メカ生体ゾイド ヘリック共和国軍 戦闘機械獣 バリゲーター<BARIGATOR>

■バリゲーター(ワニ型) データベース■

 発売年月 1985年8月  発売当時価格 780円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 RMZ-20

 スペック 全長15.5m 全高4.4m 全幅4.0m 重量24.3t 最高速度150km/h 乗員1名

 主な武装
  ビーム砲(×2) 誘導ミサイル(×4)

 特徴
  河、沼、湿地帯での行動が可能。多少の深さの河などは渡河する事が出来、そのまま水中を行動することもできる。
  渡河作戦、ゲリラ戦を得意とする。


前後より

共和国海軍の主力量産機、バリゲーターです。
海戦用ゾイドとしては、アクアドン、フロレシオスに次ぐ第三号です。
共和国軍は、かなり早期から本格的な海軍力を編成しており、帝国側と対照的です。

共和国側の重装甲スペシャル級ゾイド第三号ですが、第一、二号はゴドスとガイサックです。
両機は「重装甲スペシャル級」というクラスに反し、あまり装甲らしい装甲は持っていませんでした。
バリゲーターに至り、ついに「重装甲」と呼んで差支えない装甲率になったと思います。

造り込まれたディティール、モチーフに忠実なシルエット、上下で分かれた美しいカラーリングなど、デザイン面では非常に完成度の高い傑作機だと思います。
個人的には、このクラスの共和国ゾイドでは最も好きなのがバリゲーターです。

ゴチャゴチャとした感じはいかにも共和国的で素晴らしいです。
機体の多くを装甲で覆いながらも、共和国らしさから少しも外れていないのも秀逸です。
「装甲で覆うがディティールは増やし帝国側装甲デザインとの差を忘れない」
何とも見事です。

特に背中から尾にかけての造り込みは徹底しており、何度見ても飽きません。
いかにも共和国的なディティールであると共に、ワニの外皮のイメージと合致しているのも秀逸です。

モチーフに極めて忠実に作られていると思いますが、実際のワニ…、特にアリゲーターと比べると、やや細いかなとは思います。
ただバリゲーターは小型軽量級ゾイドです。その事を踏まえれば、細身でライト級のワニとして作られたのは正解だったと思います。


側面より

上下で綺麗に分かれたカラーリングが美しいです。
モチーフのワニに忠実なカラーパターンであり、またミリタリーな雰囲気ともよく合っています。

モチーフに極めて近いラインやカラーパターンである一方、火器も適度に備えられています。
戦闘メカとしてのアピールも十分です。火器は、モチーフのラインを殺さない程度だが主張は確かにある。そんな適度なバランスになっています。

火器の他、口や尾といった強力な格闘戦用の武器も有しており、砲戦と格闘戦の両方に対応しています。
格闘用の口と尾、砲戦にはビーム砲、対空にはミサイル。
コンパクトな機体にも関わらず、バランスの良いオールラウンダーになっているのは特筆です。

装備の中でも、ミサイルの出来の良さは特に大注目です。

基部が360度旋回し、ミサイル自身は仰角を付ける事が出来ます。
これにより広い範囲を狙え、まさに対空用装備として相応しい構造になっています。
デザイン自体も良く出来ています。その為か、後にハンマーロックのミサイルとして流用されています。

反面、肩のビーム砲は照準が付け辛そうにも見えます。脚の動きに影響され照準がブレないか心配です。
この点は少し惜しいです。
しかしそれを差し引いても、傑作と呼ぶに相応しいだけのバランスの良さを持っています。

バリゲーターは運用期間が非常に長いゾイドです。ガイロス暗黒軍との戦い…、大陸間戦争の初期くらいまでは運用され続けており、驚異的な長さです。
その運用には、バリゲーターの使い勝手の良い性能があったのでしょう。

デザイン面でもう一点素晴らしいのは脚部です。
このクラスのゾイドにしては珍しく3パーツで構成されており、装甲の張り方・見せ方が非常に豪華なのは高ポイントです。


フェイス

頭部は、このクラスとしては珍しく、共通コックピットではなく独自のデザインをしています。
バリゲーターは、小型でありながら共通コックピットを使用しなかった最初のゾイドです。
しかしワニの長い顔を再現するには共通コックピットでは無理があっただろうから、この判断は良かったと思います。

独自のデザインではありますが、そのラインは従来機となじむような配慮が感じられ、違和感が少ないのも好感です。
この点は、後のツインホーンと比べると対照的です。
ツインホーンも共通コックピットを廃し独自のデザインを持ちますが、ディティール量が過剰で浮いている感じは否めませんでした。
バリゲーターは、共通コックピットを廃しながらも上手くクラス相応のイメージを保っており秀逸です。

このクラスとしては珍しく明確に口を持ちますが、歯の処理も要注意です。
四角く切られており、鋭さはあまり感じられません。これが好きです。
仮に鋭くしていたら表情が過度に出てしまい、このクラスとしては違和感を感じるものになっていたと思います。
この歯の処理は、「ワニらしさを再現する為には歯を付ける事は必須」「しかし小型ゾイド然とした仕上げに」という矛盾する要求を、絶妙なバランス取りをした上で仕上げたものと思います。

キャノピーを開けると、おなじみの兵士が座っています。

キャノピーは、従来の共和国機と比べると側面が非常に浅く造られています。新たなるイメージを開拓したなと思います。
また、このキャノピーは、後にプテラスで採用される新型共通コックピットに流用されています。

そんな秀逸なバリゲーターの頭部ですが、一つ大きな弱点もあります。
それは口を開いた時に起こります。それについては後で項目を設けます。


第1回X-DAYアイデアコンテスト受賞作

バリゲーターを語る際は、ゾイドX-DAYアイデアコンテストについても触れておいた方が良いでしょう。
X-DAYアイデアコンテストとは、当時行われていたユーザー参加型企画です。
ユーザーから新型ゾイドのデザインやアイデアを募集し、そして優秀作は実際にキット化されるという夢のような企画でした。
メカ生体ゾイドでは第5回まで実施されています(ただし、第1~4回はキット化されていますが、第5回はキット化されませんでした)。
バリゲーターは、その栄えある第1回X-DAYアイデアコンテストの最優秀作を元にキット化されいます。

この傑作ゾイドがユーザーから生まれたというのは本当に凄いなと思います。
X-DAYアイデアコンテストを考えると、当時ユーザーとメーカーが互いに刺激し合い高め合うという最高の関係を築いていた事が分かります。

第1回X-DAYアイデアコンテスト最優秀作は、応募されたイラストが公開されています。

このイラストを元に、キット化の為のデザイン画が作られ、

そこから更に煮詰めて現在の姿になっているようです。
途中のデザイン画と仕上がりの姿に差が大きすぎる気もしますが、武装配置などはよく見ると似ています。

デザイン画の段階では、おなじみの共通コックピットを使用する予定だった事が伺えるのも興味深いところです。


口の中

傑作バリゲーターですが、頭部の項目で少し書いたように、大きな弱点を持ちます。
それは口を開けた時に、パイロットが思いきり見えてしまうという事です。

もう、見事に丸見えです。

バリゲーターの口は、大きく可動します。それは素晴らしいギミックですが、それゆえにパイロットがよく見えてしまいます。

これはちょっとシュールすぎます。
噛み付き攻撃も行うバリゲーター。そのバリゲーターにこんなコックピットを採用するのはどうかと思います。

キットと実物は違います。
分かりやすく例えると、キットには「肉抜き」や「砲口の埋まったもの」がありますが、実物ではもちろんそういった事は無いでしょう。
そういった側面から考えると、バリゲーターのコックピット構造は、「キット的にはそうなっているが実物ではきちんとした構造になっている」と思います。
デザイン画では、共通コックピットを採用する予定だったように見える点から考えても、やはり実物はむき出しではないと考えたい所です。

ただ、それはそれとして、キットとしては大きな弱点だと言わざるを得ない。その事は確かです。
バリゲーターで、唯一にして最大の弱点が、このコックピットだと思います。

個人的には、実物は大丈夫な構造になっていると思っています。
もしかすると、何か別の意味があるのかもしれません。ネプチューンのコラムで考えたような用途がある可能性もあるかもしれません。
バリゲーターのサイズから考えると、可能性は低いと思いますが。
しかしいずれにしろ、ここは公式的な見解が欲しい所です。
そしてもし「実物は大丈夫」な構造であるなら、今後コックピット部分を改修するカスタマイズパーツ…なんていうものもあればいいなと思います。

バリゲーターのデザインは、まさに見事です。
それだけに、唯一の弱点・コックピットが目立ってしまっています。
何とも惜しい。つくづくそう思います。


ギミック

ゼンマイを巻くと元気に動きます。ギミックは最高の出来です。

連動ギミックとしては、顔と尾を振りながら前進します。
その振り方がまさに絶妙で、実物のワニにそのものの見事な動きになっています。
モルガほどギミックが注目されるゾイドではありませんが、モチーフの再現度という点では同じくらいの傑作だと思います。
尻尾の関節が多く、尾をかなり大きく振りながら前進するのも好ポイントです。

手動ギミックとしては、口の開閉、キャノピーの開閉、ビーム砲の旋回、ミサイルの旋回・仰角です。
また、尾部は手動で動かす事も出来ます。

口は大きく開くしミサイルの角度も素晴らしく良好。
ビーム砲だけは、肩に付いている関係上、射角が付けにくい難点はあります。しかしそれを差し引いても、よく出来ています。

総じて、ギミックに関しても素晴らしいゾイドだと思います。


戦歴

バリゲーターの戦歴は、ちょっと哀愁漂います。バトルストーリーでは、出てくるシーンのほぼ全てが敗北シーンです。
あまりにもやられシーンが多いので、コラムにしています。
バトルストーリーでも学年誌でもてれびくんでも負け続き。とにかく、その戦歴は悲惨です。

もう一つ。
キットの箱裏には、必ず「活躍想像図」が掲載されています。
バリゲーターの活躍想像図はどんなのかというと、シンカーと対峙するシーンです。

バトルストーリーでの描写があるだけに、このあと無残にやられたんじゃないかと想像してしまいます。
少なくとも、他の機のように「敵機を倒すシーン」ではなく単に「対峙するシーン」であるのは少し寂しいです。

活躍出来なかった事情を考えると、登場のタイミングが悪かったんじゃないかなというのもあります。
バリゲーターは、空前の新型ゾイド開発競争時に登場しています。
同時期に登場したのは、マーダ、ゲーター、モルガ、ゲルダー、ザットン、マルダー、シンカー、サラマンダー。
こんなにも新型機が一気に登場した中とあっては、活躍シーンがクローズアップされなかったのもやむないかもしれません。

それにしても、アイデアコンテスト発のゾイドがこんなにもやられ役になっているのは凄いです。
第二回カノントータス、第三回ブラックライモス、第四回バトルローバー。これらはいずれもかなり活躍しています。
やはりユーザー発だけにそれ相応に活躍させた方が良いのではないか。そんな思惑も感じます。
そこへきてバリゲーター。そんな甘さかけらもない厳しさ全開の扱いは凄まじいです。
ちょっと、受賞者の方がどう思っているかと余計な心配をしてしまいます。

ただ、そんな敗北続きのバリゲーターですが、見方を変えれば素晴らしい活躍をしているとも言えます。
というのも、登場回数自体は最多級を誇ります。

海戦のシーンでは必ず登場しており、共和国海軍の中核である事は疑いようがありません。
バリゲーターは、大きさからか考えてせいぜい駆逐艦クラスであり、単独で大きな敵を倒す大活躍を描くよりは、多くの戦場に登場して多くが沈み、しかしそれでも量産され次の戦場にも登場する…といった描き方は非常に似合っています。
また、そうして正解だったと思います。
それでも、一度くらいは華を持たせて欲しかったというのも本音ではありますが…。

小型機が一発逆転で大物をしとめるのはロマンです。ウオディックやゴーレムがウルトラを仕留めたように。
バリゲーターも、そこまでの大物でなくとも、せめて一度くらいシーパンツァーかブラキオスあたりを仕留めるシーンが欲しかった所です。
運用数が膨大なので、中にはそういった活躍も必ずあったとは思います。そういったシーンも想像しておきたい所です。
しかし是非、想像だけじゃなく実際のシーンもいつか見てみたいと改めて思います。

登場回数は非常に多く、運用期間も非常に長くなっています。
かなり初期の頃から参戦しており、確認できる中で最後に登場したのは、先にも描きましたが暗黒大陸編の初期の頃です。

やられ役というのは否定できませんが、それでも非常に素晴らしい性能を持っていた事は確かでしょう。

バリゲーターの戦歴は、あまりヒーロー的な華はありません。しかし量産機としてみればこれほど素晴らしい戦歴を持つ機体はなかなかいないとも思います。
傑作機であるのは疑いようがありません。


テレビゲームでの扱い

バリゲーターは、バトルストーリーでは先に書いたような扱いです。
確かに登場回数が多く運用期間が長い=名機です。しかし単機としては非力なゾイドというイメージは否めません。
しかし、意外なところで活躍しています。

メカ生体ゾイド時代は4本のテレビゲームが開発されています。その中でバリゲーターは3本も出演しています。
ゾイド-中央大陸の戦い-、ゾイド2-ゼネバスの逆襲-、ゾイド伝説に登場しています。
出演していないのはゾイド黙示録のみです。余談ながら、こちらはバリゲーターは出ませんが同じワニ型のネプチューンが登場しています。

この時期のゲームは容量も少なく、登場機数もかなり限られていました。
そんな中、多数の登場を果たしたバリゲーター。地味かもしれませんが、誇っても良い実績だと思います。

なお、ゼンマイ機で4本全てに登場している機体はありません。
バリゲーターが最高数です。
同じく3本に出演しているゼンマイ機としてはブラックライモス、レドラーがありますが、これらはHiユニット搭載機。小型ゼンマイ級では唯一バリゲーターだけです。
かなりのアピールポイントかもしれません。しかも、ゲーム中での扱いはかなり良いです。

ゾイド-中央大陸の戦い-は、コミカライズされており、学年誌に掲載されています。
その中では、バリゲーターも頼もしく活躍していたりします。

なんとウオディックを仕留める大金星。

また、ゾイド2-ゼネバスの逆襲-では攻略上必須なゾイドとして扱われています。
更に、小型ながら初期状態でビーム砲を持っており、かなり攻撃力が高いゾイドでもあります。

ゲームでの扱いは、バトストでのうっぷんを晴らすかのごとく、かなり光るものがあります。


量産型名駆逐艦 バリゲーター

デザインは最高。ギミックも最高。
口という大きな弱点はありますが、それを差し引いても改めて傑作機です。
負けシーンが非常に多いですが、それでも運用期間の長さは傑作機の証。
改めてバリゲーターの凄さを実感します。

デザイン的に素晴らしい事は先に書きましたが、小型なのでどこか愛らしい雰囲気もあると思います。
そんな所も大好きです。

今後の野望としては、やはり活躍。このワードを念頭において欲しいと思います。
その為に、できれば共和国軍はバリゲーターと連携しやすい大型のワニを作って欲しいと思います。

ワニは大型の動物です。小型だけで終わらすのは勿体無いと思います。
バリゲーターの素晴らしいデザインを見ていると、ここから更に発展させ大型の強力なワニが出来たらどんなに凄いものになるだろう…。そう思わずには居れません。
その新鋭機と共に艦隊を形成し活躍するバリゲーターを是非期待したいです。

ともかく、今後も共和国にとって欠かせぬゾイドだと思います。
その活躍に今後もいっそう期待したい所です。


バリエーションモデル

 機獣新世紀ゾイド バリゲーター

 ゾイドリバースセンチュリー バリゲーターTS


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