メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 戦闘機械獣 マーダ<MERDA>

■マーダ(恐竜型) データベース■

 発売年月 1984年7月  発売当時価格 580円  動力 小型ゼンマイ

 型式番号 EMZ-13

 スペック 全長12.2m 全高6.8m 全幅(記載なし) 重量17.5t 最高速度450~500km/h 乗員1人

 主な武装
  中口径電磁砲 自己誘導ミサイルポッド 小口径レーザー 機銃(×2)

 特徴
  帝国機甲部隊の中核をなす、機動力にとんだ戦闘機械獣。生存率も高く、兵士に信頼度が高い。
  通常の歩行では速度に限界があり、兵士の疲労度も高いので、VTOLノズルによるホバリングを可能とした。


自己誘導ミサイルポッド装備タイプ 前後より

初期帝国軍の主力歩兵ゾイド、マーダです。ゼネバス帝国ゾイド第一号です。

1983年に始まったメカ生体ゾイド。しかし当初は、ガリウスやビガザウロなどリリースされる全てのゾイドは共和国側でした。
「帝国」というのはストーリー中の設定でのみ登場する未知のものでした。
しかし1984年7月、帝国側ゾイド第一号マーダが登場した事で、ようやく帝国ゾイドも具体的に示される事となりました。
マーダは、まさに歴史的意義のある機体です。


第一号という事で、リリース当時はかなり入念にアピールされていたりもします。

帝国側ゾイドという事で、これまでの共和国側ゾイドとは全く異なったアプローチで作られています。
それは装甲で覆われたデザインだったり、鮮烈なカラーだったりします。
しかし、従来機と比べ強烈な変化を遂げている一方で、「ゾイドである」という点は頑として守られています。
全体としてのまとまりも良く、帝国ゾイド第一号ながら傑作機に仕上がっており、奇跡的な完成度を誇っています。


中口径電磁砲装備タイプ 前後より

マーダの特徴として、大型の武器を二つ持っている事が挙げられます。
背中の主武装は、自己誘導ミサイルポッドと、中口径電磁砲の好きな方を選べるようになっています。
また、組んだ後も容易に付け替える事ができます。

「ユーザーが好きな仕様を選んで組める」のは、既にゴドスやガイサックが実行していたものです。

しかしゴドスやガイサックは、「全身まんべんなく変える」であったのに対し、マーダは「メインの武器に集中して」換装させているのが特徴と言えます。
登場当初の帝国軍は、「大型の武器を持つ」のが一つの特徴でもありました。
この大型火器換装が出来る仕様は、帝国=大きな武器を持つというイメージを上手く表しています。

装備を換装させた場合、使用していない方の武器は当然ながら余ります。
これだけ大型の武器なのだから、これが片方余るというのは嬉しいです。
個人的には、マーダはミサイルタイプの方が好きです。なので、マーダにはミサイルを装備させ、余った電磁砲を別のゾイドに…というのが定番です。
特に、ゲルダーに装備させるとなかなか似合うと思っています。


側面より

均衡の取れたデザインが素晴らしいです。
スマートなボディ、スラリと延びた長い脚、ピンと上がった尻尾。どの部分もうっとりするようなラインで構成されています。
設定上、450~500km/hもの快速を誇る機体ですが、その設定もすっと受け入れられるスピード感があります。

モチーフは「恐竜型」ですが、媒体によってはオルニソレステス型と表記されています。
小型軽量、軽快に走り回る恐竜で、マーダのイメージにはピッタリです。

見ての通り完全二足歩行を実現していますが、これは特筆です。
「歩行ギミックを持つ」という制約があるのに、補助輪も何も無く二足歩行を完全実現させたマーダ。しかも、こんなに脚が長く重心が高いのに。
マーダの開発には相当の苦労があったと思います。しかし「帝国ゾイド第一号としてインパクト大な機体を!」という情熱が、この形を産んだのだと思います。

更に特筆なのは、長い脚で完全二足歩行を達成していながら、ある程度の余裕があるという事です。
背中の装備を換装させても問題なく転ばず歩行するし、この部分に更に装備を追加してもある程度までなら問題なく歩行します。
後年、マーダTSという大幅な装備増がされたver.が発売されていますが、それも転ばず歩行してくれます。
完全二足歩行に加え、余裕のある設計というのもマーダの特筆事項です。


フェイス

頭部は、完全に装甲で覆われた装甲式コックピットになっています。このコックピットは特筆です。

従来の共和国側ゾイドのコックピットは、キャノピーで覆われるタイプのものでした。
しかし帝国ゾイドは、装甲式コックピットを採用し、デザインの差を打ち出しています。

マーダのコックピットは、後に小型ゾイドの標準として広く採用される、「帝国小型ゾイド用共通コックピット」となります。

このコックピットについてや、後に搭載したゾイドについて詳しくはコラムにしてあります。

このコックピットは、単体だとストレートにカッコいいものではないと思います。
しかし、「どんなデザインともよく馴染む」「そのモチーフの顔に化ける」という意味で絶妙なデザインをしているとも思います。
そういった意味で、まさに傑作コックピットと言えます。

ただ強いて欠点を言うと、ゲート位置にはもう一考欲しかった所です。
右側に目立つ跡ができてしまい、美観を損ねているのは難点です。

ハッチを開くと、内部の作り込みも上々です。もちろん、パイロットフィギュアを乗せる事が出来ます。

やはり、パイロットを乗せると感情移入度が違ってきます。
帝国ゾイドでも、この構造を忘れていないのはさすがです。

パイロットフィギュアは、従来の共和国側と同じ金型から作られています。しかし、色は金色ではなく、銀色になっています。

これ以降、帝国ゾイドに付属するパイロットフィギュア=銀という構図が定着します。


帝国ゾイド第一号

マーダは帝国ゾイド第一号として、「帝国ゾイドとはこういうものだ!」という強烈なメッセージを放つデザインをしています。
従来の共和国側ゾイドと比べると、多くの異なった特徴を持ちます。

まず、装甲の付き方です。
全身むき出し、あるいは装甲があるといっても部分的に留まっている共和国側ゾイドに対し、全身をくまなく覆っています。
先に書いたように、コックピットだけでも両国ゾイドの差は良く出ています。しかし全身を比べると、よりその差が出ています。

全身を装甲で覆われている分、帝国側のデザインは、ゴチャゴチャとした共和国側デザインと比べると対照的。流麗でスッキリしています。
しかしどちらが優れているというわけではなく、比べると、両者とも魅力溢れるデザインをしています。
どちらも、デザインのアプローチが違うだけで「リアルメカである」という部分は保たれており、それゆえ「ゾイド」として間違いなく通用するものを持っています。
共和国側の造り込んだメカニックで魅せるデザインも良いし、装甲で覆われた流麗な帝国側のデザインも良い。
どっちも良い。これは本当に素晴らしい事です。


武装

帝国側ゾイドの特徴は、「装甲で覆って流麗に」だけでなく、もう一つあります。
先にも少し書きましたが、それは「大型の武器を持っていること」です。
マーダは、まさに大型の砲を持っています。更に換装可能なのだから、そのインパクトは大でした。

共和国側ゾイドが、全身にまんべんなく軽火器を付けているのに対し、一極に集中しドカンと積んでいる帝国側ゾイド。
特に初期ゾイドで比べてみると、この差は面白いです。
軽火器装備のゴジュラス、大口径砲を持つレッドホーン、巨大ミサイル装備のアイアンコングなど、大型ゾイドでもこの設計思想は両軍で受け継がれています。

初期においては、「共和国側=ゾイド本来の力を活かす設計をする」「帝国側=ゾイドに徹底的に人の手を加える設計をする」という設定がありました。
巨大な火器は、そのような初期設定から導かれたものでもあると思います。
ただこの設計思想は後に、サーベルタイガーというゾイド本来の力を生かした帝国機や、巨大砲を装備したカノントータス、ウルトラザウルスといった共和国機の登場を経て、次第に消えてゆく事になります。

ともかく、マーダの登場時期においては、帝国=共和国には無い巨大な砲を持つというコンセプトは確かにありました。
自己誘導ミサイルは、なんと15連装というとんでもないものだし、弾頭も大きくなっています。
電磁砲の巨大さは、尻尾を除いた全長に匹敵するほどの長さがあります。

両砲とも、基部で360度全周囲に旋回させることが出来ます。
このギミックにより、ますます強力な武器を持っている印象が強まっています。
ただ残念ながら、仰角を付ける事は出来ません。

電磁砲は、正面に向けて撃つと頭を撃ち抜いてしまいます。
実際は、仰角が付けられる構造になっているか、あるいは首を下げて撃つようなものだと思います。


弱点

デザインに関しては傑作だと思いますが、わずかだけ惜しいと思う所もあります。
それは指です。

マーダの前脚の指は1本、後脚は2本です。
多くの人が連想する恐竜のスタンダードイメージとしては、前脚=指二本、後脚=指三本ではないでしょうか。
マーダは、指がかなり少ないです。

この部分も、もしかすると初期の「帝国側=ゾイドに徹底的に人の手を加える設計をする」という部分から導かれたデザインなのかなぁと思います。
ただ、この部分は失敗していると思います。特に、前脚の指が一本なのは違和感が大きいです。
素直に指二本以上にしておいた方が良かったと思います(なおオルニソレステスは3本指です)。
そうなっていれば、マーダのデザインは完璧だったと思います。


ギミック

帝国側ゾイドですが、もちろん共和国側ゾイドと同じく動力を搭載しています。
ゼンマイを巻くと、元気に動きます。

連動ギミックは何も無く、ただ歩くだけです。
しかし、この長い脚で完全二足歩行を実現しているのはやはり特筆で、素晴らしいものだと改めて思います。

手動ギミックは、首の旋回、コックピットとの開閉、腕を振れる、背中の砲の旋回です。
なかなかの充実具合で満足度の高いものになっています。

腕の振りは、多くのゾイドが連動にしている箇所です。
マーダはそれすら連動でなく手動になっているわけですが、ただ、完全二足歩行を最初に実現した機という事を思えば、致し方ない処置だったとも思います。

後に、完全二足歩行を実現したゼンマイゾイドは複数登場します。
その中で、シュトルヒは歩行に加え羽ばたきを連動に入れてきました。
かなり後年ですが、レブラプターは腕に加え武器も動かすというギミックを達成しました。
マーダは、それら完全二速歩行機の礎と呼べるものでしょう。

総じて、アッサリ目ではあるものの、やはり注目すべき点が多く、高評価を与えて良いゾイドだと思います。


戦歴

戦歴は、なかなか特徴的なものを持ちます。
設定には、帝国機甲部隊の中核とあります。帝国初のゾイドであり、また機動力に富んだ汎用性の高いゾイドです。
なので、おそらくその設定に違わず、大量に配備されたものと思われます。
ただ、バトルストーリーではマーダの活躍シーンは特にクローズアップされておらず、謎が多いのは悔やまれます。

ただ、かなり後年まで配備は続いていたようで、D-DAY上陸作戦後にも運用が続いているショットがあります。
後発機のゲルダーの設定には、「マーダにかわる帝国側の主力メカとして登場」というものがありますが、その実、マーダはずっと一線で使用されており、むしろゲルダーを見かける機会の方が少ない程でした。
おそらく、マーダは多少旧式化したものの、その機動性の高さなど非常に使い勝手の良いゾイドだったのでしょう。

学年誌の資料を見ると、マーダの活躍をわずかながら見つけることが出来ます。

こちらは、レッドホーンに随伴しビーム砲を放つ勇ましいシーンです。背中の砲ではなく頭部側面に増設した砲を撃っているのは微妙に残念ですが。
ただ、この他は特に活躍シーンは無く、逆にゴドスに豪快に負けているシーンがある位です。

様々な媒体を見るに、マーダは初期において多数配備されていたのは間違いないと思います。
配備数はモルガ>マーダ>>ゲルダー、ザットンという印象です。
ただその戦歴はまだまだ謎が多く、今後の解明が望まれるところでもあります。

ところで、マーダについて不思議なのはその戦闘力です。
バトルストーリー1巻の戦力比較表によると、ガリウスなど初期ゾイドには勝てるものの、ゴドスやガイサック以降の重装甲SP級に対しては「負け」になっています。
時速500km/hの超超スピードと大火力を活かせば簡単に勝てそうな気もします。

ただ、マーダの設定で気になるものに「ホバリングが可能」というものがあります。
また戦闘機械獣のすべてによると、「マグネッサーシステムを使用し地面を滑るように走る」とあります。
おそらく、500km/hというのはマグネッサーシステムを使用したホバー走行時の速度だと思います。

おそらく、ホバー走行は素晴らしいスピードではあるが、速い「だけ」なのではないかと思います。
直線的なスピードは出せても、軌道が単純で読みやすい。それを利用すれば避けることも難しくないのではないかと。

個人的には、
●マーダはホバー走行では500km/hを出す事も出来るが、軌道が読みやすく戦闘時には使用できるものではない(遅くとも生物ならではの”読めない”動きをした方が良い)。
●またホバー走行はエネルギー消費が激しく、長時間の使用は出来ない。
●ホバー走行を使用せず脚で走った場合の最高速度は200km/h程度で、確かに速いがゴドスでギリギリ捉えられるものである。
という風に捉えています。

また、マーダの戦歴でもう一つ特筆なのは、改造バリエーションの多さです。
なにしろ最初の帝国ゾイドであり、また小型という特性上、かなりの数が生産されたと思われます。
それゆえか、実験機と思えるような改造機も多数見かけます。

中でも特徴的なのは、これら飛行タイプのマーダです。
特に、グライマーダはシュトルヒに酷似します。

帝国は、長らく飛行ゾイドを持てず、共和国に大苦戦していた背景があります。
それゆえの苦しい改造機であるとも言えます。
グライマーダの技術は、後のシュトルヒに受け継がれていると思われます。
またサンドガウォークの技術も、後のサイカーチス等に活用されているように思います。

このように考えると、マーダは帝国ゾイド第一号というだけでなく、後の様々なゾイド誕生の技術的母体となった、まさに意義のある機体だと思います。


帝国ゾイド第一号 マーダ

デザインの完成度の高さ、戦歴面で果たした重要性。いずれも素晴らしく、帝国ゾイド第一号にして傑作中の傑作と言える仕上がりをしています。
戦歴に少しの謎がある所は残念でもありますが、これだけ魅力的な機体なので、様々に妄想したい所です。

帝国ゾイド第一号にして、「従来とは全く違うデザイン、カラー」で仕上げる。しかしゾイドらしい「リアルである」とか「パイロットが乗る」とかの部分はキチンと残す。
そんな難題に挑戦しつつ、見事それを叶えてみたマーダは、まさに意義の大きかったゾイドです。
マーダが傑作だったからこそ、この後、共和国VS帝国の構図は根付きゾイドを盛り上げていったと強く思います。

帝国の始祖ゾイドと呼ぶべきものでしょう。
それだけに、その後の様々な帝国ゾイドを楽しむ際は、マーダから受け継がれたものや進化したものを感じても面白いと思います。


バリエーションモデル

ゼネバスメモリアルボックス

マーダTS


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