ディバイソンの開発経緯を想像する

ここのところディバイソンについてのコラムが多いけども、今回も同機について。
コチラコチラの続き。

先のコラムではディバイソンには辛い評価を書いてしまった。
「汎用性が低い」とか「マッドサンダーの下位版」とか散々な言いよう。
いやしかし、ディバイソンは元々は万能機として設計されていると思う。今回はそれを語ろうと思う。

万能というキーワードは中央山脈だ。
中央大陸は真ん中に山脈がある。その他にも山岳地帯は多い。これを制しなければ戦いに勝つ事はできない。

私は、ディバイソンは「アイアンコングをうらやましいと思った共和国軍が同様の機体を欲した結果として生まれた」側面が強いと思っている。


アイアンコングの強みは地形を選ばず運用可能な点にある。
山岳ではゴジュラスは動きにくい。が、アイアンコングは問題なく動ける。
150機でもって共和国領土になだれ込んだ時を思い出されたい。この部隊は中央山脈をあっという間に突破した。
共和国軍(ゴジュラス)は山脈を下りた地点で戦いを挑んだ。
ゴジュラスは山脈で戦えないからこうするしかなかったのだ。

もちろん問題なく動けるといっても一切の制限がないわけではない。
多少制限されたものにはなろう。サーベルタイガー程ではない。

平原で出せる動きを「☆☆☆☆☆」とすると、山岳での動きは
ゴジュラス:☆
コング  :☆☆☆
サーベル :☆☆☆☆☆
位になると思う。

ゴジュラスは絶望的に低下する。サーベルはなんら低下せず平原と同じ動きができる。
コングの動きは「やや制限されるが、それでも必要十分な動きを維持している」感じだと思う。
低下はするがゴジュラスの「もはや困難」な状態と比べれば雲泥の差と言える。

コングとサーベルを比べた時、コングの利点は重武装重パワーで決定力がある事だ。
サーベルは軽武装なので、ゾイド程度なら倒せるが規模の大きい要塞などの攻略には向いていない。
ゴジュラスは重パワーで決定力があるので要塞などの攻略は容易いが、山岳の場合はそもそも現場に辿り着く事が困難だ。
そこへきてコング。山岳でも動けるし攻略も可能。まさに万能と言える。

 

第一次中央大陸戦争で、帝国軍は中央山脈を突破し共和国の平原になだれ込んだ。
それはサーベル&コングの実績に他ならないだろう。
サーベルが敵ゾイドを排除し、そして要塞などの攻略困難な地点ではコングが出張った。その結果として越えた。

第二次中央大陸戦争で、共和国軍はサーベルタイガーに相当する機体としてシールドライガーを開発した。
これにて一時的に山岳での優位を得る活躍をした………のだが、結局はその後再び押し込まれている。
ここで、共和国軍はやはり山岳で運用可能な重戦闘ゾイド…つまりアイアンコングに相当する機体が必須と痛感したと思う。

運用は帝国軍と同じ。
敵ゾイドと遭遇した際はシールドライガーがこれを排除する。シールドライガーなら、サーベルタイガーはもちろん山岳に限ればアイアンコングをも倒せる可能性が高い。
複雑な地形でさすがに幾らか性能を落とすコング、それを大ジャンプなどで翻弄してバックを取る。突撃・そしてレーザーサーベルないしクローで引き裂き勝利。

余談だが、コングは格闘戦でゴジュラスに劣る一因が後方だと思う。
ゴジュラスは後ろを向いた火器が豊富にあるし、接近されれば尾がある。後方から攻めても返り討ちにあいかねない。
コングは長い腕で捕捉すればライガークラスなど一ひねりだが、前方と側面しかカバーできていない。
後方はガラ空きだ。後ろを振り向くより先に敵の攻撃を受けてしまいそうだ。

さて、そんな風にシールドが敵ゾイドを排除する。これで山岳での優位を得る。
しかしシールドには決定力がない。大規模な要塞などがあればこれの破壊は困難。これでは山岳の完全制圧は難しい。
そこで、そうした際に出張る機体が欲しい。
ディバイソンは、まさにサーベル&コングに相当する運用が求められた結果として計画されたと思う。

さて当初のディバイソンは「そうした能力を満たす」「その上で可能な限りの汎用性や拡張性を持たせる」という仕様で計画されていたと思う。
いやしかし、開発中に大きな事件があった。
そうデスザウラーの登場。
共和国軍としては、敵新型ゾイドの警戒は十分に行っていたと思う。
しかし、まさか歴戦の猛者が乗るゴジュラス大部隊を圧倒する程のバケモノだとは思わなかっただろう。

二足歩行機にしてウルトラザウルス並の超パワー。そこから繰り出される格闘力はゴジュラスを片腕で投げ飛ばす。
荷電粒子砲はまったくもって防ぐ事ができない。超重装甲はウルトラキャノン砲さえ防ぐ。
電撃的に共和国首都を陥落させたデスザウラー。どうやって倒せばいい?

ウルトラザウルスは直接戦闘用じゃない。せいぜい遠距離からキャノン砲を撃つ事しかできない。そしてそれじゃ倒せない。
ゴジュラスはデスザウラーと同タイプなので戦法も似ている。すなわち力量差がモロに出るので勝つ術がない。
シールドライガーは動きの良さで翻弄する事はできるがパワーがあまりにも不足しており有効打を与えられない。
サラマンダーは爆撃がせいぜい。
共和国ゾイドはもはやなす術がなかった。

そこで開発中のディバイソンには対デスザウラー用の能力を付加する要求が加えられたと思う。
ウルトラザウルス、ゴジュラス、シールドライガー、サラマンダー。これらは改造したところで勝てそうにない。
今から完全新規の対デスザウラー用ゾイドを開発していたのでは間に合わない。その間に敗戦は必至。
そこで当時開発中だったディバイソンに白羽の矢が立った。

ディバイソンに加えられた改造は出力の大幅向上だっただろう。
当初はディバイソンに求められた突撃力はアイアンコングを倒せる程度だったと思う。
しかしそれではデスザウラーはビクともしない。最低でも損傷させなければならない。そこで出力向上をした。
結果としてアイアンコングは直撃なら吹き飛ぶ、デスザウラーでもダメージを負う程になった。
しかし出力向上は機体に無理な負荷をかける。完成までに許された期間も短かった。

突貫的な設計で「背中に極太パイプを通す」方法が採られた。
その結果、ディバイソンは対デスザウラー用として有効な能力を得た代償に、将来的な拡張性を失ってしまった。

私はディバイソンをそんな風に考えた。

 

さてディバイソンは傑作機だと思う。
開発中に無茶な要求をされ、しかし見事に対デスザウラー戦が可能な能力で完成した事。
マッドサンダー完成まで何とか戦線を維持した事。
これを見事と言わずに何と言う。ディバイソンなくして共和国は勝てなかった。

対デスザウラー戦のほか、本来の目的であった山岳でも大いに運用されたと思う。
デスザウラー最強時代、共和国軍は中央山脈の攻略を進めていた。ディバイソンは、完成後に山岳の強力戦力として運用された事だろう。
中央山脈攻略戦は、ディバイソン就役前から始まっている。
就役前も、共和国軍は山岳を順調に攻略していた。しかし帝国北部基地の攻略戦を思い出されたい。
この時、共和国軍は分解したウルトラザウルスを現地に運び組み立てる作業をしている。その苦労たるや。
こんな事をしながら攻略をしていた時代は、ディバイソンの登場で終わった。

ただ、こう言うと見事だが一方で苦労も多かった機体でもある。
アイアンコングは、ディバイソンが登場した頃は「MK-II量産型」にアップデートしていた。ウイングで運動性が格段に向上している。
当初の想定より苦戦する事が多かったと思う。
サーベルも、強化された「グレート」になっていた。サーベルタイガーには優位を示せたものの、グレートサーベルには手痛い敗北を喫している。
これらの想定外の敵の強化に対して、ディバイソンはノーマルタイプのまま戦う事を強いられた。

対デスザウラー用に無理に・しかも突貫で強化した弊害で将来的な拡張性がなくなっていた。
もしもディバイソンが当初の想定通りに完成しており「対デスザウラー戦能力はないが汎用性や拡張性はある」となっていれば、アイアンコングMK-II量産型を倒し・グレートサーベルにも対処できる改型が生まれていたかもしれない。
ただし、その場合はそもそも共和国軍は戦線を維持できずに敗北していただろう。デスザウラーによって。
これはもう、どちらが良かったかというと明らかに現在の仕様だと言えよう。

後年の暗黒ゾイドの全ては対ディバイソン能力を完備している。
砲で撃ち抜くか、ディバイソンが捕捉できない超高機動でかわすか。いずれかで完封してしまえる。
そしてこの時期、ディバイソンはほとんど活躍できなかった。
しかし逆に言えば、これはディバイソンがいかに強力だったかを示すものでもある。

そんなわけで、ディバイソンの開発経緯を想像してみた。

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