機獣新世紀ゾイド ヘリック共和国軍 ハンマーヘッド<HAMMER HEAD>

■ハンマーヘッド(シュモクザメ型) データベース■

 発売年月 2000年7月  発売当時価格 800円  動力 中型ゼンマイ

 型式番号 RZ-033

 スペック 全長17.0m 全高6.6m 重量66.5t 最高速度(空)M1.0 最高速度(水)65ノット 乗員1名

 主な武装
  AZマニューバーミサイルポッド(×2) AZ30mmハイパービームガン(×2) AZ30mm2連装ハイパーショックガン(×2) AZマニューバーミサイルコンテナ(×6)
  AZパルスレーザーガン イオンブースター(×2) イオンパルスジェット(×2)

 特徴
  旧大戦時にゼネバス帝国の海空両用機シンカーの奇襲戦法に手を焼いていた共和国軍輸送部隊が、シンカーの対抗機として開発したのがハンマーヘッドである。
  海中と空中どちらでも効率よく稼動するイオンエンジンを装備し、主翼部に可変翼を使用した機動性の高い海空両用ゾイドである。


前後より

水空両用ゾイド、ハンマーヘッドです。
ZAC2100年にようやく誕生した帝国軍シンカーへの対抗機です。シンカーの登場はZAC2031年なので、実に69年目にして完成した待望のゾイドです。

海と空で運用できる共和国ゾイドといえば、シーバトラス(アサルトシーカー)があります。
ですが、本格的な水空両用共和国ゾイドとしてはハンマーヘッドが初と言うべきでしょう。
ハンマーヘッドによって、共和国軍もようやくながら水空でトリッキーに活躍できるゾイドを得たのです。

モチーフはシュモクザメです。
サメの中でもホオジロザメではなくシュモクザメを採用したのはひねくれているなぁと思います。褒め言葉です。
シュモクザメ型というと帝国軍もかつてヘルダイバーを運用していました。

比べると、流線型で美しいヘルダイバーとゴツゴツして質実剛健なハンマーヘッドの対比が面白いです。
同モチーフだからこそ比較できる事です。

ただ一方で、ホオジロザメも見てみたいなぁとか、「帝国:サメ、共和国:シャチ」という構図でも面白かったんじゃないかなぁ等とも思います。
この辺はなかなか難しい所です。
希望としては、今後どちらの軍でも構わないので、大型クラスのホオジロザメ、超大型クラスのメガロドンなんていうのが出て欲しいなと思っています。


側面より

共和国らしいゴツゴツしたラインで構成されており、メカニックな魅力に溢れています。
メカニックな部分では、特に後部のミサイルコンテナの造形が好きです。

リアル兵器としてのゾイドを存分に体感できます。

一方、サメといえば流線型の美しいライン持つ生物。なので、ゴツゴツした中でも、もう少しなまめかしさを感じさせても良かったのかなぁと思います。
ハンマーヘッドのデザインは、ちょっと各ブロックが直線的に処理されすぎていると思えます。確かに共和国的なデザインではあるのですが…。

カラーリングは地味に徹しています。
地味なのがいかにもミリタリーな雰囲気を出していています。
一方で、サメ何だから上下で色を分けても面白かったのかなーとも思います。バリゲーターのようにです。

現実の潜水艦も、喫水線の上と下で塗り分けているものが多いです。なので、そのようなカラーのハンマーヘッドもぜひ見てみたいです。


フェイス

頭部は、シュモクザメらしく横に張り出した部分が特徴的です。モチーフでいえば目に相当する部分です。
ただし、その部分は視認する為の機能ではなく強力な攻撃用装備になっています。

サメの最大の特徴とも言える口は造形されていません。
中型ゾイドで口が無いのは珍しい事です。まして、サメというモチーフで口を省略したのは大胆だなあと思います。
機獣新世紀ゾイドの新型ゾイドは、小型ゾイドでも口を造形するようになりました。
その事を思うと、ますます口を省略した事は不思議だなぁと思います。

目を攻撃用装備にした所と口を省略した事から、能力はモチーフに忠実というよりは人工の外付けパーツを主体に強化した超兵器といった趣を感じます。
実際、ハンマーヘッドは「空飛ぶサメ」なので、外付けパーツを徹底して加えた事は確かでしょう。
頭部の仕様は、その事をよく示しています。

コックピットは中央にあります。特徴的な事は、キャノピーの上面が黒で塗装されている事です。
この意図は分かりかねています。
おそらく上面は装甲であり、前面と側面のみがガラス張りという事でしょう。
しかし、ならば黒ではなく装甲と同じ色で塗るべきだったのではないかと思います。
黒という他の部分には一切使用されていない色で塗った事が混乱を与えています。

キャノピーを開けると、中にはパイロットが入っています。

パイロットはこの1名のみで、全ての操作をここから行います。

ただ、パイロットに関しては少し気になる部分もあります。
背中の中央ヒレ部分には、オレンジ色…つまりキャノピーと同じ色で塗装された部分があります。

(見えやすいようにイオンブースターを外しています)

この部分は、船の艦橋のようなデザインになっています。
この中に人が配置されていてもおかしくない感じです。本来は、ここにも人を配置する予定だったのだろうか…と思います。
潜水艦であり、空を飛ぶ事もできる。操縦はなかなか複雑でしょう。しかも、搭載している武器も多い。
なので、二人乗りにしても説得力はあります。
理想的には、この部分にもパイロットを配置し、オレンジで塗装されている部分はクリアパーツにして欲しかった所です。


シンカーと共に

ハンマーヘッドはシンカーへの対抗機です。
シンカーは初期から登場したゾイド。その能力で共和国軍に脅威を与えました。
メカ生体の時代はもちろん、新世紀の時代になっても大きな脅威として高い存在感を示しています。

共和国軍は、ハンマーヘッドによってついに同様のゾイドを得る事ができました。
ハンマーヘッドは、水中でも空中でもシンカーを圧倒するだけの能力を持っています。
登場は遅かったものの、ようやく見事な対抗機を得たのです。

ただし、高性能が災いしてコストが高く生産性ではシンカーに劣ります。
国力の高い共和国をもってして生産性に難があると言うのだから、生産の難しさは中型ゾイドとしてはありえない規模なのでしょう。
高性能だがコストが高い致命的な泣き所がある。
超万能兵器が登場したわけではなく、単機としては確かに強いけど兵器としては越えられなかった部分もある。そんなバランスはとても好きです。


ウオディックと共に

ハンマーヘッドはシンカー以上の水中能力を誇りますが、さすがに水中能力に特化したウオディックよりはわずかに劣るようです。
劇中でも撃破される描写があります。

シンカー、ウオディック、ハンマーヘッドは関係性が面白いです。
シンカーは旧式。空戦力も低いし水中戦能力も今では見劣りします。しかしコストが安く爆撃機に転用できるなど汎用性も高くあります。

ウオディックは、水中戦能力は最強を誇る一方で飛行能力はありません。
時代と共に対潜装備が発達して無敵ではなくなりました。しかし、生産性も上々で配備数は多く脅威であり続けました。

ハンマーヘッドは空戦と水中戦の両方でシンカーを圧倒できる超高性能機です。
ウオディックとの水中戦ではわずかに不利ですが、それでも互角近くに戦えます。
能力で言えばまさに万能。だが、コストが高く数を揃えるのは難しい…。

さてこの三機。どれが「軍用として最良か」を考えると凄く悩みます。それが良いと思います。
新型が全ての面で凌駕しているわけではない。もちろん能力では上回るのだけど総合的なバランスなどでは劣る部分もあったりする。
このような関係が見えてくるのが大きな魅力です。


重装備のカタマリ

ハンマーヘッドは、まさに全身が強力な重装備で固められたゾイドです。
火力はもちろん、水中/空中での高性能を支えるイオンブースターも特徴的です。
陸上ゾイドでも、ここまでの重装備を施したゾイドはなかなかありません。
水空両用という様々な制限が付くであろう中で、これ程の重装備を達成したのは驚きです。

ただ、ちょっと欲張りすぎかなあとも思います。
強力な装備を多く持つのは構わないと思いますが、それは全体のデザインの中で違和感なく自然に処理できていた場合です。
ハンマーヘッドの装備の幾つかは、デザインを大きく崩していると思います。

特に、背中のイオンブースターは無い方が断然美しいと思います。

イオンブースターが背中周りを大きく隠しているのはハンマーヘッドの大きな難点です。
ヒレを艦橋のように作っている事など、背中のデザインはとても見応えがあります。
それがイオンブースターで見えにくくなっているのは残念です。

ウオディックは、同様に背中に大型装備を持っています。しかし、全体的なラインを乱さず綺麗に自然に付いています。
比べると、ハンマーヘッドのデザインの難が改めて強く感じられます。
「それが無骨で共和国らしい」とも言えます。ですが、それでももう少し自然に付ける事はできなかったのかなぁと思います。

また、目の部分のミサイルポッドも、いっそ無い方が良いのではないかと思います。
シュモクザメ目は板状の張り出しがあるだけで、先端がデメキンのように膨らんでいるという事はありません。

また、目にあたる部分をミサイルポッドにするというのも違和感があります。
保守的な考えかもしれませんが、目なんだから見る為の装備であって欲しかったです。

いっそこれも撤去して、このくらいシンプルにした方が好みです。この状態でも、かなり減ったとはいえ強力な武装を残しています。

重武装で強そうというのは魅力ですが、ちょっとやりすぎてしまったかなぁとも思ってしまいます。
ハンマーヘッドを最初に見た時は、過積載すぎるなぁとの思いが強く敬遠してしまっていました。
もっとストレートに言うと嫌いでした。
ただ、上の外した状態の画像を見ても分かる通り、外しても違和感はなく鑑賞に堪え得る造形を保っています。
なので後になってから、ただただ嫌うわけではなく別の角度で見る事もできました。
それは、「ハンマーヘッドは当初からMK-II的な造りで就役したゾイドではないか」という事です。

ゾイドは、ノーマルタイプはモチーフの姿に比較的忠実なシンプルな構成になっている事が多いです。
しかし、MK-IIタイプのゾイドは重武装を施し「モチーフの力というより人工パーツに頼った強さ」が強調される事が多いです。
ハンマーヘッドを「当初からMK-II的な造りである」と捉えれば、過積載な構成も納得でき魅力を感じる事ができるようになりました。

改めて書きますが、ハンマーヘッドはミサイルポッドやイオンブースターを外しても鑑賞に堪え得る姿をしています。
なので、外した姿をノーマル仕様(ただし軍部はこの仕様では戦場に出すには能力不足として更なる能力向上を望んだ。結果としてこの仕様で就役する事はなかった)。
フル装備の姿をMK-II(ただし結果としてノーマル仕様が軍部の要求を満たさなかった為、本来はMK-IIである筈の本仕様がノーマルタイプとして扱われる事になった)。
として捉えたいかなと思います。

ハンマーヘッドは、生産性が悪いとされています。
本来、こんな問題は開発中から判明する筈です。生産性が低いなんていう致命的な問題を内包したまま完成させるなんてとんでもない事です。
この事も、
・ノーマル仕様なら十分な生産性を確保できた
・だが、軍部の要求を受けて当初は想定していなかった高性能装備を後から載せたのでコストが一気に倍増して生産性を落とした
のように考えてみても面白いのかなぁと思いました。


キットの完成度

ハンマーヘッドは、キットに幾つかの問題を抱えていると思います。
一つは合わせ目の問題です。
ゾイドは玩具なので純粋な模型に比べれば精度的に劣る部分があるのは当然です。
ですが、その上でもハンマーヘッドのズレは深刻です。


特に、イオンブースターや主翼の合わせ目は目立ちます。
ここまで目立つのは珍しい事です。

また、全体的にパネルラインも太くダレた感じになっています。
金型の問題は新世紀の新型ゾイドの多くに言える事ですが、ハンマーヘッドは中でも問題が多いと感じます。

次に、塗装済みパーツの多さです。
新世紀ゾイドでは塗装済みパーツを使用するキットが出現しスタンダードになりました。
パーツ数を減らしつつ見栄えを上げる仕様ですが、ハンマーヘッドはちょっと過度に使っている気がします。
特に銀色の部分は多くが塗装済みパーツで表現されていますが、成型色の銀と塗装済みの銀で色や質感がかなり違います。
はみ出しもあり、ゲート位置にきている箇所もあります。

また、ここまで塗り分ける必要はあるのだろうか…と思える部分も多いです。
例えば翼のエルロンと思われる箇所は塗り分けされていますが、ここまで塗り分けなくても良かったんじゃないかなあと思います。

確かに塗り分けた方が見栄えは良いでしょう。
しかし従来のゾイドはここまで過度な色分けは行っておらず、「もっと大雑把な」「大雑把だけど的確で不足を感じさせない」そんな分け方だったと思います。

細かく塗り分けて、ハンマーヘッドの完成度を高めた事は良いと思います。
しかしシリーズの中の一機である事を思えば、従来機との対比を考慮した分け方にした方が良かった気がします。

ハンマーヘッドのキットについてはこの二点が残念だと思っています。


裏面

キットとしての弱点を先に挙げましたが、一方で他にはない大きな魅力もあります。
ハンマーヘッドの大きな特徴は、下面の見事な造り込みです。

ゾイドは動力キットである事から軽量化に務めており、見えない部分はそこまでの配慮がない場合が多いです。
中でも、下面にまで配慮がある機体は少ないです。大多数のゾイドにおいて、脚部の爪は裏面はスカスカです。これはその事をよく表しています。
また、ゾイドはディティール量が極めて多く大きな魅力になっていますが、下面まで徹底して造り込んだ機体は少ないです。

しかし、ハンマーヘッドの下面はまさに見事な造り込みになっています。
全ゾイド中でも、ここまで下面を作り込んだゾイドは他にないでしょう。
単調さもなく、メカとして説得力のある素晴らしい仕上がりです。

陸上ゾイドと違い、水中戦でも空戦でも「下から見上げる」ようなアングルで捉える機会の多いゾイドと思います。
そのゾイドの下面がこれだけ造り込まれているのは最高の配慮です。


ギミック

ハンマーヘッドは、機獣新世紀ゾイドの新型としては初の中型ゼンマイ搭載機です。
ゼンマイは、レブラプターなどと同じく「美観を損ねない」タイプになっています。嬉しい仕様です。

ギミックは評価の難しい所です。
連動ギミックは、体をうねらせながら前進します。全身は下面に付いたタイヤで行っています。

うねり具合はまさに魚といった感じで、良い動きをしてくれます。
しかし致命的な事は、「泳がない」事です。
アクアドン、フロレシオス、シンカー、ウオディック。これまで潜水ゾイドは泳げる事が大きな特徴であり魅力でした。

できれば、ハンマーヘッドも泳げる方が嬉しかったなぁというのはあります。
背中のイオンブースターに浮きを入れる等すれば不可能ではなかったと思います。

泳げないという点で、連動ギミックは評価の分かれる所でしょう。
ですが、手動ギミックは掛け値なしで高レベルに仕上がっています。
可動箇所は、AZマニューバーミサイルポッドの開閉、AZ30mmハイパービームガンの旋回、AZ30mm2連装ハイパーショックガンの旋回、主翼の可変、AZパルスレーザーガンの旋回、背部ヒレの角度変更、コックピットの開閉です。
かなり多いです。

AZマニューバーミサイルポッドは、開けると連動して中のミサイルがせり出してくる仕掛けもあります。

これは特にぐっときます。
開けると分かりますが、内部のディティールもキッチリ造り込まれています。

主翼の可変も、大きく動きます。

可変というか、完全に収納する事さえできます。高速飛行時の空力抵抗軽減モードでしょうか。
機能的には不明ですが、大きく可動するのは嬉しいです。

武器も多くが可動し、遊びの幅を広げてくれます。

全体的に、手動ギミックは見事です。
連動ギミックこそ評価の分かれる所だと思いますが、手動ギミックを加味した総合評価ではかなり優秀な部類だと思います。


戦歴

戦歴は、かなり地味に留まります。
初陣は西方大陸戦争第二次前面開戦時。制海権を得る切り札として投入され、シンカーやブラキオスを圧倒する活躍をみせます。

しかし、続くアンダー海開戦では空ではレドラーに落とされ水中ではウオディックに撃破され…、結果としては決定力になる事ができませんでした。
アンダー海海戦での結果は、初陣での脅威を受け帝国軍が優先的にハンマーヘッドを狙ったからです。
逆説的に言えば、ハンマーヘッドの優秀さが証明された戦いでもありましたが…。

その後は作中に登場する事はなくなり、活躍をみせる事はありませんでした。
ただ、後に電撃ホビーマガジンで補完された情報によると、アンダー海海戦の後も主に輸送ルート確保の為に運用されていた事が語られています。
その中で輸送という地味ながら超重要な任務を支え続け、しかし徐々に損失も増え、運用は限界を迎えてひっそりと消えていったとの事です。

高性能機にしては、改めて地味な戦歴です。しかし、それがハンマーヘッドの魅力でもあります。

また、バトストだけでなくアニメでも活躍しています。
ゾイド-ZOIDS-では、敵としても味方としても活躍しました。主要キャラの多くを乗せた事も特徴です。
この作中では、大統領専用機の特別仕様も登場しました。果ては、超巨大化した特殊機ハンマーカイザーも登場し大きな脅威として描かれました。
全般的に、ハンマーヘッドはバトストよりもアニメで活躍したかなあという印象が強いです。


重武装 ハンマーヘッド

初見時に過武装すぎるだろ…と思ってしまった事から長らく敬遠していて、魅力に気づくのが随分遅れたゾイドです。
しかし様々な部分で良さや可能性に気付き、またシンカーやウオディックとの関係性に気付いてからは大好きになりました。
キットの仕様ではやはり改善点も依然として大きく感じていますが…。

戦歴も、高性能だが華を持ち得なかった具合が何とも惹かれます。
輸送ルートの構築に死力し活躍したが次第に消耗した…という具合も哀愁が漂い惹かれます。

コストが高く、運用の見極めが難しいゾイドだと思います。しかし共和国海軍が得た大きな戦力である事は間違いないので、今後の活躍にも期待したい所です。
キット的にも、ミサイルポッドやイオンブースター部分を別パーツに変更すれば様々なバリエーションを比較的容易に作れそうです。
簡易CAS的に。
特に、背中のイオンブースターは全体的に好評価とは言い難いのかなと思います。なので、ここを換装するパーツは特に求めたいです。
今後の展開では、現在抱えている不満を見事に解消したバリエーション機が誕生する事にも期待しています。


バリエーションモデル

なし


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