甲虫型ゾイド

ゾイドはライオン型や恐竜型などのヒーロー系の機種も多いが、虫型などのキワモノ系も多い。
カマキリ、蜘蛛、イモムシ、サソリ、カブトムシ、ヤドカリ、etc.
これらのゾイド、ヒーロー性は薄くとも、独特の魅力にあふれている。
こうしたマニアックなカテゴリーの存在が、熱心なゾイダーを多く生んでいる気もする。

さて今回は昆虫型ゾイド…、の中でも「甲虫型」ゾイドに関して書きたいと思う。

甲虫の代表といえば、何と言ってもカブトムシとクワガタ。固い装甲と大きな武器。甲虫界の二大巨頭だろう。

両者とも翼を持っている。ただし飛ぶ事は少ない。
攻・防に優れている事から、樹液を巡る戦いでは勝利しやすい。しかしその反面、体が重いので飛行には適していないのだ。
「飛ぶ」というより「飛ぶ事もできる」程度に留まる。

一方、ゾイドワールドでは甲虫型ゾイドは飛ぶ事が基本になっている。
「飛ぶ事もできる」ではなく「飛ぶのが普通」という扱いだ。
まぁ、おそらく6本の細い足でシャカシャカ動いてもたいした速度が出ない=役に立たない=それなら飛ぶしかないという事だと思う。
野生体がどのような生態をしているかは分からない。だが、戦闘兵器として運用するならば飛ばす他はないのだろう。

といっても、飛行速度は音速の半分にも満たず低い。
サイカーチスは390km/h、
ダブルソーダは415km/h、
ガンビートルは 350km/h、
ギラフソーダは320km/h

「昆虫型」というカテゴリーならば、そこそこ速いゾイドは居る。
トンボ型ゾイド(クロスウイング/ブロラバーン)はM0.9を誇るし、ハチ型ゾイド(ビーシューター/キャリービー)はM1.9を出す。
やはり、甲虫型ゾイドは根本的には飛行は得意ではないのだろう。

甲虫型ゾイドの第一号といえば、名機サイカーチス。

現在では、「対地ヘリ」として扱われる事が多い。だがこのゾイドは、元々は後方から支援砲撃をするゾイドとして開発された。
コックピットに防弾がないのも、後方に位置するゾイドゆえだ。

支援砲撃機としての運用、これはどういう事か。
長い角、これはメカ生体ゾイドでは「長射程ビーム砲」という設定だった。
このクラスのゾイドの装備で、「長射程」とわざわざ表記してあるものはこれだけだ。おそらく、同クラス中では最長の射程を持つ砲なのだろう。

長射程を実現できたのは、長い角を加速器に利用できたからだと思う。
「長く一直線に伸びた角をフルに使って加速する」
サイカーチスは、ある意味では後のジェノザウラーやセイスモサウルスに繋がる機体なのかもしれない。
(ただし、サイカーチスは先端でビーム砲を分岐させている=せっかく角全体で加速させたイメージを削いでいるようでその点がとても惜しいと思う)

さて、この砲でもって後方から砲撃をするわけだが、ここで問題となるのが「ビーム砲」という事だ。
曲射ができる実弾砲は、例えば下図のように撃って味方を支援する事ができる。


マルダーのミサイルで敵が混乱する中、マーダが突撃して戦闘を優位に進める。
これは理想だ。

しかし直進するビーム砲では、後から撃つと味方を撃ち抜いてから敵地点に到達してしまう…。

ビーム砲がマーダをかすめる。同士討ちは洒落にならない。
マーダに当たらないよう上に向けて撃ったら、それは当然ながらゴドスにも当たらない。

というか、そもそも直進するビーム砲では惑星の曲面に守られ近距離までしか狙えない。

地上から撃った場合の最大射程は、惑星の曲面から計算すると10km以下でしかない(海抜0mでの計算)。
「直進する」というのは良い面も悪い面もある。だが後方からの支援砲撃には適しているとは言い難い。

しかし、サイカーチスは後方からの支援砲撃を行う目的で開発された。
この仕様でどうやって支援砲撃をするのか。
ここに、カブトムシ型という意義がある。

パワーは十分にあるし、長い角を加速器にできた。だから長射程ビーム砲の搭載は難なく行えた。
そして飛行特性は「最高速度は低いが安定性は高い」のが特徴だ。
サイカーチスは、長射程ビーム砲を持ち上げ空から射撃を行う。

ここに、理想的な支援砲撃機が完成した。

しかし実際はこのような支援砲撃で運用される事は少なく、主に対地ヘリとして運用される事の方が多かったようだ。
サイカーチス就役の数年後には、ウルトラザウルス上陸作戦に端を発する共和国軍の怒涛の進撃は始まっている。
これにより、もはや後方支援などと悠長に言っておれず最前線に投入され…、そして対地攻撃で意外な効果を発揮したという事なのだろう。
後に機獣新世紀の設定では、支援砲撃機ではなく対地ヘリとしての能力が強調された。

対抗機であるところのダブルソーダは、超射程ビーム砲は搭載していない。

サイカーチスの実運用を受けてのものか、あるいは共和国には既にウルトラザウルス、ゴルドスといった優秀な支援砲撃機が多くあったからかもしれない。

 

さて甲虫型ゾイドと言えば、他にもアタックゾイドのグラップラー(コマンドゾイドのサイカーチ)が居る。

グラップラーに関しては興味深い資料もあるので紹介してみたい。


こちらは、てれびくんで展開されたバトルのワンシーン。グラップラーの離陸の様子が描かれている。
機体下部から煙を噴き出し垂直に離陸している。なかなか便利な機能を持つようだ。

興味深いというのはこちら。

これは周辺アイテム「フィギュアセットNo.1」に入っているスピーダーバギーだ。
見るに、おそらくスターバギーも垂直離陸が可能であろう構造をしている。

グラップラーは、装甲をひっぺがすとスターバギーに酷似した構造をしているのかもしれない。
両メカはサイズも酷似している。

スターバギーは純粋な機械であり、グラップラーはゾイド。
構造の共通点や相違点を、この二機から考えてみても面白いと思う。

 

さて、今回はそんなわけで甲虫型ゾイドをあれこれ見てみた。
やはりマニアックで面白いカテゴリーだと思う。

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