拠点防衛におけるデスザウラーの価値を語る

デスザウラーほど無敵イメージが強いゾイドもおるまい。
マッドサンダーが登場するまでの長い間、その防御力であらゆる攻撃を退け、そして格闘力や荷電粒子砲で無数の敵を破壊した。
だがそんなデスザウラーも、大陸間戦争ではさすがに苦戦が目立つようになった。

デスザウラーは、ニカイドス島でデッド・ボーダーに象徴的な負けをしている。

この一戦は、ユーザーの脳裏に特に強く焼きついている事件だと思う。

だが、デッド・ボーダーは真の実力をいえばデスザウラーより格下であるらしい。
大陸間戦争末期、共和国軍は進撃を続けガイロス帝国首都に迫った。
ここで起こった首都攻略戦にて興味深い資料がある。下の表を見て欲しい。

作戦に参加した両軍の主要ゾイドとその強さが示してある。デッド・ボーダーは「1」でデスザウラーは「3」とされている。

この時期、デスザウラーはもはや苦戦がかなり目立っていた。なのに、こんなにも評価が高いのは意外だ。
この時代の最強格であるところのギル・ベイダー、オルディオス、ガンギャラドが最高評価の星3つなのは分かる。
また、首都攻略という作戦の特性からマグネーザーを持つマッドサンダーは極めて高い価値があっただろう。首都は強固な城壁で守られていた。
それを突き破れるマッドサンダーが最高レベルの3を得たのは分かる。
対してデスザウラー。最高レベルの評価3を得た要因は何だろう。

これを考えた時に、「首都攻略戦」という部分にヒントがあると思った。
この戦いでは、暗黒軍はその場所から動かず(というより動けず)防衛に徹する。共和国軍はそこに攻め込み制圧を目指す。

単純な図にするとこの通りだ。
さて、デスザウラーは防衛でどのように働いたのだろう…。

デスザウラーは、荷電粒子砲を撃てば接近する敵部隊を一気に殲滅する事ができる。

この攻撃は強烈だ。範囲内のゾイドは全滅に近い被害が避けられない。

ギル・ベイダーのビームスマッシャーはどうだろう。単純な威力では荷電粒子砲を超える。だが狙える範囲は荷電粒子砲に大きく劣る。

デスザウラーの荷電粒子砲は「面」を制するが、ビームスマッシャーは「線」を制するに過ぎない。
複数の敵を相手にする…、対部隊用としてはデスザウラーに劣る事が分かる。

 

デスザウラーと対峙した共和国軍は、
A:密集して進めば荷電粒子砲の餌食になる。
密集すれば、各機が協力して強固な軍団になる。だが密集している事から荷電粒子砲を受けて一気にやられてしまう。

B:分散して進めば荷電粒子砲は避けられる。だが他の暗黒ゾイドの餌食になる。
分散すればデスザウラーは狙いを付けにくい。(この時代のデスザウラーは荷電粒子砲は3発程度しか撃てないので全ての敵を撃つ事はできない)
しかも発射には長い時間を要する。

小隊を一つ壊滅させたところで、共和国軍としては減る戦力が少ない。荷電粒子砲を撃つ事を思えば効率が悪い。
また発射に要する時間が長いので、小隊を一つ壊滅させているスキに残りの部隊が突入を完了してしまうだろう。


こうした戦法を撮られるとデスザウラーは弱い。
いやしかし、分散すれば各隊の戦力は弱くなる。だからデスザウラー以外の機が殲滅に向かえば良い。

 

このように、デスザウラーは拠点防衛として敵部隊を迎え撃つ任務に最適だと思った。
「牽制」が、これほどできるゾイドはいないだろう。
密集すれば一気にやられる。分散すればデスザウラー以外のゾイドにやられる。
完璧だ。

ただ唯一、Aパターンの場合は共和国部隊が先頭にマッドサンダーを配置すれば防げるだろう。
だがこの時代、既にマッドサンダーはトライアングルダラス海戦などを経て数が激減していた。

首都攻略戦における数は「デスザウラー>マッドサンダー」だったと思う。
マッドサンダーは荷電粒子砲に耐える。だが複数のデスザウラーが同時に同じマッドサンダーを狙えば絶える事はできないだろう。
すなわち、この時の共和国軍がA案は採用する事は不可能だった。
だがB案にしても全滅は必至。
共和国軍は、ここまで追い込まれた。

首都攻略戦で共和国軍が採用したのは、A案でもB案でもなくオルディオスを使っての空からの攻撃だった。

オルディオスは城壁の破壊に適しているとは言い難い。だが、上記した事情から共和国軍はオルディオスに頼らざるを得なかったのだろう。
共和国軍は、オルディオスの攻撃を「第一次攻撃」 城壁破壊後に行った全軍突入を「第二次攻撃」と呼んでいた。
おそらくオルディオスは城壁の破壊およびデスザウラーの駆逐を行い、そしてから残る共和国軍はAの隊形で突入したのだと思う。

オルディオスはガンギャラドの迎撃を受ける姿が描写されている。かなりの損失が出た事だろう。
ただしオルディオスは「数」で強引に攻めたのだと思う。ガン・ギャラドは就役からまだ日が浅く、生産数はそれほどではないと思える。
オルディオスはこの時期の共和国軍の切り札とも言えるゾイドだった。
その損失を覚悟してでも、そうせざるを得なかったのが首都攻略戦なのだろう。
この状況に追い込んだのはデスザウラーなのだ。

 

子供の頃の思い出を言うと、デスザウラーはマッドサンダーに負けた時点でもはや怖くないゾイドという認識だった。
その後、デスザウラーはガンブラスターやオルディオスにも負けた。恐くないというか、この時期になると雑魚だとさえ思い始めていた。
まあ、子供はそんなものだろう。同様にシールドライガーが登場した後のサーベルタイガーにも同じ風に思っていた。
だが今は、マッドサンダーでも油断をすればデスザウラーに負ける可能性がある、あくまで「優位」でしかない。そんな風に考えるようになり深みが増したと思う。

更に、1対1のゾイド戦だけでなく「様々な運用」を想定して総合的な強さや戦略的価値・意義を考えるようになると、いっそう深みが増したと思う。
ゾイドは豪快なプロレス的な決戦も大いに魅力的なので、そのようなものはやっぱり追いかけていきたい。
だがそれと同時に、それ以外の視点もプラスして考えていきたいなあと思う。

 

上の表で評価1を受けているデッド・ボーダーも考えておきたい。
以前に、重力砲は射程が短いと考えたコラムを書いた。今回の評価の低さはそれを裏付けたかなと思う。
防衛戦では大量の敵が波の様に押し寄せてくるのを殲滅する必要がある。
先述したようにデスザウラーはそれが最適。
だが射程が短いデッド・ボーダーは引きつけて撃つしかない。
また敵部隊を一気に殲滅させるような面の武器は持たない。一機ずつ撃ち破壊するしかない。

高速ゾイドなら目標近くに移動し駆逐、その後に直ちに次の目標に向かう事もできよう。だがデッド・ボーダーではそれも難しい。
こうした理由から防衛戦での評価が低いのだと思った。

 

さて、後期には負けが込んでいたデスザウラー。だがその価値はやはり究極に高かったのだろう。
偉大な最強ゾイドだと思う。

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