メカ生体ゾイド ヘリック共和国軍 重装甲型 マンモス<MAMMOTH>

■マンモス(マンモス型/重装甲型) データベース■

 発売年月 1983年?月(秋)  発売当時価格 3000円  動力 モーター

 型式番号 RBOZ-002

 スペック 全長21.6m 全高12.2m 全幅12.9m 重量145.0t 最高速度85km/h 乗員3名

 主な武装
  ビーム発生器内蔵牙(×2) パノーバー20mm対空ビーム砲(×2) 銃座式マクサー30mmビーム砲 20mmビームランチャー マクサー50mm砲(×2)
  マクサー20mmビーム砲(クレーン銃座式) 3Dレーダー(×2) 重量物牽引機(ペイロード25t)

 特徴
  大きな牙や鼻の先端にあるビーム砲、耳の形をした3Dレーダーなど、重装備の巨大機械獣を代表するゾイドゾーンのマンモスマシーン。


前後より

パワフルに暴れまわる重戦闘機械獣、マンモスです。別名「ゾイドマンモス」とも呼ばれます。
メカ生体時代の書籍では、むしろマンモスよりもゾイドマンモスと呼ばれる方が多かったように思います。
なので個人的にはゾイドマンモスと呼んだ方がシックリきます。これはゴジュラスとも共通します。

以下は、本レビュー中でも「親しんでいる呼び方」+「モチーフである方のマンモスとの混同を避ける意図」からゾイドマンモスの呼称を使います。

ビガザウロに続く大型ゾイド第二弾で、1983年秋に発売されました(正確な発売月は残念ながら不明ですが、9月ないし10月と思われます)
この時期に発売された大型アイテムということは、すなわちクリスマス商戦アイテムです。
ゾイドは秋に大型アイテムをリリースし年末商戦用とするのが恒例です。
記念すべき最初のクリスマス商戦用ゾイドがゾイドマンモスです。

わざわざ頭に「ゾイド」を付けて呼ばれる事も多いゾイドマンモスですが、それは「マンモス」というだけではあまりにもネーミングが安直という事に加えて「年末商戦用の切り札として開発された」という事情があったのかもしれません。

ちなみに翌年以降のクリスマス商戦用ゾイドは…、
84年:レッドホーン
 ※ただし84年はゴジュラス(4月発売)が通年して大プッシュされたので実質的には同機がクリスマス商戦用ゾイドでした
85年:アイアンコング
86年:ウルトラザウルス(+ゴジュラスMK-II限定型、アイアンコングMK-II限定型)
87年:デスザウラー
88年:マッドサンダー
89年:ギル・ベイダー
90年:キングゴジュラス

です。

その名の通りマンモスをモチーフとしていますが、マンモスと言えばゾウ科。ゾウといえば長い鼻。
ゾイドマンモスは長い鼻を上下に大きく動かす事ができます。鼻のラインを変える事で印象が大きく変わります。

鼻はムチのようにしなり、打撃用の強力武器として機能します。
それに加えて、こうして鼻あげ状態を見ているとコックピットを守る事もできそうに見えます。
キャノピー式、しかも機体の最前面にある危険なメインコックピット。そこを守る時に鼻は大いに役立ちそうです。
鼻をあげ防御を固めながら敵に接近、そして振り下ろして攻撃……。そんな使い方がさえていたのかも、と思います。


側面より

側面から見るとラインがよく分かります。 他のゾイドにはない独特な感じがします。
ボディは四角いボックス。そこからいびつに頭部、尻尾、脚などが付いています。

ゾイドマンモスは完全独自のパーツで構成されているわけではなく、ボディや脚など大部分をビガザウロから流用しています。

しかし比べると、ビガザウロは綺麗なラインをしているように見えます。
全体的な統一感があるというか、首から尾の先までのラインが自然なラインを描いています。
初期ゾイドなのでいかにも貧弱で装飾過小ではあります。ですが全体のラインとしてはビガザウロはとても綺麗です。

対してゾイドマンモスはとにかくいびつな感じがします。特に尻尾は唐突に付いたような違和感を強く感じます。
頭部も、本来なら肩である筈の部分に付いています。もっと前の位置にあるべきです。
鼻の付き方もおかしく、頭部ではなく胴体から生えています。
ビガザウロを見ると分かりやすいと思いますが、ビガザウロの首を鼻にしてあります。だから胴体から生える事になったのです。
ただ鼻の付き方のおかしさは「牙」を置く事で見えにくくなっており、配慮はありますが。

ゾイドマンモスはとにかく武骨なイメージがあります。洗練とは程遠い感じです。
武骨…、[1:骨ばってごつごつしていること。またそのさま][2:洗練されていないこと。無作法なこと]

武骨ないイメージ…、しかしこれは悪く言っているわけではありません。
否むしろ、これこそがゾイドマンモスの魅力だと思います。
初期の時代……、まだ大型ゾイド開発経験が少ない時代に完成した巨大ゾイド。そしてマンモスというモチーフが持つ古代生物感。
そんな要素が相まって、武骨だから良い。武骨だからこそ魅力的。そんな風に昇華されています。

思うに、モチーフであるところの古代象・マンモスにもなんだか不器用なイメージがあります。
恐竜もマンモスも絶滅した古代生物ですが、恐竜は割と洗練されたスマートなイメージを持っています。
一方、同じ古代生物なのにマンモスにはスマートなイメージはなく不器用さを強く感じます。
なぜかというと、マンモスは現代のアジアゾウやアフリカゾウよりも昔のゾウだからです。
現代のゾウ(進化の系譜でいうと最新の種)に至るまでの間に淘汰された種だからです。
昔のゾウ。だから直感的に「古い時代の滅んだ種」というイメージになるのです。

一方、恐竜は滅んだのは確かだが「隕石衝突さえなければ更に生きただろう…」という要素を強く感じます。
白亜紀……恐竜最後の時代を生きたティラノサウルスやトリケラトプスは特に「滅んだ古生物」というより「究極まで進化した恐竜」というイメージを強く持っています。
だから洗練されたスマートなデザインも似合うと感じるのです。

武骨。不恰好なゾイドだと思います。後発のゾイドと比べて洗練されているとは言い難い。それどころか先発のビガザウロと比べてもガクガクしたラインに見えます。
でも、モチーフが持つイメージと相まって「不恰好だからいい」「不器用そうなのが魅力」になっています。
他の多くのゾイドは「カッコいいから魅力的」「強いから魅力的」「速いから魅力的」そんな感じでしょう。
しかしゾイドマンモスは無骨という他にはない特有の魅力を放つ唯一無二のゾイドだと思います。
それが開発者の目指した魅力なのかはさておき、ですが。


フェイス、コックピット

頭部のデザインは独特です。
パーツはマンモス専用を新造していますが、キャノピーだけはビガザウロから流用しています。
この辺のバランスは「大型ゾイドだが生産性にも配慮する」という感じがしていてとても良いと思います。

頭部そのものを見ると、それほどディティールはなくあっさりとしたデザインをしています。
しかし牙や耳のデザインは複雑なディティールが付いておりいかにもメカニカルです。

特に耳…、設定上は3Dレーダーとされている部分の造り込みは凄まじいです。

この部分を見ていると、これぞリアルメカ・ゾイドだと思えてきます。

シンプルな頭部デザインと、そこに付いている過剰なほどのディティールを持つ耳や牙。
その対比も魅力です。

キャノピーは前方に大きく開きます。この部分にはメインパイロットが乗り込みます。

マンモスは火力がそれほど高くないので、戦いは主として格闘戦です。
良好な視界と引き換えに強度ではどうしても劣るキャノピーという選択をした共和国軍。
格闘戦を行う機体にまでそれを採用する徹底ぶり。マンモスのパイロットはさぞや恐怖だろうなぁと思います。ですが、いかにも共和国的です。

頭部コックピットにはメインパイロットが乗ります。
ほとんどの操縦はここから行いますが、他にも二箇所にコックピットがあります。

まずは背中です。二連装パノーバー20mm対空ビーム砲が二基あります。これを撃つ砲手です。

マンモスが開発された頃、帝国軍は飛行ゾイドを保有していませんでした。
「対空」というのはおそらくビークル等でしょう。

次に尾の先です。やはり小口径の砲があります。これを撃つ砲手です。

いわゆる”懲罰席”ですが、これの解釈はこちらのコラム(懲罰席を考える)を参照。

この「頭部メインコックピット」「背部対空砲」「尾部懲罰席」の三人構成は、ビガザウロと全く同じです。


ビガザウロ級2号機

ビガザウロと多くのパーツを共通していることは先に書いた通りです。
こうして並べると、改めてパーツの共通と新規パーツにより独自のゾイドに変わった具合が分かります。

いびつだの不恰好だの言ったマンモスですが、それでもやはりディプロドクス型ビガザウロをマンモス型に大胆に変更したのは凄いと思います。
ビガザウロの首がゾイドマンモスでは鼻に。ちょっと無理やり感は漂いますが、それでもしっかりマンモスに見えるのだから大したものです。
前知識無しにゾイドマンモスを見て、元がディプロドクスだったと気付く方は少ないと思います。

装備品については大きな増設があります。
ただし火力についてはあまり変化がありません。唯一、鼻先にビーム砲が一門加わりましたが、これは小型だし威力もあまりありそうには見えません。
では何が増えたかというと、まずは耳状の大型3Dレーダーです。

ビガザウロと違い、ビークル機能はありません(ビガザウロは頭部をビークルとして使える)。しかしこのレーダーのおかげで、高度な索敵ができるのです。
いやしかし、実のところゾイドマンモスがレーダーを活かした活躍をしたというシーンは確認できません。
レーダーを持つ電子戦機としての活躍はもっぱらゴルドスです。
極初期の大型レーダーなので、大きさの割りに性能が低いとか故障しやすいとか、そんな事情があったのかなと想像します。

小型ゾイドでは、初の電子戦機はエレファンタスでした。しかしエレファンタスは初期に姿を消し、ゴルゴドスが後継機として配備されます。
小型でも大型でも、電子戦機はゾウからステゴサウルスになっているのです。これは何とも皮肉というか、ゾウ型ゾイドにとっては苦虫を噛み潰す事実です。

 

レーダーの他にも、格闘用装備が増えたのも大きな特徴です。
格闘戦では鼻と牙を使います。鼻は「ビガザウロで首だった部分を格闘武器にして大丈夫なのか?」という気はしますが、もしかすると見た目は同じだが中身は打撃用に最適化されているのかもしれません。

牙はいかにも戦闘的です。正式名称は「ビーム発生器内臓牙」と言います。

読み方は不明です。単に「ビームタスク」とかではダメだったんだろうかとは思いますが、このどう読んだらいいのか分からない不器用な感じもマンモスらしいです。
ビーム発生器内臓、という位だから単純な牙ではないと思います。
見た目にも複雑な造形をしています。おそらく、突き刺した後に電磁波を放出して敵メカを内部から破壊するようなものでしょう。

かなり後年ですが、マッドサンダーやオルディオスが同様の機能を持った角を装備しました。
マグネーザー、サンダーホーン、サンダーブレードです。
これらは共和国軍突撃武器の完成形とも言えるものです。その原点はゾイドマンモスにあります。

対ゾイドのほか、要塞の壁をぶち破るような用途でも活躍できそうです。
鼻と組み合わせて、「牙で壁を破壊する→散らばる破片を鼻でからめとって投石器のように敵に投げながら更に破壊を続ける」なんていう勇ましいシーンも想像します。
鼻と尾で、破壊力とその迫力は満点です。

 

ゾイドマンモスの大きな変更は脚部でもあります。
構造こそビガザウロと全く同じです。ですが、装甲を付けることによってその印象を大きく変えています。
最低限のフレームというか骨というか、そんな貧弱で”すぐに折れそう……”なビガザウロの脚から一変、力強さを感じるガッシリしたものになりました。

関節より下の部分に、脚を覆う大型装甲が付いています。この効果は絶大です。
重パワーを持つゾイドマンモス。そのイメージはこの装甲が支えているといっても過言ではないでしょう。

ゾイドマンモスは「重装甲型」とも表記されます。それはおそらくこの脚部装甲を指してのものでしょう。
脚部以外を見ると、装甲を施した部分はほとんどありません。ビガザウロと同等の剥き出しのままです。
なぜ脚の下半分にだけ装甲を付けたかというと、ゾイドマンモスの就役はレッドホーンよりも前です。
完成の頃、帝国軍の戦力の中心は小型ゾイドや歩兵であったと思います。もし大型ゾイドが居たとしても超アーリータイプのレッドホーンくらいでしょう。
ならば、被弾する位置は低い位置に集中します。そこで脚の下半分にだけ装甲を付けたのだと思います。
おそらく就役当初の時代としては想定通りの防御力を発揮し、「最高の防御力を持つ鉄壁の重装甲ゾイド」として恐れられていたのでしょう。
しかし次第に帝国軍も大型ゾイドを本格投入したり、小型ゾイドも重武装をつけるようになると次第にマンモスは重装甲どころか大型ゾイドの割には撃たれ弱い評価に変わっていきます。

脚部装甲を見ていると、他にも二つの事を思います。
一つは形状です。丸い優雅なラインを描いており、多くの共和国ゾイドが直線的なラインを基本としている事と比べて違和感を感じます。
実際、同じ部分に装甲を付けたゴルドスは直線的な装甲になっています。

丸い装甲は避弾経始に優れ、防御上の有利があります。一方で、成型に手間がかかるため量産には高い技術力を要する弱点もあります。
丸い装甲は帝国軍が多く採用しています。その意味ではゾイドマンモスは共和国らしくないと言えます。
いやしかし、ゾイドマンモスは「最初に装甲を付けたゾイド」です。
なので、丸い装甲も共和国らしくない一方で初期ゆえに開発が手探りだった時代が想像できて非常に興味深く面白いものでもあります。

もう一つは、ちょっとどうかと思う点です。
非常に魅力的なゾイドマンモスの脚部装甲ですが、あるものに酷似しています。
それは太陽の牙ダグラムの主役メカ「ダグラム」の脚部装甲です。
流用したのでは……と言えるほどの酷似ぶり。これはちょっとなぁ……と思ってしまいます。
なおダグラムの頭部がゴドス、ガイサックの指揮官機用コックピットに酷似しているのは周知です。
初期のゾイドにはこのような事がいくらか見られます。
影響を受ける事は悪いことじゃない。むしろ互いに刺激しあってこそより良いものができ業界全体が活気付くと思います。
いやしかし、あまりにも露骨だと負の印象を抱いてしまったりもします。マンモスの脚部は、そんなちょっと苦い思いも抱いてしまうデザインでもあります。

脚部は、装甲の他にも注目な所があります。
ビガザウロは前後脚の長さが同じでした。これはモチーフからすればありえない事です。
さてゾイドマンモスはビガザウロの脚部を流用していますが、前脚に”下駄”を履かせています。

これによりモチーフの「前足の方が長くて大きい」という特徴を再現しています。
しょせんは下駄なので、脚そのものが大きくなったわけではなく、極わずかな差を出したに過ぎません。
いやしかし、それでもこの差がモチーフ再現度を大きく上げた感じを出しています。

余談ですが、ビガザウロの足の裏には下駄パーツを付けるための「凸」があります。ゾイドマンモスの下駄はこれに差し込んでいるわけです。
しかし初期生産分のビガザウロには、この凸がありませんでした。これはゾイドマンモス開発時に併せて金型が改修されたのです。
キットのビガザウロは、ゾイドマンモス完成後もしばらくは生産が続けられています。
ビガザウロの初期生産と後期生産(ゾイドマンモス後)は、足の裏で見分ける事ができます。


私の持っているビガザウロは初期生産分です。なので凸がありません。後期生産のビガザウロは、右のゾイドマンモスのように凸が加えられています。
数としては前期型の方が多く見かける印象です。後期型はレア度が高いと思います。


エレファンタスと共に

ビガザウロに続く大型ゾイド第二弾ですが、エレファンタスに続くゾウ科型ゾイド第二弾でもあります。
ゾイドでは大小が同モチーフでペアを組むことが珍しくありません。
特に初期の共和国軍においては顕著でした。それはビガザウロ&ハイドッカーであり、ゴルドス&ゴルゴドスであり、ゴジュラス&ゴドスです。

やはり同モチーフの大小ペアを並べると見栄えがします。
が、エレファンタスが鼻がなくあまりゾウに見えないという所がやはりネックです。
この二機を並べても、他のペアに比べて同モチーフが並んでいる感じが低いのは悲しいです。

エレファンタスは大きな耳のおかげでどうにかゾウに見えますが、「積極的にゾウに見える」というより「消去法で考えればゾウに見える」だと思います。
やはりゾウといえば最大の特徴は鼻でしょう。それを再現していないのは改めて惜しいです。
このペアを見ていると、同モチーフのゾイドが並んでいるのが嬉しいのは確かです。
ですが同モチーフのゾイドだからこそ、長い鼻を持ったゾイドを並べたかったなぁという想いを強く持ってしまいます。
これはゾイドマンモスの責任ではありませんが。

メカ生体ゾイドの時代、ついにマンモスと並べられる「鼻のある小型のゾウ型ゾイド」は登場しませんでした。
ただ帝国側ではツインホーンが登場しましたが…。

いやしかし、はるか後年になって出た「ゾイドコンセプトアート」およびコンセプトアートの世界観軸で展開した「ゾイドオリジナル(ゾイドSS)」では、ゾイドマンモスMPなる小型マンモス型ゾイドが登場しました。

これは実に良いデザインをしていると思います。
残念ながら立体化はされていませんが、もしもキット化されれば並べた時にさぞかし栄えるだろうなあと思います。

エレファンタスは鼻がなくてゾウらしさが低い。
ツインホーンは帝国側なので並べにくい。
マンモスMPは理想的だがキット化されていない。
ゾイドマンモスは、「同じモチーフの大小を並べたい」という願いが惜しいところで理想に届かないもどかしい存在でもあります。


モチーフ

モチーフは重装甲型……もといマンモス型です。
ただマンモス型としては違和感もあります。それはビガザウロを無理やり変えたからではなく、もっと別の部分です。

まず牙についてですが、シュッと前に突き出しています。これはマンモス的ではありません。
マンモスは大きく湾曲した牙を持ちます。ツインホーンの牙がまさにこのラインを描いています。
ゾイドマンモスの牙は、マンモスというよりナウマンゾウに近いラインです。
だから戦闘メカのデザインとしては正しいと思う反面、マンモス型としては「?」な風に思ってしまいます。

次に耳についてですが、かなり巨大です。これもマンモス的ではありません。
耳が巨大なのはアフリカゾウで、マンモスの耳はそこまで大きくはありません。
アフリカゾウの耳は暑い地方に住んでいるので、体温調節に「耳をうちわのように使う」ために大きくなりました。
寒冷地に生きたマンモスはそんな事をする必要がないので、耳はあまり大きくないというわけです。
ちなみにナウマンゾウも耳は大きくありません。

こう見ると、なぜゾイドマンモスは「マンモス」なんだろうと思います。
牙はナウマンゾウ的。耳はアフリカゾウ的。
ではマンモスの要素はどこに?

おそらくですが、マンモスというと「巨大な」「大規模な」といった意味の比喩として使われます。
マンモスタンカー、マンモス団地、マンモスうれぴーなどなど……。
ゾイドマンモスは様々なゾウから最高の要素を集めた……、それは戦闘時に最も役に立つであろうナウマンゾウの牙形状であったり大型レーダーを実現する巨大なアフリカゾウの耳形状であったりです。
そしてマンモスが持つ「巨大な」というイメージで仕上げたのがゾイドマンモスなのだと思います。

前級であるビガザウロは、ディプロドクスという恐竜の中でもかなり大型の種をモチーフにしたゾイドです。
ゾイドマンモスは年末商戦アイテムだし価格も上だし、「ビガザウロを超えた」というイメージを持たせる事が必須でした。
ディプロドクス型ビガザウロを「恐竜じゃないモチーフ」で超えるには、様々なゾウから要素を集めまくるという補強が必要だったのでしょう。
その補強は大成功したと思います。


ギミック

電動ゾイドなので、電池を入れてスイッチを入れると元気に動きます。
ギミックはビガザウロ+αといった感じです。

基本ギミックはビガザウロ変わりません。
連動では、鼻を大きく動かしながら前進します。
ただ脚の動きと連動とさせて、耳も動くようになっています。
ゾイドマンモスの連動ギミックは、耳をパタパタさせながら鼻を大きく動かしながら前進するというものです。

ただ耳の動きには不備もあります。左右の耳が別々にチグハグに動くのです。
これは「左右の脚の動きと連動させている」という構造からくる問題で、エレファンタスと同じです。
せっかくだから左右の耳が揃って動くようになっていれば良かったのですが…。

鼻の動きについても言っておくと、ビガザウロと同じ構造なので当然ですが「S」のように動きます。
ですが実際のゾウ科は「J」のように動きます。
特に気になるものではありませんが、マニアックにモチーフを再現しているかと言えばNOです。
ただ、何度も言っていますがその不器用さや武骨さもゾイドマンモスらしい要素ではあります。

手動ギミックは、各部の砲の角度をいじれることとキャノピーの開閉が出来ることです。
大きさの割にはちょっと少な目な感じです。
贅沢を言えば、鼻先に物を掴むハンドのようなものが付いていればゾウらしく面白かったと思うのですが。

総じて、ビガザウロ+αといった感じです。ただ、凡作だとは思いません。
なぜなら、ビガザウロよりも飛躍的にマッシヴ化した印象の機体です。その「ヘビー級の重ゾイドが歩く」という迫力は格別だからです。
文字としてはビガザウロ+αとしか書けませんが、実際に動いている時の印象は大きく異なります。
その意味ではとても良い動きのゾイドだと思います。


戦歴 ・初期

戦歴はゾイドマンモスらしいなぁというか、そんな不器用さを感じるものです。
ゾイドマンモスは極初期のゾイドなので、運用・描写は主に初期になっています。ですが、細々とではありますが意外なほど後年まで運用が続きました。
戦歴は、初期とZAC2034年以降(第二次ゾイド開発競争後の兵器が完全に近代化した後の時代)に分けて書きます。

まずは初期についてです。
ゾイドマンモスは元々はビガザウロを超える最強ゾイドとして登場しました。ですが最強として語られた時代は極短くなっています。
初期の頃は、小型ゾイドをはべらせながら大進撃するカットが紹介され、共和国軍を率いる最強エースというイメージを出しました。

ですがゴジュラスが登場してからは一転して最強エースのイメージは同機に移行します。

これ以降、ゾイドマンモスは極めて地味な扱いを受けることになります。
学年誌などでは、最強ゴジュラスはいつでも大特集。84~85年にかけてのゴジュラス猛プッシュは凄まじく、機獣新世紀シリーズのライガーに勝るとも劣らないくらいのスーパーヒーロー扱いでした。
一方、マンモスはゴジュラスの頼もしい仲間として紹介されるものの「パワーがある」と紹介される程度で、どう戦うのか・どれ位強いのかといった要素はあまり紹介されませんでした。
ゴルドスはまだしも「高度な電子戦能力を持ったNo.1偵察機」というアピールができるので良かった。
更に長距離キャノン砲があるので火力支援についてもアピールできます。オンリーワンのゾイドになれたのです。
しかしゾイドマンモスは「格闘戦用」という部分でゴジュラスとかぶったのが不幸でした。そりゃぁ、地味にもなるわけです。

そのパワーにしても、初期は「パワーならゴジュラス以上」とさえ書かれる事がありました。しかし次第に「パワーならゴジュラスと同等」そして「パワーならゴジュラスが一番」というように徐々にランクが下がっていきました。
(この事の整合性を考えるならゴジュラスは近代改修で徐々にパワーアップしたがゾイドマンモスはそれがされなかったという事でしょう)

「輸送用」と書かれているものさえあります。
二足歩行のゴジュラスと四足歩行のゾイドマンモス。
この差…、例えば四足ゆえに踏ん張りが利くゾイドマンモスというような描写をする事は不可能ではなかったと思います。
しかし残念ながら、この時代はそれがされる事はありませんでした。細かい運用の差を描きゴジュラスの頼もしい仲間とするより、ゴジュラスのみをヒーローとする方針が採られたようです。
まぁ、あまり細かい説明をするとややこしくなります。なので「パワフルに暴れまわる戦闘担当=ゴジュラス」になったのは決して間違っていないとも思います。
ゾイドマンモスにとっては不本意だったと思いますが。

「輸送用」についても捕捉します。
ゾイドマンモスには25tもの物資を運ぶ重量物牽引機があると設定されています。たとえ戦闘用でなくとも、ゴジュラス部隊の補給を担う頼もしい仲間、という描写がされればそれはそれで嬉しかったものです。
いやしかし、実のところこちらの分野でもあまり活躍していません。
「輸送用」と書かれている資料が幾つかが確認できる程度で、具体的に輸送しているシーンというのは皆無です。
後年にはペイロードで10倍もの能力を持つ輸送専用機「グスタフ」が登場し、もはやこの分野ではまったくの用無しとなってしまいます。
結局、輸送力に優れる点も魅力的に描写される事はなく中途半端に終わってしまいました。

ゾイドマンモスの描写を見ていると、登場はさせたかったのだと思います。やはり大型ゾイドだし、それは当然でしょう。
しかしゴジュラスと役割がかぶる。じゃあどうする? どう扱う?
そんな風に困っていた様子が伺えます。
それでも何とか役割を与えたかった。その解答が輸送だったのでしょう。
しかし地味すぎて描写しきれなかったのだと思います。

後年のグスタフは、後部にトレーラーを持っており「戦闘用ゾイドとからめて撮影できる」点で非常に使いやすかった。だからこそ輸送用ながら登場できたのだと思います。

 

初期において唯一だけ活躍しているシーンは、コチラのレッドホーンと交戦しているシーンでした。

これは学年誌(小三)に掲載されたもので、ストーリーというよりは「最強決定戦だ!」というようなノリの単発バトルとして掲載されたものです。
ですが意地を見せてレッドホーンに勝利。これはゾイドマンモスにとっては何よりも忘れ難いうち震える瞬間です。

初期を総括すると、
・最強ゾイドとして登場した筈だったがお株を完全にゴジュラスに奪われた。
・当初はパワーだけならゴジュラス以上という重ゾイドのイメージを打ち出そうとしたが、次第にそれさえゴジュラスに奪われた。
・そこで輸送用として再起をかけたものの半端に終わってしまった。
・しかし唯一だけレッドホーンに勝利する大金星も挙げた。
という感じでしょうか。
最後に意地を見せたところが泣けます。
これだけ不器用で、でも一度だけ意地を見せたのが実にゾイドマンモスらしいなと思います。


戦歴・ZAC2034年以降

ゾイドバトルストーリーでいえば、ゾイドマンモスは「地球人来訪前に開発された旧式機」です。
この点はゴジュラスも同じなんですが、辿った道は大きく異なります。

ゴジュラスは地球技術で大幅アップデートされて性能を超大幅向上させます。時代に対応し大活躍しました。
一方、ゾイドマンモスはどうもアップデートがされなかったようで、旧式のまま運用され続けています。
(具体的な言及はないものの、パワー比でだんだんゴジュラスに越えられていった辺りから確信的に推測しています)

地球人来訪はZAC2029年。そして地球由来の技術が共和国・帝国の双方に浸透しきったであろうと思えるのがZAC2034年頃です。
この年は「第二次ゾイド開発競争」とも呼ばれる、近代的な完全新型ゾイドが多数登場した年です。イグアン、プテラス、カノントータスなどがこの年に登場しました。
この頃から戦場は「新型」あるいは「地球技術でアップデートされたゾイド」が中心になり、アップデートされなかった旧式機は悲惨な運命を辿ります。
それは主にビガザウロ、ゾイドマンモス、ガリウスやエレファンタスなどの極初期共和国小型ゾイドです。

この中で最も悲惨だったのはゾイドマンモスです。
というのはやられシーンが他の機よりも多いからです。
おそらく、ビガザウロや初期小型ゾイドに比べればまだしも戦えると判断されたのだと思います。
「ビガザウロと比べれば装甲がありパワーもある。だから旧式とはいえそこそこ戦えるのではないか」
しかし新型機を相手にしては翻弄されるばかりだったようで、旧式機としての哀愁を強く感じます。

もっとも「使えないと判断されて早々に退役した方が良かったのか」と言われると難しい所です。
やられシーンとはいえ登場しているのだから、ビガザウロや初期小型機よりは見せ場があったと言うべきではあります。

 

ゾイドバトルストーリー1巻には「戦力比較表」が載っています。
それによると「ゾイドマンモス6VSアイアンコング1」「ゾイドマンモス5VSサーベルタイガー1」「ゾイドマンモス3VSレッドホーン1」で互角との事です。
最終的な戦力見解はこのように落ち着いています。
これは実に偵察用ゾイド・ゴルドスと全く同じ成績です。
元々は最強ゾイドとして問う乗じたはずのゾイドマンモス。しかし近代改修されないままこのような成績に終わった……。
旧式の老兵。アップデートされなかった悲劇。改めて哀愁を感じずには居れません。

ただし、そんなマンモスですが超例外的に活躍をした事が一度だけあります。
ゾイドマンモスには、寒冷地に強いという一芸があります。
時は第二次新型ゾイド開発競争から12年も経ったZAC2046年。
もはやレッドホーンやアイアンコングどころではない、デスザウラーという超強力無敵ゾイドが跋扈するような時代です。

デスザウラーは無敵ゾイドで、ありとあらゆる共和国ゾイドを破壊しました。
ゴジュラスが、サラマンダーが、ウルトラザウルスが、シールドライガーが。あらゆる共和国ゾイドが無残にも鉄クズに変えられました。
デスザウラーに勝てるゾイドは存在しない。そんなデスザウラーが絶対的無敵の王者だった時代に、ゾイドマンモスは戦いを挑んだことがあります。

極寒の中央山脈で行われた戦い。ゾイドマンモスは改造タイプ。しかも集団。対してデスザウラーはノーマルタイプ単機。
そんな状況ではありましたが、それでもなんとゾイドマンモスはデスザウラーの撃退に成功しています。
これは陸戦でデスザウラーが負けた最初の例です。
まさか、あのゾイドマンモスがあのデスザウラーを撃退するなど誰が想像しただろう。
このシーンはまさしく驚きでした。
この時期にまだゾイドマンモスが運用されていたことも驚きですが、デスザウラーに勝ったのはそれにも増して驚きでした。
(この頃の設定を見ると既にゾイドマンモスは「第一線を退いたゾイド」として扱われていました。ですがおそらく極寒地のみ例外として運用が続いていたのでしょう)

 

期待の最強ゾイドとして誕生したにもかかわらず、ゴジュラス抜かれて地味な存在に。
レーダーの分野ではゴルドスに完全に抜かれる。
輸送用の分野ではグスタフに完全に抜かれる。
近代化アップデートがされることもなく、新型ゾイドにいいようにやられるばかり。
そして姿を見ることさえ無くなってきた。
そんな悲しすぎる状況で、まさかのデスザウラー撃退。これには感動せずには居れません。

同じようなゾイドが他に居たでしょうか。
強いて言えばレッドホーンだと思います。
レッドホーンも連戦連敗で「弱小」のイメージの強いゾイドでした。
ゼネバス帝国初の大型ゾイドとして完成するも、ゴジュラスを相手に連戦連敗。アイアンコング、サーベルタイガーが華やかに活躍する裏で、レッドホーンは何をやっても勝てないゾイドでした。
しかしそんなレッドホーンは、後に「ダーク・ホーン」になって猛然と逆襲します。それはもう、あのマッドサンダー(シーマッド)を二機がかりとはいえ倒してしまうほどに。

ただ、レッドホーンとゾイドマンモスはやっぱり違います。
レッドホーンは弱小のイメージだったとしても、中央大陸戦争時代を通して「第一線用として生産が続いているゾイド」「大型ゾイドとしては帝国最多生産を誇る」そんなゾイドでした。
負けは多くとも帝国軍を支え続けた名機と想像できるのです。
そしてダーク・ホーンになってからは量産機というイメージはそのままに「強いゾイド」というイメージが付加されたのです。

対してゾイドマンモスはどうか。戦闘用としては地味なゾイドでした。そして生産数も少なく中央大陸戦争後期には「第一線を退いた」という扱いになりました。
例外として極寒地でのみ運用が続きデスザウラーを倒すという大金星を挙げました。
しかしそれでも、復権する事は決してありませんでした。
地味なゾイドが大金星を挙げたが、それはその後に影響を与えることはなかった。その後は劇中に登場する事は一切なく、今度こそ完全に退役していったのです。

戦歴を見ていると、なんとも渋いなあと思います。渋すぎます。
最後に大金星を挙げて、しかし復権する事なくそのまま去っていった……。
レッドホーンは弱小ゾイドが強化によって逆襲した「カタルシス」を感じます。対してゾイドマンモスは弱小ゾイドが意地を見せたがそこで力尽きたという「哀愁」というか……、そんな風に感じます。


古代象 ゾイドマンモス

ゾイドマンモスには表現し難い特有の魅力があると思います。
多くのゾイドの「カッコいいからいい」とは異なる全く異質の魅力です。
技術的な過渡期を感じる武骨なデザイン。哀愁を感じる戦歴。でも、だからこそ魅力。
こんなゾイドは他に居ないと思います。

ゾイドマンモスはまた、「この機体が写っているだけで何とも言えない宇宙のイメージになる」という効果も感じます。
SFなイメージを極めて強く感じるゾイドだと思うのです。
露出したメカニック。それだけならビガザウロやゴジュラスでも同じです。ですがゾイドマンモスは武骨…不恰好であるがゆえにメカニックの露出がより強く思われます。
これは洗練されたシルエットのビガザウロやゴジュラス、そして後のゾイドでは決して味わえない雰囲気です。
このこともまた、ゾイドマンモスの大きな魅力だと思います。

もの凄く異質なゾイドです。
メカ生体ゾイドの時代は、あまり報われたとはいい難いでしょう。
しかし何とも魅力的な唯一無二のゾイドだと強く思います。


バリエーションモデル

 ゾイドコアボックス


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