メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 戦闘機械獣 シーパンツァー<SEAPANTHER>

■シーパンツァー(ヤドカリ型) データベース■

 発売年月 1987年5月  発売当時価格 780円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 EMZ-31

 スペック 全長9.0m 全高4.9m 全幅5.4m 重量28.5t 陸上最高速度100km/h 水中最高速度50ノット 乗員1人

 主な武装
  高出力ビームキャノン砲 12連装小型ミサイルランチャー 3連装魚雷ポッド 赤外線レーザーサーチライト

 特徴
  強力な武装と重装甲に守られたボディは深海でも自由に行動できる。
  戦闘はもちろん海底における種々の作戦行動に対応できる性能を有する万能海底戦車である。
  武装ではこのクラスで最大のビームキャノン砲と一瞬にして敵を殲滅する12連装ミサイルの破壊力がすさまじく強力だ。


前後より

ゼネバス帝国の海底戦車、シーパンツァーです。
非常に愛らしい姿をしています。一方で、作りこまれたメカや大型の砲など、カッコいい部分も存分にあるゾイドです。
愛らしさとカッコ良さ。その両者が高次元にバランスをとった上で融合しており、非常に完成度の高いゾイドだと思います。

子供の頃から大好きなゾイドでした。当時は熱狂的な共和国派で、とにかく共和国万歳。帝国は敵視していた程でした。
まあ、それ位に感情移入し共和国に肩入れしていたわけですが、そんな中でもシーパンツァーはこれは敵だけどいいゾイドだ…と思っていました。
「悔しいけどこれは欲しい…」

モチーフのヤドカリという生物自体が好きだったという事もあるんですが、それ以上にシーパンツァーのデザインが好きでした。
ただ結局、手に入れる事はありませんでした。いちど欲しくて店に行ったけど無かった…、そんな事があったような記憶があります。
当時から人気機種だったのではないかと思います。

設定的には、D-DAY上陸作戦に合わせて開発されています。
上陸作戦に使用するメカとしてヤドカリ型を投入するという所にもシビれます。


側面より

デザインはとにかく完成度が高いと思います。

ヤドカリがモチーフという事で、機体後部は殻、装甲になっています。
帝国=装甲で覆われている=貝類にする というモチーフ選択はストレートすぎますが、それゆえに直球な良さがあります。
個人的に、シーパンツァーとマルダーは、帝国らしさがこれ以上ないほど出ている機体だと思っています。

殻のデザインはまさに秀逸で、上手く貝らしさが出ているし、メカ的にも非常に見ごたえがあります。
各モールドが絶妙で、これ以上ないほどリアルなメカを作っています。モールドのデザインも、陸戦ゾイドと違って潜水艦的なものになっているのはさすがです。

上面のモールドも、いかにも潜水艦的です。また、フジツボ型のモールドがあったりするのも遊び心があって素敵です。

殻の下面も良く出来ています。ゴチャゴチャとしたメカがひしめいています。
ダクトやハイドロジェットノズルを思わせるモールドがあり、構造を想像すると楽しいです。
単にメカ的なモールドを入れただけでなく、きちんと意味の分かるものに仕上がっているのは、本当に凄い事だと思います。

各部デザインの他、全体としても非常にまとまりのあるデザインをしています。
殻の他、脚部のデザインも良く出来ていると思います。いかにも甲殻類っぽいデザインになっているのと、関節が分かりやすいデザインになっているのが良いと思います。

また、シーパンツァーは大型の砲と大型の魚雷ポッドを背負っています。
しかしこれだけ大型の火器を持ちながら、その配置に違和感を感じる事が無いのも凄いと思います。
大きな火器がボディの外側に付いているのに、不思議と本体との一体感・シックリ感があります。
「火器としての主張はしているが、本体の魅力を損ねてはいない」 素晴らしいと思います。

また、あらゆるアングルから見ても見栄えを保っているというのもシーパンツァーの特徴であり、デザイン性の高さを物語る点です。

特に、前から見た時の見栄えの良さは特筆だと思います。


フェイス

頭部は非常に特徴的です。
前方に赤外線サーチライト等があり、これがヤドカリらしいラインを表現しています。その後方には、おなじみの帝国共通コックピットがあります。
ヤドカリは甲殻類。最も共通コックピットを使いにくいモチーフだったと思いますが、難なくクリアしているのはさすがです。
ヤドカリの目を赤外線サーチライトの設定にしているのも、さすがだと思います。

サーチライトの後方の共通コックピットですが、この構造を見ていると、共通コックピットを使いたかった意思というか意地のようなものを感じます。
本当に帝国軍は小型ゾイドに共通コックピットを使う事にこだわっていたんだなぁと思います。
コックピットの後方の装甲はスライドします。スライドさせると、共通コックピットを開く事が出来るようになります。

中には1名のパイロットが搭乗しています。シーパンツァーのパイロットは1名で、ここから全ての操作を行います。
なお、装甲をスライドした時に見えているものは、隠し武器である12連装ミサイルです。


殻系ゾイド

シーパンツァーはヤドカリ型です。殻を背負ったゾイドという事で、カタツムリ型マルダーを思い出さずには居れません。
同じ殻系ゾイドという事で、マルダーの後継機的な側面で捉えてみても面白いと思います。

両者のモチーフを比べた場合、殻の強度はヤドカリの圧勝です。こんな所からも、殻系ゾイドの後継機としてシーパンツァーは相応しいと思えます。
また、シーパンツァーは装甲を展開し隠し武器を出す事ができる。その点も、マルダーのつながりを感じさせます。

戦力についても、しみじみ思う事があります。
マルダーは、「カノントータスの好敵手」とされていました。確かに、両者とも強力な装甲と砲を併せ持つ砲戦ゾイド。ライバルと呼ぶに相応しい構図でした。
しかしバトルストーリー1巻の戦力比較表では、「カノントータスの勝ち」とされており、ライバルだがカノントータス優位という感じでした。
そして後継機シーパンツァー。
バトルストーリー3巻の戦力比較表では、カノントータスとの比較では「引き分け」になっていました。
先代の殻系ゾイドが為しえなかった事を、ついに後継が成し遂げた。何とも胸熱な事だと思います。

またもう一つ、細かい事ですが、マルダーとシーパンツァーにつながりを感じている部分があります。それはゼンマイのつまみの位置です。
基本的に、ゾイドは進行方向に対して右側にゼンマイつまみが出ています。しかしマルダーとシーパンツァーは左側から出ており、かなり特殊です。


武装

武装は、このクラスとしては最も多い部類に入ります。むしろ上位のハイパワーユニット級と比べても、かなり高い火力と言えます。
さすがは重装甲スペシャル最後のゾイドだなという感じです。

大型のビームキャノン砲と魚雷ポッドを持っており、パッと見で戦車系ゾイドだと分かるのが良いと思います。
ビームキャノン砲も魚雷ポッドも、仰角を大きくとる事が出来ます。

非常に遊びがいがあります。欲を言えば、横方向にも旋回できれば…と思わなくもないです。
この大型砲を側面に向けて撃つ事は発射反動的な問題で可能なのか というのは議論が必要だと思いますが。

ビームキャノン砲は、他にはなかなか無い独特なデザインになっています。
強いて言えばブラックライモスの電磁砲に似たデザインではあります。ただ、この砲のデザインは、正直に言うとあまり好きではありません。
パイプやアームがあるのは良いと思いますが、全体的にディティールが大雑把で大味な感じになっているように思います。肉抜きが目立つのも、玩具っぽさを感じさせます。

フェイスの部分でも触れましたが、上部ハッチをスライドさせると、隠し武器的に12連装ミサイルが現れます。
マルダーから殻系ゾイドの血統を受け継いでいる感じで、非常に面白いです。
難をいえばミサイルの形状で、単なる円柱といった感じで造形されています。
出来れば、コングのミサイルのような、先に行くに従って細くなる円錐形をさせた方が良かったと思います。

ただ魚雷ポッドのデザインは素晴らしいと思います。

前方に発射用ハッチ、後方に装填用ハッチがあるのも、いかにもな感じです。ただ、肉抜きが目立つのは難点です。

肉抜きが目立つ という点はありますが、ともかくシーパンツァーはこのクラスとしては超絶大火力を持つ機体です。
そして火力を持つだけでなく、射撃を支える赤外線レーザーサーチライトが装備されている点も見逃せません。

射撃武器の豊富さに加え、爪部分は強力なアームになっており、格闘戦にも対応しています。この爪でバリゲーターをバキバキにつぶした事もあります。

デザインは、万力のような力強さを感じさせるもので素晴らしいものになっています。
キットでは可動しませんが、いかにもここが動くんだろうなと想像出来るディティールが入っているのも良いと思います。
ただビームキャノンや魚雷ポッドと同じく、裏面が豪快な肉抜きになっているのは残念です。

また脚部分も、裏面が切り落としたような処理になっており残念です。
デザイン的には完璧に近い仕上がりをしているシーパンツァーですが、ことキット面でいえば肉抜きが大きな弱点です。


ギミック

ゼンマイを巻くと元気に動きます。
連動ギミックは前進するだけですが、それでも非常に満足できる仕上がりをしています。
というのも「計6本の脚をそれぞれ独立して動かしながら前進する」という非常に特徴的なものになっており、前進するだけといっても格別の見応えがある為です。
脚の動きは何ともヤドカリらしく、可愛らしく、なおかつ不気味であり、そしてゾイドらしく、非常に面白い仕上がりをしています。

脚は素晴らしい動きをしてくれます。
しかし実は、それ自体で前進をしているわけではなく、車輪で行っています。殻を外してみると、その構造がよく分かります。

ゼンマイの回転一つから、見事な脚の動きを見せてくれるゾイドに改めて驚きます。
そしてなにげに重要だと思うのは、殻を外したこの状態でも、ゼンマイを巻いて動かす事が出来るという点です。
というのも、モチーフのヤドカリも殻から出て本体だけで動く事が出来る。意図しているのかどうかは不明ですが、その点が再現されているのは面白いと思います。

前進ギミックでもう一つ付け加える事があるなら、車輪走行をしている=脚で動いているわけではないので、ちょっと面白い事もできます。

後ろに倒すと、ウイリーで進む事ができます。これもなかなか面白いと思います。

手動ギミックとしては、ビームキャノンと魚雷発射ポッドの仰角変更、上部ハッチのスライド、コックピットの開閉が出来ます。
このクラスとしてはかなり充実していると思います。

総じて、ギミックに関しても非常に優秀なゾイドだと思います。


戦歴

シーパンツァーの戦歴は、描写されたものは意外と少なく留まっています。

学年誌では、小一の初登場でバリゲーターを圧倒し、新鋭海戦ゾイドの力を見せ付けました。
また、この時期の広告はD-DAYをモチーフにしたものが多く、シーパンツァーもよく掲載されています。
ただその他では活躍シーンは少なく、アタックゾイド&ダブルソーダーに鹵獲された描写があった程度です。

鹵獲されたエピソードはバトルストーリー2巻に掲載されていますが、同エピソードは学年誌(小三)にも掲載されています。
学年誌では、鹵獲された後、ダブルソーダがシーパンツァーを自軍基地まで空輸するシーンも載っています。

空輸シーンはちょっと微笑ましい感じもします。

この他では、活躍が確認できませんでした。
攻撃力も防御力も高レベル。陸上ではさすがに機動力が劣るものの、それでもカノントータスと同程度とされています。
もう少し活躍しても良かった気がします。

水上部隊同士の戦いは何度か描かれましたが、帝国部隊はいつもウオディックとブラキオスでした。そこにシーパンツァーは不在でした。
もっと言うと、雑誌てれびくんでは、海底での戦いが描かれた事もあります。しかし帝国軍部隊はブラキオスニュータイプとアタックゾイドでした。
なぜ海底なのにシーパンツァーではないのか…。描写的には、冷遇された感は否めないと思います。

想像するに、やはり「最新鋭機である時期に既に鹵獲されてしまった」というのが痛かったのかなと思います。
性能の全てが共和国に洩れ、それゆえ運用し辛くなった 等と想像しても面白いかもしれません。
ただ、シーパンツァーは直接戦闘に用いる他、「戦闘はもちろん海底における種々の作戦行動に対応できる性能を有する万能海底戦車である」と設定されています。
例えば機雷をばらまいたり、水中のケーブル類を攻撃したり、海戦で沈んだゾイドを回収したり…。
そんな地味な任務を黙々とこなすシーパンツァーを想像するのも楽しいと思います。

なお、戦歴ではありませんが、ストーリーや広告では試作モデルが使用されている事が多いです。

少なくとも二種類の試作モデルが確認できます。
製品版と見比べて、細かな差を探してみるのも面白いです。


海底戦車 シーパンツァー

肉抜きに関してだけは残念ですが、それでも傑作中の傑作と言える機体だと思います。
モチーフ選定の秀逸さ、帝国らしさ、巨砲を積んだ戦闘兵器然とした姿、ギミックの不気味さ…。
全ての要素が高次元で、しかも全体として非常にまとまりのある仕上がりになっており、大好きなゾイドです。
リアルタイム時に共和国派の自分が惚れこんでしまった事を、改めて思い返して納得しました。
重装甲スペシャル級最後のゾイドですが、まさにそれに相応しい、集大成的な完成度になっていると思います。

恐竜や哺乳類と違い、いわゆるキワモノ系モチーフに属するゾイドだと思いますが、今後もこのような傑作キワモノが誕生して欲しいと強く願います。


バリエーションモデル

 ゾイドグラフィックス シーパンツァー


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