モチーフから導く性能

ゾイドは生物でありメカである という部分は非常に重要だと思う。
それを活かして欲しいと願う。

さて、この文章を書いている今現在は6月だ。もうすぐ本格的に暑い夏がやってくる。夏は暑くてバテる。
そういう時に、一粒の氷があったとしよう。これで体をどうにか冷やしたい。
最も多い答えは「口に入れる」だろう。確かにそれは清涼感のある良い方法だ。
だが、口に入れるよりも効果的に冷やす方法がある。
それは手首あるいは首筋など、太い血管が走ってる箇所に氷をあてる事だ。
こうすると血が冷される。そしてその血が全身をめぐる。その結果、体全体が冷されるというわけだ。
血の巡りは重要なのである。

古代にも、同じようにして体温を調節していた動物が居る。
ディメトロドンやエダフォサウルスだ。
彼らの巨大は帆は、体温調整に使用されていたという事である。

どういう事かというと、朝日が昇れば、彼らはそこに帆を向ける。帆には無数の血管が走っている。
こうする事で、いち早く温かい血が体中を駆け巡り、体温を一気に上昇させる事が出来たのだ。
また熱い時は風に帆を当てる。そうすれば程よく体を冷す事が出来る。
これは非常に重要なことだ。

変温動物は、寒い時は身動きが出来ない。体温が下がりすぎて活動できないのだ。
朝日が昇れば、まずそれを浴びて体温を上昇させる。体温が上昇して初めて活動出来るのだ。

さてディメトロドンとエダフォサウルス。
彼らは、普通の動物が「体中に日を浴びて徐々に体温を上げる」のに対し、「帆を利用する事で一気に体温を上げる」事が出来た。
すなわち、これは他の動物よりも早く活動出来る事を意味する。

ディメトロドンは肉食である。すなわち明け方の獲物がまだ動けないうちに行動できるから、一方的に襲える。
エダフォサウルスは草食である。すなわち捕食者からいち早く逃げおおせるというわけだ。

「敵よりも早く動ける」

さて、電子ゾイドの話をしよう。
電子ゾイドのモチーフと言えば、やはり代表格はステゴサウルス型とディメトロドン型だろう。

ディメトロドン型。
これが優秀なレーダーを装備した電子機として登場したのは絶妙だと思う。何故ならモチーフの外観だけでなく、能力面も活かしているからだ。

モチーフの持つ「敵より早く動ける」事を「レーダー」と昇華させたのは絶妙だと思う。

ステゴサウルスの板も、ディメトロドンと同じように体温調節に使用されていたのではないかという説が有効だ。
やはり、レーダー搭載機のモチーフとして最適だったと思う。

ステゴサウルス型と言えば、唯一、電子機ではないものとして、ネオブロックスのステゴガンツァーがある。
ステゴガンツァーの背中の板は、ストレートに「砲撃時に発生する熱を逃がす為の放熱装置」である。
やはり温度調整に使用されており、モチーフ的だといえばモチーフ的である……が、これはストレートすぎる気もする。
「レーダー」という昇華のさせ方が好きだ。
もちろんレーダーだけではマンネリ化してしまうだろうし、ステゴガンツァーのような例を否定するわけではないが…。

その他に索敵に優れているゾイドは何があるだろう。
初期の電子ゾイドはエレファンタスやゾイドマンモスであった。これらは、耳を策敵用装備として使用していた。

さて、ゾウ。
巨大な耳を持つだけの事はあり、ゾウは野生動物の中では抜きん出て耳が良い。耳が良いというのは、やはり迫り来る敵を察知できるとか諸々の利点があろう。
ただディメトロドンやステゴサウルスほど劇的に優秀なレーダーではない。
だから、「一般機よりは優秀であるがステゴサウルスやディメトロドン型よりは劣る」というバランスも良いと思う。

あと、実はサーベルタイガーも「サーベル・イヤー」なる特製の策敵装置を持っていたりする。
そして猫も非常に耳が良い動物だ。それを利用した上手い装備だと思う。

このようにモチーフを上手く使用した装備というのは本当に素晴らしいと思う。
ゾイドは生物だ。
その事をよく納得させてくれる。

 

スピノサウルスも、その帆は体温調節に使用されていたという説が有力だ。
しかしスピノサパーは帆をチェーンソーにしてしまったし、ダークスパイナーは帆を相手を操る装備にしてしまった。
多分、帆=レーダーというマンネリを防ぐ為にそうしたのだとは思う…が、ちょっとモチーフの生態から言って突拍子も無かったと思う。
これなら、まだステゴガンツァーのような、ストレートすぎる方がマシだと思う。

ただ、帆は異性へのディスプレイに使用された説もある。より立派な帆を持つ個体がメスを獲得できる的な…。
あるいは自分の虜にしてしまう…ジャミングウェーブはモチーフ的なのかも………、いや、やっぱりやりすぎだと思う。

個人的に思うのは、外観がそう見えたからと言って、「モチーフの生態からかけ離れたものにしてしまうのはどうか」という事だ。
モチーフの生態から離れてしまうと「生物でありメカである」という「ゾイド」ではなくなってしまうように思う。
動物を模して作った完全なメカならいい。そうするのが合理だろう。
だがゾイドは最初にまず生物である。
そこから考えて様々な要素を加えるという「主と従」があるべきだと思う。逆転すべきではない。
生物の生態を考慮に入れるというのは面倒くさい事であるが、それこそがゾイドの魅力であると思う。

機獣新世紀ゾイド以降の新型では、よく主と従の逆転現象が生まれていると思う。
「体中を一直線の集束荷電粒子砲の砲身にした」「尾部をスナイパーライフルに」「カニの甲羅をレーダーに」
生態ではなく見た目を優先して作り上げたものが多い。

「体中を一直線の集束荷電粒子砲の砲身にした」というのは、ジェノザウラーなら、”あの”デスザウラーを小型化したという点において凄味があったから良かったと思う。
ただ、後発の「完全野生体」「野生体本来の力を活かした」という設定で登場したバーサークフューラーまでもがそうなっていたのはどうかと思った。

また、せっかく生物の持つ力をそのまま活かしたのに、ちょっとひっかかりを覚えるものも多かった気がする。
ウミサソリは外骨格を持つ生物であり、物理的な装甲防御を強調してこそモチーフ昇華だと思うが、デススティンガーはEシールド装備機であり、なんだかなぁと思った。

Eシールドは本当に乱発された。アニメで人気が出たからだと思うが。
出来れば乱発すべきでなかった。Eシールドは、やはりライオンであるゆえの装備だと思う。
オスライオンのタテガミは防御上非常に有効なものである。相手の牙も通らないほど強力で、弱点である喉を強固にガードしている。
そんなライオンだからこそEシールドという特殊な防御機構を装備するには最適であったと思う。

高速機も、ブースターを増設すれば速いようなデザインが増え、そのモチーフだから速いというよりブースターのおかげで速いという印象を得たのは不味かったように思う。
それらは補助的に使用すべきで、あくまでメインとしてはモチーフの生態から導いたものであるべきだったと思う。

そういったものを付けるなという話ではない。それは極端すぎる。生物であるが同時にメカであり戦闘兵器なのだから、むしろ付けるべきだ。
しかし主と従のバランスは保つべきだと強く思うという事だ。

逆転現象は本当に良くないと思う。
マグネーザー搭載機もすごく増えた。完全人造の外付け装備でモチーフ基準の装備を覆せるのなら、もはやゾイドである必要は無い気がする。

メカ生体ゾイドにそういった例が無かったわけではないし、何がなんでもそういうのがダメというわけではないと思う。
ただ乱発してそれが普通になってしまっては良くないと思うのだ。
基本的には「生物の生態に忠実な機能」の機が多いからこそ、たまに出る生物からかけ離れたような装備を持つゾイドが引き立つものでもある。

例えば、水の中ではやはりウオディックは強く、ライガーが水中用装備を付けた所でかなわない方が良いと思う。
「水中用CASを付けたからウオディックも余裕」となってしまえば冷めてしまうだろう。

良い例は、シンカーやハンマーヘッドは「飛行可能だが純粋な飛行ゾイドにはかなわない」ようなものだろう。
これは元の生物に外付けのメカ的なプラスを加えつつも、根本的に専門家にはかなわないという素晴らしいバランスだと思う。
こうしてこそ、ゾイドにおける種の多様性が保たれるものでもあろう。

メカ生体ゾイドシリーズのゾイドは、そうとう兵器的な運用をされている。
そこに生物的な配慮はあまり無い。にもかかわらず生物でありメカであるという、ゾイドとしてシックリ感じられるのは個人的にこのようなものが原因かと思う。

外観ももちろん重要であるが、生態を重視したゾイドにも注目が集まるように願っている。

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