ゴジュラス・ジ・オーガとアーバイン

「メカとパイロットとの絆」というとアーバインと彼の愛機、黒いコマンドウルフが思い浮かびます。

アニメで活躍した黒いコマンドウルフ。
凄いのはかなりの長期間にわたって乗り続けた事でもあります。
周りのゾイドが次第に強力になる中、ずっとコマンドウルフで戦い続けたのは印象をいっそう強いものにしました。
第二部ガーディアンフォース編の中盤までコマンドウルフで頑張ったのだから凄い。
そしてついにライトニングサイクスに乗り換えた時のエピソード……、第48話「黒い稲妻」もコマンドウルフとの絆を強く印象づける内容でした。

さて、それはアニメの話。

アーバインと愛機コマンドウルフはバトスト…、公式ファンブックにも登場すします。
しかしそちらではコマンドウルフは早々に退場、かわってゴジュラス・ジ・オーガに乗り換えます。
乗り換えた際、特にコマンドウルフとの間でドラマチックな絆の描写がされたという事はありませんでした。


<機獣新世紀ゾイド 公式ファンブック2巻より>

コチラではアーバインは「傭兵」として登場しています。
当初はコマンドウルフに乗っていたものの、その頃から共和国軍の格納庫に入り浸ってはオーガを熱心に眺めています。

こちらのアーバインはコマンドウルフとは特に強い絆はなかったのだろうか。
いや、そうではないと思います。
あのアーバインです。アニメと同様、コマンドウルフとは強い絆で結ばれていたと思います。
今回のコラムはそんなこんなについて。

 

バトストでのアーバイン仕様コマンドウルフの出番は少なかった。
流れを言うと、

・西方大陸戦争で第二次全面会戦が始まった。傭兵アーバインはコマンドウルフに乗り、共和国側について戦っていた。
・アイアンコングPKが共和国基地を襲撃、ゴジュラス・ジ・オーガが危機に陥った。
・コマンドウルフは、オーガを救うべく身を盾にしてPKの攻撃をモロに受けた。コマンドウルフは命を落としたが、これによりオーガは守られた。
・この行為…命を捨ててまで守った事…でオーガはついに目覚めた。またオーガはコマンドウルフのパイロット…アーバインを認め自らコックピットへ誘ったのであった。

というものです。
バトストでのアーバイン仕様コマンドウルフの出番はここで終わり。
これ以降は一切登場しない。アニメに比べてなんとも早期に退場してしまいました。

 

ゴジュラス・ジ・オーガについても補足しておきましょう。
これはゴジュラスにオーガノイドシステムを組み込まれた機体。
ノーマル機の5~10倍ほどの戦力を持つものの、過度に凶暴で誰にも操縦できない。(それゆえ「獣鬼」の異名を持つ)
パイロットの問題から、オーガはコンピュータ制御による自動操縦仕様に改修された。

コンピューター制御による自動操縦とは、キャノン砲を活かした「火力支援」としての運用だった模様。
パワフルさを増したゴジュラスを活かした仕様とはいい難い。ですが、コンピューター制御では複雑でしかもその瞬間の判断が求められる格闘戦が不可能だったのでしょう。
そんなオーガは、アーバインと出会い彼を主と認める。以後、戦場で長く活躍する事になります。

 

さてアーバイン仕様コマンドウルフ。
あのシーンより以前……、つまり開戦から第二次全面会戦直前まではどんな活躍をしていたのでしょうか。

私は機獣新世紀ゾイドのリアルタイム展開時、パイロットの絆とかよりもゾイドの兵器的運用が好きだと思っていたクチでした。
ですが今になってみると「ゾイド=生物」という感じがより強調された新世紀の描写もとても良いと思えるようになりました。
余談ですが、以前に書いた「航続距離を考える」というコラムは私の中で大きな転換点になりました。
最後の方にレイノスの航続距離について書いています。
「航続距離がそこまで長くないレイノスだがクルーガーの思いに応えるべく奇跡の距離を飛んだ」
これを考える事ができて、私の中のゾイド観はぐっと深まりました。そしてこの考えに至れたのは新世紀の描写に触れたからだったと思います。

元々の私は、メカ生体ゾイドのあくまで純粋な兵器的運用を行う描写が普通だと思っていました。
それはそれで魅力的だし今でもそういう描写に凄く燃えます。
実際に軍隊であれば絆云々なんてどうでもよくて、頭数で機械的に戦力を計算するものだと思う。そうあるべきだとも思います。
でもその中にやっぱり時おり絆というか信頼というか、そんな描写も織り込んであるとゾイドらしいなぁとも今は思います。

さて絆というかゾイドの感情というか。
そんな要素といえば「今まで誰も操縦できなかったオーガだがアーバインには心を開いた」という本エピソードはひときわ印象的です。
だから深く考えたい。
私は、本エピソードについて以下の様に妄想しました。

 

アーバイン仕様コマンドウルフについてですが、私はキャップの色に注目しています。
「純白」という特長的な色をしています。
私は、あのコマンドウルフはキャップの色から旧大戦NEW TYPEの生き残りと推測しました。

グランドカタストロフで戦力を大幅ダウンさせた共和国軍。
もはや生き残っているゾイドは、機種や運用年数を問わずに徴用された。そうしないと軍が維持できなかったから……。
(通常、兵器には耐用年数があるので一定期間以上を運用された機は外されるのが常である。メカ生体ゾイドでは老齢機が前線任務を退き後方へ移されるエピソードもある)

旧大戦をどうにか生きぬいたコマンドウルフNEW TYPEもその中の一機だった。
その後、ずっと長い間運用が続けられていた……。

私はあのコマンドウルフは決して若くない……というか、かなりの老齢機だと思いました。

そんなコマンドウルフは、ある時に修復不能と思われるほどの重症を負った。(実弾訓練などと推測)
そして放棄される事になった。

戦力が一機でも多く欲しい共和国軍だが、そうはいっても本機は老齢機。
修理代も惜しい状況。検討の末、ここでは廃棄の結論になったのであった。

訓練場の隅に捨て置かれるコマンドウルフ。

コマンドウルフは思う。俺はずっと共和国軍と一緒に戦っていた。なぜ捨てるんだ?
俺はまだ生きているんだ。治してくれれば戦えるんだ……。なんで……、なんで捨てていくんだ……。

そして人への不信感をつのらせ、もはや誰も信じない・絶望し死を受け入れようとしていた所に現れたのがアーバインだったと想像しました。

……アーバインはアーバインで過去が色々ありそう。アウトローな生き方をしているし。
今回はそれについては省略します。
ただまぁ多分、アーバインはコマンドウルフを自らの境遇と重ね合わせたんじゃないかと思います。そして絶対に助けたいと決意したのだろう……と。

コマンドウルフを修理するアーバイン。
傭兵なので部品調達も大変だが、傭兵ゆえに規格外の部品を使って修理する器用さもあった。
そんなわけで彼独自の修理を施したアーバイン仕様が完成した……。

当初は心を閉ざしていたコマンドウルフだが、必死に修理をするアーバインに徐々に心を溶かしていった。
修理が完了する頃には、もう一度この男だけは信じてみようという気になり、今一度奮い立った。

そんな状況で、アーバインとコマンドウルフの戦いが始まったと思います。
この後、西方大陸戦争が開戦。

本来は修理したといっても規格外品だから劣悪な性能になる筈。そもそも規格外品だから修理が完全でもない。
また旧大戦から運用されている老齢機でもある。
本来なら「生き延びさせる」ことはできても「再び戦える」ようになどならなかった筈。しかしそこはアーバインとの絆でもって奇跡の戦線復帰をしたと思います。
そして数々の戦果を挙げるほどの強さをみせた。

 

ここまでが第二次全面会戦より前の想像。
そしてここからはオーガと出会った場面直前からの想像。

 

そんなコマンドウルフとアーバインだったが、いかに絆が強くても叶わない事もある。
やはり生物である以上、永遠に生きることはできない。
老齢機という現実が重くのしかかる。
コマンドウルフは残された命の灯火を全力で燃やし日々を戦っていたが、とっくに限界は超えていたのだった。
そしてアーバインもそれを知っていた。
寿命はすぐそこ。いつ死んでもおかしくない。

最後は静かに過ごさせてやろうかとも思うが、コマンドウルフはそれを拒否して最後まで戦うことを希望した。
「一度死んだ俺にお前が再び命を吹き込んだ」
「お前は傭兵だから俺がいなくなった後も戦い続けるだろう。俺はもうすぐ命が尽きるのが悔しい。だが命続く限りはお前と共に戦いたい」

さて誰しも死期を悟れば自らが生きた意味や証を求める。また自らの想いを次代に託したいと思うものである。
そんな時にオーガと運命的な出会いを果たす。

オーガもまた孤独なゾイドだった。
オーガは「起動実験の際にいかなるパイロットも受け付けない凶暴さを露呈した」というゾイドだ。
これは自分に無理やりにオーガノイドシステムを組み込んだ人への憎しみがありそうな気がする。

かつてのコマンドウルフは人に捨てられた。オーガは人に無理やり凶暴化させられた。
そして心を閉ざした。
両機ともこの点で共通する。

さて、もはや自分が長くないと悟っているコマンドウルフ。
そんなコマンドウルフはオーガを見た瞬間に理解する。
あいつもまた孤独だ。人に絶望している。

オーガにかつての自分を重ねるコマンドウルフ。
そして決意する。
どのみち長くないこの命、オーガの為にくれてやろう。
俺だって人に絶望した事がある。けど中には捨てたもんじゃないヤツだって居た。俺はそうして立ち直り再び戦う事ができた。
オーガ、お前にもその事を伝えたい。

コマンドウルフの想いは精神リンクを通じてアーバインにも伝わる。
そしてアーバインはコマンドウルフの想いを受け取りオーガを眺めた。

 

さて第二次前面開戦。アイアンコングPKは共和国基地に忍び込み激しい攻撃をした。
オーガも危機に陥った。
それを見たコマンドウルフは死に場所をここに見つけた。
盾となりオーガを守ろうと決意した。
オーガ、お前を守ってやる。だからあとは俺の相棒…、アーバインの事は頼むぜ。

コマンドウルフの決意を精神リンクを通して知るアーバイン。
一瞬とまどう。
だが、ここでまだコマンドウルフの延命のために躊躇するようじゃ相棒失格だ。
弾幕に飛び込むコマンドウルフ。
こうしてコマンドウルフはアイアンコングPKからの攻撃を受け、自らの命と引き換えにオーガを守ったのであった。

そしてその瞬間、コマンドウルフとオーガもまた繋がり意思を共有していた。
コマンドウルフの想い、その命をとしてまで伝えた想いをオーガは確かに受け取った。
オーガはコマンドウルフにそんな想いを抱かせたパイロット、アーバインを信用してみようと思う。
オーガはコックピットを開きアーバインをいざなった。

アーバインはコマンドウルフを振り返らなかった。
確かにコマンドウルフは死んだ。
だがその想いは確かにオーガに受け継がれたのだから。


<機獣新世紀ゾイド 公式ファンブック2巻より>

という感じで、以上のように想像してみました。

これは私が勝手に妄想した内容です。が、いずれにしろ深いドラマがあってコマンドウルフに乗っていて、ものすごい愛着や信頼関係があった。そしてオーガを守る行為もその信頼ゆえであったと、そんな風に思いたいと思います。

 

ただちょっとブチ壊すような事も加えておくと、なんだかんだ言ってアーバインはゴジュラス乗りに憧れていた部分も確かにあったと思います。
それはもう、当初からずっと。
アニメでも何かとゴジュラスに憧れる言動が多かった。乗れると分かった時は凄い喜んでいました。
コマンドウルフももちろんいいゾイドですが、ゴジュラス特有の迫力や力強さはやっぱりゾイド乗りの誰しもが憧れる存在なんだろうなぁ……という事も同時に思います。
もちろん、これはアーバインとコマンドウルフの絆を否定するものではありません。
ゴジュラスとはそういうゾイドなのだ、という事です。

そんなわけで、ドラマチックな想像もどんどんしていきたいと思う次第です。

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