機獣新世紀ゾイド ヘリック共和国軍 ガンスナイパー<GUN SNIPER>

■ガンスナイパー(ベロキラプトル型) データベース■

 発売年月 2000年4月  発売当時価格 600円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 RZ-030

 スペック 全長11.9m 全高7.2m 重量25.0t 最高速度200km/h 乗員1名

 主な武装
  AZ144mmスナイパーライフル 8連ミサイルポッド×2 AZ80mmビームガン ビームマシンガン×2 イオンチャージャー 
  3Dセンサー マルチブレードアンテナ オールレンジデュアルセンサー

 特徴
  一部解析された「オーガノイドシステム」のデータから生まれ、常識を超えた俊敏性と生命力を得たベロキラプトル型ゾイド。
  後方支援から突撃までこなすオールラウンドタイプの設計になっている。格闘戦時には取り付けられている武器を強制排除し、高い戦闘力を発揮する。


前後より

機獣新世紀ゾイド期において新設計された、新世代共和国ゾイドです。

既に新世代共和国ゾイドとしてはブレードライガーとストームソーダーが在る中でのリリースでした。

しかしブレードライガーはシールドライガーの大部分を流用した改造機とも言うべき機体だし、ストームソーダーは設定的に「帝国で開発されていたゾイドのデータを共和国が奪取し完成させた機体」であり、実際、デザイン的にも帝国的なラインの多い機体でした。
そういった点で考えると、ガンスナイパーこそ、本当の意味で初の新世代共和国ゾイドと言える存在なのではないかと思います。

デザイン的には、非常にメカメカしく、これぞゾイドというラインをしていると思います。
この点において、同時期に登場した帝国軍レブラプターと対照的だと思います。

レブラプターは帝国軍の新世代ゾイドとしてリリースされましたが、それは旧来機と大きく異なる独創的なラインで仕上げられていました。
メカメカしさよりもむしろ「生っぽい」と言えるほどに生物らしさを強調したラインは、今まで無かったものです。
そういった意味では、挑戦的なレブラプターと保守的なガンスナイパーと捉える事も出来ると思います。
ただガンスナイパーのラインは、単に保守的なだけで出来ているわけではなく、「進化」も感じられるデザインだと思います。

クラス的には重装甲スペシャル級に当たる大きさですが、旧来の共和国重装甲スペシャル級ゾイドは、とにかく過剰なほどのゴチャメカ具合を誇っていました。
その点、ガンスナイパーのラインは、ゴチャゴチャしてはいますが、全体的に見た時、ある程度はスッキリと感じるようにまとめられています。
ちょうど、1クラス上のハイパワーユニット級ゾイドと、重装甲スペシャル級ゾイドの中間デザインのように感じます。

ガンスナイパーのデザインは、「共和国らしさが感じられる」「新世代メカとして技術的進化が感じられる」という点が言えると思います。
保守的でありながらも進化している、非常に優秀なゾイドだと思います。
個人的にはブレードライガー以上に、新世代共和国ゾイドのフラッグシップ足り得るゾイドなのではと思っています。


側面より

カラーリングは渋みのあるブルーを基調としており、共和国らしく、かつミリタリックです。
更に、従来の共和国機には無かった銀を部分的に取り入れており、新世代機的なアピールも出来ており秀逸だと思います。
ただキャップの黄土色だけは妙に浮いているようにも見えます。保守的すぎるかもしれませんが、黒い方が似合っていると思います。
とはいえ、それを差し引いても非常に良いカラーをしていると思います。

その開発は、発売の随分前からコロコロ紙上で伝えられていました。


これは、当時発表されたデザイン画です。
このデザイン画の公開と同じタイミングで、帝国側ジェノザウラーとレブラプターは、テストショットではあるものの、立体物が公開されました。
レブラプターに旧来のゾイドとは全く異質なラインを感じ、保守派だった当時としては激しく拒絶していました。
その事も手伝い、旧来のゾイドのデザインに比較的近いラインを持った、この共和国新世代ゾイドには、期待を膨らませていました。

完成したガンスナイパーは、このデザイン画とは随分違うものになっていますが、雰囲気自体は上手く継承していると思います。
余談ですが、このデザイン画を見ていると、後のスピノサパーに引き継がれたラインも多いように感じます。

 

機銃新世紀ゾイドにおいては、実質的にゴドスの後継機になった機体で、ジオラマ写真ではゴドスに変わってガンスナイパーが多く登場する事になりました。
メカ生体ゾイドにおけるゴドスの後継機はアロザウラーですが、ガンスナイパーはアロザウラーとは違う方向性で、上手く後継機というイメージを出していると思います。
ただ、同時にブレードライガーの補佐も多く努め、高速を活かしてよく随伴しています。

ゴドスやアロザウラーのペアといえば言わずもがなゴジュラスですが、ガンスナイパーのペアがブレードライガーだったというのは、機銃新世紀ゾイドという作品をよく表していると思います。


フェイス

フェイスデザインは秀逸だと思います。
新型機然としていながらも、旧来の共通コックピットのラインも感じさせる素晴らしいデザインだと思います。

プテラスやスネークスで採用された新型共通コックピットの血統を引くラインになっているように感じます。

自国らしいラインを継承しつつ進化させるという意味で、これほど素晴らしいデザインは無いと思います。

難を言うならブレードアンテナで、モチーフのラインから完全に逸脱しており、ドラゴン型か何かのような処理で、違和感を覚えます。
単純にカッコ良くはありますが、出来ればモチーフに忠実なラインでありながらカッコ良いものを目指して欲しいと思います。
また、あごのキャップはやや無理やり付いているようにも思え、ここは無理して付けなくても良かったのではと思います。
薄いあごに対し、キャップの方が大きすぎ、可動を感じさせるキャップであるなら大げさになってしまっていると思います。

あごのキャップの処理に関しては、レブラプターとも共通する点です。
恐らく、機銃新世紀初のゼンマイゾイドであるところのレブラプター、ガンスナイパーは、絶対に失敗しないようなプレッシャーがあったのではないかと思います。
メカ生体ゾイド末期のゾイドは批判されがちですが、その理由の一つにキャップ使用率の低下はよく挙げられます。
思うに、メカ生体末期のゾイドに対する批判を意識し、出来るだけ多くキャップを盛り込もうと意識しすぎた結果ではないかと思います。


武装

特徴として、このクラスとしては異様なほどの重武装が挙げられます。
背中に8連ミサイルポッドを2基背負い、両腕にはマシンガンを装着し、腹部にはビームガンを背負い、尾部は必殺のスナイパーライフル。
このクラスのゾイドで、これだけ火力に特出している機体というのは珍しいと思います。

デザインとしては、これだけ大火力ながら装飾過多で破綻することもなく、上手く仕上がっていると思います。
特に背中のミサイルポッドは絶妙のシックリ具合で付いていると思うし、長い尾をライフルに見立てた尾部砲は秀逸な装備だと思います。

ただ、ラプトル系の軽快なイメージのモチーフを採用している以上、火力が過ぎる気はします。
これだけの大火力を軽快な動きができるゾイドが持ってしまっては、カノントータスやマルダーといった「動きは遅いが火力で勝負!」なゾイドの立場が無くなってしまうような気がします。

その上、設定上は腕のマシンガンを強制排除すれば格闘戦にも対応できるという万能ぶりで、ちょっといくらなんでもいいトコどりすぎる気はします。
個人的には、背中のミサイルポッドと尾部の砲は据え置きにするにしても、腕と腹の砲は撤去しても良かったのではないかと思います。
更に言うなら、腕の爪はレブラプターほどでないにしろ大型化し、「このクラスとしては火力が充実しているが格闘戦も出来るバランスの良い機体」という感じに仕上げた方が良かったと思います。

どうも、「新世代ゾイド=全ての面で旧来のゾイドを上回っている」という華やかさを追いすぎてバランスを崩してしまったように感じるのは残念でなりません。


ギミック、キットとしての出来

小型ゼンマイゾイドということで、当然連動ギミックを持ち、腕を振りながら歩きます。
同姿勢の帝国軍レブラプターが「腕とブレードを動かしながら歩く」だったのに比べると、やや寂しい気もします。
ただ、これだけ武装の多い機体がバランス良く二足歩行しているというのは誇っても良い点だと思います。

新世紀ゾイドという事で、ゼンマイの突起が改良されています。
動かすときにだけ、背中のイオンチャージャーパーツを使用してゼンマイを巻く仕様になっています。

美観を損ねないシステムは素晴らしく、しかもイオンチャージャーのデザインはゼンマイ回しとして違和感の無いものに仕上がっており、秀逸だと思います。

手動ギミックとしては、キャノピーの開閉、口の開閉、腕や腹の砲の旋回、爪の握り、ミサイルポッドのフタの開閉、ミサイルポッド後部のブースターの展開、尾部先端のセンサーの角度調整と、非常に多彩なものを持ちます。
おそらく、このクラスとしては史上最多の手動ギミック数ではないかと思います。
先に連動ギミックはやや寂しいとも書きましたが、この機体は手動ギミックを追って開発されたキットなのかも…と思います。

ミサイルポッド後部のブースターが展開するのは特に凝ってあり、ミサイルポッド後部のスイッチを押すことで、バーニアが後方に高速でスライドします。

このギミックにはスプリングが使用されており、小気味良い動きを楽しませてくれます(ミサイルのすぐ後ろにバーニアがあるという是非はともかく…)。
ただ惜しいのは、この素晴らしいギミックが組み済みパーツで提供されている事で、せっかく良い動きなのに「組む工程でその構造を知る」というゾイドらしさを否定してしまっている点だと思います。
また、最初から組み済みである弊害なのか、裏面に目立つネジも見え、美観を損ねているのも残念です。
せっかくゼンマイなど美観を損ねないような素晴らしい配慮があるのに、別の場所で残念な部分が目立つというのは、非常に惜しいと思います。

腕や尾にハードポイントがあり、手軽な改造がしやすい点は非常に優れていると思います。

金型の精度はゾイド史上最悪のレベルになっています。
各部モールドがだるく、パーツの合いも悪く隙間がかなり出来る箇所もあります。
武器類もシャープさがなく、「ゾイドといえばカッコ良くてリアルな武器」という点が感じられないのは致命的な弱点と言わざるを得ないと思います。
本来、大火力の象徴としてカッコ良く見えるべき8連ミサイルポッドは、その金型制度の悪さにより「8連ミサイルというより8個入りタコ焼き」とまで言われています。
デザインが優秀な機体だけに非常に残念です。

この金型制度の問題は発売当初から指摘されており、ゾイドとしては異例なことに発売時期によって3度も改訂が加えられています。
第1期金型のものは最も悪く、第3期のものは最も良くなっています。
と言ってもマシという程度であり、全ゾイドの中で金型制度が最低レベルという点は残念ながら揺るいでいません。
なおこのレビューの画像は第3期のものを使用しています。


必殺狙撃 ガンスナイパー


デザイン的には間違いなく傑作機だと思います。
個人的には、機獣新世紀ゾイド期に登場したゾイドの中では、最も好きなゾイドです。
それだけに、改めて欲張りすぎた部分があるのは残念に思え、もう少し落ち着かせて欲しかったなと思います。

手動ギミックで光る部分も多いですが、反面惜しい部分もあり、総じて傑作であるがゆえにわずかな粗が目立つ不幸なゾイドだと思います。

とはいえ、それらの点差し引いてもなお魅力を放つ機体であるとも思います。
残念な部分もあるにはあるのは確か。それでも、伝説のゴドスの後継機である事と、またメカ生体時代の傑作機アロザウラーを差し置いて登場した事に対し、十分な実力を持って答えているゾイドだと思います。


バリエーションモデル
 ゾイド新世紀/0 ガンスナイパー ナオミ・フリューゲル仕様


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