メカ生体ゾイド ガイロス暗黒軍 特機支援型 ヘル・ディガンナー<HEL DIGUNNER>

■ヘル・ディガンナー(イグアナ型) データベース■

 発売年月:1989年3月  発売当時価格:1000円  動力:中型ゼンマイ

 型式番号 DHI-11

 スペック 全長:24.5mm 全高:5.8m 全幅:6.5m 重量:48.0t 最高速度:130km/h 乗員:1~2名

 主な武装
  収光ビーム砲、連動衝撃砲、連装レーザー、四連装パラライザー、72mm対空砲、レーダーシールド

 特徴
  暗黒大陸軍機甲部隊所属メカ。軍団編成時に支援の役割をする。また水陸両用で、機動力にも優れ、単独でのゲリラ戦も得意とする。
  背部に発光体エネルギーを利用した強力な収光ビーム砲を装備し、後方警戒用に72mm対空砲を備えている。
  接近戦では、パラライザーで敵の動きを封じ、強力な爪と牙で装甲を切り裂く。


前後より

暗黒軍ゲリラ戦メカ、ヘル・ディガンナーです。
デッド・ボーダーと共に登場し、暗黒軍の衝撃参戦を印象付けました。

Hiユニット級ゾイドは比較的メジャーなモチーフを採用する傾向にありますが、そんな中でイグアナというなかなか際どいところをついたチョイスに驚かされます。
暗黒軍の衝撃登場。これを思えば大々的にメジャーなモチーフを使いそうなものなのですが。
しかし、暗黒軍の不気味さを示した良いチョイスだと思います。

地を這う独特の姿勢。中型らしからぬ大型の武器。そして極太パイプや蓄光パーツ。
これらにより、他にはないインパクトを放っています。
デッド・ボーダーの影に隠れがちですが、ヘル・ディガンナーも暗黒軍のイメージ作りに大きく貢献した名機と言えるでしょう。


側面より

側面から見ると独特の低姿勢がよく分かります。
そして他に例を見ない長い尾も目立ちます。
尾の長さは機体の不気味さの印象を高め、また低姿勢さをより強調しています。

この長い尾のおかげで、全長は24.5mと大型ゾイド並になっています。この数値はシールドライガー(21.6m)やサラマンダー(24.1m)をも凌駕します。
もちろん同クラスのゾイドでは最も長い数値です。
ただし全高はわずか5.8mしかなく、同クラスのゾイドではウオディックに次いで二番目に低いゾイドになっています。

長い尾は非常に特徴的かつ美しい仕上がりです。
全体を見ても、頭部から胴体、そして尾に行くに従い徐々に細くなっているラインが優雅です。
しかし優雅なラインの中に突如として異質な巨砲が付いています。この対比が実に面白いデザインです。

ちなみに全高5.8mというのは砲を含んだ高さです。
本体だけなら更に低姿勢になります。
ヘル・ディガンナーは、低姿勢を活かして岩場などに隠れる、そして砲だけを出して撃つといった戦法も可能です。

側面から見るとまた、暗黒軍特有の蓄光パーツ(ディオハリコン)をチラ見せするデザインもよく分かります。
蓄光パーツのチラ見せといえばデッド・ボーダーです。
デッド・ボーダーの蓄光パーツは「サイズが小さくパーツ数が多い」という仕様でした。必然的に細かい造りになり、見事なチラ見せ具合になっていました。
しかしヘル・ディガンナーは、パーツ数が他のHiユニット機と同程度に抑えられています。
それでも、巧みなパーツ構成で見事なチラ見せを実現しています。

パーツ数を抑えながらもこの完成度。ヘル・ディガンナーのデザイン性にいかにこだわりが払われたかが分かります。


フェイス、コックピット

頭部は非常に特徴的です。
率直に言ってイグアナらしさはほとんどありません。
特に牙がびっしりと生えた口はイグアナから離れています。イグアナは確かに鋭い歯を持ちますが、一本一本が小型かつ付き方の関係でほとんど見えない程です。
 
全体的にツルっとした仕上げもイグアナのイメージから離れています。イグアナならもう少しゴツゴツしたディティールがあった方が”らしい”でしょう。
デューラップ(喉のヒラヒラ)が目立っていないのも残念です。

しかしこれはあえてと思います。
超兵器ゾイドを使う未知の暗黒軍。その象徴を担ったのだから、「原型を留めぬほどに徹底的に兵器化改造する」という仕上げにしたのでしょう。
それは正解だったと思います。

モチーフへの忠実さを抜きにすれば、非常に魅力的なデザインをしています。
全体的にシャープなライン、ビッシリ生えた恐ろしい牙、笑みをたたえたような目、不気味なバイザー。
これらが複合して何とも言えないゾクゾクしたデザインになっています。

コックピットはキャノピー式ですが、共和国ゾイドのようにピッチリはまるタイプではなく、閉めた時も若干の隙間ができる仕様です。
個人的には「バイザー」と呼んだ方がシックリきます。

バイザーは後方に開きます。
ただし、背中の砲が干渉するのでそこそこしか開きません。もう少しガバッと開いた方が個人的には嬉しかったです。

が、過不足という程ではありません。パイロットの搭乗/降機をするには十分な開き具合です。

バイザーを開けるとおなじみの兵士が入っています。
ヘル・ディガンナーのメインコックピットであり、操縦は基本的に全てここから行います。

 

バイザーは開閉時の弱点として、先に書いた通り「背中の砲に干渉してそれほど開かない」「ぴちっと閉められない」事が挙げられます。
前者はまぁ良いとして、後者は割と気になります。


閉めても若干の隙間ができているのが分かると思います。
これが、「隙間ができても気にならない」ようになっているなら良いでしょう。しかし浮いた感じになっているので、どうにも気になってしまいます。
ちょっと不安になるというか……。
それとも…、この違和感・モヤモヤ感さえも「暗黒軍ゾイド」というイメージの一環なのでしょうか。

 

コックピットといえばもう一つ。
先ほど、ヘル・ディガンナーの操縦は基本的にすべて頭部から行うと書きました。
が、「基本的に」と書いたように例外があります。
尾部には銃座式の72mm対空砲があり、ここにパイロットを載せる事が可能になっています。

ただし、キットにはパイロットフィギュアは1名分しか付いていません。
察するに、頭部コックピットからの操作も可能。しかし専用の砲手を配置した方が命中率が良いという感じでしょうか。
ハイテクなイメージのある暗黒軍ですが、旧時代感漂う銃座式対空砲を備えているのはちょっとアンバランスで面白いです。

ちなみに対空砲パーツは旋回可能で、ごっこ遊びをする際は良いギミックになっています。ただし仰角の調整はできません。わずかに惜しいです。


デッド・ボーダーと共に

デッド・ボーダーとは登場時期が全く同じ。またペアで行動する事も多くありました。
この二機は並べると非常に絵になります。
シールドライガー&コマンドウルフに並んで、ゾイド史上最高に絵になるペアだと思います。

その不気味さ、特徴的な蓄光パーツをチラ見せするカラー、極太パイプを使ったデザイン、凝った造形の大型砲、バイザーなどなど。
シルエットは全く異なる両機ですが、デザインの方向性は完全に一致しています。

この二機が並んで衝撃登場をした時のインパクトたるや、凄まじいものがありました。


暗黒軍的デザイン

何度も書いていますが、本当に暗黒軍ゾイドらしいデザインをしています。
それが不気味であり、そして底知れぬ強さを秘めたゾイドという感じを演出しています。

背中の装備は特に印象的です。

凝った造形をしています。左右非対称なのも見逃せません。
ゴチャゴチャとしていながらも、後部はカウルで覆われており非常に綺麗にまとまった印象でもあります。

多くの砲や照準器から成った複合装備ですが、中でも最も大型の砲は「収光ビーム砲」と設定されています。
これはディオハリコンで吸収した光をエネルギーに変換して放つ強力砲です。
砲は大型ゾイド並みのサイズがあり、小サイズながら大型強力装備を持つ暗黒ゾイドという印象を強くしました。

この他にも武器を満載しています。
牙や爪は強力な武器で、格闘戦時に威力を発揮します。砲撃戦を格闘戦の両方で高レベルを達成している設計は見事です。

更に、喉元にはパラライザーがあります。この装備も要注目です。

パラライザーとは麻酔銃の事です。まずはこれで敵を弱らせ、そしてから破壊するのでしょう。
ヘル・ディガンナーは最高速度が130km/hで、それほど速いわけではありません。
しかしベアファイター(200km/h)部隊を一方的に倒す描写なんかも存在します。
おそらくこれは、先制でパラライザーを撃ち込み、動きが鈍ったベアファイターを血祭りにあげたのでしょう。

ヘル・ディガンナーはイグアナ型ゾイドですが、モチーフとはかけ離れた超攻撃的な能力をしています。
イグアナというよりコモドオオトカゲのようです。特に、パラライザーで敵を弱らせるあたりはコモドオオトカゲのイメージに極めて近いです()。
※コモドオオトカゲの狩りは特徴的で、獲物を一気には倒さない。まずは何度か噛みつき、この時に毒を注入する。
 その後一旦離れるのだが、獲物が毒で弱ったタイミングで再び襲いかかり完全に仕留める。

ディオハリコンを搭載したゾイドです。
思うに、元々はイグアナ的性能のゾイドだった。しかしそれでは戦闘用として不足だったので、ディオハリコンで無理やりコアを活性化してまるでコモドオオトカゲのような超攻撃的性能にしたのだと思います。


フェルチューブ、キャップ

武器の他にも見るべき所は多くあります。
極太パイプ(フェルチューブ)を全身に使っています。これもまた初期暗黒軍らしいデザインです。
全身を駆け巡るフェルチューブはヘル・ディガンナーの強さに説得力を与えています。

一方でフェルチューブは防御上の難もあります。しかしこれも、「防御には目もくれず攻撃面だけをひたすら追い求める暗黒軍」という感じがして好きです。
またフェルチューブだけでなく、全体的に防御力はそれほど重視していない設計に見えます。
頭部バイザーも被弾したらすぐに吹き飛びそうだし、装甲もそれほど強そうには見えません。ゼネバス帝国のブラックライモスやブラキオスの方が被弾には強そうです。
ただし、低姿勢なのでそもそも被弾しにくい事は優れています。
ヘル・ディガンナーは、「低姿勢で敵の砲撃をかわす」そして「やられる前に強力な攻撃力でもって先に倒す」事を目的にしているように思えます。
実に暗黒軍らしい感じがします。

その他では、脚部のキャップの使い方が好きです。

キャップがある位置に「受け」が作ってある、キャップありきのデザインになっているのが好印象です。
ヘル・ディガンナーのキャップ使用数は5つ、これは決して多い方ではありません。しかし使い方についてはかなり絶妙です。

非常に残念なことに、この先に出るゾイドはキャップの使い方が唐突で違和感のあるものが増えるようになりました。

ジーク・ドーベルはサスペンションをえぐりながら付いているし、ガル・タイガーは付き位置が唐突すぎます。
デザインだけを考えると、むしろキャップが邪魔になってしまっています。
ヘル・ディガンナーの素晴らしいキャップ処理を見ていると、後のゾイドのキャップ軽視がとても残念に思えてきます。


ギミック

Hiゼンマイを巻くと前進します。
連動ギミックは中々の完成度を持ちます。
口を開閉しながら、背中の巨砲を前後に動かしながら歩行します。
スタンダードなギミックではありますが、背中の巨砲が動く姿はインパクト大です。「この一撃を叩き込むゾイドだ」という事が伝わってきます。


砲の動きはこの程度。かなり大きく動きます。
また口の開閉もかなり大きめです。

手動ギミックは少なめで、尾部銃座の回転、尻尾の可動、バイザーの開閉です。
ただし尻尾の可動は範囲が大きく、ポーズ付けの表情を飛躍的に豊かにしています。不足は無いと言えるでしょう。

総じて、抜きん出てた出来ではないものの、基本を抑えた優秀な仕上がりだと思います。


戦歴

戦跡は華やかさに満ちています。
デッド・ボーダーと共に衝撃登場し、しばらくの間は無敵時代を謳歌しました。
ディオハリコンの恩恵で、同クラスのあらゆるゾイドを寄せ付けない強さを見せています。


ベアファイターもこのクラスでは最強レベルのゾイドですが、それを一方的にこうも倒すとは驚きです。

緒戦では、旧式化が目立っていたゴジュラスやウルトラザウルスにも積極的に攻撃を仕掛けています。

さすがに単独で倒す力はなく、罠を使うあるいはデッド・ボーとの共同での戦果です。しかし、それでも凄まじい戦果と言えるでしょう。

しかし活躍したのは登場からしばらくの間だけで、ガンブラスター登場頃を境に登場シーンが極端に減りました。
それ以降、ほぼ登場しなくなってしまい、あれだけ猛威を振るったヘル・ディガンナーはどうしてしまったのだという状態になりました。

……デッド・ボーダーは、ヘル・ディガンナーと同じく登場からしばらくは猛威をふるい、無敵時代を謳歌しました。
こちらはガンブラスター登場を堺に攻略法が確立され、連戦連敗のヤラレメカに転落しています。

ヘル・ディガンナーは、デッド・ボーダーのようにヤラレメカになる事はありませんでした。しかし、そもそも登場しなくなってしまいました。
登場さえしなくなったのは寂しいです。
ヤラレメカとはいえ、その後も継続登場したデッド・ボーダーの方がマシだったと思うか。
あるいは、登場こそしなくなったが「逃げ切った」と思うか。
それはユーザーそれぞれでしょう。個人的にはヤラレ役でも構わないので登場して欲しかったと思いますが。

ただ、ヘル・ディガンナーは設定がゲリラ戦メカです。
それを考えると、むしろ緒戦のような派手に表立って活躍していた時期の方が異質だと言えます。
おそらく、緒戦は自身の性能が敵に知れていない居ない時期なので、それを活かして未知のゾイドとして存分に暴れまわった。
しかししばらくして性能詳細バレてくると、本来の任務であるゲリラ戦メカの配置に戻った。
それゆえその時期を境に画面に写らなくなっていったという事なのでしょう。

また、水陸両用メカでもあります。
さすがにウオディックほどの本格海戦能力はないと思いますが、それでも貴重な海軍戦力です。
暗黒大陸に上陸する共和国部隊を迎撃する機会も多かったと思います。
緒戦を除いて表立って描かれる機会の少なかったヘル・ディガンナーですが、そのように想像し補填しておきたい所です。


ゲリラ戦メカ、ヘル・ディガンナー

暗黒軍の斥候として、デッド・ボーダーと共に果たした意義は絶大でした。
弱点はモチーフへの忠実度が低い事ですが、「暗黒軍」という事を踏まえれば、むしろ強みですらあります。
忠実度が低めだからこそ、過度な改造でゾイドを超兵器化する暗黒軍のイメージがよく出ています。
本来なら弱点になる要素、普通ならゾイドとして致命的になるであろう要素。しかしこれを積極的に使って魅力に変える。
そんな巧みな攻めの姿勢が大好きです。

デザインは改めて魅力です。
至るところに満載した武器。不気味なフェルチューブ。キャップの処理。長く優雅な尾。
様々な要素が合わさってヘル・ディガンナーを作り上げています。

また、やはりこのカラーは大好きです。
鮮烈な黒と緑。ディオハリコンをチラ見せするデザインは、いかにも暗黒軍な感じがします。
結果として言えばこのカラーは引き継がれなかったのですが、今でも暗黒軍と言えばこのカラーを思い浮かべるユーザーは多いと思います。
それほどまでに衝撃的なカラーだったという事でしょう。
暗黒軍の名を聞くと、デッド・ボーダーと共に真っ先に思い浮かぶ名機です。


バリエーションモデル

 機獣新世紀ゾイド ヘルディガンナー

 ゾイドリバースセンチュリー ヘルディガンナー


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