メカ生体ゾイド ヘリック共和国軍 戦闘機械獣 ダブルソーダ<DOUBLESWORDER>

■ダブルソーダ(昆虫型) データベース■

 発売年月 1987年1月  発売当時価格 780円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 RMZ-30

 スペック 全長11.6m 全高3.96m 全幅9.72m 重量19.7t 飛行最高速度415km/h 乗員2名

 主な武装
  4連対空砲 対空ビーム砲(×2) レーザー照準器(×2)

 特徴
  敵の空からの攻撃、特に低空からの進入阻止には、絶対の自信を持っている。
  別名"空の掃除屋"と呼ばれている。


前後より

共和国軍がサイカーチスに対抗して開発したクワガタ型ゾイド、ダブルソーダです。

キットとしては、サイカーチスから足回りを流用して造られています。ちょうど、ゴドスとイグアンのような関係です。
ただ、設定的には「鹵獲したサイカーチスから作った」のか、「共和国が独自に作った」のかは記載が無く、不明となっています。
いずれにしろ、サイカーチスを強く意識して作られた事は確実です。

カブトムシ型ゾイドに対抗してクワガタ型ゾイドを投入する。何のひねりも無いストレートすぎる構図ですが、それが実にいいと思います。
サイカーチスとダブルソーダの構図は、スタンダードゆえの良さにあふれています。
おそらく誰もが、サイカーチスが出た瞬間から、「共和国にライバルのクワガタを!」と望んでいた事でしょう。
サイカーチスは86年3月発売、ダブルソーダは87年1月発売。かなり間があります。ダブルソーダは、共和国にとって待望のゾイドでした。

デザインの完成度は非常に高く、傑作だと思います。
モチーフに忠実であり、共和国らしいゴチャメカも詰まっており、武装の配置もコンパクトながら存在感のあるものになっています。

モチーフのクワガタですが、種類を具体的に言うとノコギリクワガタだと思います。
大あごの曲がり具合や、比較的起伏の少ないボディラインは、実にノコギリクワガタらしいものになっています。
おそらく、日本で最も馴染み深いクワガタがノコギリクワガタである…というのが採用の決め手だと思います。
(コクワガタもメジャーですが、カブトムシと戦わせるのは小型過ぎて非力なので選ばれなかったのだと思います)

カブトムシとノコギリクワガタを戦わせるのは、夏の子供の定番であり風物詩です。ゾイドでもその戦いになっているのは実に面白いです。
ノコギリクワガタというのは良い種類を選んだと思います。
しかし一方、ミヤマクワガタのような起伏にとんだラインのクワガタを採用しても、共和国ゾイド的な無骨なラインと相性が非常に良く、面白かったと思います。

というか、頭部ユニットをまるまる換装し様々な種類に対応できるカスタマイズパーツが出ても面白いと思います。


側面より

カラーリングが非常に特徴的です。鮮やかな水色を採用しており、同クラスの他の機体と並べた時に、かなり特殊な印象を受けます。
ただ「青系」ということ自体は、既にサラマンダーが濃い青を採用していた事もあり、共和国=青という認識になっていました。
そういった意味で言うと、特殊ではあるが違和感はないカラーであると思います。

水色というカラーは、後にシールドライガー、レイノスに引き継がれます。
この三機に共通するのは、「帝国の特定の機種に対抗した同クラス同スタイルのゾイド」という点です。
水色というと非常に爽やかなカラーですが、そこに共和国軍が「あいつにだけは絶対負けない」という思いを込めていた…と考えると、非常に面白いです。

カラーリングに関してもう少し補足すると、実はダブルソーダは3色で構成されています(クリアパーツとキャップは除く)。
パッと見では分かりづらいですが、胴体下面はやや青みがかった濃いグレーをしており、脚部は完全な黒をしています。
側面から見ると、色の差が分かりやすいと思います。なぜ色を分けたかは不明ですが、ここに関しては統一しておいて良かったのではと思います。

側面から見ると、ゼンマイのつまみが下面にあり目立たないのもよく分かり、好印象です。
最も、足回りはサイカーチスの機構を流用させているから当然ではあります。


フェイス

頭部は特徴的かつ秀逸な仕上がりをしています。まず、ディティールが非常に多く共和国らしさ満載です。

やはり大あごに注目してしまいますが、この大あごのデザインが秀逸です。
歯の構造が二重になっています。これはゴジュラスの牙によく似ています。

こういった部分で、「自軍らしいライン」を出ている所に強く惹かれます。
また頭部ではありませんが、首元からボディにかけて極太パイプが繋がっているという点も、ゴジュラスとダブルソーダは共通してします。
見比べると非常に面白いです。

触覚や舌が再現されているのも面白いです。これらはサイカーチスが再現しきれていなかった部分です。

ダブルソーダは、いってしまえばサイカーチスの後継機とも言うべき機体。
そのダブルソーダが、サイカーチスより様々な部分でモチーフ再現に成功しているというのは、まさにあるべき後継機の姿だと思います。

触覚の設定がレーザー照準器になっているのもニヤリとします。
舌は四連対空砲になっています。四連砲は、砲身が伸縮するギミックも付いています。
モチーフのクワガタの舌は、樹液などを吸う際かなり伸びます。その特性を生かした面白い装備だと思います。
一方、機構までモチーフとリンクさせるなら、エネルギー吸入口にしても良かったと思います。

ただ、戦い方を想像してみると、この四連砲は非常に魅力的です。
大あごで敵をガッチリ掴み、四連砲を見舞う…。非常に理に適った装備でカッコいいです。
モチーフの特性とのリンクを考えると疑問もありますが、兵器的にはこれ以上無い素晴らしい配置だと思います。

頭部にはコックピットもあります。ゾイドには珍しいタンデム式の並列複座式になっています。
こんな小型ゾイドに二人も乗せなくても…という意見はよく聞きます。また、もっともだと思います。
しかし二人であるゆえに偵察などで威力を発揮しそうだし、指揮管理機としての機能も期待できそうです。
実際、ダブルソーダは多数のアタックゾイドを率いて戦った事があります。
そう思うと、なかなか魅力的な配置だとも思います。

一方やはり、そうはいっても単座でいいんじゃないか…という思いも、どうしてもあります。
航空機は、単座型と複座型が両方作られている事が少なくありません。
あるいはダブルソーダも、キット化されていないだけで単座型があるかもしれない…と想像しても面白いと思います。

複座型である事は魅力的だと思いますが、むき出しな事はどうかと思います。

サイカーチスもですが、なぜ甲虫をモチーフにしながらむき出しのコックピットになっているのか……。
ダブルソーダのコックピットは、サイカーチスのものより横側があるだけマシだとは思います。
しかしそうは言っても航空機。かなり恐い事は確かだと思います。


サイカーチスと共に

やはりサイカーチスと比べずには居れません。

頭部の所でも書きましたが、触覚や舌など細かい部分まで再現されている事もあり、そういった意味でダブルソーダの方が完成度が高いと思います。
サイカーチスが角を砲にしているのに対し、ダブルソーダはストレートにハサミにしている所も個人的には好感触です。

他にも、ダブルソーダがサイカーチスよりも高くモチーフを再現している箇所があります。
それは羽です。両者とも羽が再現されていますが、サイカーチスは上翅しか無いのに対し、ダブルソーダは上翅に加え下翅も再現されています。

実際のカブトムシやクワガタは、上翅で飛んでいるわけではなく、下翅を羽ばたく事で飛んでいます。
なので、ダブルソーダーが下翅を再現した事は、大きな意義があると思います。 逆に言うと、サイカーチスはその点に不備があるように感じます。
下翅のディティールは実在の航空機を思わせるようなものになっており、付けただけでなく、デザイン的にも素晴らしいものになっています。
やはり後発機だけに、様々な所で改良が見られます。

側面から見比べてみても面白いです。

足まわりをサイカーチスから流用しているので、全高は同程度です。
しかしダブルソーダは上面と下面の色を分ける事で、薄く見えるように造形されています。
対してサイカーチスは全体がずんぐりと分厚く見えるように造形されています。

モチーフであるクワガタは非常に平べったい虫で、カブトムシは分厚い虫です。
同じ全高ながら、両者の特徴が巧みに表現されており見事です。


共和国最後の重装甲スペシャル級ゾイド

実は、共和国軍における最後の重装甲スペシャル級ゾイドです(両軍合わせたら帝国軍シーパンツァーが最後の重装甲スペシャル級ゾイド)。
共和国軍における次のゼンマイゾイドはコマンドウルフ。以降、ゼンマイゾイドと言えばHiユニット級の時代に突入してゆきます。
余談ですが、共和国最後の重装甲スペシャル級ゾイドはダブルソーダ。帝国はシーパンツァー。
共に多脚で締めくくられているのが、何とも面白いです。

ダブルソーダは、共和国軍最後の重装甲スペシャル級ゾイドに相応しい集大成的な完成度を持った機体だと思います。
デザインに関しては、先にも書きましたが、モチーフを細かい部分まで再現しており素晴らしい仕上がりです。
大あごのディティールやパイプなどに共和国らしさを強く感じるし、激しいメカの作り込みも素晴らしいものになっています。
全体としてのまとまりも非常に良く、有終の美を飾っていると思います。

背中の武装も小気味良い仕上がりです。
デザイン自体も非常にリアルでよく出来ているし、構造もよく出来ています。
360度全周囲を旋回可能、仰角・俯角も自由自在なものになっており、死角のない造りに感動します。


ギミック

ゼンマイを巻くと元気に動きます。
サイカーチスの基本構造を流用していますが、ギミックは多少異なっています。

連動ギミックとしては、大あごを開閉させながら、舌の四連対空砲を伸縮させながら、前進するというものです。
サイカーチスは、「羽の開閉をしながら前進する」というものでした。
羽の開閉は素晴らしいギミックである反面、角より羽の連動を優先したのか…という疑問が、正直ありました。
その点ダブルソーダは、大あごが動きます。これぞ正統派なクワガタギミック!というべきものに仕上がっており、サイカーチスよりも良いと思います。

大あごは、かなり大きく動きます。

いかにもクワガタで、大満足です。
四連対空砲も、移動中でも伸縮が分かるくらい、大きく動いています。

歩行に関しては、サイカーチスと同様です。かなり虫っぽい動きを楽しませてくれます。

手動ギミックは、背中の砲塔の旋回、砲の仰角・俯角、羽の開閉、カナード翼の出し入れです。
このクラスとしては非常に可動箇所が多く、かなり優秀な部類ではないかと思います。

背中の砲塔と砲に自由が利くのは非常に嬉しいです。左右の砲でそれぞれ別の角度が付けられるのも優れています。

ライバルのサイカーチスは、脇に火器を付けていました。しかしほとんど角度を付ける事が出来ませんでした。
ここも、サイカーチスから進化した点だと思います。

羽や中のカナード翼の展開も、連動ではなく手動にして正解だったと思います。

総じて、ギミックに関しても連動・手動共に非常に高レベルな機体に仕上がっています。


戦歴

ダブルソーダの戦歴は、かなり勇ましいものです。

サイカーチスの対抗機というイメージの強い機体であり、実際そのような側面も強いと思います。
しかし両機が交戦したシーンを見つける事は出来ませんでした。
ダブルソーダは、対サイカーチスというより「様々な戦況で使用できる汎用ゾイド」というような描かれ方が多かったように思います。

ダブルソーダの戦歴において有名なのは、バトルストーリー2巻にも収録されている、ドクロ岩での戦闘でしょうか。
おそらく、ダブルソーダはアタックゾイド部隊の指揮官機として機能していたと思います。複座型ゆえに出来た事でしょう。
この時の戦闘では、多数のレッドホーンを含む帝国機甲師団に包囲されたにもかかわらず、アタックゾイドと共に軽快な動きで敵を翻弄。大勝利を収めています。
格上の大型機相手に大暴れしているのは、かなり名誉な事だと思います。

学年誌では、同時期にアイアンコングとも交戦しています。
さすがにこの時はパワー不足で敗退していますが、大型ゾイド相手に立ち回ったというだけで凄いと思います。

極めつけは、デスザウラーとも2度交戦しています。
最初はバトルストーリー2巻に収録されているものです。この時はデスザウラーから逃げ惑うだけでしたが、追撃を振り切ったというだけでも大したものです。
余談ですが、この時バリゲーターは逃げ切れずに握りつぶされています。

2度目の交戦は、チェスター教授救出作戦時です。
この作戦はバトルストーリー4巻に収録されていますが、学年誌の方にも掲載されています。そして学年誌版の方が、より詳しく掲載されています。
チェスター教授を乗せたアロザウラーの脱出ポッドを回収するシーンですが、なんとデスザウラーを華麗な動きで翻弄しつつ回収に成功する様子が収められています。

白い煙は煙幕でしょうか。ともかく、鮮やかに最強デスザウラーを出し抜いた大金星のシーンです。
右側はダブルソーダのアップ。アロザウラーの脱出ポッドを掴んでいるのが分かると思います。増設ブースターのようなものを付けた改造タイプだった事も分かります。

戦歴は非常に勇ましく、カノントータスと並んで非常に優遇された感じがします。

描写から推測するに、ダブルソーダーは非常に優秀な機体です。
●複座型であるゆえ、部隊を統括できる高度な指揮管理能力を持つ。
●軽快な動きで地上ゾイドを翻弄できる高い運動性能。
●大きな荷物を持っても飛行できるだけの大パワー。
●もちろん、直接交戦も可能。
さすがは、共和国際語の重装甲スペシャル級といった所でしょうか。
改めて、このクラスとしては集大成に相応しい完成度の高いゾイドだと思います。

ただ、小型ゾイドとの戦闘が描かれなかったのは惜しいと思います。しかしバトルストーリー3巻の戦力比較によると、非常に強力な事が伺えます。
驚くべき事は、豊富な対空装備を持つツインホーンやシーパンツァーに対しても「勝ち」とされている所です。
また。描写が無かったとはいえ、ダブルソーダは「空の掃除屋」という異名を持ちます。なので、対サイカーチス戦でも大いに活躍した事は確実だと思います。
隠された対小型ゾイド戦で戦うダブルソーダを想像しても、非常に面白いと思います。


空の掃除屋 ダブルソーダ

コックピットがむき出しな点を差し引いても、素晴らしい傑作機だと思います。
デザインも戦歴も文句の付け所がない機体だと思います。

サイカーチスには申し訳ないですが、その完成度の高さは雲泥だと思います。
しかしもちろん、サイカーチスという機体があったからこそ というのは当然です。
そしてもう一つ、サイカーチスは重装甲スペシャル級としては比較的初期の機体であり、まだデザインに慣れていない部分があったと思います。
その点、ダブルソーダは重装甲スペシャル級というクラスが十分に浸透し、デザインもこなれた成熟期のゾイドだったから というのもあると思います。

しかしこれだけ完成度の高い機体を作れるようになったのだから、ダブルソーダの次もその次の機体も、どんどん作っていって欲しかったと思ってしまいます。
Hiユニット級ゾイドも大好きですが、ダブルソーダが傑作だと思うからこそ、少しの寂しさも感じてしまいます。

ともかく、そう思わせる程に傑作機であるのは確か。改めてこのクラス共和国最後の機体として、集大成の完成度で有終の美を飾った機体だと思います。


バリエーションモデル

 機獣新世紀ゾイド ダブルソーダ


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