メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 ゼネバス首都方面軍第1重機甲部隊 ツインホーン<TWIN HORN>

■ツインホーン(マンモス型) データベース■

 発売年月 1986年12月  発売当時価格 780円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 EMZ-28

 スペック 全長9.1m 全高8.4m 全幅4.5m 重量25.3t 最高速度180km/h 乗員1人

 主な武装
  火炎放射器 ヒート(×2) ミサイルポッド 加速ビーム砲(×2) スモークランチャー

 特徴
  この年の後半においては、遠距離からの砲撃戦よりも、白兵戦へ。
  大部隊同士の戦いから小部隊同士の戦いが多くなり、より格闘戦向きの機体が要求され、ついに親衛隊の予備兵力までも前線に投入された。


前後より

ゼネバス帝国皇帝親衛隊機、ツインホーンです。格闘も砲撃もこなす万能機です。

真っ赤なカラーが特徴的です。
赤という色自体は珍しくありませんが、あまりにも鮮やかな赤はひときわ目を引きます。このカラーは、ゼネバス帝国の皇帝親衛隊カラーです。
原色の赤を大胆に用いたカラーは率直に言って玩具っぽい。しかしそこに「皇帝親衛隊」という設定が加わる事で別格感が生まれ、何ともカッコいいカラーに見えてきます。

ツインホーンが発売された時期は、ストーリー的に、ウルトラザウルスを中心にした共和国部隊がゼネバス帝国首都へ迫った時期です。
この時期、皇帝親衛隊機のアイアンコングMK-II(限)、シュトルヒも発売されており、ここへきて真っ赤な機体の発売ラッシュを迎えています。
ゼネバス帝国首都へ迫る共和国と、迎え撃つ帝国首都防衛部隊。ストーリーと非常に合致した展開でニヤリとします。

しかし厳しい事を言うと、この皇帝親衛隊の三機の中で、ツインホーンはやや地味な存在かなと思います。
シュトルヒは帝国初の超音速戦闘機であり、コングMK-II(限)は、あのコングを極限までチューンナップした!という所で、やはり凄みがありました。
ツインホーンは残念ながらそのような要素は薄いように思います。
万能機であるが、格闘用としてはハンマーロックに劣る。砲撃用としてはマルダーに劣る。
もちろん、そこそこ以上の能力を両立しているのは凄い事ではありますが、特化したものが無い点は否定しがたいです。
やはり華があるかと問われたら「地味」になってしまう気がします。器用貧乏と言っても良いと思います。

もう一つ厳しい事を言うと、設定面で疑問が残ります。
「この年の後半においては、遠距離からの砲撃戦よりも、白兵戦へ。大部隊同士の戦いから小部隊同士の戦いが多くなり、より格闘戦向きの機体が要求され、ついに親衛隊の予備兵力までも前線に投入された」
とありますが、この時期はアイアンコング、ウルトラザウルスの就役やゴジュラスの長距離砲装備などにより、むしろ白兵戦から遠距離からの砲撃戦へ移った時代です。
またウルトラザウルスはじめ旗艦能力を持ったゾイドの誕生で、大部隊同士の戦いが増えていった時期でもあります。
なので、真逆の説明になっているこの設定には、どうにもズレを感じてしまいます。

ただ、「ついに親衛隊の予備兵力までも前線に投入された」という部分は好きです。
この文脈からすると、ツインホーンの開発時期はもっと古いと思われます。ずっと前から居て防衛任務に就いていたが、ついに前線に出る時が来たというような。
「歴史の表に出ていないだけでもっと多数のゾイドが居る」その可能性をさりげなく感じさせる重要な文だと思います。


側面より

ツインホーンは「マンモス型で帝国軍」という点が特異だと思います。
ゾイドは、同じモチーフで大型&小型をリリースする事が珍しくありません。
例えばゴジュラスとゴドス、サーベルタイガーとヘルキャット、アイアンコングとハンマーロックなどです。
大半は同じ軍として採用される事が多いものです。
そんな中、共和国軍にゾイドマンモスが有るにも関わらず、帝国側で小型マンモス型ゾイドを出したというのが特徴的です。
「似たモチーフを異なった軍で出す」という例は少なく、ツインホーンの時代までで思いつくのは、ウルトラザウルス/ザットンでしょうか。
かなり珍しい例です。

この機体は、もしかすると、もともと共和国機として計画されていたのではないだろうかと思います。
ボディのメカニックの作り込みが激しく、しかもむき出しです。「装甲で覆う帝国」のデザインというより、むしろ共和国的なデザインに見えます。
メカの配置も、ゾイドマンモスに良く似ています。

鼻の先に火器を装備している点、腰にビーム砲を装備している点、尾の先に火器がある点、腹部にメインエンジンがある点などなど。
いっそ共和国側として出して両機で戦隊を組ませても良かったんじゃないかと思います。

造り込みの多さはむしろ共和国機として通用しそうな程ですが、そのディティールの付け方は特徴的です。
メカというより生物らしさを最優先しているように感じます。腰部や鼻など、生物の「シワ」を意識したディティールが多いように見えます。
その為、ディティールが多く確かにメカであるにも関わらず、メカというより「生」を先に感じてしまうデザインになっていると思います。

また、このクラスとしては珍しく口もあります。牙を外すとよく分かります。

その口の形状も、何とも生っぽい感じがします。

微妙なニュアンスだと思いますが、個人的には、ゾイドはまずメカであり、そしてよく見ると生物である事に気づくようなものだと思います。
ツインホーンはまず生物である印象が強く、よく見ると作りこまれたメカに気付くような導入部が逆になっているように感じます。

ただ、素晴らしく「帝国機である」を感じさせる見事な箇所もあります。
それは脚部です。

脚部デザインは、ゲルダー、ザットンの脚部に酷似しています。しかしツインホーンのものの方が大型化し、より複雑化しています。
技術的なつながりを感じさせ、なおかつ高性能化を感じる事が出来る素晴らしいデザインです。
更に言うと、「前面をカウルでガードし、その後ろにキャップなどを配置する」となっていますが、これはサーベルタイガーやヘルキャットにも通じるデザインです。
同じ軍のゾイドだから、やはり技術的に共通したものを感じたいと思います。それを思う時、ツインホーンの脚部は模範例になっていると思います。

この素晴らしいデザインの脚が、マンモスらしく「前脚は大きく」「後脚は小さく」バランス良く付いている所は最高です。
脚部以外にも、そういった見所はあります。鼻のディティールがザットンの首に似ている事なども特筆です。
そういった細部を詳しく見ると、ツインホーンのデザインは良く出来ているとも言えます。

側面から見た時の特筆点はもう一つあります。
中央部にエンジンが見えますが、反対側から見た時にその真価が分かります。

ちょうど、ゼンマイのツマミがエンジンの所から出てきます。なのでデザイン的に上手く処理されていると言えます。
ゼンマイ位置まで計算されてデザインされている事は素晴らしいと思います。


フェイス

顔付きは何ともマンモスです。

小型ゾイドとしては表情が過剰かなと思います。もう少し無機質な感じで量産機然とした方が、小型ゾイドらしくなったと思います。
ディティールも、少し過剰かなと思います。頭部のハッチ部分などは特に。
その一方、巨大な牙はディティールが何も無く、アンバランスな感じも否めません。もう少し全体のバランスをとって欲しかったと思います。

牙自体のラインも、いかにもマンモスらしい巨大で優雅なラインである一方、あまり戦闘的ではありません。
マンモスの牙があんなにも巨大になったのは、外敵の排除ではなくメスへのアピールという側面が強かったとの事。
確かに牙の先端が内側を向いているのは、ディスプレイ的には良いのですが戦闘的な意味は感じられません。
モチーフ再現や見栄えも大事ですが、ゾイドマンモス程度の「見栄えと戦闘的な部分のバランスを取った」ような形が良かったのではないかと思います。

帝国小型ゾイドにしては珍しく、共通コックピットを使用していないのも特徴です。この点はシュトルヒと共通し、皇帝親衛隊機ゆえの別格でしょう。
しかしシュトルヒが独自コックピットでありながら共通コックピットを思わせる造形をしていたのに対し、ツインホーンは全くの独自デザインになっています。
その為、モチーフに近いデザインを得ていますが、統一されたデザインという観点で見ると非常に残念です。

小型ゾイドとしては表情が過剰というのは、目があるのが最大の理由かなと思います。他の帝国ゾイドと同じように、左右繋がった感じにした方が良かったと思います。
実は内部的にはそうなっていますが、眉間の部分に盛り上がった装甲があるので、分割されたツインアイに見えてしまいます。

角度を変えると表情が変わります。


改めて小型ゾイドとしては表情がありすぎると感じてしまいます。眉間の装甲の盛り上がりを無くし、左右繋げた方が良かったと思います。
ただ鼻の付け根部分に帝国紋章のような形があるのは素晴らしいデザインだと思います。皇帝親衛隊機だから、なおの事そう思います。

頭部ハッチのディティールの過剰さは先にも書きましたが、ハッチ下部のハチマキ状の装甲及び中央の装飾は、何となく王冠を思わせます。
マンモスであるが、ガネーシャのイメージも多少入っているような気がします。

もう一つ、指摘しておかねばならない点があります。それは耳のディティールです。

耳のディティールは、ゾイドマンモスほぼそのままです。
これはよろしくないと思います。せっかく脚部で自軍らしいデザインという最高の事をやってのけたのに台無しです。
まぁ、「ゾイドマンモスを鹵獲しコピー小型化した」と解釈できない事も無いとは思います。
ただ、ゾイドマンモスの耳は3Dレーダーと設定されており、ツインホーンの耳は特にそういった設定はありません。
やはりアンバランスです。あるいは、設定されてないだけで実際は3Dレーダーであると解釈しても良いとは思いますが。

頭部はコックピットになっており、開くと中に兵士が乗っています。開き方は共通コックピットと同じような、後方に開くタイプです。
操縦は1名で行います。この部分からも、ツインアイにした事に疑問を感じます。
何故ならば、眉間の装甲の盛り上がり部分はちょうどパイロットの真正面であり、わざわざ視界を塞ぐような配置に感じるからです。
あくまでツインアイにするなら、いっそ2人乗りにしても良かったと思います。
もともと帝国機はキャノピー越しに外を見るものではなくディスプレイ越しに見るものなので、これは的外れな指摘かもしれませんが。

ツインホーンの頭部は、良いところもあるが、全体的に詰め込みすぎているのに煮詰めは足りていない印象で、かなりアンバランスな出来だと思います。


武装

「ツインホーンには華が無い」とは先に書きましたが、兵器的には素晴らしくバランスの取れた傑作だと思います。
さすが皇帝親衛隊に抜擢されただけはあるなという感じです。

格闘兵装として牙や鼻を持ち、何より大パワーを持つ為、ゴドスと五分に渡り合えます。
火力も豊富。またミサイルや広範囲をカバーできるビーム砲を持つ為、正面だけでなく対空能力もそこそこ以上のものを有します。
トータルでバランスが取れているのは凄い事です。
またそのスタイルゆえ、積載量も優れているのではないかと思います。
余談ですが、グスタフの登場以前、共和国のゾイドマンモスは「輸送用」と記述された事が何度かあります。

ビーム砲は、そのまま前に撃つと自分の頭を撃ち抜いてしまいそうにも見えます。
実際は、前に撃つ時は「前脚をかがんで腰を立たせて撃つ」ような生物らしい動きが行われていたのでしょう。
そういった事を想像させてくれる配置だと思います。

武装は強力ですが、バランス良く取り付けてあります。その為、モチーフのラインからはほとんど逸脱しておらず、秀逸と言えます。
逆に、バランスが取れすぎているゆえに、もう少し武器を大きくするなどしてメカニカルを強調する遊びがあっても良かった気もします。

いずれにしろ兵器的に完成度の高い機体であるというのは確かだと思います。
格闘力を持ちつつ、砲力も持ちつつ、対空性能も持つというのは、後にブラックライモスに引き継がれています。


マンモス型

既に何度も書いたようにマンモス型です。
ゾイド初期の頃のトミーは象が好きだったのかな?と思います。というのも、この時代のゾイドは象系ゾイドがかなり多いです。
エレファンタス、ゾイドマンモス、ツインホーン。

ツインホーンのデザインは、これまで書いたように異質に感じる部分が多いです。
思うに、ツインホーンには開発者のある想いが込められているような気がします。

エレファンタスはそもそもメカボニカ時代の開発で、鼻が無いなど様々な問題がありました。
大型ゾイドマンモスも、ビガザウロの大半の部品を流用している関係で、顔と鼻が繋がっていないとか、前脚と後ろ足の大きさの差を付けにくいとか、そもそもバッテリーボックスの形がマンモスらしいラインではない等、様々な制約の中苦心して作られた事が伺えます。
そこへきて三機目の象系ゾイド、ツインホーン。
今度こそモチーフを徹底して再現しよう、という意気込みが感じられます。

今まで出来なかった分、徹底してモチーフに忠実に。
今までの帝国ゾイドとの共通感よりとにかくモチーフ再現を。
頭部形状といい、よりマンモスらしい牙といい、前後足の大きさの差と言い、モチーフのシワさえもメカのディティールに使用する徹底さ。

その結果、逆にモチーフを再現しすぎてまとめきれなかった感じがします。
とはいえ、意欲作であるのは確かだと思います。


ギミック

ゼンマイを巻くと元気に動きます。

ギミックは、平均的な出来です。連動ギミックとしては、頭の角度を上下させながら歩行します。

下向きと上向きではこれ位の差があります。

手動ギミックとしては、鼻の角度を変える事が出来ます。

付け根のみの可動ですが、角度はなかなか大きく付きます。必要にして充分という感じです。

連動ギミックの頭部角度と手動ギミックの鼻角度を併せると、かなり大きな差が生まれます。

やはり鼻が特徴の生物。この可動は嬉しいです。

その他は、耳とビーム砲が動きます。

耳は大きく動きます。

180度くらい可動します。
正面のディティールはゾイドマンモスに酷似していますが、裏面はリベットが付いており、増加装甲のようにも見えます。

ビーム砲は、左右の砲がそれぞれ動きます。

左右独立して動くのは嬉しいです。ただ仰角は変更できますが、左右に旋回させる事は不可能です。
この構造だと、左右への旋回も欲しかった所です。良いギミックですが、惜しいと思います。

ギミックとしては以上で、スタンダードな部分は抑えてあるし過不足は無いものの、少し物足りない。やはり平均以上ではないと言わざるを得ないと思います。


戦歴

戦歴は、正直、いまひとつぱっとしていない印象です。登場回数は限りなく少ないです。
皇帝親衛隊という設定の割に、バトルストーリーでは一度しか登場していません。
しかも皇帝親衛隊としてではなく、「共和国の少年団に鹵獲される」という悲惨な役割で登場しており、物悲しさを覚えます。

ただ学年誌を探すと、そこそこ活躍していました。

学年誌では、帝国首都防衛戦でその姿が確認できます。この時、大パワーを活かし壁を突き破って登場。ゴドスを倒しています。
しかし倍する敵に善戦したものの劣勢を覆すには至らず、帝国首都はけっきょく攻略されてしまいます。
学年誌だと、話のつなぎ方的に、「ツインホーンが善戦し時間を稼いだからこそシュトルヒが脱出する事が出来た」ようになっており、まさに皇帝親衛隊としての役割を全うしています。
最高の役割で、願わくばバトルストーリーにも収録して欲しかった所です。
それにしても、後年の機獣新世紀ゾイド エレファンダーといい、帝国の象は勇壮かつ悲壮な戦歴が多いです。

その他、雪原でゴジュラスを迎え撃った姿も確認できました。
シュトルヒが空から狙い、ゴジュラスが上空に気を取られた瞬間、ツインホーンとサーベルタイガーが一斉に突撃するという構成で、手に汗握る熱い戦いです。
この戦いは、小一に掲載されたものですが、「帝国首都付近の敵部隊をおびき寄せる為、あえて囮役となったゴジュラス。主力部隊とは別行動を開始し敵を引き付ける。帝国はまんまとだまされ戦力を繰り出してしまった」という風に描かれています。
この為、帝国首都は守りが弱くなり、ウルトラザウルスを中心とした共和国部隊の突撃を許してしまっています。

隠された戦いでは、なかなかの活躍をしています。雪原での戦いは失態とも言えますが…。
このあたりも是非収録され、親衛隊の活動を広く伝えて欲しかった所です。


親衛隊 ツインホーン

正直、かなりアンバランスな部分は否定できないゾイドだと思います。
アンバランスと言えば、デザイン的にはモチーフのマンモスに極めて忠実ですが、大きさは小型です。
デザインはともかく大きさ的にはマンモス的ではありません。
大きさのイメージが違うという点もアンバランスな部分かもしれません。

個人的にはそのアンバランスさに奇妙に惹かれる部分もあります。
大きさも、小象というか、ある種可愛らしいイメージ感じられて好きです(小型ゾイドはある程度かわいい方が好きです)。

ただやはり、トータル的にアンバランスであったのは否定しがたいです。
機体設定もデザインも、良い部分はありますが煮詰めが足りない部分が多く感じられます。
ギミックももう一工夫欲しいと思います。
しかし良い部分は本当に良いと胸を張れるゾイドです。
そういった部分を引き継いだゾイドが続々誕生すれば良いと思います。


バリエーションモデル

 ゾイドグラフィックス ツインホーン


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