VSマッドサンダーvol.1

デスザウラーは悪夢のように強いゾイドだった。あっという間に共和国首都は奪われた。
だがその後の共和国軍は戦線を立て直し、これによく抗した。
結果としてそれ以上の失地拡大を防いだ。それどころか幾らかは失地を回復した程だった。

共和国軍はデスザウラーに何とか対抗できた。
では帝国軍は、マッドサンダーに対して対抗できたのだろうか?
今回はこのテーマで書いていきたいと思う。


さてこのテーマだが、結論から言うと帝国軍は対抗できなかった。
マッドサンダー就役後の帝国は支配域を狭めていく一方だった。いちども支配域を回復せず、そのまま終焉に至った。

今回はまず、マッドサンダー就役から帝国滅亡(ニカイドス島の戦い)までをまとめたいと思う。

ZAC2048年
 09月:マッドサンダー完成
 10月:マッドサンダー初陣(塔の上の悪魔)
 12月:共和国首都奪還

ZAC2050年
 12月:帝国首都の包囲完了

ZAC2051年
 01月:帝国首都陥落
 03月:ニカイドス島の戦い、帝国滅亡

詳細時期が確実なところとしては上の通りだ。
マッドサンダー完成から2年半で帝国は滅んだ。この期間を長いと見るべきか、短いと見るべきか……。

さて時期が不明な部分を補強していこう。
時期が不明な戦いとして、「オベリアの戦い」がある。
これはゾイドグラフィックスvol.15に載っている戦いだ。

中央山脈を越えて共和国大部隊がやってきた。その先頭はマッドサンダーだ。
帝国軍はデスザウラーを先頭にそれを迎え撃った……が、大敗してしまう。
この戦いを見て、ゼネバス皇帝はもはや劣勢は覆らない。このまま共和国が勝利するだろうと確信してしまう。
それゆえ、暗黒大陸に頼るという道を模索するようになった。
というのが概略。

これはZAC何年だろう。
記述はない。が、私はZAC2050年の秋(9~10月)位だと思った。
なぜかというと、オベリアというのは帝国のまだ中ほどの位置という所にヒントがある。

ウラニスクや帝国首都からはまだ距離がある。そんな位置だ。
それなのに、ゼネバス皇帝はオベリア陥落と同時に敗北を確信した。

これはよほどの大決戦だったのだろう。
帝国軍は持てる兵力の大半を投入してオベリアの戦いに挑んだ。そして負けた。
それゆえ、ウラニスクや首都は健在だがもはや逆転は不可能と判断した。判断せざるを得なかった。

オベリア出の決戦は首都やウラニスクの防衛部隊まで投入した大博打だったのだと思う。
これに負けてしまったので、もはやロクな戦力がない。
ゆえに残りの地帯は短期間で猛攻されまくったのだと思う。
こうした事から、戦いは帝国首都陥落からそれ程離れていないZAC2050年の秋頃と推測した。

 

オベリアの戦いにどんな意味があったか。これを考えよう。
オベリアは中央山脈を越えた少し先にある。

オベリア戦直前の支配域マップを想像すると…、

こんな感じだろうか。

帝国軍としては、勝利すれば……、
「共和国軍を山脈の向こう側に押し戻せる」
これがまず大きな戦果だ。これによって大きく時間を稼げる。

またオベリアが西側というのも大きなポイントだ。
この戦いに勝つというのはマッドサンダーを最低でも何機か倒すということだ。
戦いに負けて逃げ帰る共和国軍が残骸を全て回収できるわけはないだろう。
帝国軍はマッドサンダーの残骸を回収できる。これに極めて大きな意義がある。

性能詳細が明るみになる。詳細を知れば対策が採れるかもしれない。
少なくとも、共和国側にその疑念を抱かせる位の効果は発揮するだろう。

かつてのアイアンコング150VSゴジュラス200の戦いを思い出す。
あの戦いは共和国領土内で行われた。
帝国は撤退した。その際に残骸の多くは共和国領土内に残されただろう。
コングは100機も破壊された。中には状態の良い残骸もあった筈だ。
これを回収したからこそ、共和国軍は早期に対アイアンコング用改良ゴジュラスの開発に着手できた。

さてマッドサンダーの残骸が敵の手に渡った。
とすれば、共和国軍はどう考えるだろう。

「帝国側が反荷電粒子シールドを突破する特殊兵器をしたかもしれない…(※1)
あるいは、
「帝国側がコピー機を作ったかもしれない…(※2)

※1:帝国軍は凄まじい超技術でいつも共和国を驚かせている。そう思わせる位の技術先進国だ。
※2:レッドホーンの拡大発展版として開発できそうだ。

これは凄い効果を発揮する。
もはやマッドサンダーが通じないかもしれない。そんな疑問がある中で戦いを続けて良いものだろうか……。

共和国はここで考える筈だ。
「山脈の東に押し戻された=ちょうど開戦前と同じ領土になった状態である」
「今、講和に応じればとりあえず極端に損な状態ではない」

共和国はもうウンザリだったと思う。
デスザウラー無敵時代の苦労。何とか対抗できていたといっても兵士の士気なんかは限界が近かっただろう。
ようやくマッドサンダーで正面から勝てるようになった。もう安泰だ。
そう思った矢先に敵が対策を採ったかもしれないなんて。
「またか、もういいかげんにしてくれ。もう嫌だ……」
となったのではないだろうか。

長らく奪われていた共和国領土をようやく回復した状態。
強力な帝国部隊に領土を奪われた記憶が生々しい状態。
ここで帝国が停戦を提案すれば……、共和国はそれに乗っかる可能性は高い。

オベリアを決戦の地に選んだのもニクイ。
山脈を越えた少し先の位置だ。
山脈を越えたすぐに場所……、ダリオスあたりで決戦をしていたら、勝っても残骸を回収される危険性が高い。
帝国軍は「戦いに勝ち」そして「マッドサンダーの残骸を回収する」この二つを同時に達成して初めて目標完了と言える。

その為に、あえてダリオスを放棄し敵を深入りさせた。
深入りさせた後で、いよいよ決戦を挑んだのだろう。
勝てば良し。だが失敗すれば「深入りさせておいての負け」なのでもはやお先真っ暗。
背水の陣の戦いでもあった。

オベリアでの決戦は、そんな意味のある戦いだったのだと思う。
帝国は一世一代の大博打を打った。

そして負けた。




しかし帝国が勝っていた可能性もあると思う。
私は以下の様に考えた。

ZAC2048年
 09月:マッドサンダー完成
 10月:マッドサンダー初陣(塔の上の悪魔)
 12月:共和国首都奪還

ZAC2050年
 秋(9~10月頃):オベリアでの決戦
 12月:帝国首都の包囲完了

この年表を見ると少し不思議な事に気付く。
共和国首都奪還からオベリア決戦までの間がかなり開いている。
1年10ヶ月ほど。
その間共和国軍は何をしていたのか……というと、それはもう東側領土の奪還でしょう。


これは共和国首都奪還直後の支配域マップ。
まだ帝国が支配してる地帯があった。
民はこの地の奪還を求めただろう。特にここに故郷がある者は強く求めたに違いない。

共和国軍は、まずこの地帯に優先してマッドサンダーを派遣しただろう。
しかし、ここの奪還に1年10ヶ月はかかりすぎだ。
決して帝国部隊が弱いとは言わない。しかしもはや袋の鼠。一切の補給がない中で1年10ヶ月も粘ったとは考えにくい。
どう長めに見積もっても1年もあれば十分な筈だ。

では残りの10ヶ月、共和国軍は何をしていたのか。

これは「マッドサンダーは山岳戦が苦手」という所にヒントがあると思う。
そう、マッドサンダーは巨体ゆえに山岳では力を十分に発揮できない。
開発者であるチェスター教授はこれを理由にマッドサンダーを山岳戦に投入する事に強く反対していた。

東側全土を支配域に戻した共和国軍は、勢いそのままに西側に進出しようとしただろう。
だが、山岳ではマッドサンダーは動きがとりづらい。
実力が発揮できないままやられてしまう可能性もある。
すなわち、「その地帯は事前に安全を確保する必要がある」ということだ。

共和国軍は中央山脈の攻略には成功していた・・・・・とはいえ、それは帝国軍の補給ルートを遮断したという意味でしかない。
「山岳地帯」は広い。

濃い部分が共和国の支配域。
分かりやすく地形を付けている。
まだ山岳地帯が残っているのが分かると思う。その地帯の攻略を事前に完了しなければ、マッドサンダーを安全に移動させる事はできない。

その地帯の戦闘で帝国軍は10ヶ月も粘ったのだと思う。
いや…、マッドサンダーが東側領土を奪還している間も山岳では戦いが続いていただろう。
なので、1年10ヶ月も耐えたという事だ。

この時期の帝国軍は山岳戦を優位に戦えるようになっていた。
それはライジャーによってだ。

グレートサーベルは優秀なゾイドだったが、適切なサポート機が不在だった。
だからシールドライガーMK-II&コマンドウルフのペアを持つ共和国部隊に勝てなかった。
しかし今、ライジャーが登場した。
ヘルキャットから順次機種転換され、猛烈な勢いでコマンドウルフを駆逐した。

ライジャーはむしろシールドライガーMK-IIさえ倒せるほどの能力がある。
中型機なのでパワーとスタミナでは劣るだろう。しかしこと戦闘では最強の高速ゾイドと言ってもいい。
これらによって帝国は山岳で粘りに粘ったと思う。

それでも勝てなかったのは、まずはゴルヘックスだろう。
共和国軍は山岳戦でゴルヘックスを運用した。帝国軍は ディメトロドンw山岳では本格運用できなかった。
山岳における電子戦では共和国軍に分がある。いかに高速を誇ろうが、電子戦機がその動きを正確に掴めば効力は半減する。
また、共和国軍は中央山脈の山頂部分を既に支配している。
なので、そこに砲台を設置すれば素晴らしい効果を発揮しただろう。
高所から帝国ゾイドを撃ちまくる事ができる。

電子戦機のバックアップ。砲台の支援。こうなるといかに強力機でも辛い。
またいかにライジャーが強くても……、それでもコマンドウルフを駆逐しきれなかったのかもしれない。
仮にライジャー1あたりが平均3のコマンドウルフを葬ったとしよう。しかしコマンドウルフはおそらくもっと数が多い。
何しろ開発が古いうえに生産性の良いゾイドだ。
ライジャーは確かに最強の高速ゾイドだった。だが数で圧してくるコマンドウルフを駆逐しきる事は遂に叶わなかった。
そんな悲劇のゾイドなのだろう……。

こうして苦戦に苦戦を重ねつつも、ようやく1年10ヶ月かかって共和国軍は山岳地帯の安全を確保した。
つまりマッドサンダーがいよいよ西側に移動したと思う。

 

帝国が勝っていた可能性とは何か。

私は、むしろライジャーが居なければどうだったかと考えた。
山岳で帝国は敗走を重ね、史実よりずっと早い段階で攻略されていただろう。
すなわちマッドサンダーの移動もずっと早くなった。

「それでは帝国の滅亡が早くなるだけでは?」と思われるかもしれない。
否。むしろこれこそが帝国が勝つ最後のチャンスだったと思う。

帝国に勝つチャンスがあったとすれば、マッドサンダーが量産される前に何とかする。
これだけだっただろう。

山岳で2年近くも粘った。それは帝国山岳部隊が最大限にに誇るべき見事な実績だ。
だが残酷な言い方をすれば、それゆえマッドサンダーに量産する時間を与えてしまった。訓練の時間もたっぷり与えてしまった。

山岳戦で早期に敗北していたらどうなっていたか。
おそらく勢いに乗る共和国軍は、マッドサンダーの力を過信し早期に西側攻略を始めただろう。
史実の構成は「大量のマッドサンダー、大量のウルトラザウルス以下共和国部隊」だ。
だがこちらでは「少数のマッドサンダー、大量のウルトラザウルス以下共和国部隊」になろう。
これなら、デスザウラーを集中投入して強引に数で仕留めてしまえる可能性もあった。

あとは「オベリアで勝っていたら」の想像通り。帝国は講和に至っていたかもしれない。

 

ライジャーを責めすぎだろうか。
好きなゾイドではある。

ライジャーは……、戦略的な目的とかそんな事はもはや一切考えない。だがその分、個としての強さに全てを割り振った。そんな思い切りが感じられる。
これはこれで凄い個性であって唯一無二だ。
またライジャーという驚異的なゾイドが居たからこそ、ゼネバス帝国は敗北こそしたがその威厳を保てたとも思う。

 

話が随分逸れてきたのでマッドサンダーに戻そう。
戦いの推移について今一度まとめると、

ZAC2048年
 09月:マッドサンダー完成
 10月:マッドサンダー初陣(塔の上の悪魔)
 12月:共和国首都奪還

ZAC2049年
 共和国軍、年末までに東側領土を全て奪還

ZAC2050年
 初秋:共和国軍、山岳地帯の完全攻略完了・マッドサンダーの西側移動
 年秋(9~10月):オベリアでの決戦・共和国軍勝利
 12月:帝国首都の包囲完了

ZAC2051年
 01月:帝国首都陥落
 03月:ニカイドス島の戦い、帝国滅亡

という流れだろうか。

ここまででマッドサンダー参戦後の戦いの推移を考えた。
次回からは、VSマッドサンダーの戦術も考えていきたいです。
長くなってきたので今回はいったんここで区切ろう。次回からは具体的なマッドサンダー攻略なども進めていきたい。

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