メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 戦闘機械獣 モルガ<MOLGA>

■モルガ(昆虫型) データベース■

 発売年月 1984年9月  発売当時価格 580円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 EMZ-15

 スペック 全長11.8m 全高2.95m 全幅3.0m 重量19.7t 最高速度200km/h前後 乗員1人

 主な武装
  レーザーカッター グレートランチャー(×4) 小口径レーザー(×2) 多弾頭ミサイル(×2) 機銃(×2)

 特徴
  その独特のスタイルと重装甲ゆえに、共和国の兵士達に恐れられている。
  特にその頭部は通常の2倍の装甲があり、時として体当たり攻撃により敵を撃破することもあった。
  それゆえに、突撃隊、特殊部隊に標準装備された。


前後より

帝国初の突撃ゾイド、モルガです。
その独特のフォルムは、ひと目見た瞬間に強烈な印象を与えます。
イモムシを戦闘兵器に仕上げてしまうセンスはぶっ飛んでおり、まさにゾイドにしかできない魅力を放った一機になっています。

造形はモチーフに対して忠実な仕上がりです。曲面主体のラインがいかにも帝国らしく、またモチーフのラインを上手く再現しているは見事です。
反面、ディティールはかなり少なめです。しかし少ないながら、メカ部分は的確な造りをしています。
特に背中(?)の排気口や、その側面の彫の深い穴が魅力的です。

タイヤの配置も特徴的です。
モルガはタイヤで前進するゾイドです。タイヤを使うゾイドは他にもありますが、なるべくタイヤを隠し「そうである風に見せない」ように処理されているものばかりです。
これほど大胆にタイヤを目立たせたデザイン処理は、他に例がありません。
しかしこのタイヤの処理は素晴らしいと思います。
ディティールが少なめで、ともすれば生っぽくなりすぎる所を、このタイヤが上手く「メカである」と引き留めています。


側面より

均衡のとれたフォルムが魅力的です。
全身これ銀色で、まさに重防御の帝国ゾイドという感じがします。
側面から見ると、ディティールの少なさと、それゆえ引き立つタイヤの効果が改めて分かると思います。

タイヤの他に注目したいのは尾部です。ニュっと飛び出した、2本の小口径レーザーが目立ちます。
どちらかと言うと、イモムシの角状突起は頭部にあるようなイメージがあります。なので、見ようによっては、こちらが頭部にも見えるような気がします。
とはいえ、「イモムシらしい造形」という意味で見れば面白い装備だと思います。

設定は小口径レーザーとされています。これに関しては、通信アンテナ等の設定の方が良かったのかなと思います。


フェイス

頭部は、帝国共通コックピットを使用しつつ、独自の装甲をプラスする事でモルガ特有の顔を形成しています。
帝国ゾイドでは初の、共通コックピットを使用しつつ個性的な頭部を持ったゾイドです。

設定上、他の場所の二倍の厚さを持つ頭部装甲ですが、確かにいかにもブ厚そうです。キット的にも、他の場所より厚く成型されておりコダワリが感じられます。
ただ、よく見ると装甲より共通コックピットが少し前に飛び出しており、シュールな気もします。
体当たりをすると、場合によっては共通コックピットが潰れてしまいそうです。
もしかすると、内部でスライドし後方に引っ込むのかもしれないと思います。後年のシンカーのように。

共通コックピットを開けると、もちろんパイロットが入っています。

装甲が二重なので、二回開ける事でようやくパイロットが姿を現します。
ただでさえ装甲で守られたコックピットですが、更にブ厚い装甲でガードされている。モルガのコックピットはかなりの安全設計です。
装甲の前に飛び出している点は別として…。スライド機能はあると信じたいです。

モルガのパイロットは1名で、全ての操作をここから行います。


キワモノモチーフ

モチーフはイモムシですあ、改めて凄い選択です。
イモムシをモチーフにしてリアルな戦闘兵器を作ってやろうなんてゾイド以外では出来ない発想で、ゾイドだけが持つ魅力を何より感じさせてくれます。
しかも巨大な大砲をつけてカッコ良くしようというような安易な発想はありません。
あくまで、そのまんまイモムシな造形で勝負をかけているのが凄いです。

それにしても、何度考えても凄いモチーフです。
虫系ゾイドといえば、既にグランチュラ、スパイカー、ガイサックといった機体もありました。
しかしそれらは虫であるがカッコいいイメージもある、それに戦闘的なイメージが連想しやすいものばかりです。
それに対してイモムシ。改めてよくやったなと思います。

虫系ゾイドは両軍で使用されていますが、このモチーフの差は両軍の扱いを物語っています。
初期において、帝国は敵側・悪役として登場しました。
それゆえか、初期の帝国側モチーフは、共和国側に比べて華の無いモチーフを選ぶ傾向が強くあります。
モルガはそういった傾向が特に強く表れた一機です。

ゾイドは戦争モノだから、どちらが正義でどちらが悪かというのは良くない描写だと思います。
一方で、モルガのような「そんなのモチーフにするの!?」なゾイドは、「敵側として登場したからこそ生まれた」ものだとも思います。
中期以降のゾイドは、善悪の関係性は薄れ、どちらの国も正義でも悪でもない中立的な描写に移行していきます。
一方で、モルガはじめ初期のマイナーモチーフの機体は中期以降も運用が続き、共和国軍と激しい戦いを繰り広げます。

初期は敵側であった為、マイナーやキワモノなモチーフも多く採用され、共和国側では為しえない独特の魅力を作ることに成功した。
中期以降、バトルストーリーの描写は中立になるが、従来の帝国ゾイドもそのまま運用が続いていった。
狙ってやったわけではなく偶然の産物だと思いますが、初期において敵側として設計されたゆえに、素晴らしい結果を生み出したと思います。


戦闘スタイル

低い姿勢と重装甲で敵弾に耐えながら前進。ジリジリと敵に接近し最後には補足し破壊してしまいます。
前面に分厚い装甲。そして200km/hにも達する速度。これにより体当たりで敵をなぎ倒す事もありますが、体当たり以外にも戦法はあります。
体当たりは対小型ゾイド戦ではよく使用されましたが、対大型ゾイド戦(というか対ゴジュラス戦)では体当たりなどさほど意味が無いようで、下部のレーザーカッターで噛み付く戦法が使用されています。

おそらく、ゴジュラスともなればモルガの前面装甲より更に頑丈なゾイドだから、体当たりしても意味が無いか逆に自爆になってしまうのだと思います。
あるいは、体当たりは直線的なコースで機動が読みやすい。ゴジュラスとしてはどっしり構えて直前で踏み潰すのかもしれません。
モルガが蛇行しながら読みにくい軌道でゴジュラスに忍び寄りレーザーカッターで噛み付き…! なるほどこちらの方が、まだ分がありそうな気もします。
といっても、噛み付きで仕留めた例は無く、小さな傷を付けるのが精一杯だったようではありますが。

地中に潜行できるのも大きな強みです。
これにより潜入や奇襲戦で大きな力を発揮します。この能力は非常に大きな意味があったと思います。
地中に潜行できるメカは珍しく、帝国では後にブラックライモス、グランドモーラーが就役したくらいです。

また後部には隠し武器であるミサイルが収納されています。

これを使用した砲戦にも対応しており、体当たり以外にも多彩な戦術幅がある機体なのは覚えておくべき項目です。

また対ゾイド戦のほか、モルガを対人用として考えた場合の有効性は計り知れないものがあると思います。
歩兵武器を全く寄せ付けない重装甲。
人の高さを考えたら、これ以上恐ろしいものはないレーザーカッター。
小口径で対ゾイド戦では心もとないが対人戦では恐るべき威力を発揮しそうな4基のグレートランチャー。

こと対人用としてはモルガほど恐ろしい存在は無いと思います。
「その独特のスタイルと重装甲ゆえに、共和国の兵士達に恐れられている」と設定にあるモルガですが、これは対人用途も含めた表現であると思います。


ギミック


ゼンマイを巻くと元気に動きます。ギミックは最高です。

連動ギミックとしては、体をうねらせながら前進します。
そのうねり方はまさにイモムシそのもので、初期ゾイドながら、リアルな動きのゾイドの真骨頂と言って良い出来です。

一直線に伸ばした姿から大きく反らせた姿まで。とにかくリアルで、虫が苦手な人なら思わず飛び上がるんじゃないかと思う程の出来です。

この素晴らしい動きは、車輪の中心軸をズラす事で出来ています。

車輪の中心をズラしている事を除けば、動力部はいたって単純な造りです。
簡単な造りだが、そこにちょっとしたアイデアを加える事で素晴らしい動きに昇華させる。初期ゾイドらしいアイデアに富んだ素晴らしいギミックです。

手動ギミックも充実しており、頭部装甲の展開、コックピットハッチの開閉、後部ハッチの開閉、内部ミサイルの旋回が出来ます。

後部ハッチや頭部ハッチが開くのは先に描いた通りです。
隠し武器はニヤリとします。こういった要素は大好きです。
「隠し武器」という要素は、後にゲルダー、ザットン、マルダーに引き継がれてゆく、帝国小型ゾイドの特徴の一つとなります。
モルガは、その先駆けとなったゾイドです。
中のミサイルは旋回させられますが、贅沢を言うと仰角もつけたかっ所ではあります。

頭部が開き後部も開く。両方開いたら、なんとなくメンテナンス的な風景に見えてきます。

こういったシーンが見れるのも素晴らしい点です。

ともかく、総じて素晴らしいギミックです。初期ゾイドながら、ゾイドを代表する素晴らしいギミックを持った究極のゾイドです。

余談ながら、後に機獣新世紀ゾイドにおいて再販されたモルガは、やはりそのギミックを武器に高い人気を博しました。
しかし、さらに後年にリリースされた、コトブキヤ版のHMMモルガは鳴かず飛ばず。かなりの不振だったと公言されています。

それは当然だったと思います。
もちろんモルガはデザインも素晴らしい。だがギミックを持つことが相乗効果となってモルガをより魅力的にしている。
もはやデザインだけでは完全なモルガとは呼べず、素晴らしいギミックがあってこそ初めてモルガの完成形と言えると思います。


戦歴

モルガの戦歴は、評価の分かれる部分はあると思いますが、登場回数は非常に多くなっています。

バトルストーリーや学年誌の初期資料を見ると、多くの戦場で多数のモルガが写っています。
初期における帝国小型ゾイドの登場数は、モルガ>>マーダ>ゲーター>>>ゲルダー>ザットンという印象を受けます。
実質的に、最も量産され主力を構成したゾイドはモルガであったとして間違いないと思います。
侵攻から防衛まで、幅広く運用されています。最も、ほとんどはゴジュラスに握りつぶされるシーンですが…。

初期のゾイド戦役では、とにかくゴジュラスが猛威を振るっていました。
レッドホーンもかなり犠牲になっていますが、大型レッドホーンより配備数では圧倒的に上であろうモルガ。
あらゆる場所で撃破されています。

それでも、何度も何度もゴジュラスに挑み続けた非常に勇敢な機体です。
モルガが好んで握られたのは、配備数の多さもさる事ながら、ゴジュラスの手に絶妙にフィットするサイズだからという事も否定できぬ要素でしょう。

バトルストーリー未収録の、学年誌のみの資料では独自の活躍も見られます。
「砂漠の決戦」と呼ばれる両軍の大規模会戦では、改造タイプが登場しその砲力で活躍を演じています。

ガラモス特殊工作隊所属機とも書かれています。
またタイ・モルガとは単一の改造タイプを指すのではなく、様々な強化モルガの総称のようです。奥には巨大ミサイルを持った別仕様のタイ・モルガも確認できます。

タイ・モルガのほか、ヘリのような飛行タイプも試作されています。
箱裏にはレーダー装備型も掲載されており、小型ゾイドとしては非常に改造バリエーションの多い機体でもあります。
やはり生産数ゆえのものでしょうか。
モルガの名機ぶりがここからも伝わってきます。

しかしそんなモルガも、D-DAY以降は姿を消しています。
おそらく、イグアンやハンマーロックといった新鋭主力機の就役と増産に伴い、徐々に一線を退いていったものと思います。
D-DAY後も、マーダやゲーターは運用がしばらく続いています。これは速力や策敵といった一芸に秀でた能力を有していたゆえのものでしょう。
モルガは、そのような特化した一芸は持ち得なかった為、これは仕方の無い事かもしれません。

地中潜行というのはモルガの一芸でしたが、その能力もブラックライモスやグランドモーラーが更新していきます。
おそらく地中からの奇襲はより強力なブラックライモスが。潜入任務はより小型のグランドモーラーが引き継いだと思われます。
とはいえ、あれだけ数が居たモルガなので、主に二線級の場所などでは、その後もしぶとく運用されたものと思われます。

バトルストーリーや学年誌以外でも登場しており、History of Zoidsにも登場します。
こちらでは、モルガ開発の発案者がガラモスという人物である事が書かれています。
ガラモスは軍人としても優秀で、モルガを駆り数々の戦いで勇名を馳せたとも書かれています。
先に紹介したタイ・モルガはガラモス特殊工作隊の所属機ですが、おそらくこれは同一人物でしょう。

また戦闘機械獣のすべてにも登場します。
この本に収められたアルダンヌ会戦では特筆級の大活躍を演じています。
この戦いでは、両軍の小型ゾイド部隊が激戦を繰り広げる中、突如として五機のモルガが地中から出現。
敵を大混乱に落としいれ、更にガイサックに猛烈な体当たりを行い沈める金星を立てています。

その後、危機に陥った共和国部隊を救援する為に現れたゴジュラス三機とも交戦し、苦戦しつつも一機にミサイルを集中砲火。
見事腹部を貫き倒すという大金星を立てていたりもします。
この時のゴジュラスは「後続の」とされていたので、おそらく前がつっかえて身動きが取れない状態だったと思われます。
しかしその点を差し引いても、あのゴジュラスに一矢報いた貴重なシーンです。
最もその後は、生き残った二機のゴジュラスにすぐさま報復されていますが…。

ちなみにゴジュラスが小型ゾイドに倒された例はこれのみです。
総合的なキルレシオは圧倒的にゴジュラスに分があります。
しかし連戦連敗でいつも握り潰され踏み潰されていたモルガも、たった一例であるが大物をしとめた実績があるというのはアツいものがあります。
弱小ゾイドでも幸運と巧みな戦術によっては超大型を倒す事も夢ではないと思わせてくれる名エピソードです。


重装甲突撃メカ モルガ

まさに名機中の名機だと思います。
魅力的なデザイン、魅力的なギミック。戦歴もやられシーンの方が圧倒的とはいえ、光るものもあります。
キワモノモチーフは、一歩間違えば大爆死してしまいそうな難しいテーマだったと思います。
しかしそれを巧みに取り入れ、見事成功させたモルガは、ゾイドの世界観を飛躍的に広め、後続機にとって素晴らしい道を開拓しました。

主役にはなれない地味なゾイドですが、今後もゾイドあるところに必ず付いて来る必須の名脇役であり続けて欲しいと思います。


バリエーションモデル

 機獣新世紀ゾイド モルガ

 モルガ ロクロウスペシャル

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ゼネバスメモリアル

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