メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 戦闘機械獣 ザットン<ZATTON>

■ザットン(恐竜型) データベース■

 発売年月 1984年12月  発売当時価格 580円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 EMZ-16

 スペック 全長:10.1m 全高:8.7m 全幅:4.0m 重量:25.5t 最高速度:150km/h~180km前後 乗員:1人

 主な武装
  連装電磁砲 3連衝撃レーザー 機銃(×2)

 特徴
  装甲重視したために、ゲルダー以上に重量が増加し、機動性が非常に低下したために、主に後方支援、輸送、偵察用に使用される。


前後より

帝国軍の偵察・輸送用ゾイド、ザットンです。
帝国小型ゾイドシリーズの中では最終号機です。次ラインナップからは、マルダーを筆頭にした重装甲スペシャル級に移行します。

小型ゾイド最終号機だけのことはあり、同クラスでは最もボリュームのある造形になっています。
ただ機体は輸送や偵察に使用される後方支援系の仕上がりになっており、最終号機=最強ではなく、部隊をバックアップするポジションに落ち着いているのは面白いです。

設定は気になります。
「装甲重視したために、ゲルダー以上に重量が増加し、機動性が非常に低下したために、主に後方支援、輸送、偵察用に使用される」
これを見た時、欠陥機なのかと思いました。

おそらく、「装甲を重視した=もともとは最前線で戦う機体を造ろうとした」という事だと思います。
しかし理想だけが先行し無理な設計をした結果、メカ生体のパワーを超える程の装甲重量になってしまい、前線での運用に耐えられない鈍重さになってしまった。
アンバランスな仕上がりになったザットンは、せめて後方で使用されたのだった…。
そんな風な想像をしました。

前級のゲルダーや本機ザットンは、設計にやや「?」な部分が目立ちます。
ただ、これらを技術的過渡期の帝国ゾイドとしてみると、非常に面白くもあります。


側面より

設定的な部分はともかく、デザインは均衡のとれた素晴らしい仕上がりをしています。

モチーフはブラキオサウルスでしょう。ひときわ長く伸びた首や大きな前脚が特徴的です。
首が長い恐竜といえば、ビガザウロやハイドッカーなど、共和国側でも好んで採用されたモチーフです。
基本的にモチーフを分ける傾向の強かった初期において、非常に珍しい事例です。
しかし、両軍ゾイドのシルエットを見ると、傾向の違いが色濃く出ており非常に興味深いです。

共和国側は、とにかく全身を長く優雅に作っています。また、前脚と後脚に大きさの差があまり無いのも特徴です。
対し帝国側は、前脚と後脚の大きさの差を大きく付けるとか、全体的にこじんまりとまとめるといった傾向にあります。

詳しくは後述しますが、ザットンは、ゲルダーから多くのパーツを流用して作られています。
尾部もザットンのパーツが流用されています。
ザットンがブラキオサウルスにしては短い、こじんまりとした尾部を持つのは、その為でもあります。

ともかく、両軍で似たモチーフを用いているからこそ見えてくる設計思想の違いであり、比べると非常に面白いです。


フェイス

頭部は、帝国共通コックピットをストレートに使用しています。
ブラキオスの顔はこれといって特徴があるわけでもないので、まあ妥当な判断かなと思います。
強いて言えば、頭頂部にコブのようなパーツを足しても面白かったかもしれません。

高い位置にコックピットがあります。
設定にある通り、偵察時には高い威力を発揮した事でしょう。

共通コックピットを開けると、もちろんパイロットが入っています。

ザットンのパイロットは1名で、全ての操作をここから行います。


ゲルダーと共に

先にも書きましたが、前級のゲルダーと、多くのパーツを共通化しています。
「パーツの多くを流用し別の機体を作る」のは、既に共和国ゾイドでも多く行われており、べつだん新しい試みではありません。
しかし帝国ゾイドとしては、このザットンが初の例です。

側面から比べると、パーツの流用具合がよく分かります。

脚部、砲、尾部が共通しています。
それでいて全く別の機体に仕上げているのだから、大したものです。

ボディは流用でなく、ザットン独自のデザインになっています。しかし様々な所が進化していると思います。
ラインが、より帝国らしい丸みを帯びた優雅なラインになっています。比べると、ゲルダーは直線的な処理が多く、帝国機にしては無骨さがかなり残っています。
側面には、両者とも大きな排気口を持ちます。しかし、ザットンのものの方が優雅というか綺麗にまとめています。
この辺りの仕上がりは、さすが最終号機だなと思います。

ただ「パーツを流用しているゆえに」残念な部分もあります。
ゲルダーの尾部は全て排気口のようなディティールで処理されており、内部的な機構があまり見えてこないという弱点があります。
その弱点は当然、パーツを流用したザットンにも受け継がれています。
ザットンは、その尾部とデザイン的な統一を図る為か、首までも全て同様の処理にしてしまっています。
同様に、内部的な機構があまり見えてこず、あまり良くない個所だと思います。
ここは非常に惜しいです。

ザットンの砲は、全てゲルダーから流用されています。なので、武装は全て同じとなっています。
ゲルダーの主砲だった連装電磁砲は、背中に付いています。

微妙に角度を変える事が出来ます。ただこの角度だと、対空射撃は少々厳しそうです。
設定上、後方支援にも使用されるザットンですが、おそらく支援砲撃をこの砲で行った事でしょう。
砲身は後を向いており、旋回は不可能です。なので、後ろを向いてから砲撃した事と思います。
後ろを向いて発射するというのはかなり奇異ですが、なにしろこれだけ大型の砲です。反動を抑えるためにはこのような搭載方法しかなかったのかもしれません。
かなり後になって、ガンスナイパーなど「後ろを向いて主砲を発射するゾイド」が幾つか登場しましたが、ザットンこそがその元祖なのは特筆事項です。

ゲルダーは隠し武器として三連砲が付いていましたが、ザットンにも同じ武装があります。

同じように、スライドレバーが付いています。位置は背中、連装電磁砲の間です。
このレバーを前に倒すと、胸部から砲がせり出してきます。

ゲルダーの場合は、「装甲が開いて三連砲が出てくる」でしたが、ザットンの場合は最初から見えており、「せり出してくる」のみです。
隠し武器といった感じは失せましたが、それでも、発射時にこんな風に動くのかな…と想像すると、なかなか面白いです。

「パーツの多くを流用した」という観点で見ると、ザットンがまたひとつ違った見え方になってきます。


ギミック

ゼンマイを巻くと元気に動きますが、ギミックは、やはり初期のゾイドらしくアッサリ目です。
連動ギミックとしては、歩くだけですが、ザットンから多くのパーツを流用している以上、仕方ない点だと思います。

手動ギミックは、三連装砲の展開と、連装ビーム砲の仰角変更、コックピットの旋回、コックピットの開閉です。
手動ギミックに限れば、なかなか頑張っています。
中でも、コックピットの旋回が可能なのは重要です。長い首の先の顔が自在に動く。これにより様々な表情が付けられます。

総合すると、手動ギミックがある分、このクラスとしてはそこそこ高評価なのかなと思います。


戦歴

戦歴は、ほとんど登場シーンが無く寂しいものになっています。バトルストーリーや学年誌にはほとんど登場しません。
唯一、レッドホーン率いる機甲師団に随伴しているシーンが一枚だけ確認できました。
改造レッドホーン(ブルスタイン)がビガザウロを倒すシーンで、よく見ると奥の方に映っています。

このシーンは、ゾイドバトルストーリー1巻のものだと、顔以外見切れています。しかし学年誌版だとかろうじで全身写っています。
貴重な登場シーンです。

この他では登場シーンを一切見つける事が出来ませんでした。ほとんど目立たない地味なゾイドだったのは否めません。
最初期の戦いを除き一切の活躍シーンが無いとは…。
ただ設定にある通り、後方支援や輸送任務では少なくともある程度は活躍していた事と思いますが。

戦闘機械獣のすべてやHistory of ZOIDSでも、戦闘シーンは描かれていません。
残念ながら帝国小型ゾイド最終号機にも関わらず、大した活躍が無いまま、他の機体より先に一線を退いたのは否定出来ません。

非常に惜しいなと思うのは、ザットンに海上航行力の有無が設定されなかった事です。
ビガザウロ、ウルトラザウルス、ブラキオスなど、同モチーフの機体は海上航行力を持つことが多いです。
ザットンも、このような能力があってもおかしくないと思います。しかし残念ながら設定されていません。
もしあったとすれば、アクアドンやフロレシオス、バリゲーターなどと海戦を繰り広げるシーンが想像できるので非常に美味しかったと思いますが…。


帝国小型ゾイド最終号機 ザットン

帝国小型ゾイド最終号機ですが、有終の美を飾ったというよりは、最後に来て崩れてしまった感じは否めません。

第一号マーダは高速性を活かし偵察から攻撃まで幅広く運用され、また改造タイプも多く生まれました。運用期間はD-DAY以降でも確認できます。
第二号ゲーターは、その電子戦能力で本格的な夜戦を可能にするなど大活躍しています。偵察の他、砲撃能力の高さを活かした運用も多く確認できます。
D-DAY上陸作戦ではディメトロドンに随伴し作戦成功の一翼を担う名誉に伏しています。
第三号モルガは、小型ゾイドでは最も多くが生産され各地で運用されています。改造タイプも多く生まれています。
第四号ゲルダーは、かなり活躍が少なかったのは否めません。しかしレッドホーンに随伴する姿は複数確認されており、運用期間はD-DAY以降でも確認できます。

マーダ、ゲーター、モルガは間違いなく傑作と言えます。
ゲルダーはやや問題作ながら、かろうじで運用が続いた…。しかし五号機ザットンだけはいい所があまりにもありません。
ゲルダーもザットンも、モチーフ的には大人気の恐竜を用いています。それが先に出た三機を超えられなかったのは皮肉です。

デザインはそこそこの完成度を誇っていると思います。だがバトルストーリーでの退場はあまりにも早かった。
非常に申し訳ないですが、ザットンの状況を見ていると、初期帝国ゾイドの特出した傑作ぶりが改めて認識できるものです。

ちなみに、活躍が無く早々退場してしまったザットンですが、意外な所では後々まで活躍しています。
それは遠景モデルです。

ウルトラザウルスの遠景用モデルとして、当時はよくザットンを改造したミニウルトラが作られていました。
よく見ると、ザットンを改造してあるのが分かると思います。
ちなみにこの画像はミニモデルの宝庫で、サーベルタイガーはヘルキャットの、アイアンコングはハンマーロックの改造です。

まぁ、ザットンとしては自分ではなく自分が演じた敵機の方が長く登場しているのは複雑だったと思いますが…。


バリエーションモデル

 ゼネバスメモリアル


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