メカ生体ゾイド ヘリック共和国軍 高機動局地戦型 コマンドウルフ<COMMAND WOLF>

■コマンドウルフ(オオカミ型) データベース■

 発売年月 1987年7月  発売当時価格 1000円  動力 Hiゼンマイ

 型式番号 RHI-3

 スペック 全長17.7m 全高7.9m 全幅5.9m 重量46.0t 最高速度200km/h 乗員2名

 主な武装
  二連装ビーム砲座 煙幕噴射口(×2) 電磁牙

 特徴
  帝国軍のサーベルタイガーひきいる高速機動部隊に対抗するために開発された陸上専用高速攻撃メカ。
  背中の二連ビーム砲座は本体から分離して独自に攻撃用ビークルとして飛行することが可能で、分離後の砲座は空中からの支援攻撃や情報収集を行う。
  主武器である電磁牙は接近戦において敵の弱点を攻撃する際に威力を発揮する。
  これらの武装性能の優秀さもさることながら高速走行時の操縦安定性も高く、コックピットに新しく装備されたディスプレイは操縦時のパイロットにかかる負担の
  軽減に役立っている。


前後より

シールドライガーと共に登場した、共和国高速戦闘部隊の一機です。
帝国高速部隊に煮え湯を飲まされていた共和国は、シールドライガーとコマンドウルフの配備によって、ようやく対抗戦力を持つに至りました。
キット的には1年、劇中での経過年数では6年たって、ようやくの登場です。

共和国ゾイドとしては、最初にHiユニットを採用したゾイドです。
帝国側は、既にウオディックとブラックライモスを投入しており、共和国軍は苦境に立たされていました。
その起死回生の切り札として登場したのがコマンドウルフでもあります。

帝国側はHi級第一弾に魚というキワモノ系モチーフを使用しました。対し、共和国側はオオカミというヒーロー性の高いモチーフを使用しています。
「新しいクラスカテゴリーの第一弾」を見ると、帝国と共和国の差が色濃く出ています。
重装甲スペシャル級も、帝国側第一弾はカタツムリ型マルダーでしたが、共和国側第一弾は恐竜型ゴドスでした。
後に発売される24ゾイドでも、帝国側第一弾はサソリ型デスピオンだったのに対し、共和国が話題一弾はトリケラトプス型メガトプロスです。

こういったものを見ると、非常に興味深いです。
ゾイドは戦記であり、「どちらが悪でどちらが正義で」という事はありません。あるのは幾多の戦いの記録だけです。
しかし児童誌などでは特に、どちらかというと共和国寄りで展開される事が多かったのも事実です。
共和国側Hiユニット級第一弾にしてヒーロー性の高いオオカミ型を採用したコマンドウルフは、暗に共和国の扱いを反映したゾイドでもあります。


側面より

デザインはまさにスタンダードなゾイドといった感じで、アクの無い万人向けな感じがします。
均衡の取れたスタイルは抜群の出来です。プロポーションも良く、胴体後部のシュッと引き締まった感じは、中に動力が入っている事を感じさせません。
素晴らしいプロポーションで、まさに高速機として相応しい出来です。

オオカミがモチーフのコマンドウルフですが、バイクデザインも取り入れてあります。装甲の形はバイクのカウルが模されています。
また、後部のマフラーは特にその意匠が色濃く表れている個所でしょう。
オオカミを模したプロポーションと実在するメカの意匠を色濃く取り入れたデザイン。それが見事に融合しているのはは秀逸で、まさに傑作機と言えるデザインです。

ただ唯一、背中の砲の付き方は再考の余地があると思います。高速機であるにもかかわらず空力に無神経な感じで付いており、スピード感を大きく減じています。
MK-IIタイプではなくノーマルでこうなっているのは惜しいです。この点は、武装を収納し徹底的に空力抵抗減に務めたシールドライガーと対照的です。


首の角度変更

キットは、首の角度を大きく変える事が出来、それにより表情が変わります。犬科の動きを上手く生かしている秀逸な機構です。

首を起こした状態は通常状態、落とした状態は策敵モードのような印象を持ちます。
更に、中間の位置にする事も出来ます。こうすると体と一直線になり、疾走しているような印象になります。

側面から見た時も、首の角度を変更すると表情が大きく変わって見えます。

ただ側面から見た時に首を倒すと、背中の砲の付き方がより強調されて見えます。改めて砲の付き方は残念に思ってしまいます。


フェイス コックピット

頭部デザインは素晴らしい仕上がりをしています。
単純な面構成ながら、的確にオオカミのカッコ良さが表現されており秀逸です。側面のチークガードも良いアクセントになっています。
また、共和国らしい巨大なキャノピーも、優雅で美しい仕上がりをしています。

キャノピーを開けると、中はもちろんコックピットになっています。キャノピーは後方に開くタイプで、ガバッと大きく開きます。
コックピットの出来の良さは特筆モノです。

操縦桿があり、それを前後に動かす事が出来ます。
「コックピットに新しく装備されたディスプレイは操縦時のパイロットにかかる負担の軽減に役立っている」との設定で、素晴らしい装備です。

この操縦桿はリアルを感じさせる意味でも最高ですが、加えてキット的には「パイロットの固定」という意味でも役立っています。
従来の「乗せておくだけタイプ」でも「出っ張りに脚を挟むタイプ」でもなく。美観もリアル感も最高で、更にパイロットの固定も出来るという最高のスタイルです。
残念ながらメカ生体ゾイドのキットでは、コマンドウルフを除きこのようなコックピットは他に採用されませんでした。
この素晴らしい例に習い、もっと同形のコックピットが出ても良かったと思います。
ただ一方、コマンドウルフだけであるゆえに、コマンドウルフだけが装備している!という特別感があるのも事実です。

コックピットはもう一箇所あります。それは背中の砲です。

大型砲には中央にコックピットが付いています。しかし個人的には、これはちょっとどうかと思っています。

設定としては、「背中の砲座は本体から分離して独自飛行することが可能で、空中からの支援攻撃や情報収集を行う」とされています。
しかしこれは高速戦闘型コマンドウルフに付けるべき装備なのか?というと甚だ疑問です。ゴルヘックスのような機体なら良いと思いますが。

デザインとしては、砲身のデザインはディティールも細かく素晴らしいリアル感があります。
強いて言うなら砲口に穴が空いた成型になっていれば良かったと思いますが、それでもそれを補って余りある良いデザインだと思います。
中央のコックピット部も、どことなく初代共通コックピットを思わせる形状で、デザイン自体は良いと思います。キャノピーは付けるべきだったと思いますが。
しかし、デザインは良いのですが、コマンドウルフに付けるべきだったかというと改めて疑問です。

この砲は実戦でも使用された記録があり、学年誌ではヘルキャットをこの装備で仕留めています。

しかし格上の機体が格下の機体を倒すのにこれを使用するのか…?高速機らしく機動力と格闘力で下した方が良かったのでは…?と思ってしまいます。
こういった描写があり、また先にも書いたように空力的にスピード感を殺して付いているので、余計にこの砲への疑問を持ってしまいます。

もう一つ、そもそもこれだけ大型の砲を付けて飛行する事が可能なのか?という疑問もあります。
レッドホーンやブラックライモスのビークルを見れば分かるように、偵察用ビークルは基本的に最低限の装備でしかありません。

飛ぶというのは大変な事なので、余計な装備を付けられるような余裕は無いと考えるのが自然です。
そんな中、コマンドウルフのものだけは大型の砲を両脇に付けて飛行しています。ちょっと欲張りすぎている感じがします。

キット的にも、この砲は弱点です。それはハードポイントの問題です。

これだけ巨大な砲であるにも関らず、取り付け位置は他と全く同じ3.2mm径のハードポイントです。
ここに付いているから、破損率は極めて高いです。

取り付け径を統一して拡張性を高めたかったのだとは思います。
しかしこの部分は本当に破損率が高くなっており、専用の頑丈なジョイントにした方が良かったのでは?と思います。

ともかく、スピード感を殺して付いている点も、欲張りすぎた設定も、キット構造も。コマンドウルフで唯一にして最大の弱点だと思います。


シールドライガーと共に

発売日はシールドライガーと同日です。就役と同時にシールドライガーと編隊を組み、幾多の戦場で戦いました。
ペアを組むゾイドは数多くあり、例えばサーベルタイガーとヘルキャット、ヘル・ディガンナーとデッド・ボーダーなどです。
そんな数多のペアの中で、ひときわ絵になるのがこのシールドライガーとコマンドウルフのペアだと思います。

サーベルタイガーとヘルキャットは、どちらも猫科のペアです。
しかしシールドライガーとコマンドウルフは猫科とイヌ科のペア。しかも青い機体と白い機体のペアという、異色のコンビです。
だから面白味があり、より強く惹かれるのかもしれません。


メカニックの造り込み

共和国のHiユニット級ゾイドは、重装甲スペシャル級ほどのゴチャメカではありません。
しかしアッサリ目になったとはいえ、的確な造り込みは残してある為、見応えは十分にあります。

コマンドウルフのメカの造りで特筆なのは、何と言っても脚部でしょう。
サスペンションやパイプが何ともリアルで、高速機の設定に大いなる説得力を与えています。
脚部付け根をガードする装甲の感じも秀逸です。この部分に限ればディティール量も非常に多く、重装甲スペシャル級に匹敵するゴチャメカ具合です。

対し、ボディのディティールは少なめです。
胸部は縦線が走ったようなディティールがあるだけで、やや寂しい感じがします。
ただこのディティールは、おそらく飢えた狼の脇腹…、あばら骨が浮いている感じを模していると思います。
モチーフを上手くメカのディティールに取り入れているのは秀逸です。

その他、胸部にラジエーターのような装備があったりと、やはりアッサリではあるものの的確で気の利いた造り込みを感じます。
総合的にみて、傑作と呼ぶに相応しいものがあります。

強いて惜しい部分を探すなら、キャップの色と尾部だと思います。
キャップはメカ部分と似た色になっている為、ほとんど目立ちません。関節位置にキャップを配置するという良い配置をしているのに、ちょっと勿体ないです。

尾部はディティールは良いのですが、そのディティールを潰しながらハードポイントが付いており、やや無神経な感じがします。
拡張性が高いのは嬉しいし、痛し痒しな所ですが。


スタンダードモデル

デザインの傑作ぶりは先に書いた通りですが、拡張性の高さも魅力です。
首や背中、腰や尾部に多くのハードポイントがあるので、容易に自分仕様のカスタマイズが出来ます。
ハードポイントの多さは共和国Hiユニット級随一で、第一弾ながら非常に優秀な仕上がりです。

設定面も絶妙です。
コマンドウルフは対ヘルキャットやサーベルタイガー戦に使用されましたが、特に対サーベルタイガー戦を考える時は面白いです。
正面切って戦えばサーベルタイガーに分がありますが、速度は両者200km/hで同等。これを活かせばワンチャンスあるような、そんな可能性を感じさせてくれます。
この設定面のバランスが素晴らしいです。

Hiユニット級の価格は1000円。決して安くないものの、子供の小遣いでギリギリ買えるレベルでもあります。
そんな機体が、「自分仕様を作りやすい拡張性の高い機体」「簡単ではないが戦術を張り巡らせれば上位機サーベルタイガーをも倒せる可能性を感じる」という、絶妙な仕様と設定で登場したのは素晴らしい事です。
こうなってくると、背中の砲座がデザインとしてどうかという点すら、ここを自分なりに解消してみよというメーカーからの問いのように思えてきます。

デザイン面はもちろん、その中身でもとことん遊び倒せる機体になっています。


ギミック

Hiゼンマイを巻くと、力強く動きます。ギミックは評価の分かれそうな所です。

連動ギミックは全く無く、歩くだけとなっています。しかし一つ特徴的なものとして、歩行スピードを切り替え可能という事があります。
首を上げた状態では高速で歩きます。
なにしろHiユニットを使用しているうえ、連動ギミックは何もありません。その力は全て歩行の為に使用されているわけで、速いし、長く歩きます。

なお脚は一体成型で関節ごとの動きはありません。しかしかかとパーツの接続に若干の「遊び」がある為、歩く度にかかとが動いているように見えます。
この点はヘルキャットから進化した部分と言えます。

歩行の構造はヘルキャットと同じですが、ヘルキャットはかかとが完全固定でした。
同じスタイルの後発機として、より研究が進んだ結果と言えます。

そして首を下げると、低速で歩きます。
仕掛けは、首を下げるとウェイトのギアがゼンマイにかみ合い、負荷をかけます。これによりゼンマイのパワーが抑えられ、低速で回転するようになるという仕組みです。

この仕掛けは秀逸です。

高速ゾイドで二段階のスピード調整が可能というギミックを作ったのは、設定と合っており秀逸であると言えます。
ただやはり連動が無いのは寂しいのも確かで、評価は分かれる所だと思います。

手動ギミックは、首の角度を上下に変えられるのと、口の開閉、キャノピーの開閉、背中の砲の旋回、尾部の角度を上下に変えられる事です。
連動ギミックが無い分、非常に充実しています。

首の角度が大きく変わるのは魅力的で、遠吠えするシーンから索敵シーンまで様々表現できます。

ゼンマイゾイドでありながら、ここまで表情を変えられるゾイドはなかなかありません。

背中の砲が旋回可能なのも嬉しいです。贅沢を言うと仰角も付けたかったですが。

尾部の動きも、イヌ科らしい表情を付けられる嬉しいギミックです。ただこの部分は難点もあります。

この部分は、ハードに遊んでいると関節のテンションがヘタってきます。そうなると上げた状態で固定する事が難しく、常時尾を垂らす情けない姿になってしまいます。
可能なら、関節のテンションがヘタりにくい構造になっていれば良かったと思います。

評価の分かれそうな部分や微妙な弱点もありますが、個人的には及第点をあげて良い出来だと思います。
インパクトが低いのは否めませんが、手動ギミックの充実具合も嬉しいです。飽きがきにくく長く遊べるギミックを搭載していると思います。


戦歴

コマンドウルフの戦歴は、なかなか魅せるものを持っています。

就役と同時に、シールドライガーと戦隊を組み、幾多の戦場に投入されました。
バトルストーリーや当時の冊子、学年誌などで、その姿を多く確認できます。
 
当時は帝国軍が猛烈な勢いで中央大陸を侵攻していた時期です。
ついに中央山脈も突破され、共和国領土の奥深くまで迫る帝国軍。このまま成す術はないのか?
そんな時に登場したこのペアは、鮮やかに帝国軍の侵攻を止め、風穴を開けて見せました。

シールドライガーの僚機を務める事の多かったコマンドウルフですが、単独でも奇襲や基地防衛など様々な所で使用され、活躍しています。
ただ、活躍もしている一方、苦い経験も多くある機体です。


シールドライガーと違い、サーベルタイガーには分が悪かったようです。せいぜい翻弄するのが手一杯で、直接戦闘では格の差を見せつけられた事もあります。
ただ先に書いたように、戦い方によってはワンチャンスもあると思いますが。

この他、基地に迫りくるデスザウラーを単身迎え撃ち、敗北したシーンも確認できました。
同クラスの相手には優位に立ちまわる一方、さすがに大型ゾイド相手には苦戦の連続だったようです。
ただ、優秀な性能だったのは確かなようで、その後、改良型であるコマンドウルフNEWが誕生しています。

コマンドウルフNEWが就役した後は、バトンタッチする形で一線を退きました。
戦歴は、華もあり、量産機らしい勝敗様々な戦いもあり。魅せてくれます。


高速戦隊主力 コマンドウルフ

微妙な欠点はありますが、それでも傑作と呼ぶに相応しい素晴らしい完成度を誇ります。
入門用モデルとしても優秀で、ゾイドの魅力を大いに魅せてくれる機体に仕上がっています。

共和国Hiユニット級第一弾ですが、第一弾にして既に決定版とも言うべき完成度になっているのは改めて驚きます。
いよいよ登場した共和国Hiユニット級の幕開けを飾るに相応しい、傑作ゾイドです。


バリエーションモデル

 メカ生体ゾイド コマンドウルフNEW

 機獣新世紀ゾイド コマンドウルフ

 アニメゾイド コマンドウルフ アーバイン仕様

 レッドコマンドウルフ

 ブルーコマンドウルフ

 ミッドナイトブルーコマンドウルフ

 機獣新世紀ゾイド コマンドウルフAC

 ゾイドフューザーズ コマンドストライカー

 コマンドウルフホロテックス

 コマンドウルフLC

 コマンドウルフRGC


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