帝都防衛航空隊 13


帝国首都での決戦、しかし戦いは一方的であった。
大軍で押し寄せる共和国軍、対して防衛部隊の戦力は明らかに少ない。
大半の戦力と人員は地下格納庫に退避している。今地上で戦っているのは、一部の決死隊だけなのである。

敵は前衛を小型ゾイドにしていた。瓦礫の山と化した首都では小さい方が動きやすい。
ゴドスが索敵を行い、カノントータスが突撃砲を浴びせ、ガイサックが生き残りに襲い掛かる。
敵ながらあっぱれのチームワークであった。
迎撃するレッドホーンは足場が悪く機動力を発揮できない。まごつく間に接近され撃破を許した。
こうして共和国軍は猛攻した。

壁が突破され、戦いはゼネバス宮殿の庭に移った。
勢いは一向に衰えない。ついに宮殿前の最後の部隊が力尽きた。
共和国軍は歓声を挙げて内部に乗り込んだ。ここでゼネバス皇帝を探し、捕えるつもりなのだろう。

我々はその様子を地下から見ていた。
突破は予想以上の速度だった。 だが、推移は予定通りでもあった。

-あれを起動せよ-
ゼネバス皇帝はそう指示した。
あれとは宮殿内にある最後の切り札、ブロンズコングであった。
アイアンコングを自動操縦化した機で、起動後はエネルギーの続く限り敵味方を識別せず暴れ続ける。

灰色の巨像が突如として動き出した。
像が動き出す。そんな怪奇現象に面食らう共和国軍を睨みつけ、ブロンズコングは咆哮した。
迷わず一直線に突撃してゴドスを握りつぶす。パンチでカノントータスを吹き飛ばし、ガイサックを彼方に蹴り飛ばした。
王宮内は大混乱に陥った。

周囲の小型ゾイドをあらかた片付け、ブロンズコングは宮殿の外に飛び出した。
指令本部に突撃し、ウルトラザウルスに格闘戦を挑む。
突然の事態に対処できないウルトラ。その間に太い腕を首に回し、万力のように締め付けた。
首が軋み、顔は苦しそうに天を仰いだ。
やれ、やってしまえ。
モニターを見つめながら思った。

ブロンズコングが奮闘を続ける中、皇帝が再び声を挙げた。
いよいよ、作戦決行の時が来たのだ。

皇帝は皆を前に最後の訓辞を行った。いや、最後というのは語弊がある。区切りの訓辞である。
-屈辱に耐え帰還を待ってほしい。必ず祖国を奪還する、そして勝利を得る-
訓辞を聞きながら、誰もが拳を握り肩を震わせていた。

訓辞が終わると同時に一斉の敬礼。
皇帝は答礼し、そしてシュトルヒがある格納庫に向かっていった。
ついて行く事はできない。我々はここに残り帰還を待つのである。

皇帝は、途中で一度だけ振り向き私を呼んだ。
-君のおかげで計画は完成した。深い感謝をしたい-
そう言って右手を差し伸べる。
勿体ないお言葉です、そう返してしっかりと手を握り返した。

-今日が新たな戦いの最初の日になるのだ-
皇帝は頷き、そしてもう二度と振り向かなかった。
私はついに堪えきれなくなって泣いた。

皇帝が移動してからしばらく、ズシンと巨大な足音が上から響いてきた。
この深さの地下格納庫の天井が揺れている。これだけ巨大な足音を立てるのはウルトラザウルスかゴジュラスか。
そう思っている内にキャノン砲の轟音が響いた。
ウルトラキャノン砲とは感じが違った。という事は新型ゴジュラスだろう。
予想は当たっていた。モニターには二門のキャノン砲を撃つ砂漠色のゴジュラスが映っていた。
ブロンズコングは胸を撃ち抜かれ、仁王立ちのまま壮絶に果てた。

ブロンズコングは一時的な混乱を与えたに過ぎなかった。
だがそれは十分な時間稼ぎであった。
この間に皇帝はシュトルヒの置かれた場所への移動、そして発進準備を済ませていた。

皇帝は、トビー・ダンカン少尉にバレシアまでの”荷物輸送”を命じた。
宮殿中庭から、シュトルヒを載せたカタパルトが伸びた。
ロケットブースターに点火、離陸。
凄まじい勢いで空を貫く。警戒飛行中のプテラスは全くもって対応できていない。
遅れて気付き全力での追撃を試みたが、ブースターでM3を叩き出すシュトルヒに追いつく事はできなかった。

 

翌日、共和国のあらゆるメディアは帝国首都攻略を伝えた。だが、それ以上にセンセーショナルな情報を強調して伝えた。
「ゼネバス皇帝、首都からの脱出に成功」「赤い皇帝専用機、北へ消える」「バレシア基地にシュトルヒ着陸」
作戦は成功したのである。

 

(最終話へ)

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