帝国が誇る革新的超ゾイドたち

今回は、こちらのコラム(VSマッドサンダーvol.1)から派生した話題。

さて前回のコラムでは、帝国軍の技術を「帝国軍は凄まじい超技術でいつも共和国を驚かせている。そう思わせる位の技術先進国だ」と書いた。
この部分について詳しく書きたい。

そう、帝国軍はいつも凄まじい革新的新型機を出して共和国軍を驚かせる。
帝国というのは国力で共和国に劣る。数で勝負しても勝ち目はない。
その事情ゆえだろう。
帝国軍は常に「味方の損害を極限まで減らしつつ、相手にだけ損害を与える」そんなゾイドを開発してきた。

まずはアイアンコング。

格闘戦が常識だった時代に「遠距離砲撃で仕留める」という戦術を確立した。
相手のアウトレンジから一方的に撃つので、まさに「味方の損害を極限まで減らしつつ、相手にだけダメージを与える」。
予想以上にゴジュラスが頑丈だったので決定打にはならなかった(会戦では敗北した)………のだが、後のゾイド開発に与えた影響は極めて大だ。

 

次にサーベルタイガー。

史上初の大型高速ゾイドとして猛威を振るった。
その速度と運動性に対応できるゾイドはおらず、相手に反撃の隙を与えず一方的に倒してしまう。
もちろんその分パワーと防御力は劣る。それゆえゴジュラスが覚悟を決めてドッシリ構えれば勝つのは難しい。
それでも革新的ゾイドだったと言えるだろう。
その速度で「敵の背後を突く」事ができるのも強みだ。
正面からはレッドホーンやアイアンコング部隊を。これと同時にサーベルタイガー部隊は高速を活かして敵部隊の背後に回り込む。
こうして挟み撃ちにすれば敵は大混乱に陥るだろう。

 

次にウオディック。

敵が探知できないほどの深度から魚雷を放ちウルトラザウルスを攻撃。
あの巨艦ウルトラザウルスを一方的に攻撃するというのは凄い。
ゾイドバトルストーリー3巻でヘリック大統領は輸送船が沈められる危険性を指摘している。
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「一隻の敵ゾイドも逃してはならんぞ、リンデマン提督」
ヘリックは厳しい声で命令を伝えた。
「たった一隻のウオディックが、輸送中の数万の兵士の命を奪うかも知れんのだ」

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ウオディックはとてつもない強敵であった。

 

そしてデスザウラー。

防ぐ事が不可能な荷電粒子砲。
今までの武器はいかに強力でも装甲を分厚くすれば対処ができた。だが荷電粒子砲はワケが違った。
かすっただけで、あのウルトラザウルスが戦闘不能になる超威力。
敵の防御を無効化して一気に一撃で倒す。そんな、まさに「チート」と呼ぶに相応しい砲だった。

 

「味方の損害を極限まで減らしつつ、相手にだけ損害を与える」
まさに国力で劣る帝国らしい発想だ。
悲しいかな、国力で劣るから「優勢」程度の性能では一回の戦闘には勝てても戦争には勝てないのだ。
共和国だったらそれで良い……、いや共和国なら「やや性能で劣る」くらいでも数に任せて強引に勝ってしまえる。
共和国は本当に国力が最大の強みだ。帝国には決して真似ができない。
だから帝国は「敵が一切反撃できないような革新的ゾイド」で一方的に勝つことを目指したのだろう。
言い方を変えれば、そのような戦い方をしなければ戦勝することなど夢のまた夢であった。

「戦艦だろ」という時代に空母艦隊を作った。それで大戦果を挙げた。そんな感じだろうか。
改めて帝国軍の技術力の高さと目の付け所の凄さが分かる。

サイカーチスを加えてもいいかもしれない。低空を低速で自在に飛びまわる戦闘ヘリは画期的だった。

もっともこれは当初は飛行自走砲として開発されていたのだが(→参照)。

一方の共和国は、やはり共和国らしい開発をしている。
個々のゾイドにおいては、あまり革新的な事はしない。
その代わりに早期から「指令機」を運用した。各機に適切な指示を与え「部隊」として最高の動きができるような戦いを求めているのだ。


初期はビガザウロ。そして後にウルトラザウルスで完成系を得た。


サラマンダーも、箱裏バリエに早期警戒管制機仕様が確認される。

共和国は各ゾイドを「部隊を構成する一員」としてみる視点が強い。部隊としてどれだけ威力を発揮できるかという視点が強い。
これはやはり、常に大量の数を運用できる共和国ゆえなのだろう。

こういうのが両国らしくて良い。とても好きだ。

さて「帝国軍は攻められると脆い。共和国軍は攻められても粘る」とも考えているが、それは当然かもしれない。
・帝国軍は個として強い=そのゾイドが侵攻/防衛の要である。だからそれが攻略されれば後がない。
・共和国軍は群として強い=敵が新戦法を採っても、多種多様なゾイドがあるので対処法を比較的編み出しやすい。

という事情なのだろうなと思った。

 

もう少し続ける。
そんな革新的ゾイドを開発する帝国軍だが、「後の時代に共和国軍がかっさらっている」のが非常に悲しいところでもある。

アイアンコング:遠距離砲撃で倒す
→このコンセプトは後に「ゴジュラスMK-II」が互角程度、「ウルトラザウルス」が上位版として君臨した。

サーベルタイガー:高速戦闘
→このコンセプトは後にシールドライガーが上位版として君臨した。

サイカーチス:対地ヘリ
→このコンセプトは後にダブルソーダが上位版として君臨した。

ウオディック:敵が探知できない深海から一方的に攻撃
→対戦ソナーと対戦ホーミング魚雷の開発で無に帰した。

デスザウラー:敵が絶対に防御できない荷電粒子砲
→マッドサンダーが防ぐようになった。

何とも悲しい。
逆に共和国軍のコンセプトを帝国は最後までかっさらえなかった。
・超巨大ゾイドの開発技術
・部隊を適切に動かす管制能力
・飛行ゾイド

ただ唯一、「高速戦闘」のカテゴリーは帝国が意地を見せたとも思う。
他のカテゴリーは共和国に逆襲されると劣勢なままだった。

・アイアンコング以上の遠距離砲撃ゾイドを造れなかった
・ダブルソーダを超える対地ヘリを造れなかった
・対潜ソナーと対戦ホーミング魚雷の登場以降、ウオディックはさっぱり活躍できていない
・マッドサンダーのシールドを破ることは最後までできなかった

ただ高速戦闘は、「シールドライガーに優勢を奪われる→グレートサーベルで逆襲する」と粘りを見せた。
その後に登場したシールドライガーMK-IIは……、高速戦闘用としてはバランスが悪い事は否めない。1対1で戦えばグレートサーベル優位と思う。
しかしやはり、高速ゾイドが大威力のキャノンビーム砲を持っている価値は極めて高い。これも事実だ。
戦場での価値は5分5分くらいだろう。

しかし、末期にあいつが登場した。そうライジャーだ。

最高速度は320km/hを誇る。これがいかに凄いかと言うと、グレートサーベルやシールドMK-IIより80km/hも速い。
かつてシールドライガーはサーベルタイガーを相手に「何てスピードだ、サーベルタイガーが止まって見えるぞ」と言った。両機の速度差は50km/hだった。
80km/hも差があったら一体どうなるだろう。しかも単に速いだけじゃなくて運動性も高い。
火力も豊富でシールドライガーに匹敵する。しかも背中の砲は全周囲への射撃が可能だ。
これを中型機で実現するとは改めて凄まじい。

ライジャーは帝国の戦況を好転させる事はなかった。
それどころか、もしかすると先のコラムのように足を引っ張ってしまったのかもしれない。
でもそれでいい。その代わりに、ゼネバス帝国の意地を存分に見せつけたのだと思う。
ライジャーは制式採用された最後のゼネバス帝国ゾイドでもある。
このゾイドは、いろんな意味で唯一無二の存在だと思う。

そんなわけで今回は両軍の傾向やライジャーの意地について考えてみた。

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