ゾイドワイルドの動力を考える-動力ボックス編2-

今回は、前回のコラム(ゾイドワイルドの動力を考える-動力ボックス編1-)に続いて更に動力ボックスを見ます。

前回は、主にメカ生体ゾイドとゾイドワイルドの動力ボックスを比べました。
意図的に機獣新世紀ゾイド以降をすっ飛ばしていました。今回はそこの部分を補足します。

まずゾイドワイルド動力ボックスのサイズから。
小ささに驚いた動力ボックスですが、実は機獣新世紀ゾイドでも小さな動力ボックスはあります。


バーサークフューラーの動力ボックスはコチラ。
ワイルドよりはわずかに大きいですが、大型ゾイドを動かす動力ボックスとしてはかなりコンパクトです。
が、これは電池が別の場所に収納という事に触れねばなりません。

電池収納場所をプラスするとこの通り…。
ゾイドワイルド動力ボックスの凄いところは、「電池収納スペースを含めてこのサイズ」というところでもあります。

 

「電池収納スペースを含めて小型」といえばディメトロプテラやレオゲーターなどが採用した「TB8」もあります。

これはゾイドワイルド動力ボックスとほぼ同じサイズです。使用する電池も単四×1と同じ。
ただし、これはモーターが超小型タイプです。おそらく種類は「マブチFF-M20VK」と思われます。

小サイズのモーターで小サイズ動力ボックスにしたのだから、凄いのだけど当然でもあります。
またTB8には少し問題もあって、サイズゆえにかなり非力です。
ノーマル状態でいっぱいいっぱい。改造して装備を増やせば歩行に支障をきたしてしまいます。
このサイズのモーターは、例えば「Nゲージ」なんかを動かしたりするには適しています。が、そこそこの大きさのゾイドを歩行させるには余裕がありません。
TB8を持ったゾイドはブロックスの規格に対応しています。拡張が極めて容易。それでいて装備増で動かなくなるのはちょっと悲しい……。

ただもちろん当時このサイズを実現したのは凄く革新的な事だったし、折りたたんだり伸ばしたりできる機構もダイナミックでした。
馬力に問題は抱えつつも、野心的で魅力的な動力ボックスな事は確かです。

 

さて先ほどモーターの種類について触れました。
TB8以外の動力ボックス(多くのゾイドが使っている標準的なもの)は、どんなモーターを使っているのでしょう。
ゾイドのモーターは「マブチ130モーター」「マブチ140モーター」のいずれかを採用するのが標準です。
130モーターが基本で、ゴジュラスやデスザウラーなどの超大型ゾイド用には140モーターが使われています。

左は右はゴジュラスの動力ボックス(140モーター)、シールドライガーの動力ボックス(130モーター)。
130も140も非常にメジャーなモーターなので、破損しても代品購入・修理がしやすいのは大きな利点です。

ゾイドワイルドのモーターはどうなっているでしょう。

マブチ130モーターを使用しているようです。
このモーターは、登場以来今に至るまで定番商品として広く使われています。品質も高く保たれています。
需要はまだまだ快調。おそらく最低でも今後も何十年かは使われ続けるでしょう。このモーターを選択したのは大いに妥当です。

ゾイドワイルド動力ボックスの大きさについて言うと、「電池込みでの小サイズ」「標準サイズのモーターを使いながらTB8並のコンパクトさ」が凄いと言えます。
中の作りも丁寧です。機獣新世紀時代の動力ボックスよりも丁寧な感じがします。(→参照)
ギアに付けるグリースの量も最適な感じ。今回、生産はベトナムになっていますがその影響でしょうか。
あとは耐久性ですが、これは数年経ってから結果が出るでしょう。良い結果が出れば良いのですが、これは現段階では何とも言いかねます。

 

話を機獣新世紀ゾイドの動力ボックスに戻します。
機獣新世紀ゾイドでは多くの新型ゾイドが誕生しました。
それに伴い、新型動力ボックスも多く誕生しました。それの駆動軸はどうなっているでしょう。

ジェノザウラー、バーサークフューラー、ダークスパイナー、ゴジュラスギガ。
これらのゾイドの動力ボックスはニ軸。メカ生体ゾイド末期に起こった「ニ軸化」はこの時代にもスタンダードとして受け継がれているようです。

ギミックは、メカ生体ゾイド末期に比べれば随分頑張っている印象です。

※動力ボックス写真はジェノブレイカーのもの(色以外は全く同じもの)

ジェノザウラーは、口を開閉し、腕を振り、爪を開閉し、尻尾を大きく振りながら歩きます。
初の前傾姿勢ティラノサウルス型ゾイドです。それゆえ脚の動きがややぎこちない感じでもありましたが、それでも関節も動くし良いギミックでした。
脚のぎこちない動きも、設定の「オーガノイドシステムを組み込んだ凶暴で制御が難しい機体」という事を思えばこれはこれで似合っている気もします。


バーサークフューラーは、ジェノザウラーと大差ないギミックです。いや尻尾の関節がない。爪の開閉をしないなどむしろ削除されています。
できればバスタークローを連動で回転させ個性を出すなどして欲しかったです。
ただ見所もあります。「変形」で荷電粒子砲発射形態になる事ができるのは大きな工夫でした。

ダークスパイナーは、口を開閉し、腕を振り、尾を振り、背びれをうねらせながら歩きます。
連動箇所が増えていますが、更に見所なのは脚の長さです。
従来機より脚が長くなりスマートさが大幅に増しました。それでいて歩行時のスムーズさは大きく向上しています。
前傾姿勢二足歩行恐竜型の構造はダークスパイナーで完成したと思います。
更に変形させるとジャミングウェーブ形態もできます。

ゴジュラスギガは前傾/直立の切り替えが出来る点で革新的でした。
前傾姿勢時は首を振り回しながら動くのも迫力があります。

 

前傾姿勢の恐竜型。全体的に似た機体が増え、多様性は減ったと言わざるを得ません。
が、こうして見ると地道に頑張ってる印象でもあります。二足歩行機はこのような状況です。では四足機はどうでしょう。

エレファンダー、セイスモサウルス、そしてライガーゼロやケーニッヒウルフなどの四足高速系は全て四軸です。

機獣新世紀ゾイドは、まだまだ旧来の四軸仕様も残っていたようです。
(あとデススティンガーは八軸ですが、これは特殊すぎるので仕方ないでしょう)

さて四足機の動力ボックスは四軸が標準。なぜこれらは動力ボックスをニ軸にしなかったのか。
多分ですが、これはライガー系が増えた影響でしょう。
ブレードライガーもライガーゼロも、シールドライガー動力を若干カスタムしただけで使いまわしました。

機獣新世紀ゾイド時期はアニメ展開をしていたので、開発はキット主体の頃よりも目まぐるしい速度で進んでいたでしょう。
そんな中で、野心的な開発よりも現在あるものと同じ「無難」な方法が採られたと推測します。
そしてその波は四足歩行機全体に波及した……。

じゃあ何故ジェノザウラーなどはニ軸だったのかという事ですが、これは初の前傾姿勢恐竜型というところがポイントです。
「今までにないシルエットの機体」だから新しく開発する必要があった。
シールドライガーを元にすればいいライガー系ひいては四足機全体とはわけが違う。これが二足機と四足機の動力ボックスを分けたのでしょう。

ただ唯一、ライトニングサイクスだけは斬新な動力ボックスでした。

ライトニングサイクスの胴体部分は完成済みで提供されています。
普通の方法では開けられないので中身の写真は今回掲載できていないのですが……、ボディを開けるとHiユニットと同じ大きさの動力コアユニットが入っています。
そこから更にギアを足してボディになっています。
シールドライガーなどとは明らかに違う構造です。
ですが、これはライトニングサイクスだけが採用するに留まりました。とても面白く野心的な構造だたったので、その後に引き継がれなかったのは残念でした。

 

私は、機獣新世紀ゾイドのギミックは似たり寄ったりが多くて面白みはイマイチだという感想を持っています。
いやエレファンダーは堅実で良いギミックだったし、セイスモサウルスは驚きの仕掛けでした。ダークスパイナーやゴジュラスギガも凄いギミックです。
ギミック良作と言うべき機体はけっこう居ます。
しかし一方で言うと、メカ生体ゾイドの中央大陸戦争時代は「全体的に個性を持つ機が多く」「シリーズ全機でもって動きの良さを伝えていた」と思います。

突発的な超ギミック機がぽっと出ても、それでもって全体の評価を上げる事はなかなか難しい。
シリーズとして大事なのは、一機だけの超ゾイドを作る事ではなく全体としていかに盛り上げるかだと思います。

ゼンマイゾイドも含めて述べます。
シャドーフォックスは歩くだけ。レブラプター、ガンスナイパー、スナイプマスターの動きは同じ。
同じような動きの機が多すぎる。そんな中で超ギミック搭載機がぽっと出ても、おおコイツは面白い動きだなという「その機のみ」の盛り上がりはするかもしれない。
でも、シリーズ全体で動力ギミックっていいなというイメージにはなりにくいと思うのです。
レブラプターやジェノザウラーは新しいシルエットでした。メカ生体時にはなかったスタイルのゾイド。だからその時点で言えばギミックも「お!」と思えました。
でもせっかくそんな個性的な新型を出したのに、後から同じような機を続々出して「よくあるやつ」にしてしまったのも勿体なかった。

各機が個性のある動きを持っている中で凄いギミックを持った機が出れば、「おおゾイドのギミックは一つ上のステージに突入するのだな」と思えます。
しかし同じような動きの機が増えすぎると、もはやギミックに飽きてしまって動力という魅力そのものがだんだん消えてしまいます。むしろもう動かなくていいから可動で色んなポージングができるようにしてくれ……という思いが生じたりもする。そんな中で超ギミック機が登場しても残念ながら注目されにくい……。そんな風にも思います。

例えるなら、健康に長く生きるための食事とすると、重要なのは毎日適度な美味しさとカロリーと多彩さを持った献立を維持する事と思います。その上でたまにはちょっと豪華なものを食べたりするなら良い食生活と言えます。
逆に、毎日安いだけの同じ献立ばかり食べてるけど年に何度かだけフルコースを食べるというのはバランスも健康面でも良いとは言えません。
機獣新世紀ゾイドのギミックにはそんな印象があります。

ただ先にも少し書きましたが、アニメと同時展開していた事情は強く影響したでしょう。
新型機を放映に間に合わせて登場させなきゃいけない。そんな状況で悠長な設計は行えない。その事情は本当に大変だったと思います。
結果として似たり寄ったりなギミックが増えたのは仕方がない。
ライガーゼロは大ヒットしました。それの着せ替え各種も売れ行き好調。これを見ていると、選択は間違っていなかったとも思います。

 

さてアニメといえば、/0の終了後にゾイド市場は一気に冷え込みました。
99年年末商戦のデスザウラー、00年年末商戦のウルトラザウルスは売れに売れた。
一方、01年年末商戦のマッドサンダーは売れなかった。「バトストであの扱いをされて売れるものかよ……」とは思うものの、もっと大きな所で言うとテレビアニメがなくなった影響は外せないでしょう。
マッドサンダー派な私としては/0があとワンクール続いていればマッドサンダーも出たかもしれないのにグヌヌ……といつまで経っても悔しがっています。
まぁそれは置いておいて、アニメバブルは終わったのです。

急激に冷え込んだゾイド市場。もはやアニメはない。
私はその回復として「キットの魅力をもっと打ち出す。アニメに頼らずとも売れる仕様を出す」という目的で二つの策が採られたと思っています。
一つは可動をより重視したモデル。これはSSゾイドを経てブロックスになりました。
もう一つは超ギミック機の開発。これはゴジュラスギガやセイスモサウルスです。ライガー系でもエナジーライガーは「おっ!」と言わせる超ギミックを搭載しました。

さてブロックスは売れに売れ、ゾイド市場を見事に復活させました。動力がない分、開発は比較的容易だったでしょう。それでいてこの成績を出したのです。
一方でゴジュラスギガやセイスモサウルスは思ったほどは売れませんでした。
これがその後の「可動」重視を決定付けたと思います。ブロックスは順調に種類を増やし一大シリーズに成長。
更に、当初のブロックスはバトストと同じ世界観なのかが曖昧にされていました。が、後にバトスト世界観に編入されしかも主力級の位置付けになりました。

ただ完全に可動一本化はしませんでした。
その後、TB8やデスレイザー、ワイツウルフ等でブロックス(可動モデル)と動力モデルの融合を狙った動きが出ました。
リバースセンチュリーは久々にギミックを重視したシリーズとして展開しました。
その後、ゾイドオリジナルで動力モデルのリニューアル再販、マスターピースで新しい可能性への挑戦が行われたのは記憶に新しいところでしょう。

SSゾイドやブロックスの後、可動モデルは確かに勢力を増やしました。
ゾイドジェネシスではバイオゾイドが一大勢力として出ました。レインボージャークは主人公サイドなのに動力がありませんでした。
ジェネシス終了後はネオブロックスが展開。もちろん動力はありません。既存動力キットをネオブロックス基準でリニューアルした「LBシリーズ」も展開されました。

いやそれでも、一連の流れを見るとゾイドはずっと動力を大事にしていたんだなと思います。
可動モデルは確かに勢力を増した。そんな中でも動力はなくならず、常に再興の機会を狙っていたのだと思えます。

アニメ終了後の動きを見てみると、さっさと可動オンリーに移行しても良さそうなものです。
しかし大成功したブロックス。それを拡大する一方で動力キットを融合させる試みをした。
更にギミックを重視し大攻勢をかけたリバースセンチュリーを仕掛けた。
成功こそしませんでしたが、改めて考えるとそのチャレンジは何とも熱い試みでした。

 

そしてゾイドワイルドです。
この動力にかける熱い思いが、再び花開いたと思います。
今回、ゾイドはまた動力ギミックに挑戦しています。

今のところ、見事に多彩なギミックが揃っています。出だしは最高です。
しかもその中身も最高です。
今までのゾイドの全てを見直し、良い所を全て総合している感じがします。

・メカ生体ゾイド(中央大陸時代)は多彩なギミックが良かった。
 ただ動力ボックスは四軸がスタンダードでコスト面と耐久性にやや難があった。

・メカ生体ゾイド末期から機獣新世紀ゾイドにかけてはニ軸タイプの動力ボックスが広く採用された。
 ただギミックの多彩さがなくなり動力ギミックの魅力そのものを低下させたのは否めなかった。

・リバースセンチュリーはギミックに凝ったシリーズで各機とも野心的で面白い動きをした。
 ただ造りが同クラスのゾイドと比べて複雑で、コストがかかりすぎる構造でもあった。
 ドスゴドスやヴァルガを同クラスゾイドと同価格帯で出すのは不可能でしょう。

ではゾイドワイルドは。
ギミックの多彩さがあります。どれも個性的。動力ギミックならではの面白さを飽きさせずに伝えています。
動力ボックスは全て共通化されていて、しかもニ軸です。コスト面と耐久性で最大の配慮があります。
(ちなみにこれは四軸動力ボックスを否定するわけではありません。より大型のゾイドになれば四軸が必要になる事もあるでしょう。今後ゾイドワイルドのキットで四軸タイプが出るかどうかにも注目です)

ゾイドワイルドからは、動力の魅力で勝負するんだ! という強い思いを感じます。

さて今期もまたアニメが放映されます。
開発は大変でしょう。
機獣新世紀時の事はよく意識されていると思います。
しかしそれでも動力を選んだのでしょう。その勇気に大きな敬意を表して、各機をより楽しみたいものです。

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