メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 戦闘機械獣 マルダー<MALDER>

■マルダー(カタツムリ型) データベース■

 発売年月 1985年6月  発売当時価格 780円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 EMZ-18

 スペック 全長8.5m 全高6.5m 全幅4.3m 重量34.6t 最高速度100~120km/h 乗員2人

 主な武装
  自己誘導ミサイルランチャー 加速ビーム砲 中口径電磁砲 レーザーセンサー(×2) 機銃(×2)

 特徴
  帝国側小型メカの中では最も重く、他のメカと共に機甲部隊を組むことが難しいため、主に後方からの支援や、移動トーチカとして使用されている。


前後より

帝国初の本格防空ゾイド、マルダーです。
また、帝国初の重装甲スペシャル級ゾイドでもあります。

マルダーは、モチーフ選択が非常に面白いです。なにせカタツムリです。
共和国側の重装甲スペシャル級第一弾は恐竜型ゴドスですが、帝国側重装甲スペシャル級第一弾はキワモノ系でスタートしています。
カタツムリというどう考えても戦闘兵器からほど遠いイメージのモチーフを使用していますが、しかしみごとな戦車ゾイドに仕立ててしまっているのだから脱帽です。
ともすれば失敗してネタにしかならなさそうなモチーフですが、素晴らしい完成度で登場し、「どんなモチーフでも魅力的なゾイドになれる」事を証明してくれました。
ゾイドの可能性を大きく広げた傑作機だと思います。

ネーミングセンスも大好きです。
その丸い形状からマルダーであると同時に、第二次大戦のドイツ軍が運用した対戦車自走砲マルダーから取られていると思います。
愛らしさがあり、ミリタリーでもあり、洒落た感じがある。絶妙です。


側面より

マルダーは、左右非対称のゾイドです。
カタツムリは巻貝なので、考えてみれば当然かもしれません。
しかし左右非対称のデザインというのは、デザイナーとしてはやりにくい分野のはずです。それをさらっと仕上げている辺り、素晴らしい技量が伺えます。

殻は、実際のカタツムリのような渦巻きではなく、大小の丸が重なったようなデザインになっています。
しかし印象としては渦巻いているように見えるようになっており、秀逸です。

冷静に考えると、車高が異様に高く、転倒しやすそうなフォルムでもあります。
しかしワイドな殻は膨大な積載量を思わせます。輸送部隊としても活躍出来そうに見えます。

ゾイドなので当然、ギミックを有します。そして動かすと、マルダーは大きく表情を変えます。

本物のカタツムリと同じように、伸縮しながら前進します。側面から見た際は、特に表情の違いが大きく分かります。
伸縮するおかげで、殻に閉じこもった状態から大きく伸ばした状態まで、様々なカタツムリが表現できています。
体を伸ばした時、殻の角度が変っているのにも注目です。収縮時は水平、伸びた時は少し殻を持ち上げます。

このような伸縮を伴って前進するという事は、実際のマルダーは、カタツムリと同じように地面に吸着しながら前進しているのではないかと思います。
それにより、この高い車高でも転倒する事無く安定して動けるのではないかと推測します。

本物のカタツムリは、頭まで完全に殻の中に収納します。
残念ながらマルダーは、そこまでは出来ません。ですが充分な動きだと思うし、ここまで収納できれば安全性はかなり高まりそうです。


フルオープン

マルダーは、殻の中に様々な隠し武器を持っています。
それらをオープンすると、かなり戦闘的な表情に変わります。

殻の正面には、強力なミサイルを持ちます。

このミサイルは、実際に弾を装填し発射するギミックが付いています。スプリングで射出されるので、飛距離はなかなかあります。
装填できる弾数は1発です。ですが、キットには無くなっても大丈夫なように予備弾含めて2発付いているのが嬉しいです。
なお予備弾は、普段はハッチ内に収納しておく事ができます。痒いところに手が届く仕様がニクいです。

向かって右側は、装甲を展開させると中口径電磁砲が出てきます。
キット的には装甲のツマミ部分を掴んで装甲を展開させますが、その部分がマイナスモールドになっており上手くメカデザインに溶け込んでいるのは秀逸です。
装甲を展開させた時は、装甲の展開や隠し武器という要素にも燃えますが、隙間から内部のメカがチラ見えするのもたまりません。

マルダーの右側は、先に書いた電磁砲が隠されています。反対側…、左側にはビーム砲が付いています。こちらは隠し武器ではなく、元から露出しています。
この砲は可動が素晴らしい出来です。

ゼンマイを巻くと、連動で仰角が変るギミックがあります。更に、手動で360度自由に仰角を付ける事も出来ます。
(手動で0度の角度にすると、連動時は0~40度くらいで可動するし、手動で90度の角度にすると、連動時は90~130度くらいで可動します)

右側は隠し武器を展開させる凄さがあり、左側は手動ギミックと連動ギミックが融合した凄さがある。
マルダーの両側は凄さが詰まっています。

マルダーにこれほどまでに武器が多いのは、「カタツムリ=殻の中に詰まっている」というイメージゆえのものでしょう。
この機体がこのような仕様で登場したのは、素晴らしい事だと思います。


フェイス

頭部は、帝国共通コックピットが使用されています。ただ両側面に角状のパーツが付いており、カタツムリらしい感じを出しています。
直角度で付いているのではなく、若干、左右へ広がりながら伸びているのが面白いところです。
残念ながら伸縮はしません。このサイズなので仕方ないとは思いますが。

頭部はメインコックピットになっており、開けるとパイロットが乗っています。

こうして見ると、コックピットが赤いので、クリアパーツが目立っていないのが残念です。
緑など別の色にすれば見栄えが上がったと思います。

メインパイロットは頭部に乗りますが、殻の中にもコックピットがあります。

先に書いた通り、右側には隠し武器があります。そこには砲座が設けてあり、専用の砲手が居ます。
おそらく、砲手が居る事で命中率などは非常に良い砲なのではないかと思います。

また、このパイロットですが、まさかこの砲を撃つ為だけに居るわけではないと思います。
普段は、内部でマルダーのエンジンの機嫌を取るよな役割も担っていると思います。
さすがに、小型といえど従来機よりは大柄で、なおかつ多数の砲を持つゾイドです。
帝国の技術を以てしてもマルダーが二人乗りであるという事は、技術的な過渡期を感じさせるものでもあります。


帝国側重装甲スペシャル級第一弾

先にも書きましたが、マルダーは帝国側の重装甲スペシャル級第一弾ゾイドです。
共和国側は、ガリウスとゴドスを比べれば分かるように、従来の小型ゾイドと重装甲スペシャル級のデザインは大きく異なっていました。
しかし帝国側は、従来の小型ゾイドと比べて、さほどデザイン的な変化は見られません。
ただ、大きさは一回り大きくなり、またディティールもかなり細かくなっています。ギミック面でも、より充実したものが増えてゆきます。

ディティールは、殻の下部や胴体の細かいメカニックの造りは特筆モノだし、殻後頭部の彫の深いディティールなども素晴らしい出来です。
単に溝を彫っただけのディティールではない。その場所によって様々な造り方があり複雑で、それらが無限の想像を生みます。
帝国側は、もともとデザインの洗練度が高かったため、重装甲スペシャル級になってもあまり変化させる必要が無かったのでしょう。
しかし、よりブラッシュアップされており、見比べてみると興味深いです。

色に関しては、従来と全く同じで、「装甲:銀」「メカ部:ゼネバスレッド」の色を維持しています。
この色は似合っているし、同じ色を採用したのは、いかにも規律の取れた帝国軍というイメージがあるので良いと思います。
しかし、初期の頃は別の色にする案もあったようです。

黒と赤、緑キャップのカラーは、アイアンコングなどの帝国最強部隊カラーを思わせます。
他にも、頭部を銀にする案や、青系の色を使用するなど、様々な試行錯誤があったようです(上画像のシンカーと同じカラーのマルダー試作案も存在します)。
黒装甲も青系のカラーも魅力的ですが、個人的には最終的に今のカラーに落ち付いて良かったと思います。


殻系ゾイド

個人的に、カタツムリというモチーフを採用したのは最高だなと思います。
殻というのは「帝国=装甲で覆われている」というイメージと素晴らしく合致します。

しかし、カタツムリの殻というのは、おそらくあらゆる貝類の中で最弱の部類だと思います。
その殻は、「装甲で覆われている帝国メカ」ですが、同時に「将来的に更に強度の高いからを持つ生物がモチーフになるかもしれない」という期待感を膨らませます。
そして後年、実際にマルダーより遥かに硬い殻を持つヤドカリ型シーパンツァーが誕生しています。

シーパンツァーも殻系の傑作機ですが、それが誕生できたのは、マルダーが居たからに他ならないと思います。
マルダーは単体としても魅力的ですが、後のゾイド併せて考えても魅力的です。

余談ですが、帝国側の重装甲スペシャル第一弾はマルダーですが、最終機はシーパンツァーです。
帝国側重装甲スペシャル級は、殻系で幕を開け殻系で幕を降ろしています。


火力

マルダーの火力は、このクラスとしては抜きん出ています。そしてそれらの多くは、対空を意識されています。
前部のミサイルは言うまでも無く。左側面の砲も明らかに高射砲的な装備であり、対空が強く意識されています。

マルダー登場時期における帝国軍は、飛行ゾイドを持っていませんでした。
共和国側のグライドラー、ペガサロスに対し煮え湯を飲まされていた状態です。
そんな中開発されたのがマルダーです。また、対空を意識されたマルダーとは別に、空戦機シンカーもこの時期に開発されています。
この両機は、対共和国空戦メカの切り札だったと思います。

飛行ゾイドを持たなかった帝国が開発した対空ゾイドと飛行ゾイド。
マルダーやシンカーは、時代背景と併せて考えると、より魅力的です。

ちなみに砲を満載しただけでなく、頭部の角がレーダーになっているのも見逃せません。
このレーダーで、おそらくグライドラーやペガサロスを察知するのでしょう。
このような細かい配慮があるからこそ、満載した砲に説得力が生まれ、より高い魅力を放てています。


ギミック

ゼンマイを巻くと元気に動きます。ギミックは傑作級の出来です。
連動ギミックとしては、左側のビーム砲の仰角を変えながら前進します。

前進は、先にも書きましたが、カタツムリの特徴的な伸縮を見事に再現した秀逸な仕上がりです。殻の角度を変えながら動くのも秀逸です。
実際はタイヤで走行していますが、外観上は見えないようになっており、まるで伸縮しながらそれにより前進しているように見えます。
この素晴らしい動きは、モルガと同じく重心をずらしたタイヤから取り出されています。
連動箇所こそ少ないですが、その動きは間違いなく傑作です。個人的には、モルガに匹敵する出来だと思います。

手動ギミックは、ミサイルの展開、ミサイルの発射、右側面の装甲展開、折りたたみ式電磁砲の展開、コックピットの開閉です。
このクラスとしては破格の充実ぶりを誇ります。実際に撃てるギミックがあるのも嬉しいし、非常に遊び応えがあります。

連動ギミックとしてはモルガに匹敵するものがあり、手動ギミックではそれを越えてきたと思います。
重装甲スペシャル級第一号のマルダーは、ギミック面でも前級を凌駕しようという強い意思が伝わってきます。


戦歴

戦歴は、やや悲壮感漂います。

豊富な火力を持つマルダーは、当然、防空の要機として運用されます。
ゾイドバトルストーリーでは機体紹介されたのみでしたが、学年誌の方では「ペガサロス隊に痛撃を与えた」とあります。
ペガサロスに痛撃を与えたという事は、格下のグライドラーには完勝できる能力は確実にあったと思われます。
マルダーはその実力を確かに示したのです。

しかし不幸だったのは、マルダー完成とほぼ同時期に、共和国軍がサラマンダーを完成させた事でしょう。
この前代未聞の巨人機にはさすがに力不足だったようで、それゆえに優秀な防空力を持ちながら今ひとつ活躍できなかったようです。
開発中のマルダーは、仮想敵をペガサロスに設定していた事でしょう。
おそらく、共和国にしばらく新型飛行ゾイドは生まれないだろう。そんな目算があったと思います。

実際は、全く予想できなかった規模の巨人機サラマンダーが出現し、更に数年後にはペガサロスを遥かに越えるプテラスが出現しています。
マルダーは非常に不運なゾイドでした。この不運はシンカーにも当てはまります。
本来、傑作機として君臨し帝都の空をシンカーと共に守りきる英雄になった筈でした。
それが敵わなかったのは、マルダーファンとしては大いに悲しいところです。ただ逆に、その悲劇性ゆえに惹かれる所もあります。

ただ、バトルストーリーを見ていると、背景の方で頻繁に写っているのを確認できます。
防空用としては不幸な戦歴でしたが、何らかの運用法が見出され使用されていたのかもしれません。
そのようなものを想像しても面白いかもしれません。

少し疑問なのは、初期型のマルダーがサラマンダーやプテラスに抗せなかったのは良いとして、その後、改良タイプなどは製作されなかったのかな?という事です。
更に探知能力や砲力を強化すれば、あるいは…。初期型でもペガサロスは探知できるので、不可能ではないと思いますが…。
ただ、バトストでも学年誌でもありませんが、当時の販促用ミニ冊子ゾイドグラフィックスVol.7には、このような改造タイプが載っていたりします。

vol.7は、サイカーチスやヘルキャットなど更に新型のゾイドが誕生した頃の冊子です。
ここから察するに、この時期、マルダーの改良型の開発研究が行われていたのかもしれません。
ただ何となくこの改造タイプは、防空力を高めたというより「突撃能力を高め帝国機甲師団に随伴出来るようにした仕様」なイメージがありますが…。

造形は大好きです。メカニックがゴチャゴチャ詰まっている感じも、いかにも試作機という感じがするのも最高です。
なお設定は特に記載されておらず、表紙用に製作された改造作例のようです。
ちなみに、ゾイドグラフィックスはvol.21まで存在しますが、その中で小型機が表紙の主役を務めているのはvol.7のマルダーのみで、意外なところですが名誉な機体です。

ともかく、改良型マルダーの開発プランはあったかもしれません。
しかし、本格的に防空力を増しサラマンダーやプテラスに痛撃を与える存在になる…所までは至らなかったのは確かです。
やはり悲劇性の高い機体というのは否めません。


防空砲台 マルダー

実は、個人的には帝国で最も好きなゾイドです。
様々な要素が高次元にバランスよく詰まっています。
ゾイドはカッコいいのは確かですが、同時に生物ゆえにどこかしら可愛いイメージもあると思います。
マルダーはまさに造り込まれたメカニックや隠し武器などオトコノコの心をくすぐる要素がある一方、カタツムリ由来のフォルムが何とも愛らしい仕上がりでもあります。
恐竜型や哺乳類型のように直球でカッコいいものではありません。
しかし愛らしいフォルムの中に、よく見るとなんともカッコいい要素もあり、見れば見るほど惹き込まれます。

戦歴も、悲壮感はあるものの、それはそれで好きです。
当時のゾイド開発競争やテクノロジー進化の凄まじさを雄弁に物語っているものでもあります。
また、個人的には不足する能力で何とかあがき一矢報いるものに惹かれるという所があるので、そういった想像がしやすい機体という意味でも大好きです。

マイナーに属するゾイドだと思いますが、限りない魅力に溢れています。
キワモノですが、それゆえに傑作機です。


バリエーションモデル

 ゾイドグラフィックス マルダー

 暗黒仕様 マルダー


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