メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 重装甲小型機械獣 ブラックライモス<BLACK RHIMOS>

■ブラックライモス(サイ型) データベース■

 発売年月 1987年6月  発売当時価格 1000円  動力 Hiゼンマイ

 型式番号 EHI-2

 スペック 全長11.3m 全高7.6m 全幅6.7m 重量56.0t 最高速度160km/h 乗員2名

 主な武装
  突撃戦用超硬度ドリル 大型電磁砲(×2) 二連装衝撃砲 接近戦用ビーム砲(×2) 誘導対空ミサイル(×2) 全方位レーダー 前方監視レーダー(×2) 偵察用ビークル

 特徴
  現在では旧式となったレッドホーンにかわる突撃戦用の中型ゾイド。ぶ厚い装甲と多数の武器をもちまさに動く要塞といえる。
  背部装甲内部には偵察用ビークルが格納してあり、レーダーでは発見できない敵の位置を正確につかむ時など本体から離れて飛行し情報を送る。
  突撃戦闘時には先端部のドリル状の角が回転してどんな厚い装甲板でもかんたんに貫いてしまう最大の武器となる。
  中型といえども総合能力ではレッドホーンに匹敵する機動力と戦闘能力を有している。


前後より

帝国軍突撃メカ、ブラックライモスです。重装甲・重武装で身を固めた重戦車級のゾイドです。

帝国Hiユニット級としては2番機ですが、1番機ウオディックは潜水艦という特殊なゾイドでした。対し、ブラックライモスは陸戦型でスタンダードなゾイドです。
ブラックライモスはイグアンやハンマーロックなど旧来の歩兵ゾイドを更新していきました。
ウオディックはHiユニット級登場という衝撃を与えましたが、ブラックライモスは歩兵ゾイドの「更新」を印象付けたと思います。
この二機は、帝国Hiユニット級の中でも一際印象深い機体です。

カラーリングも印象的です。
「装甲:黒、内部:赤」のカラーは、今でこそスタンダードな帝国カラーとして認知されています。
しかしブラックライモスより前にこのカラーを採用していたのは、帝国最強・アイアンコングだけでした。
一般機は「装甲:赤、内部:黒」 あるいは小型機はほとんど「装甲:銀、内部:赤」というカラーでした。

D-DAY上陸作戦の要機であった新鋭ディメトロドンやウオディックさえ、旧来と同じカラーパターンでした。
「装甲:黒、内部:赤」というカラーは、歴代の「帝国最強機」あるいは「最強部隊に所属する機体」にのみ許された特別なカラーです。
こう見ると、ブラックライモスの特別感が良く分かると思います。

特別なカラーをまとったブラックライモスですが、実際にその戦力は高く、このクラスとしては最強です。
後発機でも、中央大陸戦争期においてはブラックライモスを越えるゾイドは登場しませんでした。
また「強い」というのは設定上のものですが、見た目からも強そうな感じがひしひしと伝わってきます。

ブラックライモスは、首の角度を調整できます。変更すると、多少表情が変わります。
姿勢変更というほど大胆なものではありません。後のベアファイター等と比べればささやかな変化です。
しかし、なにしろ顔が動くので嬉しいギミックです。


側面より

先に書いたように、頭部は角度を変えられます。側面から見ると、その差がより良く分かります。
頭を下げると、ドリルが前方を向きます。突撃時の姿勢です。

敵を発見後、突撃姿勢をとり全力の一撃を見舞う。敵にぶち当たりえぐった後、突き上げる為に再度顔を上げる…。
戦う姿を想像する際に、これはとても嬉しいギミックです。

ちなみに顔を倒す時、連動して首筋のメカニックもスライドします。

こういった気の利き具合もステキです。

全体的にはモチーフに忠実にデザインされていると思いますが、いくらか横幅を縮めているようにも見えます。

これは中型機として相応しいアレンジだと思います。また、コンパクトにした事が、より全身を重装甲でぎゅっと固めてる感じを出しているのも良いと思います。

全身を装甲の付き方は秀逸です。
特に脚部装甲は、サイの皮膚の"たるみ"を意識した造りになっていおり特筆です。モチーフ写真と比べると、その具合が良く分かると思います。

一方、よくよく見ると装甲の割合はあんがい少ない事にも気付きます。
コックピットや上面など守るべき所は強固に守っているものの、むき出し部分が多くあり、赤色が目立ちます。
「全身をくまなくガードする」のが帝国ゾイドの設計思想ですが、ブラックライモスは「重要区画に特化し集中防御する共和国ゾイドの設計思想」の影響も、かなりあるような気がします。
開発は自軍の考えがベースとしてあるのは当然ですが、どうしても敵国の影響も受けます。ブラックライモスのデザインは、そういった面で見ても面白いと思います。


フェイス

頭部デザインは、モチーフを見事に再現した素晴らしい仕上がりです。
角はドリルに、耳はレーダーになっています。これらはモチーフのラインから導かれた装備です。
これに加え、独自のラインを描いた装備として両側にチークガードおよび接近戦用ビーム砲があります。
頭部は装備が満載されています。

鼻が大きいのも特徴的ですが、これが大馬力で力強い感じを出しているように感じます。
装備満載でパワフルさを前面に出したデザイン。大好きです。

面構成がこのクラスとしては非常に複雑で、どちらかというと大型ゾイドのデザインに近い気もします。
中~小型ゾイドの頭部デザインは、もう少し単純な構成である事が多いです。
しかしこのクラスとしては最強を誇るブラックライモスなので、これで良いと思います。

頭部は、もちろんコックピットになっています。ハッチを開くと中にパイロットが入っています。

重装甲とはいえ頭からぶち当たるゾイドです。乗り手にはかなりの度胸が必要な気がします。

ちなみに、口は開かず閉じた状態で完全固定となっています。Hiユニット級としてはなかなか珍しい部類です。
とはいえ、サイなので口は小さいです。開かなくてもまぁいいかなという気がします。

ブラックライモスは二人乗りで、頭部以外にもコックピットがあります。それは背中です。

背中にはキャノピーがあります。帝国機でキャノピーを標準採用しているのはブラックライモスが唯一です。
しかし、そのデザインはバブルキャノピーで共和国側のデザインとは一線を画します。
また、開き方も特徴的で、キャノピーが開くのではなく装甲ごとがばっと開くようになっています。

このような明確な差がある為、両軍のデザイン伝統を崩した印象はほとんどありません。

背中のコックピットには、小型ビークルがあります。
4基のリフトエンジンがあり、浮く事に特化したデザインに見えます。
背中のパイロットは、これにより飛行しレーダーだけでは不十分な範囲を直接偵察します。

ブラックライモスは、レッドホーンの後継機を狙って開発された機体です。
レッドホーンもまた偵察用ビークルを持っていました。同様の装備を持っているというのは設定とリンクする素晴らしい事です。

ところで、背中のパイロットは偵察時に働くのは分かりますが、通常時はどうしているんだろうというのが疑問です。
これに関しては、火器の多いブラックライモスなので、その制御を担っているのかなと思います。
つまりアイアンコングが操縦と火器管制を分ける事で戦闘力を向上させたように、ブラックライモスもそうなっているのかなと思います。

「レッドホーンの後継機として開発されているので、構造や操縦も大型ゾイドに近いものに仕上がっている」
このように考えると、ますますブラックライモスが魅力的に見えてきます。


突撃機

ブラックライモスは突撃機です。
その視点で見ると、デザイン的な力がもう一つ見えてきます。

側面から見た時、あんがいブラックライモスは装甲の割合が低いと書きました。しかし正面から見た場合、真っ黒。正面は強固な装甲に覆われています。
これは、ブラックライモスが何よりも「突撃」という戦法に重きを置いている証でしょう。
真正面から突撃し、敵の攻撃を受けても強固な装甲で跳ね返しながら続行。そして遂に敵に達し必殺のドリルをぶち込む。

もしかするとモルガのように前面装甲はひときわ分厚いのかも。その重量が重すぎた為、側面など被弾率の低い場所にまで装甲を施せなったのかも。
そのような結果、今の装甲バランスに落ち着いたのかもしれない。そんな風にも思います。
このように妄想すると、ブラックライモスの魅力がより伝わってきます。

ドリルはデザインも魅力的です。
従来の突撃機…、レッドホーンはまさに角という感じでしたが、ブラックライモスは回転ドリルです。
「大型機は大質量でもって叩き潰せるが、重量で劣る中型機だと"技"を使う必要がある」という事かなと思います。
余談ですが、大型機で更に技まで併せ持ったものが後のマッドサンダーだと思います。
デザイン的にはドリルというよりリーマに見えますが、ともかく凝っていてカッコいいものです。

腹部には衝撃砲があり、脚部かかと位置にはブーストがあります。

これらは、突撃をより強める為のものでしょう。衝撃砲で敵の体勢を崩した所で全力の体当たり。そして足のブーストをふかし更に押し込む。
まさに突撃機と呼べるものです。

ただ、突撃以外の戦法にも長けています。
両脇には大型の電磁砲を備えており、砲戦にも対応しています。
電磁砲というとレッドホーンも装備している砲です。見た目はともかく構造的には発展型だと思います。
砲は仰角を変える事が出来ます。また左右に展開する事が出来ます。ただ旋回は出来ず、横に撃つ事は不可能です。

デザインは少し気になります。

大きさやシルエットは良いと思いますが、ディティールが少し大雑把で大味な感じがします。特に基部付近は緻密さに欠けます。
魅力的なデザインは緩急の付いたものだと思います。残念ながらブラックライモスの電磁砲はそういった風には感じません。
砲デザインとしては丸っこい感じが強すぎるのも難点です。
先端に丸い造形があるのも謎です。砲弾が発射される瞬間を捉えた造形なのかなと思いますが、素直に穴の方が嬉しかったという感想です。
同時期に登場したシーパンツァーの砲にも同じ事が言えます。

両者の砲デザインはかなり似ています。デザイナーが同じなのかなと思います。ブラックライモスで、唯一感じる難点です。
ただ、大きさやシルエットは非常に良いバランスになっています。なので、致命的ではありません。
この弱点を考慮してもなお、ブラックライモスは傑作だと思います。

背中にはレーダーとミサイルもあります。強力な対空装備です。

レーダー・ミサイル共にシャープな仕上がりでカッコいいです。
ミサイルは仰角をいじる事が出来ます。後方を向けて取り付けるのが標準ですが、いったん取り外せば前に向ける事も出来ます。
ただ仰角は変更できますが、基部は固定されており旋回は出来ません。出来れば、バリゲーターのような仰角も旋回も出来るタイプだと嬉しかったなと思います。
ただ、実際のブラックライモスはおそらく「回る」ものと思います。なので、自由自在だと想像しています。

突撃・砲戦・対空に優れたブラックライモスは、まさに万能機です。
この万能さを中型サイズの中で全く破綻なく仕上げている事は、改めて驚きです。


第3回X-DAYアイデアコンテスト受賞作

ブラックライモスは、第3回ゾイドデザインコンテストの最優秀賞をキット化したもので、その点も特筆事項です。
この傑作機がユーザー発案で始まっているのは驚きです。


応募時点でののクオリティがかなり高いです。
商品化に際しては、イメージをほとんど変えないように注意が払われていると感じます。
全体的なイメージも的確に再現されていますが、細部のディティールもかなり再現されています。ただ、ドリルだけは大きくアレンジされています。

元のデザインは、完成形よりも更に武器を満載しています。あるいは、このイラストを目指してブラックライモスに武器増設を試みても面白いと思います。

X-DAYデザインコンテストというと、余談ですがもう一つ面白い事があります。
コンテスト対象は、第1回がバリゲーター、第2回はカノントータスです。
ゾイドの箱裏は、87年いっぱいまでは活躍想像図として戦闘のイラストが掲載されている事が多くありました。
その様子ですが…、

カノントータスを倒すブラックライモスになっています。
第3回大賞作が第2回作を倒す姿。狙ったわけではなく偶然だとは思いますが、ちょっと面白いです。


ギミック

ゼンマイを巻くと元気に動きます。ギミックも優秀です。
連動ギミックとしては、ドリルを回しながら、両脇の電磁砲の仰角を変えながら歩行します。

必殺のドリルが回るのはさすがです。また、この動きは少し補足する必要があります。
ドリルの回転は、顔を上げた状態では連動しません。下げた状態でのみ連動します。
これは裏面を見るとよく分かります。

顔を上げた状態だとギアがかみ合っておらず空転する。しかし下げた状態だとかみ合って連動するのです。
メインターゲットである小学生でも無理なく理解できるものになっており、とても良い構造だと思います。
デザイン的にも、顔を下げた状態はドリルが前方を向くものです。つまり突撃状態。
その状態でのみ回転するというのはよく出来ています。

電磁砲の動きは足と連動した単純なものです。
残念なのは「左右別々に」動く事です。「左右そろって」同じ角度になっていれば見栄えが更に上がっていたと思います。
それでも、大型砲が動くので見応えはなかなか高いです。
また、電磁砲は手動ギミックもあります。砲の軸に二重関節が設けられてあり、大きく動きます。
閉じた状態です。これを起立させたり、横に展開したり出来ます。
左右に展開すると表情がかなり変わります。岩場に隠れ砲だけ出して撃つ、なんていう事も出来そうです。

手動ギミックは、かなり充実しています。
頭部コックピット開閉、耳の角度変更、背中装甲の展開、ビークルの着脱、電磁砲の展開、ミサイルの仰角変更です。
ギミックの数も多いですが、背中装甲や電磁砲のように大胆なものがあるのは大きな特徴です。
耳のレーダーが角度を変更でき、索敵シーンを細かく想像出来る。ミサイルの射角を変え狙いを定められる。
こういった定番があるのも良い出来です。満足度はかなりのものがあります。

総じて、ギミックは連動・手動共に非常に優秀です。デザイン的な傑作ぶりは今まで書いた通りですが、ギミック的にも傑作だと思います。


戦歴

戦歴は魅せるものがあります。
このクラスとしては最強のブラックライモスですが、活躍もやはり凄いです。そして大喰いの印象があります。

ゾイドバトルストーリーでは、分厚い防御陣地の壁を崩しゴドスを吹き飛ばすシーンが有名だと思います。
残念ながら、ゾイドバトルストーリーでは目だった戦果はそれ位です。

しかし、学年誌では特筆級の戦果を挙げています。
やはり突撃という最大の武器で立ち回り、あのウルトラザウルスやゴジュラスに挑んでいます。そして見事、脚部装甲に大穴を開けたりしています。

バトルストーリーだけでなく、漫画でも大活躍しています。

最高速度は160km/hと、重量級の機体してはトップクラスです。
分厚い装甲を軽々突き破るドリル。それを持ったブラックライモスは、低機動・鈍足機であれば超大型相手でも十分に立ち回れたのでしょう。

一方、天敵は高機動のシールドライガーだったように描かれています。

さすがに高機動機が相手ではドリルも当たらない。横に撃てないので電磁砲もあまり役に立たない。ミサイルでは大型相手に威力が足りない。
ぶっ飛ばされたブラックライモスからは、「相性」という言葉を強く感じます。

その後、ベアファイターが出現した後は、ライバルとしてよく戦っています。
また、第二次中央大陸戦争後期には、若干のアップデートが行われNew Typeとして再就役しています。


傑作戦車 ブラックライモス

まさに傑作機と呼ぶに相応しいゾイドです。デザイン・ギミック・設定。いずれも高レベルに仕上がっており、改めてその完成度の高さに驚きます。
そしてもう一つ、要注目な所があります。

ブラックライモスの各部デザインは、後の共和国ゾイドに受け継がれています。
コックピットハッチ部分は、ディバイソンに酷似しています。

ディバイソンは共和国で始めて装甲式コックピットを持った機体ですが、その構造は明らかにブラックライモスが意識されています。
天板がある事、前に向けて開く事、目がハッチ側に持ち上がる事など、見れば見るほど瓜二つです。
また、ドリルのデザインは、マッドサンダーのマグネーザーに似ています。全体的なデザインはカノンフォートにも似ます。

これは、ブラックライモスが敵国にも影響を与えるほどの傑作機だったという事でしょう。
あるいは、実は「てれびくん」に興味深い資料があったりします。


アタックゾイドが帝国新型機が開発されている研究所に忍び込み、試作中の3機のブラックライモスを破壊してしまった。
「これによりブラックライモスの完成は1年も遅れてしまった」という事です。
てれびくんの記事では火に包まれたとありますが、実際は出来る限りデータを収集し持ち帰っていたのかなと思います(さすがに鹵獲は無理だと思います)。
そのデータが後のディバイソン初め共和国ゾイドに活かされている…と考えてみても面白いです。

それにしても、1年も完成が遅れたというのは大きな不幸です。
ブラックライモスの参戦は、D-DAYから1年後のZAC2042年。つまり、本来はD-DAY上陸作戦直後に完成していた筈の機体…。
上陸戦線直後にブラックライモスが参戦していたら、帝国軍の勢いは更に強まっていたと思います。なにしろゴジュラスやウルトラザウルスさえ苦戦する相手です。
シールドライガーやコマンドウルフの完成はまだいくらか先。現在、対抗できる機体は皆無。
もしかして、共和国首都をそのまま陥落させ完勝していたかも…。その可能性は大いにあったと思います。そう思うと何とも無念です。

しかし、ブラックライモスが傑作機である事は微塵も揺るぎません。
別の角度から考えると、データが持ち出され投入のタイミングが1年遅れたにも関らず、それでも大活躍しているというのは凄い事です。

個人的な思い出ですが、子供の頃から熱狂的な共和国ファンでした。そんな中、ブラックライモスは特に強敵と感じていた記憶があります。
当時、アロザウラーを持っていました。アロザウラーはブラックライモスより後に出た機体で、格闘戦を得意とする"小型ゴジュラス"です。
お気に入りのゾイドでした。しかしそんなアロザウラーでも敵わないのがブラックライモスでした。
何故!こっちの方が新型なのに!
でも…、確かに強そうだなぁ…と思っていました。

悔しいけど強い。認めざるを得ない。考えれば考えるほどブラックライモスの凄さばかりが思いつきます。
まさに傑作ゾイド、あっぱれなゾイドです。


バリエーションモデル

 メカ生体ゾイド ブラックライモスNEW

 機獣新世紀ゾイド ブラックライモス

 機獣新世紀ゾイド メタルライモス

 ゾイドジェネシス ヘビーライモス


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