メカ生体ゾイド ヘリック共和国軍 戦闘機械獣 カノントータス<CANNON TORTOISE>

■カノントータス(カメ型) データベース■

 発売年月 1986年8月  発売当時価格 780円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 RMZ-27

 スペック 全長9.9m 全高5.8m 全幅6.3m 重量33.6t 最高速度100km/h 乗員1名

 主な武装
  突撃砲 連装対空砲(×2) 対空レーダー 後部コンテナ

 特徴
  その堅甲な車体を利用し、突撃砲を装備し、要塞、トーチカ攻撃を主任務としている。
  しかし携行弾数が少ないこと、戦闘速度が遅いのが欠点といえる。


前後より

共和国軍が誇る、砲戦型ゾイドです。
堅牢な装甲と強力な大砲。まさに重戦車を思わせる、ミリタリー感の特に強いゾイドです。
その一方、カメ特有の何とも可愛らしい姿が何ともユーモラスです。
ミリタリー感と生物らしさ。相反する要素が見事に融合した、まさにメカ生体と呼ぶべきゾイドだと思います。

その装甲は非常に堅牢で、まさに亀の甲羅を思わせますものです。登場当時は「グスタフを超える防御力」と謳われていました。
ちなみにグスタフは登場時「レッドホーンより強固な」と紹介されています。カノントータスの凄まじい防御力が伺えます。
ただ、この装甲強度の設定が後々まで残っているかどうかは不明ですが( この記述はゾイドグラフィックスVol.8に一度出たきりです)。

個人的には、レッドホーンと同等位ならともかく、グスタフ以上というのは過剰な気がしないでもないです。
新登場した際の宣伝文句は、「軍部が新鋭機お披露目の際に(支持を得る為に)誇張して性能を伝えたもの」というように解釈したいと思います。
最も、装甲強度の真相はともかく、その小型さゆえに「装甲は耐えつつも体ごと吹き飛ばされ敗北」するような事もありましたが。

具体的な数値はともかく、小型ゾイドとしては驚異的な、むしろ大型ゾイド級の装甲強度を持っているのは確かです。
しかしその割には共和国伝統のキャノピー式コックピットを採用しているのも特徴です。
一見シュールで非合理に見えますが、カノントータスは亀らしく首を体内にひっこめる事が出来ます。これによりパイロットの安全を図っています。
共和国伝統のデザインをあくまで貫きつつ、それでいて重防御な部分も両立させる。素晴らしい処理です。


側面より

カノントータスは、微妙に左右非対称のゾイドで、比べると面白いです。

まず側面のメカ部の作りが異なっています。
左側面は排気口を思わせるディティールですが、右側面はエンジンを思わせるディティールになっています。

キット的に、右側はゼンマイのつまみを出さなければならない宿命があります。それを上手く取り入れたデザインになっているのは秀逸です。
制約をそれがあるから仕方ないと諦めず、むしろ積極的に取り入れ素晴らしいデザインに昇華させる。これは本当に素晴らしい事です。

その他の部分も、一部左右非対称です。右側・前部には、左側には無いでっぱりがついています。
この部分も、キット的な制約から作られています。

カノントータスには首を出し入れする連動ギミックがありますが、その連動を生む複雑なパーツが内部にあります。
その為、スーペースを確保する必要があった。右半身には出っ張りを儲ける必要があったというわけです。
この部分も、ゼンマイ部分と同じく制約をむしろ積極的に取り入れ素晴らしく昇華させた部分で、その処理は改めて素晴らしいものです。

左半身「ゼンマイつまみがある為のデザイン」右半身「首のギミックを仕込むためのでっぱり」
これらがある為に左右非対称になったカノントータスですが、よくよく考えれば、左右対称に出来なかったわけではないと思います。
つまり「右半身のメカ部分を左側と同じディティールにする」や、「左半身にもでっぱりを設け左右対称に」する事は簡単にできたはずです。

しかし、この微妙な左右非対称になっていることこそ、「何故そうなっているのか」というメカニックの探求を促しています。
個人的に微妙に左右非対称なデザインは大好きですが、カノントータスはその最高峰の一つだと思います。
とにかく、そのデザインはキット的な制約から考えても興味深いし、実物を想像しメカニックの内部構造を想像しても面白いです。


フェイス

頭部は、カノントータス独自のデザインとなっています。
帝国に比べ、共和国側はこのクラスでも専用コックピットを作る事が多く、国力の高さを思わせます。
しかし、キャノピーは共通コックピットからの流用で、全体のラインも共通コックピットに極めて似ています。

比べると、かなり似ている事が改めて分かります。しかし鼻先などが、より亀らしく整っています。
キャノピーが共通していたり、全体的なラインに共通性が見られたり。こういった配慮が行き届いている為、独自設計で共和国の高い国力を演出する一方、小型ゾイドらしい量産機っぽい雰囲気も十二分に残しており、まさに絶妙な塩梅だと思います。

頭部はもちろんコックピットになっており、キャノピーを開けるとパイロットが乗っています。

カノントータスのパイロットは1名で、ここから 全ての操作を行います。
コックピットは、かなり綺麗に作り込まれています。

首は、先にも書きましたが可動します。

連動ギミックで、歩行に合わせてこの位まで可動してくれます。
このギミックも、亀らしさをより強めています。


造り込み

カノントータスは、全身の素晴らしい造り込みも魅力的です。
堅牢さを思わせるリベットや、ビッシリと入ったリアルなディティールの数々。脚部装甲の”いかにも”な付き方も見逃せません。
重戦車を思わせる数々のディティールは、ゾイドにミリタリーデザインを求めるファンにとっては特に魅力的に映る事でしょう。私もその一人です。

また単に細かいディティールが多いだけでなく、排気口等の比較的大きなモールドも適度に配置されており、緩急あるデザインになっています。
なので間延びが無く、ずっと見ていても飽きないようになっているのも特筆です。

カラーリングも、地味ながら綺麗にまとまっていると思います。
緑色はいかにも陸軍・戦車的なイメージだし、装甲の黒も全体をほど良く引き締め重防御のイメージを強調しています。

カラーリングでもう一つ指摘しておかねばならないのは、キャノピーの色です。
キャノピーはブラウンをしていますが、このクラスとしては非常に珍しいものです。
共和国側重装甲スペシャル級のゾイドは、カノントータスを除き、全てオレンジイエローのキャノピーを持ちます。

共和国側ゼンマイゾイドのキャノピーの色は、「小型=ブラウン」「重装甲SP級=オレンジイエロー」「Hiユニット級=ブラウン」で統一されています。
この統一の中で、カノントータスのみ例外的に法則から外れる色を採用しています。

ただ、このクラスとしては特出した重量級ゾイドなので、重量感のある茶色いキャノピーが似合っているとは思います。
そのクラスとして色の統一を取るか、例外を作ってまでも似合う色にするか。
これは難しいところだと思いますが、個人的にはカノントータスは重さを感じられる色であって欲しいので、良い判断だったと思います。


砲戦ゾイド

カノントータスは、登場当時としては、全ゾイド中で最大の火砲を持つゾイドでした。
こんな巨大な口径の砲を持つゾイドが小型で誕生したのは驚きです。しかしその砲は付き方は絶妙で、取って付けたような違和感は全く無くありません。
本体と一体感のある絶妙なシックリ感。しかし大砲としての主張は確かに感じられる絶妙な塩梅。そんな具合になっており、見事な仕上がりです。

もちろん強力無比な威力があり、強固なトーチカでも一撃で吹き飛ばしてしまいます。
反面、砲弾の大きさゆえか携帯弾数の少なさが弱点ともされています。キット箱裏の機体バリエーションには、弾丸補給仕様のカノントータスが載っていたりします。
この辺の設定も説得力が高く、非常に面白いものです。
やはりカノントータスの活躍を想像する際は砲を撃ちまくりたい所ですが、携帯弾数の少なさや弾丸補給車を考慮に入れて想像すると、更に面白く深いものになりそうです。

砲は、仰角を大きく付ける事が出来ます。

残念ながら俯角をとる事は出来ませんが、充分な可動だと思います。
可動は手動で行います。連動でないのは寂しくもありますが、そのおかげで好きな時に好きな角度にする事も出来ます。

なお砲塔はボディと一体化しており、旋回させる事は出来ません。その為、横に向けて撃つ事は出来ません。
しかし、これだけ巨大な大砲なのだから、正面に固定したのは説得力があり良いと思います。正面以外に撃とうものなら、反動で機体ごと吹き飛んでしまいそうです。

砲自体のデザインも素晴らしいです。キャップを上手く使用しているのも好ポイントです。
大口径で短砲身なのがまた良いです。おそらく臼砲でしょう。「突撃砲」というオットコらしいネーミングもたまりません。

唯一惜しいのは、キットがモナカ構造なので合わせ目が非常に目立つ事です。上から見ると非常に目立ち残念です。
この部分は、「基部はモナカ構造・先端は円柱状のパーツで挟み込む」にしておけば100点だったと思います。
個人的に思う、カノントータスで唯一惜しい点です。

特徴的な砲のモデルは、おそらくドイツ軍のシュトルムティーガーでしょう。

シュトルムティーガーは実に口径380mmいう超巨大砲を積んでおり、当時の他の戦車の砲が75mmとか88mmだったことを考えればその異様さがよく分かります。
通常の、実に4~5倍の超大口径砲を持った化け物みたいな戦車です。
この戦車は、超大口径砲を実現する為、他の戦車とは違った特徴を多く持ちます。

砲塔は車体と一体化しており、横に向けて撃つ事は不可能です。これは、大砲があまりにも巨大な為、横に向けて撃つ為の設備が車体に仕込めない為です。
逆に言えば、そのデメリットを承知した上でも、超絶破壊力を持つ砲に魅力を感じたという事でしょう。

シュトルムティーガーは非常に堅牢な装甲を誇る反面、機動力はかなり劣悪でした。
それでも、敵弾に決して貫通されない前面装甲は兵士から絶大な信頼があったと言います。
主砲の380mm砲の威力は絶大な威力を持ち、一発で強固なトーチカを粉砕します。ただ、なにしろ巨大砲なので携帯弾数が少ないという弱点もありました。

シュトルムティーガーは、あらゆる面でカノントータスに似ています。
異様な巨砲。その威力。側面には撃てない主砲。防御力の高さと機動力の低さ。携帯弾数の少なさ。そして、シュトルムティーガーも左右非対称で、この点も共通します。
カノントータスのモチーフは、カメであると同時に、シュトゥルムティーガーだと思います。
こうして実在する兵器の要素もたっぷり盛り込んでいる事も、カノントータスがミリタリー感たっぷりの素晴らしいゾイドに仕上がった大きな要因の一つと思います。

主砲に目を奪われがちですが、背中の対空砲も素晴らしい装備です。背中にレーダーを持っているのも特筆でしょう。
対空砲は、その設定に違わず大きく可動します。真上も後方も狙う事が出来ます。

その一方、カノントータスは砲塔が完全固定で旋回しません。なので、対空用途で使用するのは難しそうな気もします。
空を飛ぶ敵を狙うには、仰角を取れる事も必要ですが旋回でき死角を無くす事も必須です。
実際、砲塔が旋回しないからか、カノントータスは戦力比較表においてサイカーチスやシンカーに対してさえ「負け」となっています。
優秀な装備を持ちつつも活かしきれなかった事が伺えます。
この辺りは、まだまだ初期の頃、過渡期における共和国の試行錯誤が伺える所でもあります。

後に、対空に特化した改造機・高射砲装備タイプが制作されている事からも、この対空砲の「優秀でありながら使えない」具合が伺えます。


第2回X-DAYアイデアコンテスト受賞作

カノントータスは、「第2回X-DAYゾイドアイデアコンテストからキット化された機体」という事も特筆です。
第1回はバリゲーターがキット化されており、それに続く第二号です。
ただ、第1回コンテストが「最優秀作品を元にキット化した」のに対し、第2回コンテストは「カメ型の応募が最も多かったのでカメ型を作った」となっています。

ともかく、この傑作機がユーザーのアイデアが発端となり生まれたというのは凄い事です。
ゾイドに亀型を提案した多くのユーザーも素晴らしいし、そのアイデアを汲んだトミーも素晴らしいです。

ちなみに第3回、第4回アイデアコンテストは「最優秀作品を元にキット化される」となっています。
メカ生体ゾイド時代のアイデアコンテストでは、「要望が多かったので」というものはカノントータスが唯一です。

亀の中で具体的にどの亀がモチーフなのか というと難しいですが、カノントータスの甲羅はドーム状に盛り上がっており、全高は亀にしては高めです。
モチーフはリクガメだと思います。

実際のリクガメと比べると、甲羅の感じがよく似ています。

他のアイデアコンテスト発のゾイドは、元となった応募イラストが公開されています。
しかしカノントータスの場合は、その特性上、応募イラストは公開されていません。
ちょっと寂しい気もします。
応募されたカメの中に、どんなタイプのカメがいたんだろうというのは興味があります。
カノントータスのようなリクガメや遊泳できるウミガメ、水陸両用のヌマガメなど、様々な種類の亀が応募されていたと思います。
イラストが公開されなかったのは残念ですが、そういったものを想像しつつカノントータスの改造プランを考えてみるのも一興です。


ギミック

ゼンマイを巻くと元気に動きます。
ギミックはなかなか優秀です。

連動ギミックとしては、首を出し入れしながら前進します。
亀の特徴的な部分を再現しているのは高ポイントです。また、首の出し入れは「亀らしさ」であると同時に、「主砲発射時の反動を吸収している」ようにも見えます。
生物らしさとミリタリー感を両立していると言えます。

一方、首を出し入れしながら歩くのはややシュールでもあります。
評価の分かれる所でもあるでしょう。主砲の仰角変更は手動ギミックとなっており、首よりこっちを連動にした方が…と考えるユーザーも居ると思います。

手動ギミックは、主砲と対空砲の仰角を変える事、後部ハッチの開閉、キャノピーの開閉です。
なかなかの充実具合な上、どれもいかにも戦闘風景を演出できる素晴らしい動きです。
大砲の可動は先に書いた通りです。定番ギミックですが、良好に可動するので嬉しいです。
個人的には、ごっこ遊びの際に大砲の角度を自由にいじれるというのは最高に嬉しいポイントなので、「首が連動/主砲は手動」になったのは良いと思っています。

後部コンテナを開閉できるのも優秀なギミックです。

開いた中には貨物や兵員を積載できそうなスペースもあり、非常に面白い気の利いた装備だと思います。
こういった貨物スペースのある機体は珍しく、亀型というワイドボディーを活かした秀逸な設計と言えます。
強いて惜しい点を探すなら、ディティールとして大型の排気口が2つ並んでいます。
その部分から考えると、こういった風に開くのかな?とは思ってしまいます。
内側には排気ダクトが伸びていて開ける事は可能なのか。開いても積載に適した位置なのだろうか とは思ってしまいます。

キャノピーの開閉は、頭部の所で書いた通りです。
総じて、評価の分かれるポイントが無いわけではないものの、なかなか面白味のあるギミックを多数搭載しており、優秀な仕上がりだと思います。


戦歴

戦歴はかなり勇ましいです。
有名な戦いは、ウルトラザウルス奪還作戦や国境の橋争奪戦での活躍でしょう。
自慢の突撃砲を存分に撃ちまくった戦いは豪快にして魅力的です。

小型ゾイドながら主役級の戦いが複数あるというのは珍しく、非常に優遇された機体と言えます。
ゾイドバトルストーリーの著者、ロイ・ジー・トーマス氏の愛機として描かれたのも特筆です。
しかし優遇された背景は、カノントータスが実性能的にもキット的にも傑作だったという事があるのでしょう。

主役を張った戦い以外にも、よく背景に登場しています。
カノントータスは、その大砲ゆえに画面にいるだけで素晴らしく”らしい”雰囲気を生み出します。
こういった事情もあってか、主役以外でもカノントータスを見る機会は数多くあります。

ゾイドバトルストーリーでも多数登場していますが、学年誌でもよく奮戦しており、あのデスザウラーを迎え撃った事もあります。

さすがに仕留めてはいませんが、至近距離から果敢に砲撃し直撃弾を得ているのは勇ましいです。

運用期間は非常に長く、学年誌まで含めると最後に登場したのはダーク・ホーンとの交戦です。
さすがにこの時は一方的にやられていますが、むしろこの時代まで運用が続いていた事の方が驚きです。

ところで、カノントータスの戦歴では、一つ謎な所があります。それは水属性を持つかどうか、という所です。
カノントータスはリクガメがモチーフと思われます。なので遊泳力はあまり持っていないのかなぁと思っていました。
また、主砲の特性上、水中では使用できないと思います。浅瀬程度はともかく、本格的な海戦用としては適さないのではないかと思っていました。

実際、ゾイドバトルストーリーで共和国の海上部隊編成を見ると、ウルトラザウルス、スネークス、バリゲーターなどは海上航行しているシーンがありました。
しかしカノントータスにはそういったシーンはありません。

ただ唯一、てれびくんの資料によると「海でも戦う」とされています。
てれびくんでは、具体的に海中部隊の指揮機として活動し、帝国海中部隊と激突する様子も描かれています。

これらを総合して考えるに、基本的には陸戦型であるが、後に登場した派生型には海戦としては対応したタイプも存在する…といった感じでしょうか。
基本的には陸戦型であるが、水中戦用として砲を水中用に換装され各部も調整されたタイプや、本格的に水中専用機として脚部をヒレに換装したタイプなども存在する。
そんな風に様々なタイプを想像すると面白いです。

ともかく、非常に素晴らしい運用実績を持つゾイドである事は確かです。このクラスとしては、プテラスと並び非常に運用期間が長く、かつ活躍しているゾイドです。


突撃砲装備 カノントータス

とにかく、様々な要素がすべて高次元に融合した傑作機です。
あらゆる要素がスキのない仕上がりをしており、改めて驚きです。

主役を張った事もあり、背景でリアル感を演出する脇役を演じた事もある。
デザインの秀逸さに加え、使い勝手の良さも改めて素晴らしいです。

傑作中の傑作。まさにカノントータスはその域にあるゾイドだと思います。
小型ゾイドではありますが、ゾイドとしてのあらゆる魅力が詰まっている機体です。
今後、カノントータスの素晴らしさが徹底研究され、再びこのような傑作機が生まれる事を願ってやみません。
同時に、カノントータス自身もまた、今後とも魅力的な活躍を続けて欲しいと思います。


バリエーションモデル

 機獣新世紀ゾイド カノントータス

 ゾイド妄想戦記 バスタートータス


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