箱の構成も受け継いだと考えると、ニヤリと出来るものでもある。


以上、メカ生体ゾイドの、機体の全パッケージを見てきた。

メカ生体ゾイドのパッケージを見ていると、様々思う事がある。
まず、やはり初期は色々と試行錯誤があったんだなと思う。しかし体制が落ち着いてからは、ゾイドのパッケージは素晴らしい統一感を発揮している。
そしてそれが、微妙な変化を繰り返しながらも、'89年いっぱいまで続いている。

しかし'90年、ゾイドのパッケージは再び大きく動いた。
従来のものではアピールが足りないと思われたからか、一気にレイアウトを変えて攻勢に出た。
しかし'90年ゾイドのパッケージは、正直、迷走している風にしか見えない。

周知のように、メカ生体ゾイドは'83年にスタートたシリーズだ。'84年のゴジュラス、'85年のコングを経て、'86年頃には誰もが知る一大シリーズへ成長していた。
そしてその勢いは、'88年いっぱいまで継続した。しかし'89年頃から少しずつ陰りが見えてきた。
'90年の劇的なパッケージ変化は、そのような背景を併せて考えると、納得できるものだろう。
思うのは、やっぱり落ち着いて好調な時は安定するものであり、焦りだすと妙に奇をてらい、迷走してしまうという事だ。

 

ここからは、更に細かく見たいと思う。
まず、小型ゼンマイゾイドのパッケージを、いまいちど一覧で見たい。

共和国、帝国で段を変えて並べた。

このクラスは、’83年~’87年までの4年間、展開された。
比較的長いリリース期間を誇るにも関わらず、レイアウトのブレはほとんど無く、シリーズとして素晴らしい統一感が出ている。
一覧で見ると、両陣営での空の色の違いもより分かると思う。共和国は青が強く、帝国は赤が強い。
統一されたレイアウトを使用しつつも、互いの所属する国の違いを表す素晴らしい配慮だと思う。
ただマルダーのみ、帝国ゾイドにも関わらず、青い空なのは若干気になる所でもあるが…。また、一部に空が見えない構成の機種があるのも惜しい気がする。

ジオラマの背景の作りこみは、最初のガリウスなどは簡素なものであったが、重装甲スペシャル級が登場した頃からは、岩山の質感も大いに増し、見事なものになった。
岩山と荒野で撮られているものが多いが、バリゲーター、シンカー、シーパンツァーは水のある構図になっている。また、ガイサックは砂漠で撮られている。
基本レイアウトを維持しつつも、そのゾイドの特徴を少しずつ取り入れた構成があるのは非常に面白い。

ゾイドは、その商品のゾイドが1機のみ写されているのが基本だ。ただ、スネークスのみ例外で2機写っている。
これは、深く考える必要があると思う。
恐らく、メカ生体ゾイドのパッケージ作りの基本に「その商品のゾイド1機+背景だけで構成する」というのがあったのだろう。
しかし、スネークスは細く長い。その形状の都合で、全体を見せようと思えば、どうあがいても小さくしか写らない。
その為、奥に全体が写った機を置き、手前に頭部付近をアップにした機を置くという、2機構成にする例外措置が、やむなく採られたのだと思う。

 

次に、Hiユニットゾイドのパッケージを見たい。

共和国、帝国で段を変えて並べた(このクラスは帝国側から先に出たので、帝国を上段にした)。

このクラスは、’87年~’89年までの2年間、展開された。
メカ生体ゾイドの人気が絶頂にあった時期に展開されたシリーズで、パッケージのデザインも素晴らしく統一されている。

機体の配置に関しては、やはりその商品のゾイド1機+背景のみで構成されている。このクラスには、スネークスのような例外はない。

レイアウトは先にも書いた通り、86年下半期以降の大型ゾイドのパッケージを流用したようなデザインになっている。
背景は、ブラキオスを除き、さわやかな青空で統一されている。
こうなってくると、何故ブラキオスだけ赤なのかが謎だ。このクラス最強のブラックライモスが赤なら、あるいは何となく納得できるような気はするが…。
個人的には、いっそ全て青空にした方が、より統一感が出て良かったと思う。
とはいえ、それを差し引いても、メカ生体ゾイド絶頂期に相応しい、素晴らしいパッケージ郡であるのは確かだろう。

 

次に、24ゾイドのパッケージを見たい。

このシリーズは、軍ではなくリリース順に並べた。
このクラスは、’87年~’88年までの1年間、展開された。短命なシリーズだったが、パッケージは最初と最後で趣が変っている。

基本レイアウトは、’86年下半期以降の大型ゾイドや、Hiユニット級のパッケージデザインと同じになっている。
初期のデザイン的でクールなパッケージは、非常に魅力的だったと思う。
また、通常ゾイドと異なった背景にするというのは、「24ゾイド」というブランドイメージを築く事にも貢献したと思う。
何故、メガトプロス以降の24ゾイドでは、通常ゾイドと同じような背景になったのだろう?

思うに、’87年というのは、前年にサーベルタイガーやウルトラザウルスが発売され大ヒット。メカ生体ゾイドが絶頂期をまさに迎えた年だった。
24ゾイド第一陣のリリースから2ヵ月後には、あのデスザウラーも発売されている。
ゾイドバトルストーリー1巻は既に発売されており、また、学年誌はこぞってゾイドのジオラマストーリーを展開し、毎月のようにゾイドの激しいバトルを伝えていた。
ユーザーの中では、既に「ゾイド=バトル」という構図が完全に出来上がっていた。
だから、いくらデザイン的に優れたパッケージを打ち出しても、ユーザーにとっては「バトルっぽくない」という反応だったのではないだろうか。
ゾイドバトルストーリーがブームになりすぎていた故に定着出来なかった。そんなパッケージが、第一陣のものであると言えるかもしれない。

デザイン的なクールなものを目指した という意味では、後の小型モーター級ゾイドも共通しているように思う。

これらのゾイドが、やはりそのレイアウトを後に引き継げなかったのは、24第一陣と同じような理由ではないだろうか。

 

次に、最初期~'86年上半期までの大型ゾイドを見たい。

リリース順に並べた。

この時期の大型ゾイドパッケージの特徴は、何といってもロゴだと思う。
「ZOIDS」と同じデザインで、機体名まで記載されている。ゾイド感や大型ゾイドという特別感はバツグンで、素晴らしい処理だと思う。
反面、正直読みにくくはある。また、ZOIDSと機体名がひっつけてあるので、名称が分かりにくなっているのも難点と言える。
余談ながら、マンモスやゴジュラスが、ゾイドマンモスとかゾイドゴジュラスと呼ばれるのは、このパッケージが原因だと思う。
最も…、じゃぁ何故ゴルドスはゾイドゴルドスと呼ばれないのか?というような謎もあるが…。

基本的に、その商品のゾイドが1機のみ写されているというのは、大型ゾイドでも同じだ。
だが唯一、グスタフのみ、その法則から外れている。後部のトレーラーにはゴドスとスパイカーが載っており、更にキットには付属しないクレーンアームが搭載されている。
おそらく、これはグスタフという超特殊な機体特性ゆえのものだろう。
超特殊というのは、リリースされた全ゾイドの中で、唯一非戦闘用ゾイドという事である。
この非戦闘用ゾイドをリリースするには、二つの障害があったと思う。

 ①非戦闘用ゾイドである事を正しく伝えなければならない
  「ゾイドは激しい戦闘を繰り広げるもの」が常識的な世界に、突如として輸送専用機を出すわけだから、その情報は特に強く発信しなければいけないだろう。
 ②戦闘用ゾイドに比べ単純なカッコ良さで劣る
  グスタフは武器を一切持っていない。それはもう徹底されており、自衛用の軽火器すらない。装甲は分厚いとされていたが…。
  これでは、ターゲットの子供に訴えにくい事は明白だ。

この2点があった為、何としてもパッケージでグスタフという機体の特徴を伝え、かつ戦闘用ゾイドと同じくらいターゲット層にアピール出来るよう、死力されたのだろう。
後部にゴドスとスパイカーを載せているのは「パッケージにはそのゾイド1機のみ」の法則を破ってでも、輸送用ゾイドという事を伝えたかったのだろう。
そしてグスタフのパッケージのジオラマは凝っている。おそらく、全パッケージ中最も凝っていると思う。
機体の奥に深い森があり、さらに奥には岩山が見える。この多重構造はグスタフのパッケージ特有で、素晴らしい奥行を感じさせている。
トレーラーにゾイドが載っている事と相まって、このパッケージは高い物語性を出している。
険しい道を超え、最前線にゾイドを運んでいるのか。あるいは、夕闇に紛れながら傷ついたゾイドを回収しているのだろうか…。
グスタフのパッケージが異質なのは、グスタフという特別なゾイドゆえと思う。

「パッケージにはそのゾイド1機+背景のみ」の法則が破られているのは、スネークスとグスタフだけだ。
スネークスは機体形状の関係で仕方ない理由があり、グスタフは機体特性の関係で仕方ない理由があった。
これはやはり、特例・例外と捉えるべきだろう。

その他、注目すべきはやはりサーベルタイガーだろう。背景の空に注目すべきだと思う。
今までの空は、夜を思わせる色ばかりだった。しかしサーベルタイガーは初めて、爽やかな青い空を採用している。
また、機体を朝日のようなキラキラした光が照らしている。

サーベルタイガーは史上初の大型高速ゾイドとして誕生した、スーパーヒーローだった。
従来のゴジュラスやコングといった、重パワーのパワフルさを謳ったゾイドとは違う、圧倒的な機動力を生かした俊足機という新たなカテゴリーを築いた。
新しく誕生した俊足機は、たちまち大人気になった。ゾイドがより大きな人気を博する重要な一歩を、サーベルが築いたのだ。
その機体のパッケージの空が、夜が明けた瞬間を思わせる色になっているのは、偶然かもしれないが素晴らしい事だと思う。
これ以降の機体は、パッケージに夜が使われる事は無くなった。

 

次に、'86年下半期~'89年の大型ゾイドを見たい。

上段は大型ゾイド、下段は超大型ゾイドで分けている。その他はリリース順。

先にも書いた通り、この時期から機体名のロゴが変化した。ゾイドの名称はImpact書体で記載される様になった。
背景はサーベルタイガーから引き継がれた、青空が多い。
コング及びデスザウラーは、帝国の要となるゾイドだから赤なのだろうか。

当初、超大型ゾイド以上は、箱の右端に魅力を伝えるミニ枠があった。それ以下の大型ゾイドには無かった。
しかしグレートサーベル以降は、全ての大型ゾイドのパッケージに、ミニ枠が付くようになっている。

超巨大ゾイドは、当初は機体を側面からの角度で統一する縛りがあったようだ。
だがマッドサンダー以降は、この縛りは消えている。ただ推測すると、これはマッドサンダーの形状ゆえのものと思う。
マッドサンダーは横に非常に長い。仮にマッドサンダーを真横から写した場合、箱に全体を収めようと思えば、かなりマッドサンダーが小さくなってしまうだろう。
ちょうど、スネークスのように…。
それはマズイという事で、斜めからの角度になったのだと思われる。

ゾイドを真横から見るのは、確かにカッコいいと思う。しかしベストアングルかと言えばそうでもないと思う。
そのゾイドに合った様々な角度で構成した方が良かったのでは…と、思ったりもする。
ただこうして一覧にすると、整った角度で構成されているゆえ、並べた時の見栄えは格別だ。
ウルトラザウルス以降の超巨大ゾイドが、アングルを真横に統一していたのは、箱を沢山並べた時の見栄えを狙ったからなのかもしれない。

'89年以降のものは、空に夕焼けが増えている。青空は消えた。
唯一、デッド・ボーダーのものは青空ではある……が、前年までの明るい青空とは違い、暮れを思わせる濃い青色でもある。陽が沈み始めた頃の色に見える。
デッド・ボーダーで日が傾き始め、そして次弾ダーク・ホーン以降、夕日になったと捉えても面白い。
夕日は夕日でカッコいい。渋みもあるし、夕日に照らされた機体は実に栄える。特に、夕日色に照らされたガンブラスターのカッコ良さは格別だ。
だが、'89年といえば、いよいよゾイドがその勢いに陰りを見せ始め、徐々に衰退していった時期でもある。

最初、ゾイドのパッケージの空は、夜を思わせる色だった。その頃のゾイドは、年々少しずつ認知度を高めていっていたとはいえ、まだまだこれからという感じだった。
そして'86年、サーベルタイガーがまぶしい朝日・青空を初めて採用し、以降、ゾイドのパッケージの空=青空になった。その頃から、ゾイドは絶頂期を迎えた。
そして衰退期の差し掛かりの'89年。この時期、背景が夕日になったというのは、何か運命めいたものを感じてしまう。

 

次に、90年ゾイドの箱を、もう一度見たい。

リリース順に並べてある。

やはり一気に変化している。しすぎている。
絵を採用したことを含め、これはこれで良いかもしれない。だが旧来のシリーズと比べ、あまりにも違和感のある事は否めない。
急激に衰退するゾイドに何とか歯止めをかけたくて必死であがき、しかし迷走してしまったように思う。
先にも書いたが、やはり落ち着いて好調な時は安定するものであり、焦りだすと妙に奇をてらい、迷走してしまうんだなという事だ。
ただキングゴジュラスの箱が、ゴジュラスと同じ縦箱を採用したのは、最終ゾイドに相応しい英断だったと思う。
結果的に、メカ生体ゾイドで大型の縦箱を持つのはゴジュラスとキングゴジュラスの二機だけ。やはりゴジュラスの名を冠する者は別格という感じがする。

 

最後に、もう少しだけメカ生体ゾイドの箱を考えたい。
後のシリーズと比べるのはおかしな話であるが、機獣新世紀ゾイドの箱と比べると、メカ生体ゾイドの箱は大きく異なる点がある。
■ゾイドは完全な素組みである
■そのゾイドのみが、単体で写っている

という二点は大きく違う。


この点がある為、単純な見栄えは機獣新世紀ゾイドのものが上と思う。
しかしメカ生体ゾイドの箱は、この時代の哲学に基づいて作られているのではないか とも思う。

まず、素組みである点から考えたい。
先にも少し書いたが、メカ生体ゾイドの時代、素組みでこれほど見栄え良く完成させられるものは、ゾイド以外に無かった。
特にメカ生体ゾイド初期の一般的な模型・玩具と比べると、ゾイドはまさにオーパーツと言っていい完成度を誇っている。
パーツの合いも良かったし、パーツの色分けも申し分なく、接着剤も使わなかった。簡単に、それでいて見栄えが良いものを組む事が出来た。
模型誌のホビージャパンでゾイドが扱われた際は「他のキャラクター物の比じゃない」とまで言われている(’86年12月号)。

メカ生体ゾイドのパッケージを見ると、けっこうゲート部分の処理が雑なものもある。それも含め、素組みである事をあえてアピールしたのかもしれない。
「買って作れば誰もがこの完成度を得られる」というアピール。この当時としては、それは素晴らしいアピールになったと思う。
1999年のゾイド再販…、機獣新世紀ゾイドの時期は、ゾイド以外でも、素組みで高い完成度を持つ模型・玩具が充実してきていた。
この時代は、素組みの完成度の高さを謳うだけでは、アピールとして弱くなっていた。
だから、塗装・スミ入れなど、手入れを入念に行ったのではないだろうか。

次に、そのゾイドのみが単体で写っている点を考えたい。

そのゾイドのみが単体で写っているというのは徹底しており、歩兵すら写っていない。
機獣新世紀ゾイドのパッケージは、同一機種が多数居るものもあれば、別の機が写っているものもあれば、歩兵が随伴しているものもある。
単純に、多数の機や歩兵を交えて構成した方が、物語り性が生まれ、見栄えの良いパッケージになると思う。

この点に関しては、もしかしてと思う事がある。
プラモデルのボックスアートといえば、下のようなものが代表だと思う。

しかし一時期、背景は一切描かずに、機体のみが描かれるようになった時期があった。

これには、アメリカとヨーロッパ市場の影響があった。
1974年、アメリカとヨーロッパで「製品以外のものをボックスアートに描くのは誇大広告ではないか」という消費者運動が起こった。
つまり、「パッケージに別の戦車や歩兵が描かれていたら、消費者はそれも同梱されていると勘違いするじゃないか!」という事だ。
これはもう無茶苦茶で、言いがかり以外の何ものでもない。しかしこの消費者運動は、かなり大規模なものだった。
この影響でメーカーは萎縮してしまい、以後、ボックスアートは「その製品のみを描く」スタイルを採るようになってしまった。

メカ生体ゾイドの時代は、この消費者運動のイメージは色濃く、ゾイドもそういった批判を回避したい思惑があったのではないかと思う。
実際に批判が来るかというよりは、危険は出来るだけ避けようという思惑で…。
この事と、そして模型としての完成度が非常に高かった事から、パッケージを作る際に守るべき条件として「そのゾイドを単一で大きく写す」が決まったのだと思う。
機獣新世紀のものに比べると、メカ生体ゾイドのパッケージは、背景も簡素になっている。シチュエーションもかなり統一されている。
この点も、「可能な限り、そのゾイドを大きく見せてゾイドそのものでアピールする」為のものだったのではないだろうか。

確かに作り込みは、機獣新世紀のものに比べると非常にアッサリしている。
しかし、そういった背景を推測すると、実に面白いと思う。

個人的には、このパッケージを集めた写真集が出てくれれば凄く嬉しいのにと思っている。

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