メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 戦闘機械獣 シンカー<SINKER>

■シンカー(エイ型) データベース■

 発売年月 1985年7月  発売当時価格 780円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 EMZ-19

 スペック 全長10.8m 全高3.0m 全幅12.7m 重量26.6t 飛行最高速度M0.8~0.9 水上最高速度 約60ノット 乗員1人

 主な武装
  ホーミング魚雷(×4) 加速ビーム砲(×2) 大型ブースター(×2) 機銃(×2) 

 特徴
  帝国側に初めて登場した、飛行可能なメカである。
  共和国のサラマンダーのように、高々度を高速で飛行する事は出来ず、サラマンダーとのドックファイトは考えられない。
  しかし、水中から空中へとすばやく転換出来る能力がある。


前後より

帝国初の飛行ゾイドにして水空両用という異色のゾイド、シンカーです。

帝国初の飛行ゾイドとはよく言われますが、なにげに、水中用ゾイドとしても帝国初だと思います。
ザットンやゲーターは浅瀬くらいでは活動できそうですが、本格的に対応したのはやはりシンカーが初とすべきでしょう。
この機体の登場によって、陸海空全てのステージで、ようやく帝国は共和国と対等に戦えるようになりました。
記念碑的ゾイドだと思います。

マルダーに続く、帝国側の重装甲スペシャル級ゾイド第二弾です。マルダー、シンカーを見ていると、よくやったなぁと思います。
というのも、カタツムリとエイです。

重装甲スペシャル級といえば、従来の小型ゼンマイゾイド(580円)よりも定価がアップして登場した新しいゾイド(780円)です。
帝国軍小型ゼンマイゾイドは主に恐竜型で、子供が憧れるモチーフを多く採用しています。
当然、間口は広く敷居は低い。
しかし新しい高価格帯クラスである所の重装甲スペシャル級ゾイドはカタツムリとエイ。何とも野心的というか、凄い事だなぁと思います。

しかし完成度を見ると、とち狂って奇抜なモチーフを採用したのではなく、そのデザインに絶対的な自信があったからこそリリースしたんだなと理解できます。
素晴らしいデザインをしており、キワモノなモチーフをここまでメカニカルにカッコよく魅力的に仕上げられるのはゾイドだけだと思います。


側面より

帝国機らしい、なめらかな曲線美で構成されています。航空機としても潜水艦としても納得できるスタイルをしています。
特に、背中周りの抵抗を極限まで抑えたスタイルは何とも美しいです。

帝国らしい装甲と曲線は、エイのイメージと見事に合致しています。
それでいてメカらしさも存分にあり、デザインは秀逸だと思います。

装備の中で特徴的なのは、まず、あまりにも巨大なブースターです。
しかし翼下に備える事によって、上手く「モチーフのラインを殺さず」「しかしメカとしての主張はする」という相反する事を成功させており、秀逸です。
また翼下にあるので、フロートのようなイメージも含まれてデザインされていると思います。

機体後部キャップが、ジェットエンジンのノズルのような配置になっているのも面白いと思います。
シンカーは下部のロケットエンジンで飛ぶイメージがありますが、冷静に考えるとこの大きさロケットエンジンで飛んだら一瞬で燃料が尽きてしまいそうです。
おそらく、通常時はキャップ位置からの推力噴射による飛行を行い、離水時や急加速などの必要時に大型ブースターを使用するのではないかと思います。


フェイス

頭部にはコックピットがあります
モチーフのエイのこの部分は口ですが、シンカーは共通コックピットが埋め込まれています。
ちょっと強引な処理ですが、デザイン的には上手く処理されており違和感はありません。秀逸です。

共通コックピットは、ぐいっと前に出す事が出来ます。

設定上、高速で飛行する際はひっこめるとの事ですが、戦闘中のシーンを見ると、全てひっこめています。
このように出した状態で活動しているシンカーを見つける事は出来ませんでした。高速飛行時といわず、活動時はひっこめるのが基本なのでしょう。
前に出す時は、コックピット開閉時です。

前に出した状態だと、共通コックピットを開くことができます。引っ込めた状態だと、上部装甲がつっかえて開きません。

コックピットを開けると、中にはもちろん、パイロットが入っています。
シンカーのパイロットは1名で、全ての操作をここから行います。なにげに、水空で両用できる機体だけに、その操縦難度の高い機体だと思います。

コックピットの両脇には、加速ビーム砲がついています。狙いが付けやすそうな配置で、綺麗にまとまっていると思います。


上下より

デザインは改めて秀逸です。
装甲の銀とメカ部分のゼネバスレッドのバランスが非常に美しく、惚れ惚れします。
また、下面から見ても見栄えが保たれているのは秀逸です。

下面から見ると、翼部分に肉抜きがされているのが見えてしまいます。
しかしあからさまな肉抜きという感じではなく、航空機の翼の桁(スパー)のように見せており、見事だと思います。

翼下に4つ吊り下げたホーミング魚雷が、”いかにも”な感じで大好きです。デザインがコバンザメを模してあるのも、遊び心たっぷりで良いと思います。

この魚雷自体も、上手くメカとコバンザメを融合させた秀逸なデザインをしていると思います。

水中航行時に使用するスクリューや舵の配置もよく分かります。
スクリューや舵は、実在の船と同じ配置になっておりリアルさを感じます。舵の角度が実際に変えられるのも嬉しいです。
スクリュー造形は特筆モノで、本物と同じように「ねじれ」が入った造形になっており、玩具とは思えないリアルさを誇ります。

それゆえ、シンカーは実際に水に浮かべ、走らせて遊ぶ事が出来ます。この点、いかに当時のトミーがギミックにこだわっていたかが伺えます。

全体的な銀と赤のバランス、曲線美とメカニカルな部分の対比の素晴らしさは先に書きましたが、細かい部分でも良く出来ています。
装甲のディティールは秀逸で、耐圧性の高そうに見えるようになっています。
また、翼の丸モールドなどはどこか未来的なデザインでもあり、それらが複合してシンカーの素晴らしいデザインを作っています。

もう一つ、三連キャップを採用した初のゾイドという点も見逃せません。
三連キャップは、後にアイアンコング、マッドサンダーなどにも採用されています。
「力強さの象徴」とも言われる三連キャップですが、最初に採用したのがシンカーという事は記憶しておくべきでしょう。

シンカーは、当時の雑誌で原画が公開されています。

おおまかには製品版と変わっていません。最初から確たるイメージがあった事が伺えます。
しかし初期のスケッチ(左)は、頭部側面と三連キャップ部分が少し違っています。また、当初は共通コックピットはシルバーの予定だったようです。
「魚雷をコバンザメ型に」というアイデアは、初期の頃から既にあったようです。


帝国軍初の航空ゾイド

帝国初の飛行ゾイドにして、モチーフはエイです。
確かにエイは翼のようなものがあり飛びそうに見えます。というか実際、水面からかなりの距離をジャンプする事があります。
それでも、エイを飛行ゾイドのモチーフにしてしまうというのは何とも大胆です。

シンカーは一気に水と空を制覇した画期的名機です。ですがゼネバス帝国の技術水準の高さを感じると同時に、ゼネバス帝国の限られた国力も感じてしまいます。
つまり各方面の専門ゾイドを二種類作るのではなく、一機で両方カバーできる万能機を作らざるを得なかった台所事情を感じてしまいます。

まぁともかく、どういう事情があったにせよ画期的な機構を持った革新的名機であるのは確かだと思います。
そして、非常にゾイドらしいなぁと思う機体です。

設定上、最高速度がせいぜい亜音速で、空戦専門のペガサロスには遠く及ばないようになっているのが、また良いと思います。
これで空戦でペガサロスに圧勝する上に水空両用だとなれば、強すぎて萎えてしまったと思います。
万能兵器であるがそれゆえに特化できていない設定も秀逸だと思います。


ギミック


ゼンマイを巻くと元気に動きます。
ギミックはよく出来ています。連動ギミックとしては、翼を羽ばたかせながら、スクリューを回しながら、高速で車輪走行します。
こう書くとたいした事ないように感じますが、先に書いたようにシンカーのスクリューは実物と同じような「ねじれ」が付いています。
その為、水に浮かべてゼンマイを巻くと、実際に泳がせて遊ぶ事が出来ます。シンカーのギミックの真骨頂は、水に浮かべた時にあります。

シンカー自体は問題なく水に浮きます。

大型ブースターの中に発泡スチロールが入っており、これにより沈まないようになっているのです。
といっても、遊んだ後はよく乾かした方が良いのは当然です。

「実際に泳げる」これは既にアクアドンやフロレシオスが実現していたギミックですが、帝国機としてはシンカーが初です。
そしてゾイド初ではないとはいえ、やはり実際に泳げるというのは何機目であってもインパクト絶大です。

手動ギミックは少なめで、ホーミング魚雷の着脱と舵の角度変更、コックピットの開閉です。
魚雷の着脱は、この機体は○発撃った…みたいなゴッコ遊びを盛り上げてくれます。
舵は、泳がせる際にシンカーの方向を操る事ができます。

総じて、リスト化して書き出すと大した事ないギミックになるかもしれませんが、実際に遊ぶ分には素晴らしいギミックだと言える機体です。


戦歴

戦歴は最高級です。これでもかという程、活躍しまくっています。

初陣は共和国新鋭のバリゲーターを中心とした艦隊を襲撃するもので、これを一方的に仕留めて鮮やかなデビューを果たしました。
余談ですがバリゲーターにとってもこれが初陣です。

その後も、帝国のエース”ゴードン”率いる部隊が活躍を続け、ペガサロスと激しい空中戦を繰り広げています。
この時期、学年誌では「無敵」という言葉で紹介された事もあります。

共和国が対シンカー用戦闘機のプテラスを就役させてからは、さすがに被害が目立つようになります。しかしそれでも主力戦闘機として活躍を続けました。
第一次中央大陸終結の際には、ゼネバス皇帝および生き残りの兵を暗黒大陸へ運ぶ重要な任務を担ったのは有名なところです。

D-DAY以降も活躍を続けており、シュトルヒが全く登場しない中、爆撃機仕様が登場し、共和国バドリアンウォール防御線を突破するなど活躍を続けています。
学年誌を見ると、更に活躍しています。なんとレドラー就役前はデスザウラーの上空警護も務めていたりします。

シュトルヒが涙目で見ている気がします。
しかしレドラー就役後はさすがに登場シーンが一気に減り、ついに任務を受け渡した事が伺えます。

それにしても大活躍です。
シュトルヒを抑えて主力戦闘機の座に位置し続けたのは驚異的です。
ここから、シンカーの使い勝手の良さ、兵器的完成度の高さ等を想像しても面白いと思います。逆に、シュトルヒの事を想像しても面白いと思います。

もちろん、プテラスに苦戦したのは事実だし、サラマンダーへの対抗としては全く力不足であったのも確かです。
苦しい戦いも経験した機体でもあると思います。
しかし、それでもなおシンカーは主力として運用され続けた。これらの戦歴を見るに、シンカー史上稀に見る傑作機だと思います。


水空両用 シンカー

デザイン的にも設定的にも戦歴的にも素晴らしく、またエイが飛ぶという意外性も素晴らしくゾイドらしい仕上がり。
全ての面が高次元にバランスの取れた傑作ゾイドだと思います。
その姿は永らく記憶されるべきで、また今後もこのような傑作ゾイドが誕生する事を願ってやみません。

このようなゾイドが居るからこそ、ゾイドワールドは魅力的だと思います。


バリエーションモデル

 機獣新世紀ゾイド シンカー


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