キャノン砲の威力と開発史と構造を考える

前回のコラム(廃艦所要弾数)の続きとして、今回は更に砲を考えていきたい。

キャノン砲。
共和国軍のキャノン砲といえば代表的なものとして
・ゴルドスキャノン(105mm)
・ゴジュラスキャノン(42cm)
・ウルトラキャノン(36cm)

があると思う。

これらの威力を考えたい。それぞれの砲を帝国軍大型ゾイドに直撃させたらどうなるだろう。私は以下のように想像した。

ゴルドスキャノン

サーベルタイガー:撃破
ディメトロドン:撃破

レッドホーン:場所による。前盾なら跳ね返されるが、それ以外なら撃破可能
アイアンコング:一発では無理。三、四発与えてようやく撃破

デスザウラー:有効なダメージにならない

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ゴジュラスキャノン

サーベルタイガー:撃破
ディメトロドン:撃破
レッドホーン:撃破
アイアンコング:撃破

デスザウラー:ややダメージを与える

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ウルトラキャノン

サーベルタイガー:撃破
ディメトロドン:撃破
レッドホーン:撃破
アイアンコング:撃破

デスザウラー:そこそこダメージを与える

あくまで私個人のイメージではあるが、このようになると思った。

 

キャノン砲の開発の歴史を言うと、古い方から「ゴルドスキャノン→ゴジュラスキャノン→ウルトラキャノン」になると思う。
就役時期で言うと「ウルトラザウルス→ゴジュラスMK-II限定型」の順なので(※)、ゴジュラスキャノンの方がが新しいと言うこともできる。
※両機ともZAC2037年の就役だが、わずかにウルトラが早い

いやしかし、実はゴジュラスキャノンは開発自体はZAC2033年ごろから始まっていた。オギータ版だ。


この時期のキャノン砲を見ると、やや口径が小さいが構造などは制式版と似ている。
キャノン砲は、私は割と早い段階(たぶんZAC2035年頃)には完成していたと思っている。
ではなぜゴジュラスMK-II就役がZAC2037年かというと、キャノン砲を付けるのに苦労したからだと思う。

制式版のキャノン砲は「バックパックのロケットエンジンに付ける」という無茶苦茶な配置なので、発射衝撃の問題などがあったのだろう。
普通に考えて、デリケートなロケットエンジンに大口径砲の発射衝撃を直接与えるなんて、そりゃぁ壊れる……。

オギータ版では腕に付いている。これはこれで無茶だ。格闘戦を完全に捨てている。
オギータ版はおそらくキャノン砲の評価は高かった。そしてブラッシュアップし正式採用する事が内定した。
しかし現状では腕にキャノン砲が付いており格闘力大幅低下が否めないのでその点の修正を求められた。 とすると背中のバックパックに付けるくらいしか解決方法がないが、それはそれで無茶である。
キャノン砲自体は完成したが…、どうやって搭載しようか。どうやってロケットエンジンが壊れないようにしようか。
そんなわけで、その無茶苦茶をどうにか解決するのに長い年数がかかったのだと思う。

まとめると、キャノン砲の開発年は
ZAC2030年以前:ゴルドスキャノン
ZAC2035年頃:ゴジュラスキャノン
※ただしこれはキャノン砲のみの完成でありゴジュラスに搭載するには更に2年を要した。
ZAC2037年:ウルトラキャノン

くらいだと思う。

 

次に構造を見ていこう。
ゴルドスキャノンは開発時期が古いので火薬式の古典的な大砲だと思う。
そうは言っても開発時期においてはゾイド星最大最強の砲だったようだが。

正式名称は105mm高速キャノン砲。「高速」というくらいだから大砲にしては速射性があるのだろうか。
21世紀地球の最新鋭戦車は「分あたり10発程度」の射撃速度がある。どちらが速射性に優れるだろう。

ところで、105mmというのはゴルドスのキットが発売された1984年当時の世界主力戦車主砲の標準的な口径だった。
それに合わせて105mmになったのだと思う……が、割と遠慮した数値だなとも思う。

ゴジュラスキャノンは42cm、ウルトラキャノンは36cm。これは戦艦の主砲に近い数値だ。
フィクションだからそれくらいまでハッタリを効かせても良い気がする。
ゴルドス(大型ゾイド)は、戦車と比べるととにかく巨大だ。


比較しているのは1984年当時の自衛隊主力戦車の74式戦車。もちろん105mm砲を搭載している。
このサイズ差。それなのに74式戦車と同じ口径にしたというのは随分遠慮したなと思う。
なお2門積んでいるので撃てる量は多いが、逆に旋回不能なところ(撃つ方向に体ごと向けなければならない)は欠点だ。

まぁ、ゴルドスは地球人来訪前の技術で造られたクラシックなゾイドだ。だからこの数値なのだろう。
この時代、純ゾイド星技術の限界が105mm砲だったと。しかし地球人来訪後は36cmとか42cm砲も作れるようになったと。
そう思うとなかなか面白く感慨深い気がする。

 

ゴジュラスキャノンは一気に口径が増して42cmになった。ゴルドスキャノンの4倍。これは凄まじい大型化だ。まさに地球技術様様と言える。
42cm砲というと、戦艦長門の主砲に極めて近い。長門は41cm砲を搭載している。
ちなみに長門とゴジュラスを比べると以下の通り。


凄まじいまでのサイズ差。
戦艦の大きさというのは主砲を撃つ事から逆算して決められる。つまり41cm砲を安定して撃つにはこれくらいの大きさが必要ということだ。
ここから考えると、ゴジュラスサイズで42cm砲を積んだ技術(しかも基部はロケットエンジンである)は凄いことが改めて分かる。

ただ、ゴジュラスキャノンは大きさの割には威力は低いと見ている。
もちろんアイアンコングを一発で倒せる威力だから必要にして十分ではある。ただし、口径に比しては低いと思う。
なぜかというと、構造が無反動砲だからだ。

ゴジュラスキャノンの発射は、ゴルドスと同じ火薬式だと思う。
ただ相違点として、砲の構造が無反動砲として作られていると思う。

無反動砲というのは読んで字の如く「発射時の反動が無い砲」だ。(正確に言うと反動を低減させた砲)
大砲は発射時に凄まじい衝撃がある。それは色々と困る。だから発射衝撃が無い砲を作ろうということで誕生した。
どうやって衝撃を無くすかというと「前方から弾を発射する」これと同時に「後方から同質量の物体ないしガズ圧などを放出する」事でそうしている。
「作用・反作用」だ。

上にも書いたが、ゴジュラスキャノンの付き位置はロケットエンジン部分だ。
正確に言うとエンジンのナセル(ナセルというのはエンジンの覆いのこと)部分に付いている。
強い衝撃を与えるとエンジンが壊れる。なので反動を極限まで抑えた無反動砲が採用されたのだろう。
この選択はとても合理的だ。

ちなみに、無反動砲は反動がないというのがメリットだ。ではデメリットは。もちろんある。
最大のデメリットは「同じ口径の砲としては威力で劣る」ことだ。
どうしても、後方からも噴射するから前方に弾を撃ち出すエネルギーが弱まってしまう。
そんなわけで、ゴジュラスキャノンは見た目ほどの威力はないと思う。
もちろんアイアンコング(開発目標)を倒せるのだから必要にして十分という所は改めて強調したいのだが。

 

では次にウルトラキャノン砲を考えよう。正式名は36cm高速キャノン砲。
口径はゴジュラスキャノンよりも少し小さい。

ウルトラキャノン砲は、ウルトラザウルス開発に併せて同機専用に開発された新型次世代キャノン砲だと思う。
私は、ウルトラキャノン砲はシステムがゴルドスやゴジュラスキャノンとは全く違うと見ている。
以前は火薬による砲……すなわち「ゾイド自身は大砲を乗せる台座であれば良い」という状態だったと思う。
しかしウルトラザウルスのキャノン砲は電磁砲(レールガン)、すなわちウルトラザウルスのエネルギーを利用して放つシステムだと推測している。
これを裏付けるものかは分からないが、バトストにはしばし「ウルトラがフルパワーでキャノン砲を放った」ような表現が出てくる。
「フルパワーで放った」という表現はウルトラザウルスのエネルギーで撃っているイメージを強く抱かせる。

ウルトラザウルスが桁違いのパワーを持つ事は周知の通り。
ゴジュラスが二機がかりでも一瞬しか足止めできない程の圧倒的パワー。このパワーを持つからこそ電磁砲という新機軸が採用できたのだと思う。

電磁砲の利点として、火薬式の砲に比して初速が極めて速い点が挙げられる(むろん相応のエネルギーは必要だが)。
砲弾の威力は「速度×重量」だ。
ゴジュラスキャノン砲は口径でウルトラキャノンを超える=砲弾の重量では勝る。しかし発射速度が遅いので破壊力では劣ってしまう。
ウルトラキャノン砲は砲弾の重量は低い。しかし発射速度が圧倒的に速いので破壊力は上になる。

共和国軍は、最大距離で砲撃を行う時はゴジュラスMK-IIを使用せずウルトラザウルスで行うのが常だった。
これはウルトラザウルスの方が射程が長い=キャノン砲発射時の初速が速い事を示している。

多分、ウルトラキャノン砲というのはウルトラザウルスないし同等以上のパワーを持つ機体にしか装備できない砲なのだと思う。
ウルトラザウルス以外でこれを積んだのは、確認した資料の中では唯一ゴールドサンダーだけだった。

 
マッドサンダーは、ウルトラ以上のパワーを持つので搭載できたのだろう。

逆に、ゴジュラスキャノンは極めて多くのゾイドが搭載している。
これはやはり、火薬式であり無反動砲だから他のゾイドにも流用しやすかった事情が見えてくる。

 

さて近代戦は物量戦だ。
兵器生産という観点でみれば、共和国軍はキャノン砲の規格を完全に統一すべきだったと思うこともある。
すなわち全てゴジュラスキャノン砲にすれば、生産効率は飛躍的に向上する。コストも大幅に下がっただろう。
運用を考えても、統一されていればかなり有り難いはずだ。
ウルトラザウルスが弾を撃ちつくした! じゃあゴジュラスMK-II用の砲弾を拝借して補給だ。なんて事ができる。
別々の砲弾だと……、例えばウルトラザウルスがやられた。基地には36cm砲砲弾が山ほど余ってるけどもう使い道がない。ああゴジュラスMK-IIは健在なのだが。こいつに流用できたらいいのだが…………。
そんな状況が生まれる。

そんな事は共和国軍とて100も承知だった筈。
でも、
・量産効果を台無しにする別ライン生産になったとしても
・砲弾に互換性がなく現場が大変になったとしても
・その他諸々の問題が予想されたとしても
それでも、ウルトラザウルスなら新型の圧倒的破壊力の電磁砲を搭載できる! というのが魅力だったのだろう。
だからウルトラキャノン砲が付いて完成したのだと思う。

 

しかし、それにしてもウルトラキャノン砲が小口径というのは不思議なものだ。
これは開発経緯の考察ではなく玩具展開上のこと。
販促的に考えれば、「ウルトラザウルスは最大最強ゾイドだ。キャノン砲も最大だ!」と宣伝したかっただろう。
しかしあえてゴジュラスMK-IIの方をより大きくしたのだから不思議な気がする。

当時、キャノン砲の構造はどこまで設定されていたのだろう?
今回の記事のように設定されており「小口径でも破壊力が高いのである」と自信をもって認識されていたのだろうか。
これはちょっと気になるところだ。

 

ゴジュラスキャノンとウルトラキャノンの口径差を見ていて思い出すのは、旧日本軍の97式戦車チハだ。
チハの初期タイプは57mm砲を主砲にしていた。
が、これは威力不足だったので後に換装してチハ”改”に新生した。
チハ改が搭載したのは47mm砲。なんと小口径化しているのだ。
しかし57mm砲は初速が遅く、対戦車能力がかなり不足していた。47mm砲は初速が速く、敵戦車の装甲をある程度は貫通できるようになったとのこと。
「小口径=弱い」ではなく威力が上がることもある。こういうことがあるから面白い。

ウルトラザウルスは36cmキャノン砲。口径はゴジュラスキャノンを下回る。
でも、
・初速が速いので貫通力や破壊力はむしろ上回る
・砲弾が小さいので搭載できる弾数が増えた
などのバランスで今の仕様になっていると思う。

そんなわけで、今回は共和国軍の代表的なキャノン砲を考えてみた。

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