グスタフの輸送システムを考える

グスタフほどゾイド世界観の根っこを支えたゾイドは居ないと思う。
単機では決してカッコいいゾイドではないかもしれない。でも輸送という一転を強く打ち出した仕様は世界観を何とも演出した。
また他のゾイドには決してない独特の魅力がある。

先に「決してカッコいいゾイドではないかもしれない」と書いた。
いやしかし、ゴミ収集車とか清掃車とかの渋い車が大好きな子供はかなり多い。
「グスタフに惹かれて惹かれてしょうがない」そんな子供もそれなりに居たかもしれない。

さてグスタフ。輸送という一点に特化したゾイドで250tもの物資を運べる。
子供の頃は「250t運べるなんてスゲー!!」と単純に興奮していたのだが、今回はもうちょっと踏み込んで考えてみたいと思う。

グスタフは250tの積載が可能。この250tという設定の理由は何だろう。
これはグスタフが就役したZAC2034年、この時期をみれば分かる。
この時代に最大重量を誇るゾイドはゴジュラスだった。その重さは230t。
つまりゴジュラス一機とその整備ユニットなど一式を積んで行動できるというのが250tという数値なのだろう。

後の時代にはウルトラザウルス、デスザウラー、マッドサンダー、ギル・ベイダーが250tを大きく超える重量で登場した。
ゴジュラスもキャノン砲を積んだMK-IIになると250tを超える(量産型265t、限定型287t)。
これらは運べないのか……というと可能性も感じる。

グスタフは250tの重量物を運んで50km/hの速度を出せる。
50km/hというのがミソだ。車で走るくらいの速度は出せるわけだ。
なので、300~350tくらいの重さを運ばせても、もちろん速度は落ちるがどうにか輸送可能なんじゃないかと思う。
ギル・ベイダーは333t。
思うに、これくらいならギリギリで輸送できそうな気がする。
もちろん極めて遅くなるだろうし、更には後部トレーラーの車輪や甲板の強度を増す必要もあるとは思うが。
(250tを想定した甲板を遥かに越える重さで踏むと割れてしまいそうだ)

末期の帝国軍はグスタフでデスザウラーを運んでいるが、後部甲板が専用の強度が高そうなものになっている。

これは上記説の裏付けになるだろうか。
(このグスタフは本体側も色んなパイプがあったり脚が増えている。全体的な強化仕様だと思う)

 

さて子供の頃は「遅くなっても構わないなら250tよりもっと多く積める」なんて説は考えることもなく、設定通り250tが上限なんだろうと思っていた。
ただ不思議だったのは、「250tという限界重量は分かる。でも……、トレーラーを増やせば輸送量が増えるんじゃないか?」という事だった。
その頃の感想として、「トレーラー2基で250tだから例えば4基に増やせば倍積めるのでは?」とに思っていたのだった。


子供の頃に思っていたのはこういう事。

多分、グスタフのトレーラーが一般的なクルマなどと同じタイヤ式だったら「グスタフが引っ張っているのだろう」と思っただろう。
だがグスタフのトレーラーはキャタピラ式だ。明らかにそれ自体に動力があって動くであろう見た目をしている。
だから当時の印象として、「トレーラー自身が動くのだからこれを増やせばいいじゃないか」と思ったわけだ。

今これを考えると、トレーラーの動力はグスタフからの電力供給でまかなわれているのだろう。
それゆえ単純に4基に増やせといってもそれはままならない。グスタフは「2基動かす分の電力」を供給するので精一杯。
グスタフはやはりトレーラー2基が基本であり、4基に増やしたところで運べる量は変わらない。
いやトレーラーの重量が増えてしまいむしろ輸送量が下がってしまう可能性さえある……と思った。

 

ところで、それはいいとしてなんでキャタピラなのだろう。
タイヤとキャタピラを比べた場合、移動効率は圧倒的にタイヤの方が高い。
同じ距離を移動する場合に必要なエネルギー量は段違いだ。また速度も出しやすい。
多分だが、グスタフはキャタピラ式のトレーラーを付けて50km/hをしている。タイヤ式にしたら、より多くの物資を積んでしかも100~150km/hが出そうな気がする。

もちろんキャタピラにもメリットはある。 不整備地における行動力では圧倒的だ。
タイヤはぬかるみなんかに弱い。ちょっとした岩があっても超えられない。
キャタピラはこういう場所では素晴らしい性能を示す。
まずぬかるみについていうと、タイヤだと沈んだり空転したりする。キャタピラは全体に重さを分散するから沈みにくい。戦車は人が歩ける程度のぬかるみなら問題なく行動できるとのこと。それくらい凄いのだ。
岩などが多い地帯でも、キャタピラだと地面をしっかり捕まえて動くことができる。タイヤではこれは真似できない。

立往生する=救援を要請しないといけない状態。
戦場でそんな事を頻発させてはマズイ。だからエネルギー効率が悪いことを承知でキャタピラ式になったのかもしれない。

 

また制動力(ブレーキをかけたときにすぐ止まれるかという要素)の問題もあるのかもしれない。
キャタピラは制動力が優れている。だから大型武器を積むのに適している。

装輪戦車というタイヤ式の戦車がある。

このように上側(砲塔)は通常戦車と同じだが、下側がタイヤ式になっているのが装輪戦車。
これは最大で105mm砲までしか積めない。現在の主力戦車の主砲のスタンダードは120mm砲なので幾らか見劣りする。
なぜ積めないかというと、120mm砲を積んで撃ったら発射時の衝撃を吸収できないからだ。
制動力がないので撃った反動で後ろに吹き飛んでしまう。

もっともグスタフは武器は積んでいないからこの問題は関係ないのだが……。
いやしかし、物資を満載して「下り坂」を移動すると想定すると制動力がないとマズイ気がする。

こういう状況を想像して欲しい。大重量を積んだトレーラー。これがキャタピラだからこそ制動力があって止める事ができる。
もしタイヤだったら?
制動力が足りなくて転がり始めたら……。
250tもの膨大な物資を運ぶ仕様だから、下り坂ででも安全に運用できることが求められたのかもしれない。

キャタピラになった理由はこんなところだと思った。
「不整備地における行動力」「下り坂での制動力」

 

ただ、この二つのいずれもが不要な地帯もあるだろう。
たとえば整備された自軍基地内。

戦場でのグスタフはキャタピラ式が適している。我々がよく目にしているタイプはそれである。
移動効率はやや低いが、行動力や制動力が必要なのでそのようになっている。
一方、自軍基地などにおける輸送ではタイヤ式のトレーラーが付いたタイプが運用されていたのかもしれない。
そんな風にも思った。

ゾイドフューザーズではちょうどそんなタイプが出てきた。

これはタイヤ式かつトレーラーも大型化していて、より多くの物資を積めそうに見える。
幅はちょうどデスザウラーを運んでるタイプと同じくらいある。

輸送用のグスタフ。
その渋い任務を突き詰めて考えても面白いと思う。

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