メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 戦闘機械獣 イグアン<IGUAN>

■イグアン(恐竜型) データベース■

 発売年月 1986年2月  発売当時価格 780円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 EMZ-22

 スペック 全長8.2m 全高8.2m 全幅3.5m 重量23.6t 最高速度200km/h前後 乗員1人

 主な武装
  小口径加速ビーム砲(×2) 連装対空砲 4連グレートランチャー 小口径電磁砲(×2) 機銃(×2)

 特徴
  共和国のゴドスに対抗すべく開発されたメカで、外形的にはゴドスと似通ったところはあるが、中は新しく設計されパワーアップしている。
  中でも、マーダのようにマグネッサーシステムを取り入れる事により、ジャンプを可能にした。
  これにより変化に富んだ攻撃が出来るようになった。


前後より

帝国軍主力歩兵ゾイドのイグアンです。
共和国が誇る強力歩兵ゾイド・ゴドスに対抗して開発された機体です。またその形状から、マーダの後継機的側面も持っていると思います。

帝国の重装甲スペシャル級唯一の恐竜型で、個人的にはこのクラスの帝国ゾイドの代表格という印象があります。
数の上で言えば、実のところゾイドは、恐竜よりもそれ以外の生物をモチーフとした機体の方が多かったりします。
しかし、こと印象という点においてはゾイド=恐竜のイメージは圧倒的だと思います。

従来の小型ゾイドと同じマイクロゼンマイを使用しながら、一回り大きな造りとなったゾイド。それが重装甲スペシャル級です。
その重装甲スペシャル級に、共和国側ゴドス・帝国側イグアンという恐竜型が揃った事で、いよいよゾイドは新たなるステージに来たという感じがします。
そういった意味で、個人的に非常に思い入れ深く、また印象深い機体です。

イグアンの武装配置は2パターンあります。
上の画像では、ビーム砲を2門とも頭部側面に付けていますが、下の様に片方を外して右腕に持たせる配置も、よく見かけます。

パッケージの写真等ではこの配置が採用されているようで、頭部側面にビーム砲がありません。

どちらが基本形態なのかは不明ですが、バトルストーリー劇中では、両ビーム砲とも頭部に付けた配置の方が多いように思います。
その事もあり、個人的には両ビーム砲とも頭部に付けたパターンの方が愛着もあり好きです。


側面より

側面から見ると、ラインが非常に流麗な事に気付きます。
背中から尻尾にかけてのラインは惚れ惚れするほどで、さすが曲面デザインで攻める帝国ゾイドという感じです。

イグアンの開発スケッチなどは、確認できている資料からは見つけ出すことが出来ませんでした。
この流麗な装甲を持つゾイドの開発スケッチが見つけ出せなかったのは無念です。
ただ「デザインの現場」という雑誌の84年10月号「トミー特集号」に、興味深いスケッチが掲載されています。

このスケッチは、ゴジュラスの開発が最終段階だった頃に描かれたもののようです。
「EPZ-02」の文字が見えます。
「P」は、メカ生体ゾイドの型式では、モーターを使用したゾイドを表します。その事から、これはおそらく大型ゾイド用のデザインとして考案されたものだと思います。
時期的に考えて、ゴジュラスの対抗機だったのか…?等と妄想が膨らみます。

残念ながらこのデザインは製品化には至らず、廃案になっています。
しかしこのデザインは、小型ゾイド用に調整された上で、イグアンに引き継がれているように感じます。
一方、幾つかのラインは後のデスザウラーにも引き継がれているようにも感じます。


フェイス

頭部は共通コックピットになっています。もちろん開閉可能で、中にパロットを乗せる事が出来ます。

帝国側重装甲スペシャル級ゾイドのほとんどは、この共通コックピットを使用しています。
ただ「共通コックピット+オリジナルパーツ」で構成し、「個性を出すと同時にモチーフを再現する」という手法が採られています。
その最たる例はハンマーロックやヘルキャットでしょう。そこから考えると、イグアンは少し「?」な造形でもあります。

頭部側面にビーム砲を付けて個性を出していますが、この配置がモチーフの恐竜に近いかと言われればかなり疑問です。
というか、何故こういう配置にしたかが、かなり謎な気がします。
しかし、不思議と似合っています。似合いすぎてこれ以外に考えられない位、このビーム砲配置は似合っていると思います。
むしろ、これを撤去したイグアンなど考えられない程に。

こういった所から評価点をどうすればいいか迷うゾイドですが、好みだけで言えば凄く好きです。
なお、先にも書いた様に、片方を撤去し右腕に持たせた形態も存在しますが、この配置が似合いすぎていると思うので、こちらの方が好きです。


ゴドスと共に

イグアンは共和国軍のゴドスに対抗して開発されたゾイドですが、その開発経緯は「鹵獲したゴドスをコピー改良した」とされています。
その為、随所にゴドスと共通のパーツが使用されています。
胴体フレームと腕部、脚部、武装の大部分で共通しますが、比べると全く異なった印象になっているのは素晴らしいと思います。

比べると本当に両軍の思想の違いが読み取れ、実に興味深いです。

ゴドスはゾイド戦史において長らく、最強の小型ゾイドとして君臨していました。
新鋭のマーダやゲルダーが登場しても、なお最強であり続けた画期的名機でした。
おそらくこの時期、帝国はゴドスを超えるゾイドを開発しようと躍起になっていたと思います。
イグアンは、帝国小型ゾイドとして初めてゴドスを総合的に越えた機体です。
しかしそれはゴドスのコピー改良機であり、帝国最強の小型ゾイドを作る為にはゴドスをコピーせざるを得なかった。この事は、帝国にとって大いなる屈辱だったと思います。

この設定は非常に面白いと思います。
ゴドスを越える新最強小型ゾイドが誕生しても、安易にゴドスを貶めていないというか。負けてもなおゴドスの凄さが際立つというか。
そういったものがあり、素晴らしいと思います。両者がより魅力的になっている理想的な設定・関係だと思います。
同じ図式が、後年のサーベルタイガー/シールドライガーにも受け継がれているのは周知の通りです。

コピー改良機のイグアンですが、帝国機らしく重装甲化されている他、武装面でもゴドスとの差がいくらかあります。
最も目立つのは、腕の装備です。

まず右腕の爪ですが、この形状は個人的に大好きです。ゴドスの細い爪とは比べ物にならないほど肉厚で、万力の様に強固にはさんで潰すイメージがあります。
この形状が大好きで、いっそ両腕ともこの形状のイグアンも見たい気がします。
残念ながら、キットでは取り付けジョイントが右腕専用になっているので、二個買ったとしても、無改造では両腕ともこの装備にする事は不可能です。

左腕の4連グレートランチャーも大好きな装備です。
冷静に考えて、生物がモチーフなのにこの装備は良いのか…?とは思いますが、攻撃的なイグアンの姿勢をよく表しており、良い装備だと思います。
砲身が非常に肉厚なのも、大迫力だと思います。グレートランチャーとは具体的にどのような装備かは不明ですが、形状から考えて臼砲のようにも見えます。

万力のような右腕でガッチリ敵を捕まえ、必殺の4連グレートランチャーを叩き込む。
そのような戦い方を想像しても面白いと思います。

ゴドスから作られているので、正面から見ると非常にほっそりしています。
しかし両腕の力強い装備のおかげで、ゴドスよりはかなりガッシリした印象を与える事に成功していると思います。

また、ガッシリした印象を与える要素としては、両腰にインテーク状のパーツが付いたのも大きいと思います。


ギミック

ゼンマイを巻くと動きます。

連動ギミックとしては、母体がゴドスであるから「腕を振りながら歩く」という同じものになっています。
しかし、手動ギミックに関しては差があります。

背中のカバーが開くようになっています。

この時期の帝国小型ゾイドは、ハンマーロックなど「開く」ギミックを備えたものが多いような気がします。
なお、機獣新世紀ゾイドでこのカバーは「フレキシブルスラスターバインダー」の名が与えられ、「短時間ではあるが機動力を倍増させる」という設定が付きましたが、メカ生体ゾイド当時は特に何の名称も設定も付いていませんでした。

カバー展開ギミックのおかげでゴドスを上回っているとも言えますが、ゴドスは重装甲パーツが付属するおかげで豊富なバリエーションを楽しめる、非常にプレイバリューの高いゾイドでした。
その点も加味すると、ギミックやプレイバリューの総合点は、ゴドスと五分といった所だと思います。


戦歴

バトルストーリーでの出番は、主役を張った戦いとして、国境の橋争奪戦があまりにも有名でしょう。
華麗なる奇襲や、共和国の強烈な反撃を食い止め続けた雄姿、最後にはカノントータスの砲撃の前に沈んだ散り際。
その戦いは、ファンの心をいつまでも掴んでいます。

主役を張った戦いは国境の橋争奪戦が唯一ですが、背景・脇役としてはそれ以外にも非常に多く登場しています。
帝国部隊が戦う際は、ほとんどの場合イグアンも随伴しており、帝国主力歩兵ゾイドとして堅実な働きを見せた事が伺えます。

登場当初は強力な機体として描かれ、ゴドスやプテラスを相手に豪快な勝ち星を納めています。
一方、ゴジュラスやウルトラザウルス相手にはさすがに分が悪すぎ、何度も吹き飛ばされています。

それでも、トータル的には、このクラスとしては非常に優秀かつ強力なゾイドである感じでした。
しかし、共和国に次世代機アロザウラーが登場すると、ついに旧式機になったような感じがします。
これ以降は、あまり表舞台には登場しておらず、二線級機になった事が伺えます。

イグアンに代わって帝国の主力歩兵ゾイド的なポジションを得たのは、ブラックライモスやブラキオスです。
部隊の進撃に随伴したり、各所の防衛に務めたり、それまでイグアンがこなしていた任務の多くを、両ゾイドが引き継いでいます。
しかし、イグアンとブラックライモス・ブラキオスではかなり機体の性格が異なり、イグアンがこなした任務の全てを両ゾイドがまかなえるとは思えないものでもあります。
しかし帝国には、アロザウラーの対になるような、イグアンの後継機はついに誕生しませんでした。
おそらくイグアンは、二線級になった後も、各所で苦しい戦いを強いられていた。その事は想像に難くありません。


帝国軍主力歩兵ゾイド イグアン

共和国軍ゴドスのコピー改良機にして名ライバル。イグアン。
ゾイド世界観をこれほど魅力的に彩った機体は無いと思います。

ゴドスの特徴を引き継いだ汎用性の高い主力歩兵ゾイドだけに、無数の戦場であらゆる運用をされた事でしょう。
華々しいヒーロー系ゾイドではありませんが、様々な戦場とドラマを想像させてくれる、まさに傑作機だと思います。

ゾイドデザインは、年を経る毎に「そのゾイド単体で華のある」ヒーロー的側面を求めて行くようになります。
しかし単体としては多少地味でも、ゴドスやイグアンのような存在こそが、ゾイド世界観の根底を圧倒的に魅力的たらしめたのだと思います。
そのことを意識した傑作機が、今後も生まれてくる事を願うばかりです。


バリエーションモデル

 機獣新世紀ゾイド イグアン

 暗黒仕様 イグアン


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