メカ生体ゾイド ヘリック共和国軍 重装甲探査機 エレファンタス<ELEPANTUS>

■エレファンタス(象型) データベース■

 発売年月 1983年?月  発売当時価格 580円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 RMZ-03

 スペック 全長8.3m 全高4.0m 全幅5.1m 重量17.7t 最高速度95km/h 乗員1名

 主な武装
  マクサー35ミリビーム(×2) エルパミサイルポッド(×2) 対空ミサイルランチャー 3Dレーダー 広角聴音機

 特徴
  元はゾイドゾーン(ZP01)の陸上戦闘機械獣。
  厚く堅牢なボディを生かし、重装甲陸上探査機に改造。大きな耳状の高性能3Dレーダーを装備。
  初戦時において帝国メカにより、その大半が撃破された。以後は、練習機として、パイロットの養成に使用される。


前後より

ガリウス、グライドラーに次いで登場した、第三号ゾイドです。 最初期のゾイドはこの3機です。まとめて始祖ゾイドと言うべき存在です。
最初期のゾイドだけに、多くの欠点があると同時に最初期ゆえの魅力があります。

さてエレファンタス最大の特徴は、象なのに鼻が無い事でしょう。こんな特徴で語られるゾイドはエレファンタスだけだと思います。
極初期のゾイドは、「生物」というより「生物の骨格」をモチーフにしていました。なので「細い」という部分に対しては「骨だから」という反証が可能です。
その点をふまえてからエレファンタスを見ると…、象の鼻は全て筋肉で出来ており骨はありません。鼻が無いのは正しい処理かもしれません。
しかし、耳も同様に骨がありません。
「鼻が無く耳も無い」なら骨格型として正しいと言えるかもしれません。
しかし片方は削って片方は残したエレファンタス。やはり中途半端という評価は免れないと思います。

ただ耳は軟骨ならあります。「軟骨までひっくるめて骨と考える」のなら、エレファンタスの姿は正しいのかもしれませんが…。

鼻が無いのは先に書いた通りですが、それを除けばまずまず象っぽい感じもします。
特に尾部は良い仕上がりで、付け根付近のデザインも良く出来ていると思います。


側面より

設定には「厚く堅牢なボディを生かし、重装甲陸上探査機に改造」。とありますが、どう見ても装甲が無いように見えます。
「後期型のエレファンタスは装甲が施されたタイプも存在している」と解釈すべきか、「ユーザーが改造して重装甲にせよ」というメッセージなのか。
あるいは「この当時としてはこれでも重装甲だった」なのか。ちょっと…、かなり謎です。

ただ攻撃用装備はなかなか充実しており、ビーム砲やミサイルを多数搭載しています。
どちらかというと、対ゾイド戦というより対人が考慮された装備に見えますが、初期ゾイドならではと言えます。
背中のミサイルは対空ミサイルとされており、地上ゾイドとしては初の対空装備を持ったゾイドです。
ただキット的には仰角を取る事が出来ず、まだまだキット造り込みとしては途上にあるようにも思います。


フェイス

頭部は、共通コックピットに専用のパーツをプラスする事で構成されています。
エレファンタスは、「共通コックピットに専用パーツを足し独自の形にした」最初のゾイドです。
巨大な耳はいかにも象という感じですが、やはり鼻が欲しかった所です。鼻を付けて、高性能マニピュレーターとでも設定されていれば最高だったと思います。

コックピット下のビーム砲は、おそらく牙を模したものだと思います。
しかし牙を格闘用とせずビーム砲としているのは、「モチーフとの一致」という意味では疑問もあります。
後の、シルエットだけでなく出来るだけ機能もモチーフに似せたゾイドと比べると、まだまだゾイドとしての踏み込みは途上であると感じます。

コックピットの中には、もちろんパイロットが入っています。

頭部は正面に向けて固定されており横を向く事が出来ません。耳は歩行に連動し動くギミックがありますが、それにより動きを制限された結果です。
この点は評価の分かれる所だと思います。


初代電子ゾイド

エレファンタスは、ゾイド史上初の電子ゾイドでもあります。大きな耳は索敵装置となっています。
「3Dレーダー」「広角聴音機」を持つとされますが、おそらくこの耳は双方の機能を併せ持ったものと推測します。

地球では、聴音機はレーダーが登場する以前においては、一般的な索敵装置として普及していました。
より優秀な、音ではなく電波で位置を図るレーダーが実用化されると次第に消えていった…、そんな初期の索敵装置です。

あるいは初期型のエレファンタスは聴音機搭載タイプで、後期型は3Dレーダー搭載タイプと考えても面白いかもしれません。
そしてより優秀なレーダーが開発されるに至り、それを搭載する次世代電子機ゴルゴドスが開発される事となった…。

残念ながら、電子機としての活躍はどの書籍にも記されていません。しかし最初期から索敵に重点を置いた電子機を投入した事は、大いに記憶しておくべきです。
派手な戦闘は苦手だが、こと電子戦においては強力無比の能力を発揮する電子機。この存在がゾイド世界を大きく魅力的にした事には異論が無いと思います。
エレファンタスこそは、その分野における始祖ゾイドです。


ギミック

ゼンマイを巻くと元気に動きます。ギミックはアッサリ目ですが、このクラスとしてはなかなかの出来です。
しかし多少評価の分かれる部分はあると思います。

歩行は、初の4足ゾイドという事でその構造に注目したい所です。
エレファンタスの歩行ギミックですが、さすが最初期の4足ゾイドだけの事はあり、まだまだ改良の余地のある…、言い換えればかなり無駄のある造りになっています。
詳細な解説は省きますが、ゼンマイがかなり特殊な形をしています。

ゼンマイから軸が伸びており、これに直接脚を取り付ける構造になっています(この軸自体は回転しません)。
ゼンマイを使用した4足ゾイドは後にも多く登場していますが、この構造は受け継がれておらず、もっと洗練した形の4足ギミックを成してゆきます。
過渡期の構造を感じる部分です。

このゼンマイを使用したエレファンタスの歩行は、歩行というより「すり足」のような感じで不器用に前進します。

エレファンタスの連動ギミックは、歩行だけではありません。歩行と同時に耳を振ります。
このクラスのゾイドの多くが「歩くだけ」のギミックに留まっている事を思えば、耳を振る連動を加えたエレファンタスは大したものです。
しかし、その造りには多少の疑問も感じます。

エレファンタスの耳のギミックは、脚の動きに連動させられています。
それ自体は珍しい事ではありませんが、問題はその見せ方です。
ダイレクトに「こうなってるから動きが繋がっている」のが丸見えな構造になっており、外観的な考慮が皆無です。

初期において特に、ゾイドは知育玩具の側面が強くありました。
そういった意味では、この分かりやすい構造は評価すべきかもしれません…が、戦闘兵器としてリアルなものを考えたい時、この外観は全くNGです。
評価が分かれるギミックだと思います。

もう一つ残念なのは、その動きです。
グライドラーは、左右の羽を揃って動かしました。しかしエレファンタスの耳は、左右が別々に動きます。
なので見栄えとしてはあまり良いものはありません。

手動ギミックとしては、横腹のミサイルの仰角を変えられるのと、背中のミサイルを旋回させられるのと、キャノピーの開閉です。
先にも書きましたが、背中のミサイルは設定上「対空ミサイル」なので、仰角を変更できるようにして欲しかったとは思います。

総じて、このクラスとしてはまずまず充実した出来であるが、やはり評価の分かれる部分も多い仕上がりだと思います。


戦歴

戦歴は謎の多い機体です。 初期において大半が撃破されたとありますが、具体的な描写は皆無です。
ゾイドバトルストーリーはおろか、戦闘機械獣のすべてやHistory of Zoidsにも登場していません。
ただ学年誌を見ると、わずかながら改造タイプを確認できました。装甲と翼を付けたユニークな改造機が存在します。

設定としては、短距離飛行の試験機とされています。火力が増し装甲も付いているので、対地攻撃の試験機でしょうか。
この辺りはゾイド世界の技術進化の過渡期における一端が見え、非常に興味深いです。

デスバードやマッドフライなど、「陸上機に翼を付け飛行タイプにした」改造機は後に多く誕生しています。
しかしこの改造エレファンタスこそは、その最初の存在です。

また戦歴とは少し異なりますが、エレファンタスは非常に輝かしい実績を一つ持ちます。
メカ生体ゾイドシリーズのキットは、箱の中にミニカタログが付いていました。これの第一弾カタログの表紙はエレファンタスです。

同カタログには大型ビガザウロや新型のペガサロス等も載っています。それなのにあえて旧型のエレファンタスが表紙になっているのは大きな名誉です。

異星の地表。手前には撃破されたと思われる味方機の残骸。そしてそれを探査しにやって来たエレファンタスの群れ…。
初期の頃の世界観が素晴らしく伝わる表紙ですが、その主役を務めたのがエレファンタスである事は記憶に留めておくべきです。

戦果としては特筆点に乏しいエレファンタスですが、初期において「ゾイドワールドの世界観を魅せた」機体としては、非常に貢献度の高い機体だったと言えます。
また、一線を退いた後は訓練機に回されたという設定もあります。
こちらも具体的な描写はありませんでしたが、多くの兵士がエレファンタスで訓練を受けその基礎を身につけたというのは、これもまた世界観を魅力的にしてくれます。
華々しいものはありませんが、縁の下で支えたゾイドだと思います。


初代電子ゾイド エレファンタス

レビュー中に何度も「過渡期」という言葉を使用しました。
エレファンタスは、その言葉がまさに似あう機体だと思います。

正直、カッコいい機体ではないし、鼻が無いのはやっぱりツッコまれて当然だと思います。非常にシュールな機体です。
しかし単体で見ると弱いのは否めませんが、後のゾイドへの大きな礎を築いた意味では非常に興味深いと思います。

極初期ゾイドは一見カッコ悪いながら、見れば見る程特有の魅力に気付きます。
エレファンタスも、そういった例に漏れない素晴らしい味を持ったゾイドだと思います。


バリエーションモデル

 メカボニカ メカファントス

 ヘリックメモリアルボックス1


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