インフレの”魅せ方”を語る

今更ながらインフレは良くないなあと思うわけである。
やはりゾイドはリアル系であって欲しい。一足飛びに強くなりすぎてはいけないと思う。それは白ける。
これは多くのユーザーに共通する見解だと思う。
しかし今回はあえて、そんなインフレという話題に対し今一度迫ってみたい。

メカ生体ゾイドを見ていて、インフレを感じたのは暗黒編以降のものだ。
デッド・ボーダーに端を発する暗黒ゾイドの強力さ。デスザウラーを瞬殺する凄まじさ。
そしてガンブラスター以降の共和国ゾイドの超兵器っぷり。デッド・ボーダーはもはや雑魚と化した。
次世代機に次ぐ次世代機。
あの展開は凄まじい。

しかし暗黒編以前にも、インフレと語られたゾイドが居たという。
それはデスザウラー。

デスザウラーを指してインフレという言葉が使用されているのを見た時は、正直に言うと戸惑った。
ごく最近まで、デスザウラーに関しては「成るべくして成ったスペック」であり、特にインフレじゃないだろうと思っていた。
しかし改めてデスザウラーを見ると、あぁ確かにインフレだと言わざるを得ない。そんな要素が多数ある事に気付いた。

メカ生体ゾイドの第一次中央大陸戦争期は、一機一機のゾイドが本当に大切にされていたように感じる。
ゴジュラスは初代最強ゾイド。絶大な格闘力を持つファイターだった。
アイアンコングはゴジュラスを倒すべく登場したが、砲力で上回りつつ格闘では及ばなかった。
総合力では上だが負ける要素も用意しており、ある意味でゴジュラスの強さの要素をより際立たせるものだった。

サラマンダーは文句の付け所の無い超兵器な半面、量産が効かないという致命的な弱点があった。
サーベルタイガーは無敵の機動力をもっていたが、それと引き換えにゴジュラスほどの決定力は持たなかった。

ウルトラザウルスも単機での戦闘力はどうかというと、例えばサーベルタイガーのような高機動タイプとは相性が悪くゴジュラスの護衛が欲しい。決して無敵ではない。
というか、ウルトラザウルスは「司令官としてゴジュラスはじめ既存ゾイドの動きを指示する」ものだった。
それはウルトラザウルスに司令ゾイドという魅力を与えているが、同時に既存ゾイドがより有効に動け魅力を再発見できるものだったと思う。

まぁ、こんな風に第一次中央大陸戦争の機体はそれぞれ一長一短あり、それが連携しあって戦っていた印象がある。
だからこそ互いが互いの魅力を補完しあい良い相乗効果を出していたと思う。

ではデスザウラー。
・格闘力でゴジュラスを超える。
・砲撃力でウルトラを越える。
・防御力も従来とは次元の違う強固さ。なんたってウルトラキャノン砲さえはね返す。
・機動力はさすがに劣るが、それでも近接すればシールドライガーを捉えるほどの俊敏性を備える。

数少ない弱点はオーロラインテークファンの撃たれ弱さ。それと荷電粒子砲は発射に要するエネルギーが莫大で、発射回数に制限があるというもの。
しかしこうして振り返ると、弱点があるとはいえ総合的に超超スペックだなぁと改めて認識してしまった。

インフレであると言われて言い返せるものではない。
しかしその上で、それでもデスザウラーはいいんじゃないかなと思っている自分が居たりもする。

何故かというと理由は二つあり、一つ目は優等生になりすぎてはイカンという事だ。
コラムの「モチーフから導く性能」に次の事を書いた。
「基本的には生物の生態に忠実な機能の機が多いからこそ、たまに出る生物からかけ離れたような装備を持つゾイドが引き立つものでもある」
これだと思う。
「良い設定・皆が補完し合う設定」それは素晴らしい。まさに素晴らしい。
しかしそこで安定してしまうと、だんだんと刺激が無くなりインパクトに欠けてくる。これもまた否めないと思う。
だからたまにアクセントは欲しい。必須だ。

二つ目はD-DAY以降の推移。
例えばコマンドウルフやアロザウラーをインフレだと言う人はあまり居ないと思う。
しかしこれを、ヘルキャットやイグアンをゴジュラスに置き換えつつ考えてみよう。
こう置き換えて考えると、コマンドウルフやアロザウラーはデスザウラー級のパーフェクトさがあると思う。
攻・走・防いずれも大きく上回る。負ける要素が皆無。

しかしいかにも新型機といった見た目や、一回り大型化した体躯には「強さ」への説得力が大いにあった。
いわゆるHiユニット級ゾイド。これらの機体は一気に戦場の主役となっていった。
旧来のイグアンやハンマーロックはブラックライモスに更新された。ゴドスは姿を消しアロザウラーに変わった。
そういった主力歩兵の移り変わりは、戦場全体のレベルアップを大いに感じさせた。
なので、そういった過渡期において登場したデスザウラーが、従来機をすべての面で大きく上回る超スペックを持っていても、なんとなく自然な流れとして納得できたと思うのである。

インフレは良くない。しかし逆の事を言えば無くても平坦すぎてつまらない。
そういった意味で、デスザウラーはインフレといえば否定できないが「例外として扱うべき」ものだと改めて思った。

もう一つ加えよう。
このインフレしたゾイドであるところのデスザウラー。
そのデスザウラーを越えたゾイドはマッドサンダー。
ではマッドサンダーはインフレだったかというと、そうではなく対デスザウラー用に特化した造りなのが興味深い。
確かに荷電粒子砲を防ぐ。しかしそれは前盾であって、それ以外の場所に喰らえばアウト。
運動性能ではデスザウラーに対しやや劣る。
砲撃力は言うまでも無く大幅に劣る。
けっこう、負けてる所がある。しかしその上で、想定した通りに戦いを進めれば勝つという推移。
マッドサンダーは、第一次中央大陸戦争期の一機一機の得意と不得意を大事にしていた頃のスタンスが強いと感じる。

インフレしたデスザウラーを倒したのは従来の哲学に則って作られたた機体である。
この辺の事情が、ゼネバス帝国VSヘリック共和国の最終局面を更に盛り上げたのかなあと思ったりする。

…あともう一つ加えたい。
デスザウラーがいるからこそ、より技術力の帝国っていうイメージが強くなったというのもある。これも良かったと思う。
共和国は国力が強さ。帝国はそれを越えようと必死に技術でカバーした。
その究極形がデスザウラーであると思う。
このように思うと、またひとつインフレしたのもまた良い事だと思えてくる。

 

しかしデスザウラーのインフレを良しと思う一方、暗黒編以降はやりすぎだったなぁと改めて強く思った。
デスザウラー出現時においては、
・歩兵級のゾイドが移り変わっていたから戦場全体がレベルアップしていると感じられ、インフレを過度に感じさせなかった。
・むしろインフレが素晴らしい高揚感になっていった。
しかし、暗黒編以降はそんな風な感じが薄かった。

ゼネバス帝国の滅亡。暗黒軍の参戦。
これはD-DAYと同じくらいのインパクトがあったと思う。
その舞台は整っていた。
しかし、その舞台において歩兵はアップデートしたのか?
というと、していない。

ハウンドソルジャーやジークドーベルはHiユニット級を上回る次世代機として登場した。
グレードアップ機構を搭載している事や電動駆動な事は、より強いゾイドというイメージを確かに持っていた。
コマンドウルフよりハウンドソルジャーの方が強そうだ。
そう見える。そして実際強い。
しかし致命的な事は二つあった。
あまりにも強すぎて、もはや歩兵ゾイドのイメージを持てないレベルに達した。
「量産型の歩兵ゾイド」というよりは「単体として強力なゾイド」のイメージへ、バランスが傾いたと思う。
思うに、「歩兵」のイメージを持たせられるものは、Hiユニット級がギリギリだったと思う。

もう一つは、実際の戦場ではその後もHiユニット級が主力だったと読める事だ。
ベアファイターやコマンドウルフはその後も各地で姿が見られる。
ハウンドソルジャーなどは、どちらかというと歩兵というより強力な単機のゾイドとして扱われる事が多かった。

強力な大型ゾイドを打ち倒すシーンが多い。
このような状況は、旧型機いまだ現役のイメージを強く思わせた。それゆえに戦場全体のアップデートを今ひとつ感じさせなかった。
そのような状況下で、登場する新型機は次々とんでもないスペックで登場したのだから、ストレートにインフレを感じさせ白けさせたのだと思う。

インフレというのは扱い方が上手ければ素晴らしいアクセントとなる。それはたまらない高揚感となる。
しかし扱いを間違えればこれまで積み重ねていたものをすべて崩壊させかねないものとなってしまう。

扱いが非常に難しいだと思うが、ストーリーを盛り上げるキーワードであるのは確かだろう。
インフレに見合うだけの魅力を持ったゾイド。そのゾイドが存分に活躍し高揚感に繋がる周りの状況。
そういったものがあれば伝説が生まれる。

今後の展開でも、デスザウラーような伝説に期待したいと思っている。

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