最強合体ゾイドの実力3

こちら(最強合体ゾイドの実力1)こちら(最強合体ゾイドの実力2)に続いて、更にケンタウロスの話。


前回はデスザウラーとの直接対決ではデスザウラーやや優位と考えた。
肉薄しているのだから大したもんだと思う。
ゴジュラスだと相手にならない。ウルトラザウルスも遠距離砲戦以外では絶望的。
ケンタウロスだと不利ながらも善戦できる。場合によっては勝てる可能性も……。
これを考えると、当時の共和国軍としてはそりゃあ造りたくなるよなぁと思う。

さて、今回は対デスザウラー戦以外を考えたい。
前回、前々回のコラムを書いていて、ケンタウロスは限定的とはいえ飛べるのは凄いなと思った。

 

ウルトラザウルスの強さは砲撃力だ。

敵部隊が侵攻してきたと。そのルートにキャノン砲の猛射をすれば敵は総崩れになる。
でもウルトラは脚が遅いし山岳等では全く動けない。
敵が移動している…! 撃たねば。
そんな時に「なかなか現場まで到着しない。その結果、好機を逃す」ようなケースがあったと思う。

こういう場合はゴジュラスMK-IIが出張っていただろう。

二足機なので機動力はウルトラよりは各段に良い。
とはいえ、ゴジュラスだって山岳等は得意ではない。というかどちらかというと苦手である。
あくまで「ウルトラに比べれば良い」というだけに過ぎない。

ケンタウロスだとこれが大幅に改善できる。
難所では飛べば良いのであっという間に射撃位置まで移動できるだろう。

更に、一発だけではあるものの小山をも吹き飛ばす弓矢が使える。
敵部隊の中央に打ち込めば絶大な戦果が得られる。
まずは弓矢を打ち込み、更にキャノン砲で追撃をかければ敵部隊は涙目になろう。

こういう風に考えると戦略的価値は極めて高いと言える。
たしかに「デスザウラーに勝る」かもしれない。
ただし………、それでも「ウルトラ、ゴジュラス、サラマンダー、ゴルドス」この四種類のゾイドの生産を止めてまでやる価値はあるかと言われたらNOになるのだろう。
だから生産は一機だけで終わった。

 

限定生産でも出来なかったのか。例えば10機程度。というと出来なかったのだと思う。
ゴルドスとゴジュラスは別に構わないと思う。元々の生産数が多いから、生産機がマイナス10になったところでどうにかなるだろう。
特にゴルドスは既にゴルヘックスが居たので極端に言えば0になったところで大丈夫だ。

だがウルトラザウルスは致命的だ。
この時期の共和国軍は、フロレシオ海海戦を経てようやく制海権を得ていた状況であった。
対潜ホーミング魚雷の完成でウオディックが無敵ではなくなった。とはいえ、それでも強敵ではあっただろう。数も多い。
ウルトラザウルス。キャノン砲や魚雷で高い攻撃力を持つ。更に飛行甲板を持ちプテラスの発着も可能。
これが1機減るだけでも大変だ。だから10機なんて海軍としてはとても許容できなかったと思う。
ケンタウロスは水上艦としてはさすがに運用できまい。重すぎるのでそもそも浮けないと思うし、もし浮けたとしてバランスが悪いからすぐに転覆しそうだ。

サラマンダーもできないと思う。

レドラーが制空権を握っていた時代だ。なのでこの時期のサラマンダーは運用制限がされていて「温存」に近い状態になっていた。
そういう意味では、寝かしておくよりいっそケンタウロス用に流用した方が良い気もする。
ただ、温存以外の可能性も思う。
プテラスは本当によく頑張って、極めて劣勢でありながらもレイノス登場までどうにか戦い抜いた。
共和国軍は、どうにかしてプテラスでレドラーに勝つ策を模索しただろう。
単機ではどうあがいても勝てないプテラスだが、もし強力な母機を付ければ……という可能性は感じる。
早期警戒機を飛ばして周囲一帯の情報を入念に集める。その情報を元に配下のプテラスを最適に動かす。
こうすれば性能で上回るレドラーに勝つまではいかなくても善戦させたり被害を少なくしたり出来るはず。
大型飛行ゾイドを持つ共和国軍だからこその運用だ。
こうして多くのサラマンダーは早期警戒機として運用されていた。だから高空戦でどうにか耐え抜いたような可能性も感じる。

また完全に温存されていたとしても、あまり積極的にはケンタウロス用にはしたくないだろうとも思う。
サラマンダーの戦略爆撃は第一次中央大陸戦争で絶大な効果を挙げた。
それを再び。というのは空軍の切なる目標だっただろう。
レドラーを超える新型戦闘機が完成し制空権が再びこちらに戻ればその時には……。そんな風に考えていたことは想像に難くない。
ケンタウロスに改造すると元に戻すのは極めて困難だろう。なので嫌ったと思う。

 

更に言うと、10機のケンタウロスを造るには各10機のウルトラ、ゴジュラス、サラマンダー、ゴルドスでは足りないとも思う。
なぜかというと超キメラゾイドだからだ。
ゴジュラスとウルトラザウルスのコアはまるまる使っている。サラマンダーのコアも翼を動かすために部分的に使っているだろう。
複数のコアを同時に動かしている。同調にかなり繊細な技術を要したのは確実だ。
適応するコア、拒絶するコアなどの個性もあったと思う。人間でも例えば骨髄移植手術にはドナーの適合・不適合、また手術後の拒絶反応などがある。
ゾイドは生き物。同じように適合・不適合はあっただろう。
10機のケンタウロスを造るには各20~30機くらいを用意しなければいけない可能性も……。

ということで、結局のところ量産できる仕様ではなかったと思う。

 

この事は建造前には分からなかったのか。というと分かっていただろう。
まさか「造ってみてからよくよく考えたら無理な事が判明した」なんてバカな筈はあるまい。

いかに強くても一機だけだと局地的な活躍しか出来ない。
それなのになぜ造ったのか。
というと、私は「デスザウラーを倒したという象徴が欲しかった」のだと思った。

当時のデスザウラーは絶対無敵の王者だった。
総攻撃を仕掛けても勝てない悪夢の存在。ゴジュラスが束になっても相手にならない。ウルトラザウルスがもっとも得意とするはずの水中戦を挑んでも勝てない。
唯一、背中のファンを撃ちぬいた上でウルトラザウルス大艦隊が十字砲火を浴びせる戦法で勝った事はあった(ゲルマンジー上陸作戦)。 しかしあれはもう連戦でさすがに疲弊したデスザウラーを数と地の利の双方で圧倒するという戦いだったので、むしろ一機のデスザウラーを葬るのにここまでしなきゃいけない印象も残した。

デスザウラーは、戦略的価値で言えば「荷電粒子砲を一度の出撃で3発しか撃てない」のだから、それほど絶対的に高いわけじゃない。
デスザウラーはデスザウラーで運用に相当の苦労を要するゾイドだ。
・旗艦機として絶大な能力を持ち味方を最適に動かすウルトラザウルス。
・アイアンコング以下とは十分に渡り合えるゴジュラスMK-II。
・シールドライガーは若干だがサーベルを超える。
・電子戦でもゴルヘックスで盛り返した。
数値的に言えば共和国軍は苦しいが戦えないわけじゃない。
でも印象ではやっぱりデスザウラーを要する帝国軍が圧倒的というものだ。
なぜかというと、やはり「デスザウラーはどうあがいても勝てない」という印象が強すぎるからだろう。

当時の共和国兵は、そりゃあ戦うが心の中には「デスザウラーには勝てない……」という絶望が常にあったと思う。
これではなかなか士気も上がらない。
特に「デスザウラーを押さえ込め」という指令があれば、「……無茶だろ。あーぁ、死んだなオレは」と諦めムードになってしまいかねない。
上層部としては当然「無茶言ってくれるぜ。でもまぁ、やってやろうじゃねえか!」みたいになって欲しいはずだ。
そういう気持ちになればこそ戦いの内容も変わる。
その為には「デスザウラーは決して無敵じゃない。倒せるゾイドだ」という象徴が必要だ。
いちど倒せば「もしかしたら俺達だって倒せるかもしれない」という希望が生まれる。
しかもケンタウロスの場合は合体ゾイドだから、倒したという実績を作れば後は「ゴジュラスの格闘力が通じたんだぜ」「ウルトラの砲撃もやっぱり有功だったらしい」「やっぱり飛べると強いよな」のようにに各部隊が都合のよい解釈をしてくれる可能性も大きい。

そんなわけで、デスザウラーを一機だけでも破壊できればそれで良い。共和国軍の悪夢を消し去り士気を向上させる。希望を取り戻す。
そんな目的でケンタウロスは誕生したのだと思った。

 

結局はケンタウロスはノーマルのデスザウラーと交戦する事はなかった。
その意味では目的を果たさなかったののだが…、ヘリック大統領とローザ・ラウリが結婚するきっかけにはなった。
大統領の結婚やその後の第一子誕生は共和国の軍・民を大いに喜ばせただろう。
運用は予想外になったものの、結果として言えば共和国に大きく貢献した機体になったのだと思う。

やっぱり魅力的、最強合体ゾイドは伊達じゃないと思う。

Back
index

inserted by FC2 system