最強合体ゾイドの実力4

こちら(最強合体ゾイドの実力3)の続き。

前回のコラムで、ケンタウロスの建造意義を「デスザウラーを倒したという象徴が欲しかった」と推測した。
これは正しいと思う。
共和国軍の士気を圧倒的に下げた悪魔のゾイド、デスザウラー。
これを正面から鮮やかに倒した事実が欲しい。
そんな思惑が見える。

バトルストーリー3巻には、デスザウラー鹵獲作戦失敗のエピソードがある。
単独行動中のデスザウラーを狙って作戦開始。
サラマンダーがデスザウラーを攻撃、注意を引き付ける。
その隙にウルトラザウルスが背中のファンを撃ち抜く。
この大がかりな作戦は失敗し、共和国軍全体に「サラマンダーとウルトラザウルスが協力しても倒せない……」という絶望が蔓延してしまった。

共和国軍は、この後に「中央山脈への進出」を方針として採っている。
デスザウラーとの正面対決を避ける方針。これは極めた優れた戦略だ。
ただ……、共和国軍にとってはやっぱり「デスザウラーには絶対勝てないからこんな作戦をしてるんだ…」という思いをいっそう強くするものでもあっただろう。

 

さて、対デスザウラー用ゾイドといえばディバイソンだ。
「全力で突撃すればデスザウラーの装甲を破れる可能性がある」という淡いゾイド。

さてディバイソン乗りに任命されたパイロットを想像してみよう。
「デスザウラーには絶対勝てない」という空気が蔓延する状況だったら、やっぱり喜ぶ者は少なかったと思う。
マッドサンダーだったら完璧に防ぐ・貫く設計性能だから良い。だがディバイソンは淡い期待を寄せる程度の能力なので、やっぱり怖かろう。

ディバイソンがデスザウラーを撃退するには、もう本当に全力での突撃をかまさないと無理。
それは覚悟を決めて迷いなく突撃する事だ。
なのでディバイソン就役前において、デスザウラーを倒した事実・象徴はやはりどうしても欲しかったのだと思う。
この事実があればこそ、ディバイソンを希望するパイロットは増える。全力で突撃するパイロットが増えよう。
こうして、ケンタウロスの建造が認可されたと思う。

実際にケンタウロスはデスザウラーと戦う事はなかった。
ただデスドッグとは戦った。

倒しはしなかったが、一応「相打ち」には持ち込んだ。
これは共和国軍の期待通りの効果を出したかもしれない。

デスドッグの詳細は伝わらなかっただろう。ただ「改造デスザウラー」というといかにも強化されてより強くなったタイプを連想させる。
それと相打ちに持ち込んだというのは共和国兵を勇気付けたと思う。

ディバイソンはデスザウラーに果敢に突撃し、共和国軍の反撃を本格化させた。
この戦果の裏には、ケンタウロスが残した成果が大きな影響を与えたのかもしれない。

 

さて更に考える。
そんなわけで、ケンタウロスについて「デスザウラーを倒した象徴が欲しかった」事は確実と思う。
ただしそれに加えて、もう一つ大きな目的があったとも思った。

ケンタウロスを考えたコラムで、何度も「翼があって限定的とはいえ飛べる事が有効」と書いた。
これはウルトラザウルスと比べると雲泥の差。この巨体で山岳でも動けることは驚異だ。

ケンタウロスが建造されたのは、ちょうど共和国軍が中央山脈攻略を進めていた時期に当たる。
ここにも秘密があると思う。

当時の山岳における両軍戦力を見ると共和国軍がかなり優位だ。
山岳での中心メカは帝国軍がサーベルタイガー、ヘルキャット。共和国軍はシールドライガー、コマンドウルフ。これは共和国軍が明らかに優位。

サーベルとシールドはシールドやや優位くらいだが、ヘルキャットとコマンドウルフの差は大きい。数の上では主力の高速ゾイドがこの差。帝国軍はかなり苦戦しただろう。

山岳で高速ゾイドを除けば主力として扱われたのは24ゾイド。

これも共和国軍優位だ。後発なのでメガトプロスはデスピオンを上回る。

ゴルヘックスの登場で電子戦でも遅れをとらない。

山岳という事を考えれば、ディメトロドンより小型のゴルヘックスが動きやすく有効だろう。

ゾイドバトルストーリー3巻の記述によると「帝国軍が、サーベル、ハンマーロック、ヘルキャット、イグアンの4種類しか山岳戦用ゾイドを持たぬのに対して、共和国軍はシールド、べア、ウルフ、ゴドス、カノン、ゴルヘックス、スネークス、ガイサックと8種類ものゾイドを戦線に投入した」とある。

この差……。

数もそうだが共和国ゾイドは質も高い。山岳でのベアファイターはかなり強そうだ。
帝国軍はハンマーロックが強力万能機だが、ベアファイターなら余裕で完勝できる。
ブラックライモスが山岳戦に対応していれば…というのは大きく悔やまれる。

共和国軍は新しいゾイドで山岳戦を戦っている。シールドライガー、ベアファイター、コマンドウルフ、ゴルヘックス。これは第二次中央大陸戦争期に誕生した新鋭だ。
対して帝国軍は古いゾイドばかりで戦っている。
この辺りが帝国軍の開発限界なのかもしれない……。
国力の低い帝国軍は、電撃戦で共和国首都を攻略・それで戦勝するつもりだったのだろう。
その後も戦いが伸び、まさか山岳でこのような戦いをするなど完全に想定外だったと思う。

ただ、一つだけ帝国軍に脅威のゾイドが存在するとすればアイアンコングだろう。
バトスト3巻では「帝国軍が、サーベル、ハンマーロック、ヘルキャット、イグアンの4種類しか山岳戦用ゾイドを持たぬのに対して」と書いてある。
しかしこれは主力戦力だろう。その他にも多くのゾイドが参加した事は確実だ。

さてアイアンコングは山岳でも良好な機動力を出せる。主力と呼べる程ではないが、ある程度の数が山岳戦にも投入されたと想像する。
そして極めて高い脅威になっただろう。
シールドライガーならどうにか勝てるかもしれない……が、サーベルタイガーと連携されたりしたら勝つのは難しい。
その他のゾイドは絶望的だ。
小~中型機ではアイアンコングにダメージを与える事すら難しい。
かといって大型ゾイドでも……。
ゴジュラスやウルトラザウルスではどうしようもない。
険しい地帯で足をとられロクに動けないまま殴り倒されるだろう。
共和国軍は山岳で運用できる重戦闘ゾイドをこの時代まだ保有していなかった。

こういう状況でアイアンコングによる被害が続出。「山岳で確実にアイアンコングを排除できるゾイドが欲しい」という要望が上がっただろう。
・アイアンコングを確実に排除できる攻撃力を持ち、
・アイアンコングの攻撃にある程度耐える耐久力を持ち、
・山岳地帯でも戦える軽快さを持ち、
・広大な中央山脈を迅速に移動し現場にすぐに駆けつけられる移動力を持つ

これはまさにケンタウロスだ。
「中央山脈のアイアンコングを排除する」という限定的な目的なら量産する必要もない。
ケンタウロスの建造意義はそんな事情も含まれているのだろう。

実際、初陣はアイアンコング部隊を倒すという内容だった。

デスドッグさえ居なければ、そのような運用がその後も続いていたかもしれない。
共和国軍は史実よりも優位に山岳戦を進め、グレートサーベル登場前の段階で山岳を完全攻略してしまっていたかも……。
こう考えると、デスドッグはフランツが大統領殺害という目標で作った狂気のゾイドだ。だが期せずして帝国軍の危機を消し去ったという事も言える。

ケンタウロス建造の最大意義は山岳におけるアイアンコング排除。中央山脈制覇の目標を達するためのゾイドであった。
ただ、もちろん同時にデスザウラーとの交戦も視野に入っている。単機のデスザウラーに理想的な状態で戦いを挑める機会があれば交戦する。不意打ちから猛攻して押し切れば勝利できる可能性は高い。そうすれば全軍からデスザウラーの恐怖を払拭し士気を大きく上げる事が出来る。

ケンタウロスはそんなゾイドなのだと思う。

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