メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 戦闘機械獣 ヘルキャット<HELCAT>

■ヘルキャット(ヒョウ型) データベース■

 発売年月 1986年4月  発売当時価格 780円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 EMZ-24

 スペック 全長13.2m 全高5.0m 全幅3.8m 重量24.0t 最高速度180~200km/h 乗員1人

 主な武装
  2連装加速ビーム砲 2連高速キャノン砲 機銃(×2) コックピットは単独で飛行可能

 特徴
  その脚部の特殊な構造により草原、ジャングルにおいては、音もなく敵に近づき攻撃することが出来る。
  又ボディ排気口はブラックホール化され、赤外線に感知されにくくなっていて、まさに森の忍者のようだ。


前後より

史上初の高速ゾイド、ヘルキャットです。
細かい所ですが、モチーフがヒョウな所がいいなと思います。
ヒョウは獰猛な猛獣ですが、トラやライオンより小柄であり、小型高速ゾイドのモチーフとして適切だと思います。
(ただし初期のカタログでは稀にジャガー型と記載されているものもあります)

高速ゾイドとされていますが、実はスペック的には最高速度180~200km/hで、決して速い方ではありません。
実にマーダの半分以下。それどころか、実はゲーターより遅い数値です。
ですが、ヘルキャットの真価は瞬間的な最高速度ではなく、200km/h近い速度を超時間維持でき、なおかつその速度を維持したまま戦闘を行える点にあります。
しかもマーダのようにパイロットの疲労を無視した設計ではなく、長時間の戦闘も可能なようになっています。

一見すると、スペック的にはさほど優れたものではないように感じます。
しかし様々な要素のバランスをとった上で実用的に綺麗にまとめ上げた、高速ゾイドの始祖に相応しい素晴らしい完成度の機体です。

実は、デザインコンテストの一般公募の応募作が元になっているようです。

細部は違う部分もありますが、全体的にはよく似ています。
もしかすると、この投稿者こそが、後のゾイドの方向性を左右したのかも………。


側面より

均衡の取れたフォルムが美しいです。
ボディが見事なラインを描いており、思わず見惚れます。
胸部の力強い太さと、そこから一気に絞り込んでいる感じが素晴らしく、しなやかなラインはまさに高速機に相応しい完成度です。

そして高速機の肝とも言える脚部のデザインも特筆です。
猫科特有のしなやかなラインが見事に再現されています。特に後脚の、いかにも強力な跳躍を生みそうなデザインは見事です。

武装のバランスも良いと思います。そしてそのデザインも要注目です。

それぞれ、大型ゾイド用の共通武器「小型ビーム砲」「高速キャノン砲」を連装化したようなデザインになっており、ニヤリとします。
デザインは酷似しますが、わずかに差もあります。
大型ゾイド用装備を、最低限の改修を加えた上で小型ゾイド用に適応させた感じでしょうか。


フェイス

頭部は、共通コックピットが使用されています。
しかしストレートにそのまま使用しているのではなく、独自の増加装甲を付ける事によって見事にヒョウに化けています。
が、増加装甲によって上手く猫科のラインを出したり耳を付けたりしているのは良いのですが、ヒョウと言えば獰猛な肉食獣。
牙が再現できていないのはちょっと半端な感じもします。
とはいえ、こればかりは共通コックピットを使用している関係上、やむない措置だったと思いますが。

共通コックピットを使用している統一感が大好きな一方、さすがに最大の特徴である所の牙が無いのはどうかとも思う。
ヘルキャットの頭部は好きだし、良い出来だと思います。その一方、少しモヤモヤしたものも感じてしまいます。

頭部は、もちろんコックピットになっています。

まず増加装甲を開き、そしてその後に共通コックピットのハッチを開きます。
この二重装甲は、いかにも頑丈そうな感じがして好きです。

また頭部は、横方向へ向ける事が出来ます。これによって表情をつけることも可能で、嬉しい点です。
なおパイロットは1名で、ここから全ての操作を行います。


史上初の高速ゾイド

ヘルキャットは、史上初の実用高速戦闘ゾイドです。
先に書いたように、単純な最高速度は決して早くありません(が、一部の資料によると10分程度なら450km/hを出せるという記述もあります。また歩行速度が120km/hとも)。
しかし革新的だったのは、200km/h近い速度を維持したまま長時間の戦闘を行えると点にあります。
これは非常に画期的な事で、従来のゾイドにおける戦闘の概念を大きく変えました。
大ジャンプが行えるのも大きな特徴で、立体的な戦闘が出来るのはヘルキャットの大きな強みです。

しかし革新的であり大成功を収めたヘルキャットですが、史上初であるがゆえに後発の高速ゾイドと比べると異なっている点が挙げられます。
最大の違いは格闘兵装を全く搭載していない事です。牙は無く、爪もありません。
牙に関しては。共通コックピットを使用しているから仕方ないかもしれません。とはいえ爪は付ける事が可能だったと思います。

ヘルキャットの爪は消音装置になっており、音もなく敵に忍び寄る事を得意としています。
ヘルキャットの任務は奇襲や偵察であり、そういった意味から言えば説得力のある設定・デザインです。
またモチーフ的に考えても、猫科の爪は引っ込むようになっています。ひっこめた状態では音もなく歩く事が出来ます。これは狩りをする際に大きな意味を持ちます。
やはり、素晴らしい説得力のある設定・デザインであると言えます。

ただ一方、猫科が爪を立てた時の強力な引っ掻きやパンチといった、攻撃的な側面も魅力的なものです。そういったデザインであっても良かったと思います。
贅沢を言うなら、ゴドスやガイサックのように、仕様を変える換装用パーツが付いていれば最高だったと思います。

なお、牙や爪を攻撃的にした機体は、高速ゾイド第二弾のサーベルタイガーがそうなります。
そして以降の高速ゾイドは、爪や牙を攻撃的なデザインとする事が常になってゆきます。


ギミック

ゼンマイを巻くと元気に動きます。ですが、ギミックは、正直凡作です。

連動ギミックとしては、歩くだけとなっています。これはちょっと寂しいです。
かかとから先は別パーツになっていますが、パーツはキッチリと固定される構造になっており、接続部にいわゆる「遊び」がありません。
なので、足首も完全固定で動かなくなっており、残念です。

手動ギミックは、顔の角度を変える事が出来るのと、背中と胸部の砲が旋回可能です。
ただ背中の砲は360度全周囲に旋回しますが、胸部の砲は左右30度程度にしか動きません。また、両砲とも仰角は付きません。
頭部が動くおかげである程度表情は付きますが、正直もう少し頑張って欲しかったとは思います。
せめて尻尾が動けば、また評価は違っていたと思います。

残念ながらギミックに関しては凡作であると、改めて思います。


戦歴

戦歴は、なかなか勇ましいものを持ちます。
ゾイドバトルストーリーではサーベルタイガーと共に初陣を飾ったようになっていますが、学年誌ではサーベルタイガー就役前にも活躍が確認できます。
輸送部隊のグスタフを襲ったりしており、恐るべき敵と認識されていたようです。

また、戦歴ではありませんが、初登場の頃は販促にも気合が入っており、このような文言もあります。

コングの次に強力な帝国ゾイド…。レッドホーンが涙目で見ているような気がします。

その他、改造タイプが大型のマンモスに挑んだり、なかなか勇ましい戦いを見せ付けています。

その後、サーベルタイガーが就役した後は、共に戦隊を組むようになり、ますますの活躍を見せています。

しかし活躍の一方、サラマンダーやウルトラザウルスに派手にやられたり、スネークスに不覚をとったりと、やられ役を演じる事も多かった機体です。
バトストでの登場回数は非常に多く、活躍と敗戦のバランスも良いというか、まさに名機であり戦場を魅力的に映した機体だと思います。

負ける事はありつつも活躍を続けていたヘルキャットですが、共和国側がシールドライガーやコマンドウルフを投入すると、一気に旧式化してしまいました。
その後はなかなか活躍する事が難しくなってしまったようです。
サーベルタイガーはグレートサーベルにアップデートしましたが、ヘルキャットは改良もされないまま戦い続ける事を強いられ、苦しい時代を過ごします。
かなり後年になってから、ようやく後継機ライジャーが登場し、ようやくヘルキャットは一線を退きました。

初の高速機ゆえに無敵時代と、初の高速機ゆえに後発機には抗せなかった苦境の時代、その両方を経験した名機と言えます。


密林の暗殺者 ヘルキャット

最初の高速ゾイドなので、それゆえの不備もあるとは思いますが、全体的に見れば高い完成度を誇った名機で間違いありません。
なによりゾイド界の未来にとって素晴らしいカテゴリーを築いた事は賞賛に値します。

後発の牙や爪の付いた機体に比べると、いかにも貧相な感じは否めません。
しかしシンプルなボディの中には、よく見ると素晴らしい魅力が沢山詰まっています。
今後とも高速ゾイドの始祖として大いに活躍して欲しいと願います。


バリエーションモデル

 機獣新世紀ゾイド ヘルキャット


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