試作品の製作

■前準備■

製作に関しては、ペーパークラフトで行う事にしました。
理想的にはプラ板で作る事が望ましかったのですが、残念ながら私の技量的な問題で今回は見送りました。
まぁ、ペーパークラフトをひとまずは作り、その上で、技術的なものが身に付いてからプラ板ver.も作れればと思います。

製作にあたり、3DCGを製作しました。

これを元に製作していく事になりますが、この3DCGにも考察が必要です。
おおまかな形状は理想的な仕上がりになったと思います(細かいディティールは作っていませんが)。
しかしながら、細部の形状には一考が必要です。

例えば翼。

現在、TypeAのように作っていますが、航空機の翼という概念で考えるなら、TypeBのようにならなければなりません。
(まぁ、ホエールカイザーが主翼の揚力で飛んでいるかどうかは不明ですが………)


航空機の翼は、揚力を発生させるために、翼断面が上図のようになっています。
※ただし、その航空機の運用高度や速度により断面形状は変化します。上図のものは最もスタンダードな翼の断面形状です。

しかしながら、当然、ペーパークラフトの製作における難易度は格段に上昇すると思います。
迷った末、今回は製作が簡単な方を選択しました。
ペーパークラフトの製作は今回が初という点を考慮した結果です。

しかしながら、航空機としてイマイチな翼形状になってしまうのは否めないとは思います。
その辺を、表面のディティール処理によって補っていければと思います。

翼以外にも、問題はあります。
現在、表面のディティールが作りこまれておらず、かなり「ツルッ」とした質感になっています。
対し、バトルストーリーに登場するホエールカイザーは、表面に無数の凹凸があり、過剰なディティールで構成されています。
この緻密なディティールこそ、ホエールカイザーの魅力だと思っています。

しかしながら、これも作っていたらキリが無いという理由で、思い切って省略することにしました。
しかし完全に省略するだけでは、ホエールカイザーじゃない何かが出来てしまうので、翼と同じく表面のディティール処理によって補っていきたいと思います。

以上の点を踏まえ、もう一度ホエールカイザーの3DCGモデルを作り直しました。


傍目にはあまり変わっていない様に見えると思いますが…、「あたり」だった以前のモデルに比べ、各部を3DCG的な処理で言う所の「キッチリ」と作っています。
また、部品が一部離れた位置にあるのが分かると思いますが、これは、このモデルを使用してペーパークラフトを作る事を考慮してのものです。

前準備は、これで完了です。


■試作モデル1■

3DCGモデルに色を付けました。

3DCGは、特徴として、「立体の展開図を作れる」という機能があります。

例えば…、

このような立方体(正六面体)を作ると、


のように自動的に展開図を作ってくれます。

しかしながら万能でもありません。
立方体をペーパークラフトで作ろうとすれば…、


このような展開図+のりしろが必要です。
さすがにそこまでの機能は、手持ちの3DCGソフトには備わっていません。

その辺は、上の「とりあえずの展開図」を作った後、手動で「ペパクラ用の展開図+のりしろ」を作る必要があります。
ただ、シェアウェアの「ペパクラデザイナー」というソフトを使えば、のりしろを含めてほぼ完璧な図面を作ってくれるようです。
(→ペパクラデザイナーHP

しかし今回はペパクラデザイナーは使用を見送りました。
今回は、出来るだけ自分の手だけで模索しながら作りたかったという点と、それによりスキルを高め、次につなげたいと考えたからです。
そう、ゆくゆくは色々作りたいと思っています。
先ほど、翼断面を妥協した点も、ゆくゆく改良したver.2.0的なものも作れれば良いなと思います。

また、単純に頑張って手動で作れるものならわざわざソフトを買わなくてもいいだろうと思った点や、
失敗してもホエールカイザー製作ならその過程を楽しめるかなと思った点もあります。

さて、そんなわけで、多少面倒くさい事をする覚悟をして、手動でホエールカイザーの組み立て用展開図を組み立てようと思います。

ホエールカイザーの3DCGの展開図を作ると、下図のようになりました。

3DCGに色分けをした意味はここにあります。


例えば緑色の部分は、「腹部」になるし、灰色の部分は「垂直尾翼」になります。
つまり、この図面を印刷してパーツごとに切り抜き、緑色のパーツを集めれば、腹部が組み立てられる事になります。

今回、のりしろは無いので、セロテープで組み立てました。
出来たモデルが下のものです。


一部パーツは省略して作っていますが、ほぼ、3DCGモデルそのままの出来になっているのが分かると思います。
予想以上に上手くいってくれました。
しかし問題点も多数見つかります。

頭部や機体後部など、見ての通り図面がズレていました。
大穴が開いています。

3DCGから作る展開図は、このように微妙にズレていることがよくあります。
この辺は手動で直さなければなりません。

とはいえ、試作立体化第一号は、このような出来で、無事成功しました。


■試作モデル2■

試作モデル2号は、図面を整えてから作りました。

試作モデル1の組み立てを参考に、図面を綺麗に並べ直します。
意外と、この工程は楽にできます。

試作一号より、やや大型化させました。
A4用紙一枚に印刷していますが、その中で図面の配置を工夫し、ギリギリまで大型化させています。

もちろん、試作一号の図面的不備(頭部の穴など)は可能な限り修正してあります。

また、細かい実験も行っています。

垂直尾翼の取り付け方を変更しています。


従来は、受け部品側に切れ込みをいれ、そこに垂直尾翼を差し込むことで組み立てを完了させていました。
しかし今回、垂直尾翼側に凹みを作り、そこに受け部品側を差し込むスタイルにしました。
これは、どちらがより立体を固定でき、強度を確保できるかのテストでした。

結果的には、従来型の方が圧倒的に強度を保てる事が判明しました。
このように、様々な試行錯誤を繰り返す必要があります。


■試作モデル3■

試作モデル3号は、試作モデル2号で判明した問題点を改善する為に作りました。
全体は作らず、実験に必要な部分だけ作っています。


胴体部分のみです。
前部が開いていますが、これは完成品に「ハッチ開閉ギミック」を搭載できないかどうかを検討している為です。
最終的にこのギミックを搭載する事は断念しました。
理由は、ハッチを閉じた状態で上手く固定できなかったからです…。「かえし」を作るなど、幾つかのアイデアは試してみたのですが…。

また、胴体の造形を大胆に変更しました。
どの程度大胆かというと…、実は3DCGモデルを作り直し、また1から作り直しました。

というのも、試作2号を作った段階で、胴体部の造形はともかく、強度にかなりの不安があるものになってしまったからです。
ホエールカイザーの腹部は大きな箱のような形になっています。
今までこれを、「中は全て空」の状態で作っていましたが、これではちょっとした衝撃で潰れてしまう事が判明しました。
そこで今回のリテイクモデルで、「胴体部は一つの箱で作る」という従来型から「二つの箱を複合させる事で胴体を作る」という造形に改めました。

また、今までは「普通紙」に印刷して組み立てていたものを、「厚紙」に印刷して組み立てているのも、試作モデル3号の特徴です。
完成後に使用するものとほぼ同等の紙を使う事により、より詳細な仕上がりも想像できました。

今回、普通紙から厚紙に切り替えた事で判明した事実があります。
それは、紙を折り曲げた時、普通紙では大丈夫だったような部分が、厚紙では致命的になることがあります。
厚紙はその厚さゆえに、紙を折り曲げた時に、普通紙と微妙な誤差が生じます。

紙の厚さを計算に入れて図面を作らなければならない事を、今回学びました。
と同時に、おそらく先に紹介したペパクラデザイナーでは、こういう細かい部分までやってくれるのだろうか…?という疑問も沸いてきました。
今回は、ソフトを使わず手動でやって正解だったと思っています。


■試作モデル4■

ここまでの問題を全て解消し、ディティールもある程度入れたver.を作りました。
この、試作4号は2機作りました。
片方は普通紙、もう片方は厚紙に印刷しています。

結果的に、普通紙でもそこそこの強度を確保でき、また厚紙の方はかなり最適な強度となりました。
試作3号の作り直しの結果が最高の形で実現でき、非常に満足のいくver.となりました。

マーキングも、テキトーとはいえイメージ的には本番用データと同じになるように彫りました。
ここでマーキングの参考にしたのは、今回造形的には没にしたホエールカイザーです。


帝国紋章位置を、このホエールカイザーのイメージから持っていています。

今回のものは、かなり完成形に近いVer.になりました。
とはいっても、まだ極めて細かい誤差もあるので、その辺の解消などが次回の課題となります。


■試作モデル5■

今回のモデルを、最終試作号機とします。

課題は色々在ります。
またその課題とは別に、今までは小型ゼンマイゾイド程の大きさで作っていましたが、ホエールカイザーとしては小さすぎるので、大型化させようと思います。


具体的には、最低でもレッドホーンくらいの大きさは確保させたいと思います。
(まぁ、ペーパークラフトなんだから大きな紙に印刷すれば大きく作ることは可能ですが、印刷精度も確保したい為、綺麗に作り直します)
また、前回までは「のりしろ」を作っておらず、セロテープでの製作を行っていました。
今回のver.で、のりしろをちゃんと作ります。

大きく、そして綺麗なディティールで拡大発展版を作ります。

右上の小さいのが従来品、左側の大きくて綺麗なのが今回描き直したver.です。
ちなみに、実データは、これの2倍のサイズで作っています。

細かいマーキングも施します。
これも精度を高く保つ事を心がけました。
一例としては、RESCUEマークのような精度です。
見えるか見えないかのような部分ですが、こういう部分で手を抜くか力を入れるかが、最終的な完成度に比例すると思っています。

また、翼の一部がくりぬかれている点にも注目して下さい。
これは、後々にギミックを仕込むためのものです。
今回の最終試作ver.は、その実験を行う為のものでもあります。

また胴体部分には、このようにビッチリとモールドを入れます。
これを全身に入れています。

ホエールカイザーのような超超巨大ゾイドの場合、装甲は一枚板で出来ているわけはないと思います。
おそらく無数の鉄板を張り巡らせて構成されていると思われ、また機体各部には細かなメンテナンス用ハッチとかパネルとかがあると思います。
そういうものをテキトーに済ませるのではなく、あくまで緻密に描き込むことでリアル感が増すと思います。
また、造形面で多少妥協している(翼形状や機体のゴチャゴチャ感など)のを、ここで補いたいとも思って作っています。

この過剰なほどのディティールは、漫画家の近藤和久さんの影響でもあります。


氏は多くのガンダム漫画を手がけておられますが、その圧倒的なディティールはガンダムという架空の世界に圧倒的なリアルさを与えました。

メカ生体ゾイドは、メカ部分の作りこみが他の架空兵器郡に比べ、圧倒的にリアルだったと思います。
それを、このペーパークラフトでも保ちたいと思います。

また、作っているうちに、やはり機体後部を少しくらいはゴチャゴチャさせたいなと思うようになりました。
そこで、このような仕掛けも作りました。

一部パーツをくりぬくようにして、裏面から別パーツを貼り付けます。
これで、多少のゴチャメカ感が出てくれれば良いのですが…。

そういった試行錯誤と改良を繰り返し、完成させていきます。
そしてついに、最終試作機が完成しました。


レッドホーンより余裕ででかいです。
さすがに苦労してディティールを描き入れただけのことはあり、完成度もそれなりになったと思います。


試作4号と共に。
ここまで巨大化しています。

主翼や垂直尾翼に「フラップ」や「ラダー」が動くギミックも仕込みました。
ハッチ開閉ギミックは今回断念しましたが、その代打となるギミックが仕込めた点は良かったと思います。

しかしながら、やはり問題も浮上します。

前回よりそうとうサイズを大きくした為、小型ver.では問題にならなかったような細かい図面的ズレが致命的になっていたりです。
また、今回ではじめてのりしろを作りましたが、製作の容易さを考えずに作ったので、一部組み立てに難があった点です。


図面のズレと、組み立てに難があった為、組み立てが雑になった箇所の例。

このような箇所を綺麗にします。
作るのが難しい…という点は作り手の技量にも依存する場所であり、私が作った結果が万人に当てはまるかどうかは分かりません。
しかし、いずれにせよ、難易度は出来るだけ下げておきたいところです。


印刷をし直し、微調整を繰り返します。
図面のみのデータなども製作し、ひとつひとつデータを修正します。


結局、試作5号は2機+3機分くらいの個別部品を作りました。
細かい改定も逐次加わっています。
例えば、内部メカの色が、若干変わっている点などに注目してみて下さい。
のりしろのハミダシが少なくなっていたり…、同じ試作5号でも徐々に良くなってきています。

ペーパークラフト“ホエールカイザー”は、このような手順で完成しています。

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