メカ生体ゾイド ヘリック共和国軍 潜水艇 アクアドン<AQUADON>

■アクアドン(蛙型) データベース■

 発売年月 1983年?月  発売当時価格 580円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 RMZ-05

 スペック 全長9.8m 全高2.7m 全幅5.0m 重量5.9t 水上最高速度43ノット 水中最高速度32ノット 最大潜水深度12000m 乗員1名

 主な武装
  ニコールフォノンメーザ 182型 水中ミサイル(×2) パイクラーエレショット ホサセマイクロソナー 高速ジェットフィン

 特徴
  もとは、ゾイド星の水陸両棲機械獣。
  特に水上機能にすぐれ、注排水タンクを装備することで高性能潜水艇としての機能が与えられている。


前後より

共和国小型第5号にして初の水陸両用ゾイド、アクアドンです。
水陸両用メカのモチーフとしてカエルをモチーフにしたのは面白い試みだと思います。

共和国小型ゾイドは、アクアドンまでの五機は特に個性が強いものばかりです。
ガリウス=二足、グライドラー=飛行、エレファンタス=四足、グランチュラ=多脚。そしてアクアドンは遊泳するゾイドです。
同じゼンマイを使いながら、すべて全く異なったタイプに仕上げているのは興味深い事です。

アクアドンは、ゼンマイを「横向きに」使用していた従来機と違い、「縦向きに」使用した初めての機体という意味でも特筆です。
一つのゼンマイから様々な異なった動きを取り出したい情熱と、それを達成する為に行われた柔軟な発想が強く伺えます。
極初期のゾイドは造形面でシュールな面はありますが、ゼンマイを使った設計の知恵比べという点で捉えると、また別の魅力が見えてきます。
やはり極初期のゾイドは、知育玩具としての側面が非常に強いものだと改めて思えます。


側面より

アクアドンはカエル型ゾイドです。その姿は確かにカエルと言えばカエルですが、忠実とも言い難い造形です。
極初期のゾイドの見られる、「モチーフに似ている」程度のゆるいモチーフと捉えるのが良いでしょう。
細部までモチーフに忠実な後のゾイドと比べると違和感もありますが、これはこれで初期ゆえの味もあり好きです。

実際のカエルに近いかどうかはともかく、後脚の感じはいかにもカエルという感じがします。
厳密に似ているかどうかという数値的要素より、イメージとしてどうかという体感的な要素を優先したカエル型だと思います。

イメージ的には素晴らしくカエルな後脚に対し、前脚はそもそもありません。考えてみればスゴい事です。
前脚が無いのにカエルを名乗るか。ですが、それなのに全体のイメージは確かにカエルなのだから偉いものです。

前脚はありませんが、かわりに巨大な注排水タンクが付いています。
これによりアクアドンには潜水能力が付加されています。

中排水タンクはデザイン上の良いポイントになっています。

タンクは、キットでは中に発泡スチロールを入れるようになっています。これにより水に浮かせる事が可能になっています。
設定上の機能とキットの機能が上手く合致した、好ポイントな箇所です。


フェイス

頭部は、共通コックピットをストレートにそのまま使用しています。頭部だけだとガリウス等と全く同じになっています。
まあ、「共通コックピットを使用しつつカエル風に」というのは極めて難しいだろうから、妥当な所だと思います。

コックピットの中には、もちろんパイロットが入っています。

首は横に旋回できます。また、基部で仰角をいじる事も出来ます。

その為、なかなか表情やポーズが付けやすく、その意味では良く出来た頭部になっています。


設定

極初期らしいシュールさと極初期らしい面白さを併せ持った機体だと思います。
偏った視点に立てば肯定も否定も出来ますが、総合的に見てなかなか味のある面白い機体に仕上がっていると思います。
ですが、明確な弱点もあります。それは主に設定に関するものです。

アクアドンの武器は、ニコールフォノンメーザ、水中ミサイル、パイクラーエレショットとされています。
このうち、水中ミサイルは肩に背負う形で付いています。しかし他の二つは造形されておらず、どれがその装備なのか謎です。
設定だけあって造形が無い…。もしかすると極小サイズの武器か、あるいは内蔵されて外からは見えない武器なのかもしれませんが、ちょっとモヤモヤが残る設定です。

また細かいですが、フォノンメーザは、おそらく「フォノンメーザー」の誤記と思われます。
フォノンメーザーの詳しい解説は省きますが、地上より水中で使用した時に真価を発揮する音波系の砲です。
なので、アクアドンに搭載されたのはまさに納得のものがあります。それだけに、造形されていないのが余計に悔やまれるものでもあります。

アクアドンは水中でこそ真価を発揮する機体とされています。
初期共和国海軍の中核はアクアドン&フロレシオスですが、フロレシオスはどちらかというと「潜れるけど水上での戦闘が主」な設定でした。
設定上は、潜水艦のアクアドンと水上艦のフロレシオスという住み分けが出来ています。
しかしスペックを見ると、水中での最高速度はアクアドン32ノットに対しフロレシオス45ノット。水上での最高速度はアクアドン43ノットに対しフロレシオス40ノット。
得意分野の設定が逆では…? と思えてきます。
最も、これはフロレシオスの方が後発なので、フロレシオスの設定不備と言う事もできますが。

もう一つ、最大潜水深度12000mという設定もやりすぎな気がします。
後年のウオディックは「考えられないような深海から攻撃を仕掛ける」事で共和国軍を驚かせましたが、アクアドンの時点で既に12000mに潜行可能だったとは…。
ちょっと欲張りすぎた設定だと思います。
個人的には、アクアドンの潜水深度の設定は「深海探査用に特殊改造されたワンオフ改造機が理論上達成できる深度」であり、一般機はせいぜい数百m程度が安全限界である…というような解釈をしたい所です。

ウオディックは、いかにも耐圧を感じさせるモールドがあり「深海メカ」という設定に説得力がありました。しかしアクアドンにはそういった要素はありません。

こうして見ると、改めてアクアドンは欲張りすぎた設定だったと思えます。

余談ですが、ちょっと興味深いのは、後に行われたX-DAYデザインコンテストでの出来事です。
この時の応募作の幾つかは、戦闘機械獣のすべてにメーカーからの寸評と共に掲載されています。
その中の一つがこちらです。

「小型なのに1万mの水圧に耐えるというのは凄い。コックピットに装甲板を付けたほうが良い」
という寸評は、そのままアクアドンに言える事であり何とも皮肉です。

アクアドンは、極初期の「SF探査メカ」であった頃のゾイドの延長線上で作られています。
それゆえに後のリアル系になったゾイドとは相容れぬ要素があるのかなと思います。
とはいえ、それらをシュールな面で捉えるだけで終わらせるのは勿体無い。積極的に解釈して取り込みたいところでもあります。


ギミック

ゼンマイを巻くと元気に動きます。ギミック面白いものを持っています。

連動ギミックとしては、タイヤで前進しながら、後脚を大きく左右に振ります。
連動箇所は少ないものの、後脚の動きは特筆級の出来で、まさにカエルらしい動きをしてくれます。

動きは大きく、見応えがあります。連動箇所の少なさを補って余りある魅力があります。

そしてもう一つ特筆なのは、アクアドンは陸上だけでなく水上で泳がせる事が出来る点です。
先に書いたように、注排水タンクには発泡スチロールが入っており、その為アクアドンは水に浮きます。
水上で動かしたら、アクアドンは見事に足を使って遊泳します。

川なり池なり風呂なり。水で遊べるゾイド第一号がアクアドンです。
設定と実キットがリンクした、同じように水で動かせるというのは素晴らしい事です。

足を使って見事に泳ぐ様はまさにカエルです。
ただ、直進させようとすると足ヒレの初期位置を上手く調整する必要があり、少しコツが必要です。
この調整が上手くいっていないと、左右のバランスが取れずくるくる回りながら泳ぐアクアドンが見れてしまいます。それはそれで面白いですが。

水で遊んだ場合、その後は必ず分解しゼンマイを徹底して乾かすようにしましょう。サビさせてしまっては後で泣きを見ます。
しかし、メンテナンスは多少面倒ですが、それ以上に泳がせるのは楽しいです。

手動ギミックとしては、肩の水中ミサイルの仰角変更と、首の角度変更、首の旋回が出来ます。
こちらは平均的な出来だと思いますが、ギミックを総じて言えば、かなり面白い動きのゾイドだと思います。


戦歴

戦歴は謎の多い機体です。 先にも少し紹介しましたが、フロレシオスと共に初期共和国海軍の中核を担いました。
といってもゾイドバトルストーリーはゴジュラス参戦後に始まっているので、この頃の具体的な活躍は謎です。
また帝国側はシンカーより前は海軍用ゾイドを持っていなかったので、どんな風に戦っていたのかも謎です。
もしかするとゾイドが本格運用される前に使用されていたような、普通の艦船を相手に立ち回っていたのかも…と思います。
また、探査用メカとしての活動が多かったのではないかとも思います。

ゾイドバトルストーリーに加え、学年誌を見てもアクアドンの活躍は見つけることが出来ませんでした。
その為、想像に頼る他なく、非常に無念なところです。

ただ唯一、ビガザウロが紹介されている記事で、隅の方に一緒に写っているものなら確認できました。

少し分かり辛いですが、右下に居るのはアクアドンです。
実はビガザウロも少々の海上航行力を持っているので、初期においては共に戦った事があるのかもしれません。
具体的な活躍内容は描写されていないものの、この辺りのわずかな資料から何とか想像して補いたい所です。

初期の頃の戦役が多数載っているHistory of Zoidsや戦闘機械獣のすべて、ゾイドグラフィックスにも掲載がありません。
何とも悲しいです。
ちなみにフロレシオスはそれなりにフォローされています。
やはり同じ「水上/水中用の機体」だけに、より新しいフロレシオスを紹介したかったのかもしれません。
しかしアクアドンとしては何とも無念な所です。

退役したのは、D-DAY上陸作戦から4年後の、ZAC2045年頃と思われます。
この年のフロレシオ海海戦において、膨大な数のアクアドンとフロレシオスが無人機に改造された上で「囮役」として参戦し、見事敵を引き付ける役割を成功させつつも全滅したことが語られています。

おそらく、敵側にシンカー、味方側にバリゲーターという新世代のゾイドが就役した後は、慢性的に非力さを露呈していたと思います。
それでも多数が生産されているので運用は細々続いたが、ついにウディックやブラキオスの登場で決定的に力不足となり、半ば処分的な目的で残存機が大量に投入された…。
非常に悲劇性の強い機体と言えます。
しかし初代共和国海軍機として、その礎を築いた功績は記憶しておくべきだと思います。


高性能潜水艇 アクアドン

デザイン面は、シュールな部分の多い機体だと思います。設定面でも甘さが残ります。戦歴も謎が多く、少なくとも華はありません。
しかしそれでもこの機体は、極初期のゾイドらしい魅力を併せ持っています。
同じゼンマイを使って新しい動きに挑戦する姿勢は素晴らしいし、水陸両用ゾイドの設定がキットでもそのまま再現されているのはとても面白いです。
そのような視点で見ると、なかなか魅力的なゾイドだと思います。

さすがにバリゲーター、ウルトラザウルス、ウオディックといった新鋭機が当然のレベルとなった後のゾイドワールドでは、なかなか活躍しにくい機体なのは否めません。
しかしあるいは、防御力は皆無だが運動性能だけは高い特殊潜航艇や魚雷艇…といった運用法であれば、見事活躍できる可能性も感じます。
(そういった役割はアタックゾイドや24ゾイドが引き継いだのかもしれませんが…)

魅力的な機体ではあるし、これまでに明かされた戦歴があまりにも無さ過ぎるのも悲しい事です。
今後、何らかで活躍の機会が与えられる事を願うばかりです。


バリエーションモデル

 ヘリックメモリアルボックス1


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