メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 重装甲攻撃型 ブラキオス<BRACHIOS>

■ブラキオス(恐竜型) データベース■

 発売年月 1987年9月  発売当時価格 1000円  動力 Hiゼンマイ

 型式番号 EHI-05

 スペック 全長12.6m 全高12.6m 全幅5.8m 重量48.8t 最高速度140km/h 乗員1名

 主な武装
  ビームキャノン砲 水密コックピット ビーム砲 小型機銃 ソーラージェネレーター サブジェネレーター レーダーシステム

 特徴
  水陸両用の重戦闘ゾイドでボディは厚い装甲で守られている。格闘戦には不向きだが、後方支援や海戦時には強力な戦闘能力を発揮する。
  頭部のソーラージェネレーターは補給の受けられない長期にわたる作戦行動時や背部の主砲発射時のエネルギー供給に重要な役割をはたしている。


前後より

帝国軍類陸両用メカ、ブラキオラスです。ザットンいらい久々の、首の長い帝国ゾイドです。

特徴として、水陸両用ゾイドです。
同じく水陸両用ゾイドであり、なおかつ登場時期が近いシーパンツァーと比べると、サイズは一回り大きいにもかかわらず戦闘力で劣っています。
特に、格闘用の装備を全く持たない為、接近されればなす術がありません。
しかしその分、ワイドなボディを活かした輸送力は高く、また、ソーラージェネレーターを搭載している事により長期間の活動能力を有しています。
実戦での有効性は非常に高い機体と言えます。
戦闘力は低いが役に立つ量産機。華々しい機体が多い帝国Hiユニット級にあって珍しく、通好みの渋い設定をした機体です。

デザインは、いかにも重装甲といった感じのフォルムが魅力的です。
実際、直接戦闘を得意としないブラキオスですが、防御力は中々のようで、ゴドス程度の攻撃では撃ち抜けないとされています。
装甲は丸みを帯びたいかにも帝国らしい曲面で構成されており、スタンダードな帝国デザインになっています。
首が長いからある意味当然ですが、キャップの使用率も高くなっており、その意味でも非常にゾイドらしいデザインです。
特徴的な部分は薄いですが、いかにも帝国ゾイドだなという感じがします。

カラーリングは銀と赤を中心に構成されていますが、内部フレームは黒になっています。
旧来、このカラーのゾイドは「銀と赤の二色だけ」で構成するのが鉄則でした。しかしブラキオラスに関しては、3色目の色・黒を加えたのは正解だったと思います。
黒いパーツがボディを引き締めている風に見え、配色のバランスは非常に美しいです。

また、赤の色合いも要注目です。
先にリリースされていたウオディックも、銀と赤のカラーリングを採用していました。しかし赤の色合いは原色に近い鮮やかな赤でした。

しかしブラキオスの赤は、旧来のゾイドと同じゼネバスレッドになっています。
このような色の差が何ゆえ起こるのかは謎ですが、ゼネバスレッドの落ち着いた色合いの魅力を改めて認識します。
ちなみに、ブラキオスはゼネバスレッドを使用した最後のゾイドになります。

デザインもカラーも、非常にスタンダードにまとまっています。
ただ全体的な完成度としては甘い部分もあり、ブラックライモスほどの傑作機ではないとも思います。
ブラックライモスは細部に至まで全くスキの無いデザインをしていたと思いますが、ブラキオスにはそこまでの詰めはないように感じます。


側面より

デザインは改めてスタンダードなものを感じます。
全体的なバランスを見ると、尾部は少し短い気がします。もう少し長く伸ばした方が優雅な感じが出たと思います。
ですが、尾部が短めというのは、ザットンと共通するシルエットです。
ザットンが尾を短くしていたのは、ボディパーツをゲルダーと共通化していたからであり、仕方の無いものでした。
しかし他の機とパーツを共通化する必要が無い、完全に専用パーツのみで構成されたブラキオスが、わざわざザットンと同じように尾部を短くしているのは興味深いです。

前脚が大きいのも特徴的ですが、よくモチーフの特徴を取り入れてあります。前足が大きいというのも、ザットンと共通しています。
同モチーフを使用した同軍のゾイドとして、デザインには共通性が強く意識されているのでしょう。

ザットンと共にモチーフはブラキオサウルスですが、思えばこれはなかなか面白い事です。
というのも、帝国と共和国は、モチーフを使い分ける傾向があります。そんな中で、こと首の長いカミナリ竜だけは、両軍とも積極的に採用しています。
すなわち共和国軍はハイドッカー、ビガザウロ、ウルトラザウルスであり、帝国軍はザットンとブラキオスです。
しかし両者のデザインを見てみると、面白い事も見えてきます。

帝国側は「前脚を大きく造る」「尾部は短く、全体的にこじんまりと造る」傾向があります。
対し共和国側は「前脚と後脚に大きさの差はあまり無い」「全長はとにかく長く大きく優雅に造る」事を心がけているように見えます。

あくまで大きく仕上げる共和国側と、コンパクトにまとめ上げる帝国側。この対比がよく分かります。
同系のモチーフを使用しているからこそ見える両軍の設計思想の差が見え、非常に面白いです。


フェイス

ブラキオスの頭部デザインは何とも特徴的です。
目にあたる位置に巨大な穴が空いており、鉄格子のような線が並んでいます。
その為、何とも印象的で恐ろしい印象を受けます。ただ 個人的には、この目の処理はあまり好きではありません。
見ようによっては、眼球をえぐり取られて縫い付けられたように見えます。
ストレートすぎたとしても、きちんとクリアパーツでそれなりの大きさの目を入れたものの方が好きです。
例えばデスザウラーのような表情の一切無い目で凄味を出すのは良いと思いますが、ブラキオスのものはやりすぎてしまったと思います。

目以外では、頭頂部にソーラージェネレーターがあるのも特徴です。

設定として、これで太陽エネルギーを吸収出来ます。それをエネルギー源として、ブラキオスは長期間の単独活動を可能としています。
これは、特に海上での活動時に威力を発揮します。補給が無い状態でも広い洋上を長期間行動可能というのは、計り知れない有効性があったでしょう。
海上戦力と言えば、代表格は共和国側のウルトラザウルス。ウルトラザウルスは、もちろん長期間の海上行動を可能としていますが、それは超大型であるゆえのものでした。
ブラキオスのソーラージェネレーターは、中型でありながら大型ゾイドに何とか対抗しようとした帝国の苦労が伺えます。
また同時に、それを実現してしまった帝国のテクノロジーの高さも伺う事が出来ます。

ソーラージェネレーター…、太陽エネルギーを利用するシステムと言えば、少し後に登場するレドラーも、「太陽エネルギー吸収翼」なるものを持っていました。
同時期に登場したゾイドに共通した設定の装備を与えているのは非常に良い事だと思います。

ちなみに、「頭頂部に長期間の行動を可能にする装備を付ける」というのは、モチーフと一緒に考えると面白いです。
モチーフであるブラキオサウルスですが、実は頭頂部に鼻があります。
メカ生体ゾイドの時代、ブラキオサウルスは水中で生活していた恐竜であり、頭頂部だけを水の上に出し呼吸していたのだろうと考えられていました。
それゆえにブラキオサウルスは長時間、水の中でも活動出来る…。鼻の位置からこう推測されたわけです。
これを長期間の活動を可能とする装備・ソーラージェネレータとして取り入れたのは、なかなか面白いと思います。

頭部でもう一つ特徴的なのは、頭部がコックピットではない事です。
ほとんどのゾイドは頭部にコックピットを持ちますが、例外的にブラキオスは頭部コックピットを持ちません。

メタ的な事を言うと、ブラキオスの頭部は口の開閉ギミックを持ちます。
にも関らず子顔なので、これ以上内部に余裕が無く、パイロットを入れるスペースが確保できなかったという問題があります。
頭部を大型化すると、細い首で支えているブラキオサウルス型という都合上、頭だけが変に大きいというデザイン上のアンバランスを生んでいたでしょう。
加えて、頭部を大きくすると重量が増加する=首のギミックに支障が出るという問題もあった事でしょう。
これらの理由から、ブラキオスの頭部にはコックピットが無いものになっています。

コックピットは、背中にあります。首の付け根の少し後ろに、いかにも潜水艦といった感じのハッチがあります。
ハッチを空けると、おなじみの銀色パイロットが座っています。

ブラキオスのパイロットは1名で、全ての操作をここから行います。居住性は中々良さそうに見えます。

ゾイドのコックピットは基本的には頭部にあって欲しいと思います。その方が”らしい”と思います。
しかしブラキオスの場合は、戦闘用としてはあまり適していない設定と、海上で長期間の行動が可能という設定があります。
それと照らし合わせると、このコックピット配置は大いに納得できるものがあり、アリかなと思います。


ザットンと共に

同じ同モチーフのザットンと並べると面白いです。
シルエットがほぼ同じな上、カラーリングも同じという事で、いかにも後継機という感じがします。
ただ、ザットンが海上航行可能かどうかは設定が無く不明ですが…。

ザットンと比べると、武装配置に共通性があるのが面白いです。
どちらも、胸部と背部に砲を持ちます。しかしどちらも、より高い造り込みに進化しているのが素晴らしいです。

胸部の砲は、単純な筒の並びといった感じだったザットンと比べ、圧倒的な造り込みになっています。

このリアルな感じがたまりません。一部左右非対称な所も見逃せません。

背中の砲も、より高い造り込みになっています。

背中の砲は、通常時は装甲で覆われています。装甲を開けると、砲を展開する事が出来ます。
展開させた砲は、360度旋回するし、仰角/俯角も自由自在です。
ザットンの砲はわずかに仰角を変える事が出来るだけでしたが、それと比べると素晴らしい進化を果たしています。

海戦シーンを想像する上で非常に嬉しい装備です。
ウルトラザウルスとの戦いを考えると、強力な砲を持つが前方にしか撃てない上、大型ゆえに運動性能では劣るウルトラに対し、威力では大きく劣るものの砲の可動性は良く、しかも小型ゆえに小回りは利くブラキオスという構図があり、非常に燃えます。

展開する砲というとシールドライガーのものと似ていますが、シールドライガーは装甲が縦開きだったのに対し、ブラキオスは観音開きに開きます。
同じような構造を作らせても細部で違わせる。両軍の差が良く出ている秀逸な箇所でもあります。

配置が機体の中心線上にあるので、前に向けて撃てないのでは?と言われる事もあります。
おそらく前に向けて発射する際は、首を前に倒すなり横にズラすなりといった、キットでは出来ない可動をみせて撃つものと思います。
そういったシーンを思い浮かべても面白いです。

ただ難点を言うと正直、砲身のデザインはあまり好きではありません。
砲身は造りこみも激しく良いデザインだと思いますが、発射口は縦の仕切りが多数並んでおり、砲としてのデザイン意図を少し図りかねます。

微妙な難点はあるものの、ブラキオスの武装は素晴らしい完成度だと思います。
前任機のザットンと武装配置が同じという事は、間接的にザットンが成功機だった事も伺えます。

ザットンとの共通性は先に書いた通り素晴らしいものですが、他にも「いかにも帝国的」と思える箇所があります。それは尾部です。

尾部デザインですが、まず付け根の黒いパーツ…、放熱フィンのような部分ですが、これはデスザウラーなどでも見られるデザインです。
同時期に登場したゾイドが同じデザイン処理がされているというのは、”らしさ”があり、非常に素晴らしい事です。
全体的なデザインは、イグアンやゲーターの尾部に酷似しています。

付け根の排気口や、全体的なラインなどが、いかにもテクノロジーのつながりを感じさせます。
旧来のゾイドとの共通性を出しつつ、新鋭デスザウラーと共通したデザインも併せ持つ。とにかく色んな要素で帝国らしさを感じます。
このようなデザインは最高で、ブラキオスにおいて特に入念にデザインされた箇所が尾部だと思います。


詰めの甘さ

デザインには傑作と思える個所も多い反面、細部では弱点も多い機体だと思います。
特に、脚部のデザインが気になります。

膝から下は、皮膚のたるみを意識したようなデザインになっていますが、今一つな仕上がりだと思います。
決して悪くはないデザインだと思いますが、今一つだと思うのは理由があります。
ゼネバス帝国の小型4足歩行メカの脚は、ゲルダー(ザットン)→ツインホーンと進化しています。

この二機の脚部を並べた時、テクノロジーの共通性がありつつ確かに進化している事が感じられます。
願わくば、ブラキオスの脚部は、このデザインをさらにもう一歩進めた物であってほしかったと思います。
ブラキオスの尾部は、旧来の機体から発展したようなデザインになっています。脚部もそうであれば最高だったと思います。
逆に言うと、そうなっていない上に、ブラキオスの脚部デザインはゲルダーやツインホーンの物と比べて作り込みが薄いと感じる為、難点として感じます。

また、キャップの使い方も問題があります。
ディティールをぶち抜いてキャップがあり、この時期のゾイドにしては全く配慮が無い悪い例になってしまっています。

良い点は装甲の付け方だと思います。脚部付け根をガッチリとガードしているようで、素直に良い配置です。
クリアパーツの配置も気持ち良く、スナップフィットの穴すらも上手くデザインに溶け込ませているのは秀逸です。
ただ、ソーラージェネレーターがこの部分にあるのは、設定と照らし合わせると少し疑問でもあります。

頭部のものは太陽エネルギーを集めるのに最適な位置だと思います。
しかし脚部のものは海上航行時には海に浸ってしまい太陽エネルギー吸収の用途では使えるものかどうか…。
デザイン的には良いのですが、設定的には少しちぐはぐな感じもあり、惜しいです。

脚部は、詰めの甘さが非常に多く目立つ箇所だと思います。


ギミック

ゼンマイを巻くと元気に動きます。ギミックは優秀です。
連動ギミックとしては、首を大きく動かしながら、口を開閉させながら前進します。

首の動きは、ゼンマイ機ながらあのウルトラザウルスと同等のギミックを達成しており、凄まじい出来です。

可動範囲はウルトラザウルスとほぼ同等です。口は、首を下げた時は閉じ、引き起こした時は大きく開けます。これもウルトラザウルスと共通する仕様です。
首の可動を実現する為に、首には動力伝達用パーツが仕込んであります。付け根付近の黒い弓状のパーツです。
このパーツが、デザイン的に見事に処理されているのも秀逸です。

強いて難点を言うなら、首の形状は最大まで引き起こした状態が最も見栄えが良いと思います。
しかしゼンマイゾイドである関係で、ゼンマイが回りきった時「首が下がった状態で停止してしまう」事がよくあります。

こういう状態で止まってしまうとちょっと悲しいです。
ゼンマイゾイドは電池を使用する電動ゾイドと違い、好きなポーズの時に止める事が困難です。
ブラキオスは首が大胆に動く関係で、止まる時のポーズが非常に悩ましいゾイドでもあります。

手動ギミックとしては、先に書いた通り背中の砲を動かす事が出来ます。それと、コックピットハッチの開閉です。
少し少なめですが、砲のギミックが改めて素晴らしい為、こちらでも及第点をつけられると思います。
総じて、優秀なギミックを持つ傑作だと思います。


戦歴

ブラキオスの戦歴は地味めです。

キットの発売日は、あのデスザウラーと同日ですが、バトルストーリーではデスザウラーより少し遅れて登場しています。
ブラキオスのカタログでのキャッチコピーは、「デスザウラー率いる部隊の主力メカ」でした。
ですが、実際はデスザウラー率いる部隊の主力はブラックライモスが務めたようで、ブラキオスがデスザウラーと共に行動・戦闘しているシーンは確認できませんでした。
ただ、ブラキオスの特性は「戦闘力は高くないが輸送力は高い」「海上での運用が可能でしかも長期間の活動が可能」です。
実戦部隊ではなく後方部隊としては大活躍だったのかもしれません。
補給物資の輸送や偵察など、帝国24部隊と共に影からデスザウラーを支えた名機…、そういった意味でいえば立派に主力メカであったと解釈したいところです。

裏方での活動が多かったからか、バトルストーリー、学年誌ともに活躍シーンは少なめです。
しかしウオディックと共に、貴重な海軍戦力として描かれています。

このシーン学年誌に掲載されたものですが、バトルストーリーにも収録されています。しかし興味深い事もあります。
バトスト版だと「囮役で自動操縦のバリゲーター」と戦っていますが、学年誌版だと「物資や食料を輸送中のバリゲーターに攻撃を仕掛け、補給路を断った」となっています。
ブラキオスにとっては、貴重な見せ場です。この後、ウルトラザウルス大艦隊とプテラス飛行隊に圧倒されるのは同じですが…。

学年誌のみの活躍シーンは、今のところ確認できていません。やられシーンすらも見つかりませんでした。
やはり前線での活動は少ない、裏方での活動が多かった機体なのでしょう。

しかしその後、改良型のブラキオスNewが製作され、帝国最強部隊でも運用される事になります。
これはやはりブラキオスが傑作である証でしょう。
前線向きの機体ではないが、行動力が高く輸送力にも優れるブラキオスは、華やかさは無いものの使い勝手の良いゾイドなのだと思います。


水陸両用 ブラキオス

傑作と思える場所が多い一方、詰めの甘さも目立つ機体だと思います。
そういった部分を総合すると、良いゾイドではあるが傑作にはあと一歩及ばなかったように思います。

帝国共和国共に、Hiユニット級は傑作が揃っています。
そんな中にあって、地味な存在であると言うのは否定しきれない部分があるように思います。
良い部分は本当に素晴らしいので、願わくばそれらを改修したver.を見てみたいと思っています。

ただ甘い部分もあるゆえに改造のしがいはあるし、後方で威力を発揮するという地味ながら渋い魅力にあふれた設定は、非常に魅力的なものでもあります。
そういったものを想像し、思い入れを増やしてゆきたい機体でもあります。


バリエーションモデル

 メカ生体ゾイド ブラキオスNEW

 機獣新世紀ゾイド ブラキオス


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