メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 戦闘機械獣 サイカーチス<SAICURTIS>

■サイカーチス(ビートル型) データベース■

 発売年月 1986年3月  発売当時価格 780円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 EMZ-23

 スペック 全長11.9m 全高3.7m 全幅11.2m 重量17.4t 最高速度390km/h 乗員1人

 主な武装
  長射程ビーム砲 小口径加速ビーム砲(×2)

 特徴
  コックピット周辺は、防弾板がなく、とても最前線任務は無理で、主に後方から自走砲として味方の援護にあたった。
  その6本の足の安定した姿勢により高い命中性能を示した。


前後より

ゼネバス帝国が誇るヘリ型ゾイド、サイカーチスです。
名称が秀逸な機体です。カブトムシの古名である「さいかちむし」をもじったネーミングで、センスに溢れています。

小型ゾイドは、カタツムリや亀など、身近に住む親しみやすい生物がモチーフになっているものが少なくありません。
サイカーチスもカブトムシという事で、身近な生物系のゾイドです。
カブトムシは少年に絶大な人気を誇る生物。いつの時代も大人気です。
そのモチーフを採用したサイカーチスは、それだけで特別の存在意義があると思います。

また、「カブトムシ型を帝国軍が作った」という事も、意義が大きいと思います。
帝国は、何故かトリケラトプス型ではなくスティラコサウルス型だったり、ライオンではなくトラだったり、少しだけマイナーな方へ流れる傾向があります。
昆虫界の二大巨頭と言えばカブトムシとクワガタだと思いますが、どちらかと言うとやはりカブトムシの方が王者の箔を付けられています。
そういった意味で、帝国がマイナーなクワガタではなく王者のカブトムシを採用したのは、意義があり注目すべき事だと思います。

昆虫型という事で、特徴的な6本足を持ちます。この脚部作り込みが素晴らしく、秀逸な仕上がりになっています。

シリンダーのリアルさや関節の表現など、これ以上無いほど凝っています。ゾイドデザインの極致だと思います。
またキット的な側面で見れば、シリンダー部分の造形が”埋まった”造形ではなく、抜きになって造形されているのが嬉しいです。

本物のカブトムシに比べれば太く、関節構造も異なっています。しかしメカとして良いアレンジに仕上がっていると思います。
ただ脚以外のパーツは、ディティールがやや少なめです。
脚部の出来の良さは確かですが、他と比べた時に落差を感じてしまうのは少し残念です。

羽を広げると、中からエンジンを思わせるパーツが出てきますが、エンジンがポンとあるだけというので、ちょっとリアル感に欠けます。

せっかく羽を開ける事が出来る…、内部を見る事ができる特殊なゾイドなのだから、造り込みは思いきり高めて欲しかったと思います。
また、後発機と比べるのは酷ですが、共和国軍ダブルソーダのように、内部に薄い羽が搭載されていれば良かったとも思います。


側面より

全体的には、ラインが非常に美しい曲線になっており、帝国らしいデザインをした一機だと思います。
ただ先に書いた通り、脚以外のディティールは、もう少し頑張って欲しかったようにも思います。

側面から見ると、ゼンマイのつまみが下面にあるのが分かります。
目立たない配置である為、美観を極めて損ねておらず、非常に良いと思います。

この時期のゾイドといえば、キャップを非常に多用しているイメージがありますが、サイカーチスのキャップは全て下面に付いており、あまり目立っていません。
やや異端な感じもします。サイカーチスを表すキーワードの一は「下面」かもしれません。


フェイス

頭部は非常に特徴的です。
角の付け根にコックピットがあり、パイロットが乗っています。サイカーチスのパイロットは一名なので、ここで全ての操作を行います。

特徴的なのは、何といってもむき出しな事です。
帝国ゾイドは伝統的に装甲式コックピットを使用していましたが、サイカーチスだけは全く防弾装備の無い、むき出しになっています。

尾部など末端の座席ならともかく、メインコックピットがこんなにも過酷な仕上がりをしているのは異例です。
あえて同じような仕様のゾイドを考えるなら、アタックゾイド位のものです。

むき出しなだけでなく、非常に細いので横に落ちそうです。もちろん本物はシートベルトなどしていると思いますが、それでも恐怖感は格別の機体でしょう。
しかもサイカーチスは飛行ゾイドです。
機体特性上、そこまで高空には行かないと思います。しかしそれでもこの細いコックピットにむき出し。飛行中は戦闘どころじゃないほど恐そうです。
共和国ゾイドでも、ここまで過酷なメインコックピットを持つゾイドは皆無です。
先に、「同じようなコックピットを挙げるならアタックゾイド」と書きましたが、総合するとアタックゾイド以上に過酷な気もします。

サイカーチスが発売された頃のゾイド販促冊子「ゾイドグラフィックvol.7」には、サイカーチスを主役にした短編戦記が収録されています。
そのストーリーは試作型のサイカーチス3機がテストフライト中に偶然にもサラマンダーを発見し…というものですが、挿絵が付いています。
そしてその挿絵のサイカーチスには、立派なキャノピーが付いていたりします。

なにゆえ試作機ではキャノピーが付いており、量産型はむき出しなのか……。

まあ、短編戦記の挿絵の通りに完成したら、それはそれで「帝国機なのにキャノピー式だ」となってしまいそうですが。
個人的には、帝国共通コックピットを使うべきだったと思います。

このクラスの帝国ゾイドのほとんどは、帝国共通コックピットを使用しています。例外はサイカーチス、シュトルヒ、ツインホーンの三機だけです。
この三機のうち、シュトルヒとツインホーンは「皇帝親衛隊所属機」という特別な存在だったから、独自のコックピットが許されていた所があります。
しかしサイカーチスは一般機。スペース的にも、装甲の内側は広大。
帝国共通コックピットを使って仕上げる事は容易だったと思います。そうなっていないのは、悔やまれる事だと思います。

さてカブトムシと言えば長い角ですが、サイカーチスはそれを長砲身の砲にしてあります。

先端のデザインは、なかなかモチーフに忠実な上にミリタリー感抜群で、カッコいいと思います。
砲身を守る防弾板が付いているのが、非常に上手いと思います。また操縦席の前の風防も、レクチルが書き込んであるのが”いかにも”な感じで良いと思います。

この砲は、このクラスとしては非常に強力かつ長射程の砲とされています。
サイカーチスの主任務は、この長射程砲を生かし後方の空中から敵を狙い撃つというものです。このように、実はサイカーチスは後方支援ゾイドです。
コックピットについても、これで一応は説明できます。
「最前線で戦うわけではなく後方から味方を援護するのが主任務。だからコックピットに防弾装備が無くても良い」
そうはいっても、帝国共通コックピットを使って欲しかったという思いが揺らぐものではありませんが。

ともかく、角まわりは良く出来ていると思います。
一方、カブトムシといえば力自慢の昆虫。ケンカで相手を投げ飛ばすパワーファイターです。角は格闘用の装備にしても面白かったのでは、とも思います。

サイカーチスの頭部でもう一つ思うのは、もしかして将来的な拡張をする予定があったのでは?という事です。
上側の角付近には、将来的な拡張を意識したような穴があります。

この穴を利用して、バリエーションを作るつもりだったのでは…。

カブトムシと言えば、周知の様に世界各国に様々な形のものがいます。
サイカーチスは日本のカブトムシをモチーフにしていますが、その他にもヘラクレス、アトラス、ネプチューン、ゴホンツノなどなど、様々なカブトムシが居ます。
もしかして、カスタマイズパーツで頭部に装甲をプラスし、他のカブトムシ型にする予定があったのかも…。

中でもヘラクレスオオカブトは、比較的容易に再現できそうな気がします。上側の角を伸ばせば良いだけなのだから。

実際にそのような拡張パーツが予定されていたのかどうかは不明です。
しかし色々な妄想を膨らませてしまう箇所だと思います。


カラーリング

カラーリングは、帝国小型ゾイド伝統の、赤と銀で構成されています。
しかしよくよく見ると、少し疑問な所もあります。

帝国小型ゾイドのカラーは赤と銀で構成されるものですが、もう少し厳密に言うと「装甲:銀」「メカ部分:赤」です。
こう考えると、疑問が沸いてきます。

頭部と羽部分はディティールの付き方が共通しており、おそらく同一の強度を持った部品と考えるのが妥当と思います。
モチーフから推測しても、共に「装甲」として捉えるべき部分だと思います。しかしこの部分は色が分かれています。
また、羽の下のエンジンなどは、明らかにメカ部分であるにも関わらず、銀色をしています。

アンバランスな部分があり、もう少し煮詰めて欲しかったように思います。
ただ、色合いとしては銀と赤の比率・対比が非常に美しいのも確かです。サイカーチスは、色法則の厳格さよりも色彩の美しさを優先させたのかなと思います。
確かに羽部分まで銀色にしてしまえば、機体に占める銀の割合が多くなりすぎ、現在のような色彩の美しさは失せてしまうかも…と思います。
ただその上で、色法則の厳格さと色合いの美しさを両立して欲しかった、というのが正直なところでもあります。


ギミック

ゼンマイを巻くと元気に動きます。
ギミックは、当時のトミーの自信作だったらしく、カタログに「本物以上のリアルアクションが魅力」という謳い文句で紹介された程です。
本物以上にリアルという表現は少し謎ですが…。

ギミックは、連動ギミックとしては羽を開閉させながら前進する というものです。
脚部は、前後の脚は動きますが、真ん中の脚は固定されており、実際は6脚ではなく4脚で歩行しています。
しかし前後の脚は大きく動きます。しかも動きが通常ゾイドと違い、水平方向に動かしながら前進するというものになっています。

通常のゾイドは、縦方向の回転で足を動かしますが、サイカーチスは横方向の回転で足を動かしています。
その結果、他にはない非常に独特な動きなっています。
その動きはシャカシャカという感じです。実際の虫に近いかと言えば疑問ですが「虫っぽい」かと言われたら、かなり高得点な動きです。
脚を水平方向の動かす関係上、歩行中は機体が横に揺れます。
その為、真ん中の足が動かない事は、あんがい違和感が無く気付かない。あたかも6脚で動いている風に見えるようになっています。

「虫の動きに近いわけではないが、とにかく虫っぽいのは確か」「4脚しか動いていないけど6脚とも動いている風に見える」
見事です。
ある意味、本物以上のリアルアクションのうたい文句は間違っていないかもしれません。

ただ羽を開閉させる連動ギミックは、少し疑問があります。
凝っているとは思いますが、個人的には角を上下させるギミックだった方が、よりカブトムシらしかったのではないかと思います。

サイカーチスの手動ギミックは、角の角度を上下できる事のみです(腹部のビーム砲はわずかに動きますが、ほとんど角度固定です)。
個人的には、角が連動で羽は手動 だった方が良かったと思います。なお後発のダブルソーダは、大あごが連動で羽は手動になっています。

総じて、歩行ギミックは虫っぽくて非常に良いと思いますが、その他はまだ改良の余地ありかなと思います。
特に、手動ギミックの少なさは寂しいと思います。


戦歴

サイカーチスの戦歴において最も有名なものは、バトルストーリー2巻における戦闘でしょう。
川を渡るバリゲーター部隊を空から急襲、あざやかに沈めてみせました。
ただこれ以外での描写は少なく、どちらかというと登場回数の少ないゾイドになると思います。

学年誌の方も見てみると、ロングレンジ砲を装備した改造ゴルドスに接近し、攻撃を仕掛けた事があります。

この後の戦闘結果は不明です。なにゆえ長射程砲を持ったゾイド同士が近接戦闘に入ったかは謎ですが、その辺りを想像してみても面白いと思います。

また先にも紹介しましたが、試作機がサラマンダーと交戦した短編戦記も、ゾイドグラフィックスVol.7に収録されています。
この戦いは、試作機が偶然にもグスタフおよび輸送中のサラマンダーを発見し、攻撃を仕掛けるというものでした。
サラマンダーが作中表現によると”オネンネ中”だったという事で、攻撃は見事に成功し、まんまと破壊しています。
起動していないゾイドを一方的に叩くものでしたが、サラマンダーを撃破する大金星を挙げているのは名誉な事です。

それ以外では、戦闘が描かれた事は確認できませんでした。
やはりこの機体は、基本的には後方から長射程砲で射撃を行う支援ゾイドだから、あまり表だって写る事が少なかったのかもしれません。
バトルストーリーは最前線の華々しい戦いを描く事に死力していた。ゆえに後方支援のサイカーチスが描かれる事は稀だった。
しかし、後方で支援に従事しているサイカーチスを想像してみるのも、なかなか一興だと思います。

直接戦闘以外では、山岳基地に物資を補給する支援部隊としても活動した事があります。
この時はカノントータスに撃墜されていますが、輸送用として物資を満載して飛行出来るほどのパワーが証明された、地味に貴重なシーンでもあります。


飛行自走砲 サイカーチス

ネーミングセンスや脚部の素晴らしい作り込み、帝国らしい美しい曲線を描いたラインなど、魅力の多いゾイドだと思います。
一方、もう少し作りこんで欲しい部分も多く、もう少し煮詰めて欲しかったと思うゾイドです。
カブトムシは子供にとって特別な意味を持つモチーフなだけに、なおの事そう思います。
また改めて、一応の航空ゾイドであるにも関わらず、コックピットの処理は頂けないと思います。

しかし、今に至るまで未発売ですが、拡張性を匂わせる個所もあり、今後の可能性も感じています。
いつか、改良された姿も見てみたいと思っています。


バリエーションモデル

 機獣新世紀ゾイド サイカーチス


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