メカ生体ゾイド ヘリック共和国軍 重装甲強行陸戦型 ガンブラスター<GUN BLUSTER>

■ガンブラスター(アンキロサウルス型) データベース■

 発売年月 1989年7月  発売当時価格 2500円  動力 モーター

 型式番号 RPZ-11

 スペック 全長19.0m 全高8.1m 全幅9.3m 重量125.0t 最高速度120km/h 乗員1名

 主な武装
  ブレーザーキャノン×2 パルスガン×2 電磁砲 サンダーキャノン 連装加速ビーム砲 加速衝撃砲 プラズマキャノン ビームキャノン 三連速射砲
  レールキャノン 連装パルスビーム砲 ショットガン 超電磁シールドホーン×24 エネルギーチャージャー 3Dセンサー 冷却用放熱口×4 後方警戒レーダー

 特徴
  高性能兵器を装備した暗黒軍ゾイドに対抗して、共和国軍が総力を結集して開発した戦闘機械獣。
  背部に装備された三連のローリング砲は、ハイパーローリングキャノンと呼ばれ、最大限まで増幅されたエネルギーを全開で発射する超兵器である。
  また、側面は左右24本の角からなる超電磁シールドシステムによって防御されている。
  そして強力なレーダーも装え、攻撃、防御ともに優れた陸戦メカである。


前後より

超重砲型ゾイド・ガンブラスターです。
金色に光り輝く砲がひときわ特徴的で、"黄金砲"の異名を持ちます。
ゾイド多しといえども、武器の名前が異名になっているのはガンブラスター位のもので、いかにこの武器のインパクトが強いかを物語っていると思います。
個人的には非常に思い入れの強いゾイドでもあります。(参考:コラム・私とゾイド-私とガンブラスター-)

リリースは89年7月。ストーリー上では、ガイロス皇帝率いる暗黒軍が本格参戦し、ゾイドは新たなる展開を迎えていました。
暗黒軍第一弾のデッド・ボーダーとヘル・ディガンナーは、どの従来機とも違うデザインをしており、また不気味な未知の武器を使いました。
それは、新たなる高次元の戦いを強烈に印象づけました。

暗黒軍に対抗して登場した、最初の共和国ゾイドはカノンフォートです。
カノンフォートは従来の共和国機と比べて違和感の無い、おなじみのデザインで作られていました。
そしてカノンフォートは全くもって暗黒軍に通用せず、期待の新鋭機にもかかわらず連敗に次ぐ連敗を経験しました。
これは、「従来の共和国軍では対抗できない」という事を示した展開だったと思います。

ガンブラスターは、暗黒軍に対抗して登場した、二番目のゾイドです。
今度こそ負けられない。そんな状況の中、新次元のゾイドの要素を満載して、ガンブラスターは誕生しました。
それゆえに、ガンブラスターは、従来の共和国機とは全く違った要素を幾つも持ちます。

まず、カラーリングが特徴的です。
カラーリング自体は、既にシールドライガーMK-II等が採用していた「白青金」で、特に目新しいものではありません。
しかしこのカラーは「MK-II部隊用カラー」とされていたもので、強化型ゾイド専用のカラーとされていたものです。

ガンブラスターは、「就役当初の段階で既にMK-II部隊用カラーをまとっていた」という点において、非常に特殊です。

この事から考えると、ガンブラスターは「就役当初からMK-IIゾイド並の性能を付加されて生まれた機体」として考えるべきと思います。
カノンフォートの敗北も含めて考えると、「そうでもしない限り暗黒軍には対抗出来ない」という、当時の共和国の主張でもあるように思えます。

ただMK-II部隊用カラーであるといっても、全く同じというわけではなく、金色の色合いが大きく違います。
金色は、成型色からメッキに変りました。
メッキを採用している事は大きな特徴で、この点は賛否あるものです。
ただ個人的には、従来のシールドライガーMK-II等の金色は、金色というより黄色のよう…、あまり綺麗とは言い難い色合いで、あまり好きになれませんでした。
その点、メッキは高級感もあり、きらびやかという言葉そのもの。どうせ金色を使うなら、その時点でミリタリックからかけ離れた色でしか無い。
であるならば、いっそメッキまでいってしまったガンブラスターの判断は、間違ってはいなかったと思います。


側面より

「就役当初からMK-IIカラーを採用した」という点において特徴的なガンブラスターですが、デザイン面でもかなり特徴的で、従来機とは違ったものを持ちます。
従来機と違う最大の特徴は、「モチーフからの逸脱」だと思います。
誕生からずっと、ゾイドはモチーフの生物に対し、出来る限り忠実に作るのが大きなテーマだったと思います。
ガンブラスターは、その哲学から大きく逸れた作りになっており、改めて見ると非常に異端です。

モチーフは、旧来のゾイドがほとんど使用していた「恐竜型」という曖昧な表記ではなく「アンキロサウルス型」というキッチリした表記になっています。
ここだけを考えると、よりモチーフに忠実に作ったゾイドなのかなと思えるものですが、実際は真逆です。

アンキロサウルスは、二つの大きな特徴を持った草食恐竜です。その特徴とは、体中を覆う強固な装甲と、強大な武器になる尾です。

装甲は、骨板と骨質のスパイクで構成されており、これが全身を覆っていました。
尾は、構造上、付け根を起点として横方向に振れるようになっており、先端には大きな骨塊が付いていました。
全身の装甲と、および尾を左右に振り回す事によって、肉食恐竜類から身を守っていたと推測されています。

アンキロサウルスとガンブラスターを比べると、4足歩行であるという以外はまるで共通点がありません。
全身を覆う装甲は、上面は全てはがされており、わずか側面に少し残る程度。
スパイクは付いていますが、しかしかなり途切れがち。しかも、設定上、スパイクではなく超電磁シールド発生装置となってています。
この超電磁シールドを発生させる事で、ガンブラスターは機体の全周囲をガードする事が出来ます。

モチーフの特徴を生かした物理的な装甲ではなく、設定上のシールド発生装置で全身を防御する事にしてモチーフを再現した というのは、非常に斬新です。
ですが、ゾイド的にはどうなのだろうと思ってしまいます。
モチーフの強力な武器である尾は、後方レーダーとして設定されており、全く別の用途の装備になっています。

こうして考えると、ガンブラスターは非常にMK-II的だなと思えます。
例えばゴジュラスは、ノーマルタイプは肉食恐竜らしい格闘戦を得意とするファイターでしたが、MK-IIになってからはキャノン砲で戦う砲戦ゾイドと化しました。
シールドライガーも、ノーマルは俊足をもって敵を倒す高機動メカでしたが、MK-IIは機動性を殺してまで大型のビーム砲を装備したタイプになりました。
ノーマルタイプはモチーフに忠実に作られるが、MK-IIはモチーフの特徴から逸脱した追加装備により強化されてゆく。そんな特徴があるように思います。
まさに就役当初からMK-IIとして誕生した異端のゾイドが、ガンブラスターなのだと思います。

この点において、ガンブラスターは非常に評価の分かれるゾイドだと思います。
「モチーフに忠実であってこそゾイド」という点でみると、残念ながら高い評価は与えにくいのは確かだと思います。
しかし、MK-II的な造りになっているからこそ、超兵器的な雰囲気はどのゾイドより高いレベルにあるとも思います。
MK-IIゾイドの多くは、いかにも後付けというような、アンバランスな装備を持っています(それはそれでカッコ良く魅力的なものですが)。
比べると、最初からMK-II的な造りで設計されている故、ガンブラスターは武器を満載していながらも、全体のまとまり具合は素晴らしく、シックリ感は抜群です。

個人的には、確かにゾイドとして大きな疑問は残るものの、これはこれで良いゾイドだと思います。

なお、開発途中のスケッチが公開されています。

かなり初期のデザイン画と思われます。この段階ではトゲが全周囲にあった事が分かります。
しかし背中の無数の砲や、尾を攻撃用ではなくレーダーとして機能させる点は、既に決まっていた事も読み取れます。
「モチーフからの逸脱」というのは、かなり初期からのコンセプトだったと思われます。

このスケッチには「B.Fujino」の文字が書かれています。メカ生体ゾイドチームの巨匠・藤野凡平氏です。
この方は実に多数のゾイドのデザインを手がけており、あのゴジュラスも、氏のデザインによるものです。
■モチーフの特徴を活かしパワフルに戦うゴジュラス。
■モチーフの特徴をほぼ活かさずに作られたガンブラスター。
異なったコンセプトのゾイドを同一のデザイナーが手がけているのは、非常に興味深いです。

ゴジュラスの設計者だから、そのデザイン力の高さやゾイドテイストの理解はお墨付きです。
ガンブラスターがモチーフから逸脱しているにも関わらず、しかし見事にゾイドになっているのは、このデザイナーあってのものとも思います。


フェイス コックピット

とてもカッコいい顔付きだと思います。
ただモチーフに忠実かという点で見ると、残念ながら、これのどこがアンキロサウルス? と思わずには居られない形状でもあります。
やはりモチーフからの逸脱が、ここでも強烈です。

大きな牙がビッシリと付いており、 噛み付き攻撃も可能な強力な武器とされています。
実際、テレビCMやゾイドグラフィックス誌上では、ダーク・ホーンに噛み付きを見舞っているシーンもあります。
カッコいいけどゾイドとして考えると複雑な思いもする、そんなデザインになっていると思います。

モチーフを考慮しないのであれば、素晴らしいデザインをしていると思います。

目つきは、共和国機にしては珍しい、睨みを効かせた凄みのあるツリ目で、いかに必死に暗黒軍に対抗して作られたかが伝わってくる気がします。
この目が、装甲に隠れ、やや見えにくくなっているのは惜しいと思います。
目はメッキパーツで出来ているのも特徴です。
メッキという事から考えると、もしかすると見えにくいのは意図的で、装甲の奥から金色の輝きが見えるのを狙っているのかなとも思います。
ただ個人的にはこの点は少し懐疑的で、クリアパーツ+電飾の方が良かったのではないかとも思っています。

コックピットハッチを空けると、中にはおなじみのパイロットが座っています。
火力満載の機体ですが、パイロットは頭部の1名のみで、全ての操作をここから行います。ここまで重武装で一人乗りというのは、史上初の機体です。
ハッチのデザインは非常に秀逸で、いかにも戦車っぽいモールドが施されており、個人的にとても好きな箇所です。

ハッチは、微妙に左右非対称なのも、非常に凝られている点だと思います。

また角が付いているのも特徴です。もちろん、モチーフのアンキロサウルスに角はありません。
後に、ゴッドカイザーやバトルクーガーなど、「モチーフとは関係ないけど角が生えている」のが、共和国ゾイドデザインのスタンダードとなってゆきます。
ガンブラスターはその先がけの機体とも言えます。
ただ、ガンブラスターの場合は、コックピットハッチを開けやすくする為に角を付けた側面も大きいと思いますが。


ハイパーローリングキャノン

装備された圧倒的多数の火砲は、ガンブラスター最大の特徴です。
しかも多数の砲を装備しているというだけでなく、その一つ一つが異なったデザインで作られているのは大きな驚きです。
砲のデザインはどれも素晴らしい凝り具合で、単なる筒になっているものは皆無。極めて細かいモールドやパイプ類、複雑な立体の組み合わせで構成されています。
そのデザイン性の高さは、単一の砲として見ても見ごたえ充分なもので、ビーム砲として素晴らしいリアル感を出しています。
それが一斉にズラリ並んだガンブラスターの砲は、まさに豪華絢爛なものになっており、非常に見ごたえがあります。

この凝りに凝った砲のデザインは、同じく超多連装砲を装備したディバイソンのものと比べ、対照的になっていると思います。

補足しておくと、ディバイソンのものが劣っていると言っているわけではありません。
ディバイソンの17門突撃砲は、いかにも実弾砲の砲身という感じがするし、同じ形が並ぶゆえに、実に渋い、いぶし銀の魅力があります。
対し、ガンブラスターのものは非常にきらびやかな作り。見比べてみると、同じ砲戦ゾイドながらデザイン思想の違いが読み取れ、非常に面白いです。

これらの砲は個々で名称設定されているほか、全てまとめて「ハイパーローリングキャノン」と名付けられています。
何とも凄い名称ですが、実際、その名称以上のインパクトと完成度を併せ持った砲になっていると思います。
この多数の砲は、いやがうえにも激しい砲撃戦……、ゾイドらしいミリタリックなバトルを想像させます。
一方でそのミリタリックさを打ち消すほど派手なメッキが施されているのも特徴であり、やはり何ともインパクトの強いものだと思います。

機体名称も、[ガン][ブラスター]と、撃つ気満々で、やはりこのゾイドといえば、ハイパーローリングキャノンなんだろうと思います。
よく誤記されますが、ブラスターの綴りは「BLASTER」ではなく「BLUSTER」です。
BLUSTERは、「荒れ狂う」「猛り狂う」といった意味を持ちます。

絶大なインパクトを放つハイパーローリングキャノンですが、惜しい点は、キット的な面で一つだけあります。
製作時に、ランナーから切り離す際、その部分のメッキが落ちてしまいます。
メッキゆえに仕方の無いものでもありますが、主に砲口部分にゲートがある為、完成後少し目立ちます。
もう少しゲート位置には気を配って欲しかったと思います。


デザイン総括

非常に異端なゾイドであるのは確かだと思います。
当初からMK-II的…というかMK-IIよりも更に一歩先を行くような感じで作られているから、従来のゾイドと冷静に比べた時、モチーフの捉え方の差に驚いてしまいます。
しかし異端ではあるものの、従来のゾイドと並べた時に違和感を感じる事はなく、むしろとても良く馴染んでいます。

MK-II的な要素を当初から取り入れたことで、ガンブラスターはモチーフから徹底して逸脱しています。
しかし同時に、メカ的な部分での作り込みは旧来のゾイドと比べても引けをとらないほど細かく、そして的確で、リアルメカ・ゾイドの名に恥じぬ作りになっています。
この点こそ、ガンブラスターが異端でありながらゾイドとして認められる要因だと思います。

細かく作りこまれたメカ部の中でも特に秀逸で印象的なのは、尾部付け根のスライド式スイッチ回りだと思います。
また、装甲上面にあるパワーエンブレムも見逃せません。

ガンブラスターのスライド式スイッチは、レバーがデザインの中に見事に溶け込んでおり、全ゾイド中最も処理が上手いと思います。
スイッチの上面にはエネルギーチャージャーがありますが、いかにもバッテリーを思わせるデザインであり、またキャップの使い方も上手いと思います。
こういった気の利いたデザインはさすがです。

装甲の上に取り付けられたパワーエンブレムは、ガンブラスターが初めて取り入れた要素です。
パワーエンブレムとは、ゾイドの強さを記したエンブレムを機体に貼り付ける…という、いかにも玩具的な発想のパーツです。
正直、リアルメカ・ゾイドには相応しくない要素だと思います。
しかしガンブラスターのパワーエンブレムは、装甲の貼り合わせ目に貼る事で、デザイン上の良いアクセントになっています。
目立ちはするが玩具的になりすぎてもいない。デザイン的な処理自体は上手いと思います。

全体的に素晴らしいデザインをしていると思いますが、惜しい点を言えば、脚部のキャップの処理かと思います。
脚部には特徴的な大きな放熱口が付いていますが、キャップが放熱口を塞ぎながら付いており、特に前足において顕著です。もう少しの配慮が欲しかったと思います。

もう一つの弱点は、下面から見た時のデザインだと思います。

上面から見ると、装甲がふくらみを持っているため、生物的なラインが上手く表現されています。
しかし下面から見ると、あからさまに直線的な処理がされており、生物的な感じが弱すぎるようにも思います。

また、電池カバーが片側に寄っているのも特徴で、下面から見ると、それがよく分かります。
この事によって色分けが少しおかしな事になっている様にも見えます。
まぁ、通常は下面から見る事はまず無いと思うので、非常に細かい点ではあります。


ギミック

電動ゾイドなので、電池を入れてスイッチを入れると元気に動いてくれます。
連動ギミックはなかなか面白みのある仕上がりになっており、「歩行・口の開閉・ハイパーローリングキャノンの回転」をこなします。

歩行はゾイドにおいて最もスタンダードなギミックですが、ガンブラスターの歩行を詳しく見ると、注目すべき所があります。
モーターゾイドのギアボックスは、脚部用の回転軸が4つ飛び出ており、それぞれの軸に前後脚パーツを直結させるのが標準的なものです。
しかしガンブラスターのギアボックスは、脚部用の回転軸が2個しか無いものになっており、珍しいタイプであると言えます。

左はガンブラスター、右はレッドホーンのギアボックス

2つの回転軸には後脚を取り付けるようになっており、前脚は、後脚から動力伝達用パーツを介して動く構造になっています。
この方法はゼンマイゾイドに近い構造であり、モーター級の大型ゾイドが、ゼンマイゾイドと似た歩行システムを使用しているのは非常に興味深いものです。

Hiゼンマイ級コマンドウルフとの比較。

ガンブラスターは、デザインだけでなく、ギミックの作り方でも異端のゾイドと言えると思います。

ガンブラスターのリリースから1ヵ月後に、ハウンドソルジャーやジーク・ドーベル等の、従来より小型でありながらモーターを使用したゾイドのリリースが始まりました。
それらは、やはり2軸しか回転軸を持たず、ガンブラスターと同じように、後脚からの動力伝達パーツを介して前脚が動く方式になっていました。

これは推測ですが、ギアボックスは非常に細かいパーツがギッチリと詰まっており、製造コストがかなりかかるものと思います。
その点において、4軸のものより2軸のものの方が、まだコストを下げやすいのではないかと思います。
また、4軸のものは構造が複雑になる分、どうしても大型になりがちです。
後の「従来より小型でありながらモーターを使用したゾイド」の製作、そしてそのゾイドを出来る限り安価で販売する事を睨んで、テストベッドとして作られたギアボックスでありギミックがガンブラスターなのかも…と思います。
(余談ですが、ハウンドソルジャー等のギアボックスは、完成品ではなく、組む所からユーザーに一任しています)

動力伝達パーツを介して前後脚を動かすガンブラスターですが、この動力伝達パーツのデザインが、個人的に大好きです。

動力伝達パーツを、デザインの中に違和感なく上手くなじませるのは、並大抵の事ではないと思います。
どうしてもワザとらしいというか、いかにもギミックを作るためのパーツというのが分かってしまうものになりがちで、この点は傑作の誉れ高いコマンドウルフも例外ではないと思います。
その為、動力伝達パーツはボディの内側を通されている事の方が多いものでもあります。
(しかし内側を通すと必然的に体が太くなるという弊害もあるので、コマンドウルフは苦肉の策だったのではと思います)
その点、ガンブラスターのものは外側を通しながらも上手くデザインに馴染んでいます。
それどころか、このパーツが動くからこそよりメカニックがリアルに見えるような感じになっており、素晴らしいと思います。

ただ、ガンブラスターの歩行ギミックは、詳しく見ると非常に興味深いものですが、普通に見る分には「定番の歩行ギミックだな」というものだと思います。
やはりこのゾイドのギミックの肝は、背中の黄金の砲、ハイパーローリングキャノンと言えます。
ハイパーローリングキャノンは、巨大な砲が同時に3つも回転し、まさに大火力を象徴する素晴らしいギミックに仕上がっています。

ガンブラスターは、設定上、1秒間に1000発もの射撃を可能とする超超重撃ゾイドですが、それを有無を言わさず納得させるだけの力強さがあります。

砲の回転ギミックといえば、ライバルのダーク・ホーンもハイブリットバルカン砲の回転ギミックを持ちます。
しかし両者のギミックの作りには差があり、ダーク・ホーンはスプリングで回転を生んでいるのに対し、ガンブラスターはギアを組み合わせる事で回転を生んでいます。
互いのライバルが、共通して「回転する砲」というギミックを持っているのに、それぞれ異なった構造をしているのは興味深く、また素晴らしい事だと思います。

連動ギミックとしては、歩行、口の開閉、ハイパーローリングキャノンの回転と地味な出来でもありますが、ハイパーローリングキャノンのインパクトが非常に強い為、総合的には水準以上の出来だと思います。

反面、手動ギミックは悲しいかなコックピットの開閉以外、一切ありません。
コックピットの開閉はゾイドでは無いわけが無い手動ギミックなので、実質、手動ギミックはゼロとしても良いと思います。
大型ゾイドでこれはちょっと悲しいものがあります。

個人的に、尾を手動で動かせる位は欲しかったかなと思います。
やはり尾を振るのはアンキロサウルスの大きな特徴です。この部分が、全く固定なのは悲しい気がします。
尾の先がレーダーなので、微妙に角度を変え索敵のシーンを演出する…というのがあっても良かったと思います。

尾が動かない原因ですが、キットの胴体フレーム分割方式が原因です。

ガンブラスターの胴体フレームは、このようになっています。鼻の先から尾の先までが一体成型です。
これは前代未聞、何とも豪快なパーツ構造です。
ゾイドは対象年齢が低いゆえに、組み立てを出来るだけ簡素し、パーツを少なく抑える事に死力されています。
しかし幾らなんでも、ここまで簡素化されたゾイドはガンブラスターだけです。

通常、どんなゾイドでも最低限「首から上」「胴体」「尾」の3分割はされています。
ガンブラスターは、デザインもそうですが、キットの作りもそうとう異端だと思います。
そして、幾らなんでもこれは少しやりすぎだったようにも思います。
やはりせめて、尾部は分割し動くようにして欲しかったというのが本音です。

総合的に見れば、ハイパーローリングキャノンのギミックは光るものの、少し物足りない出来なのかなと思います。


戦歴

ガンブラスターの戦歴は、ひときわ輝くものがあります。

マッドサンダーにより、帝国軍最大最強のデスザウラーは遂に攻略され、共和国は対帝国戦における勝利を遂に得ました。
しかし喜びも束の間。すぐにデッド・ボーダーを筆頭に強力な暗黒軍との戦争に突入します。
ゴジュラスやウルトラザウルスでは話にならない程の強さを見せ付けた暗黒軍は、最強・マッドサンダーさえ大苦戦させます。

共和国軍は、対・暗黒軍用メカ第一号としてカノンフォートを就役させますが、これは強力な暗黒軍にはほとんど通用せず仕舞いでした。
それどころか暗黒軍は強力な重戦車ダーク・ホーンを投入し、ますますの戦力増強を図ります。
当時の発売/参戦順をまとめると、
89年3月発売、デッド・ボーダー&ヘル・ディガンナー(暗黒軍登場・猛威を振るう)
89年4月発売、カノンフォート(対・暗黒軍用メカとして登場するも大幅な力不足が露呈)
89年6月発売、ダーク・ホーン(旧帝国メカが超パワーアップして登場。カノンフォートを一蹴) というものでした。

この状況は、共和国軍と、そして当時の共和国派ユーザーにとって、先の見えない大きな絶望でした。
そんな状況の中、ダーク・ホーンの発売の翌月、7月に、ガンブラスターは共和国の威信をかけて登場しました。
そして見事期待通りの能力を発揮し、無敵の猛威を振るっていた暗黒軍に土を付ける事に成功します。
ガンブラスターの登場で、共和国軍に反撃の狼煙があがったのです。
そういった意味で、当時の共和国派ユーザーとしては、かなり印象深い機体です。

当時の学年誌では、新生共和国軍のフラッグシップとして、無敵の暗黒軍の攻撃を跳ね返し、また最強の砲撃力で沈める姿が何度も描かれました。

再編されたゾイドバトルストーリーでも、共和国が戦況を好転させるきっかけになった機体として描かれており、非常に優遇された機体だと思います。

反面、登場が「暗黒軍攻略の象徴」といった扱われ方をした為、後に暗黒軍最終兵器ことギル・ベイダーが登場した際は、多数のガンブラスターが破壊され、再び暗黒軍の優位性を印象付ける役割も担っています。


黄金砲 ガンブラスター


とにかく、超異端なゾイドであるのは確かだと思います。
カラーリングとデザイン。ギミックの駆動方式。キットの大胆な作り。
しかしそれだけ異端であるにもかかわらず、見事にゾイドに仕上がっているのだから見事です。

従来のゾイドと大幅に異なる作りにも関わらず、ガンブラスターは疑問ではなく拍手喝采で受け入れられました。
その事が何より、ガンブラスターの傑作ぶりを証明していると思います。

ゾイドはもう出尽くしたとも言われます。確かに、メジャーな生物は一通り出尽くした感じもします。
しかし更なる発展は可能と思います。
その際、ガンブラスターは、ゾイドデザインの新たなる可能性を開拓した傑作機として、良い手本になれるゾイドだと思います。


バリエーションモデル

機獣新世紀ゾイド ガンブラスター


Back
index

inserted by FC2 system