メカ生体ゾイド ヘリック共和国軍 高機動戦闘型 キングライガー<KINGLIGER>

■キングライガー(ライオン型) データベース■

 発売年月 1989年9月  発売当時価格 1300円  動力 モーター

 型式番号 RPZ-15

 スペック 全長:19.8m 全高:7.9m 重量:69.0t 最高速度:280km/h 乗員:1名

 主な武装
  メガバルカン(×2) レーザーブレード(×4) ビームニードル 電磁シールド(×4) アクティブレーダー(×2) エネルギー加速装置(×2) パワーコネクター

 特徴
  高度の情報処理能力を持つ、共和国の戦闘機械獣。
  機動力、とくに跳躍力が優れており、レーザーブレードを使った格闘戦を得意とする。
  また強力な防衛機構、電磁シールドで敵の攻撃をかわす。前線、局地戦部隊の隊長機として活躍する万能メカである。
  戦闘総合力は、通常33ZEPである。


前後より

シールドライガーの後継機として登場した次世代のライオン型ゾイド、キングライガーです。
コンパクトなボディの中に、なかなかの高性能を秘めたゾイドです。

登場したのは、ハウンドソルジャーが就役してからほとんど間をおかないタイミングでした。

高速機が続々と誕生! という感じですが、両機には明確な差があります。
ハウンドソルジャーは最高速度330km/hを達成した超高速機ですが、対するキングライガーは最高速度280km/hとあまり振るわない印象です。
しかし、高度な情報処理能力を持ち部隊の隊長機としての運用が可能とされています。
つまり、単機としての能力を強く求めたのがハウンドソルジャーであり、味方部隊との連携を強く求めたのがキングライガーです。

おそらく、シールドライガーMK-IIやコマンドウルフNEWを率いて戦う事が多かったのでしょう。
暗黒大陸は、中央大陸よりも険しい地形が多い場所です。必然的に、高機動ゾイドが重要度を増します。
そのような中にあって、高速部隊を適切に動かす隊長機キングライガーの存在は極めて重要だった事でしょう。


側面より

登場したのは、暗黒軍ガル・タイガーと同時です。
従来、高速機のライバルといえばサーベルタイガー&シールドライガー(グレートサーベル&シールドライガーMK-II)でした。
定番のトラ型VSライオン型です。
大陸間戦争期に登場した両ゾイドからは、それを更新する意図があったと強く感じます。
しかし、ガル・タイガーもキングライガーも、正直に言うと先代のトラ&ライオンに遠く及んでいないと思ってしまいます。


両機ともメカニックの造り込みに極めて乏しく、従来のゾイドが持っていたリアルメカを体感できる要素が大幅に低下しています。
特に、横腹は大雑把なパイプ状モールドがあるだけで、いくら何でも寂しすぎます。

また、大きさも一回り以上小柄になっていて、力強さを感じにくい事も否めません。
確かに、技術が進歩するとデザインはシンプル化し小型化します。
それは分かります。分かりますが…、しかし、一目見た時に伝わるワクワク感というか、そういった感情は大事にして欲しいなと思います。
ゾイドはリアル系ですがフィクションです。リアルを意識しつつも、フィクションならではの豪快さや憧れは常に保っていて欲しいなと思います。
そういった意味で、[メカニックの造りがシンプルで小型化した][しかし一方で高性能である]キングライガーは、リアルではあります。
しかし、それのみに傾倒しすぎて、フィクションならではの魅力を放棄してしまったように感じてしまいます。

リアルとハッタリのバランスは、常に見極めて欲しいなぁと思います。そのバランスを常に保っていたからこそ、ゾイドは魅力的だったと思います。
もっとも、この問題を感じるゾイドはキングライガーだけの問題ではありません。大陸間戦争機の多くのゾイドに共通する問題だと思います。

余談ですが、この時期のゾイドでこの問題を回避している筆頭はギル・ベイダーとキングゴジュラスだと思います。
両機からは、強者だけが持つオーラを足し感じます。メカニックは従来機に比して幾らかシンプルですが、過不足という程ではなく良いバランスが保たれていると思います。
このようなデザインを見てからキングライガーなどを見ると、改めて残念だなあと思ってしまいます。


フェイス

ライオンに見えるかどうかは微妙です。
最初に見た時は、ハイエナかヒヒのような印象を持ってしまいました。

ライオンと言えばタテガミですが、キングライガーはそれをレーザーブレードとして処理しています。
しかし、これが今ひとつ目立っていません。
高速機には、よく姿勢制御用の小型翼が付いています。それはハウンドソルジャーの各部に付いた小型翼だったり、グレートサーベルの高機動ウイングだったりです。
キングライガーのレーザーブレードは、ライオンの大きな特徴であるところのタテガミを模した装備であるにもかかわらず、ハッタリ感に乏しくそれらと同程度か以下の存在感でしかないと思います。
最大級に見せるべき装備なのに、「よくあるもの」という程度にしか目立っていないのは、ライオンに見えにくい大きな要因だと思います。

その上で、他にも難点を幾つか感じます。
タテガミと並ぶ大きな特徴であるところの牙は、小さく迫力に欠けます。また、両頬に付いたメガバルカンの影響でそもそも見えにくくなっています。
更に、牙で戦う様子を想像すると疑問がわきます。牙で敵にかぶりつこうとしても、メガバルカンが干渉してそもそも無理なのではないだろうか…。
噛み付こうとすればメガバルカンが折れるような気がします…。牙を全く活かしていないように感じるのは大きな難点です。

レーザーブレードも、このような付き位置で使えるのだろうか…? と思ってしまいます。
その名の通り敵を切り裂く装備ですが、この小さなブレードで敵を斬ろうと思えば、斬るというか体当たり自爆してしまいそうです。

モチーフにあまり似ていない。モチーフの特長を活かしていない。各種装備の用途に疑問を感じる。
このような点から、残念ながら高評価は与え辛いと思います。

頭部にはコックピットもあり、中には1名のパイロットが乗り込みます。

キングライガーのパイロットは1名のみで、全ての操作をここから行います。

なお、コックピットハッチはかなり後にまで開く事が出来ます。

ここまで開く事に意味があるのかは分かりませんが、大きく開く事は好きです。
おそらく、メカ生体ゾイドで最もコックピットの開閉角度の大きな部類だと思います。


ライオン型

シールドライガー、ライジャーに続く第三のライオンですが、シールドライガーともライジャーとも違うデザインになっているのは特徴的です。

結果から言うと、メカ生体期において最も人気の高いライオン型はシールドライガーでした。
後発のライオンは、どれも初代ライオンを越えられなかった。しかも、僅差ではなく圧倒的な差でした。
ライオンと言えばシールドライガー。その事は終了時まで変わる事はなかったのです。
そういった意味で、デザインを全て異ならせた事の是非は評価が分かれる所でしょう。
しかし、同モチーフでありながらも常に新デザインを開拓しようとしたフロンティア精神は大いに考慮したい所です。

後年の機獣新世紀ゾイドでもライオン型ゾイドは多く誕生しましたが、基本ベースはすべてシールドライガーであり、大きく逸脱しない中での調整だったと感じます。
悪く言えばリスキーを避けアンパイを選んだなと思います。メカ生体ゾイド期とは対極です。
しかし結果として言えば、ブレードライガー、ライガーゼロ、エナジーライガー等はどれも劇中で大いに活躍し大きな人気や特別な地位を会得しました。
今一つ人気を得られなかったライジャーやキングライガーと大きく異なります。

この辺りをどう評価するかは難しい問題で、また各人次第だと思います。
常に新デザインを求めたフロンティア精神を評価する事も出来るし、結果として満足な人気を残せなかったからダメだったと言う事も出来ます。
基本ベースが似ているので面白みが無いとも言えるし、結果として人気機種になったのだから大成功と言う事も出来ます。
理想的に言えば、様々な方向性のライオン型が誕生し、なおかつそれが初代機と同等以上に魅力的だったらという事だと思いますが。


共和国高速部隊

キングライガーは、部隊をまとめる隊長機として運用できます。
この当時の共和国軍の構成から考えると、キングライガーはシールドライガーMK-IIやコマンドウルフNEWを率いて戦っていたのだと推測します。

ハウンドソルジャーは一機だけ速度が段違いなので、おそらく単独での運用だったと思います。
また、ゴジュラスやガンブラスター等の非高速ゾイドに関しては、ウルトラザウルスが指揮していたと思います。

共和国高速部隊の隊長機としてシールドライガーMK-IIやコマンドウルフNEWを率いて戦う。このように考えると、色がマズいなぁと思ってしまいます。
「部隊カラー」というのはとても魅力的な要素です。共和国高速部隊を率いるキングライガーも、ぜひ色を統一させて欲しかった所です。
一機だけ赤でかなり浮いています。まぁ、隊長機らしい特別感があるとも言えますが…。

そもそも、共和国軍がなぜ赤を使っているのだろう?という疑問もあります。
赤と言えばゼネバス帝国軍の象徴的な色です。
ただ、この時期の共和国と言えば第二次中央大陸戦争に勝利し中央大陸全土を収めています。
当然、旧ゼネバス帝国の技術を吸収していただろうし、また旧帝国市民も自国民として併合した事でしょう。
キングライガーの赤は、技術的融合…すなわち帝国的技術を取り入れている事と、市民感情…すなわち敗戦国だが決して虐げはしないという意思表明、そんな事を根拠として考えてみると納得できるかもしれません。

デザインに関しては、こうして並べるとより際立って感じるなと思います。
先にも散々書きましたが、やはりメカニックの造り込みに乏しく魅力薄な感じは否めません。
ただ、こうして並べると、面白い点もある事に気付きます。
キングライガーはライオン型ですが、デザイン的にはむしろコマンドウルフと共通した箇所も多くなっています。
わき腹の装備などは酷似しています。このような、自軍らしいつながりを感じる処理があるのは良いと思います。

ただし、その上で難を言うなら設定です。コマンドウルフのそれはスモークディスチャージャーであり、キングライガーのそれはエネルギー加速装置です。
せっかくなので、設定でも共通性を感じさせるものとしておけば良かったと思います。
逆に言えば、そこまでの詰めが無かったゆえにデザインとしては良いのに活かしきれなかったと思えるのが残念です。


細部

難の多いデザインですが、まだ幾つか触れるべき点があると思います。
ライオン型の格闘装備といえば、牙と共に爪が挙げられます。

爪のデザインはシャープさに欠け、切り裂くような鋭さはありません。これも大きな難点だと思います。
ハンマーのように殴って叩き割る用途なら、このデザインでも構わないと思います。しかし、キングライガーはシールドライガーより小型軽量化されたゾイドです。
つまり、質量不足から叩き割るような用途には不向きです。爪はよりシャープに造形し、切り裂くイメージを持たせるデザインにして欲しかったなと思います。
脚全体のデザインもあまり良くないと思います。排気口がかなり大きく付いていますが、この辺りもちょっと大雑把だなぁと思ってしまいます。

脚部と言えば、特徴的な装備もあります。シールドライガーの後継機という事で、キングライガーもシールドを装備しています。
シールドライガーのシールド発生装置は頭部にありましたが、キングライガーは脚部に付いているのです。


銀色のプレートがそれです。
全ての脚にシールド発生装置がある為、シールドライガーのように前方のみをガードするのではなくガンブラスターのように全周囲をガードする設計なのかもしれません。
しかし、個人的には頭部に発生装置がある方が説得力があるんじゃないかなぁと思います。
脚部は防御用装備というより素晴らしい機動力を生み出すためのものであるべきでしょう。
ライオンの頭部タテガミはとても頑丈で、戦いの時に相手の牙や爪を受け止め通さないようにする効果があると言われています。百獣の王と呼ばれる大きな要素でもあります。
そういった意味で、やはり頭部はシールド発生装置、脚部は機動力の為にあるべきなんじゃないかなぁと思います。

また、細かい箇所ですが、臀部の処理も気になります。
バンパーが付いており頑強なメカニックの構造を思わせますが、はたしてこのような演出は高速機にすべきなのかどうかというと疑問です。
このような処理は、機動力は低いが重パワーで迫り来るゾイド…、例えばガンブラスターのようなゾイドだったら似合うと思います。

全体的に、色々と難が目立つと思います。
コマンドウルフとの共通性を感じるわき腹の装備など、良い箇所もあります。
しかし、全体的に見てやはり難点の方をより多く感じてしまう事は否定しがたいです。


ギミック

電動ゾイドなので、スイッチを入れると動きます。しかし、ギミックは最低限といった感じです。
連動ギミッは「口を開閉しながら前進」のみで、電動ゾイドとしては最小です。
脚部も、各間接は固定されており動く事はありません。

背中には、グレードアップパーツ対応用の回転軸付きのコネクターを持っています。
これにより、対応パーツを付加すればギミックを増やす事は出来ます。
しかし、基本状態でもせめてもう一つくらいは可動箇所を持っておいて欲しいなぁと思います。

電動ギミックに加え、手動ギミックも最低限です。手動ギミックはコックピットの開閉のみです。
手動ギミックがこんなにも少ないゾイドがかつてあっただろうか。そんなレベルで動きません。
ビーム砲も固定。レーザーブレードも固定。足首も固定。尻尾も固定。

足首や尻尾は、むしろなぜ固定にした? という気がします。爪や尻尾は別パーツ化されているのに、構造としてわざわざ固定されています。
足首は固定せずコマンドウルフのような”遊び”を入れておけば良かったのに。
尻尾は固定せずシールドライガーのような上下できるギミックを付けておけば良かったのに。

正直、遊び甲斐に関しては極めて低くなっています。
連動ギミックが「口を開閉しながら前進」のみのゾイドは他にもあります。
しかし、ハウンドソルジャーやジーク・ドーベルは、大型武器の角度を変更できる手動ギミックを持ちます。
ガル・タイガーも、腰のビーム砲の角度を変更できる手動ギミックを持ちます。
キングライガーは手動ギミックのマズさもあり、メカ生体ゾイドの電動ゾイドとしては最もギミックに難を感じるゾイドになってしまっていると思います。


戦歴

戦歴は、各所でかなりの活躍を見せています。
敵地へ潜入し破壊工作を行うとか、オルディオスと共闘しデスザウラーを撃破するとか、敵基地への強行偵察を行いギル・ベイダーを発見するとか、なかなか勇ましい印象のものが多いです。格上の敵にも怯まず果敢に立ち向かっている感じがするのも印象的です。

設定としては部隊を率いる隊長機ですが、どちらかというと単独での行動が多い印象でもあります。
この辺のズレはちょっと残念です。もちろん、隊長機として活躍した機も多かったとは思いますが。

しかし、ギル・ベイダーの本格参戦後は力及ばず敗退するシーンも増えています。

さすがに、キングライガーでは敵うはずもありません。

その後は、改良を加えられキングバロンとして再就役しています。
しかし、その後も退役する事なく各地でキングバロンと混ざりながら戦い抜いています。
キングゴジュラスと共に進撃するシーンもあり、その活躍は最終時まで続いていたようです。


高速指揮官機 キングライガー

先に出たハウンドソルジャーもメカニックの造り込みの浅いゾイドでした。
しかし、あちらはまだしも最低限の造り込みがあった事とデザインセンスがかなり高かったことが勝因だと思います。
比べるとキングライガーはメカニックの造り込みが更に低下しており、更に随所にマズさが見られるのが残念です。

全体としては破綻しているというほどのレベルではなく、小奇麗にまとまっているとは思います。
白いカラーは清潔感があり、金メッキもキツさはなく上品にまとまっています。
シールドライガーとは違う新しいライオン型を誕生させようとしたフロンティア精神も大いに買いたいです。
しかし、やはりその上でなお、もう一歩踏み込んだ造り込みと煮詰めを求めてしまうゾイドです。


バリエーションモデル

 メカ生体ゾイド キングバロン

 ゾイドリバースセンチュリー キングライガー


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