メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 戦闘機械獣 ウオディック<WARDICK>

■ウオディック(魚型) データベース■

 発売年月 1987年2月  発売当時価格 1000円  動力 Hiゼンマイ

 型式番号 EHI-1

 スペック 全長17.0m 全高4.2m 重量32.2t 水中最高速度65.0ノット 陸上最高速度70.0km/h 乗員1名

 主な武装
  音波砲(ソニックブラスター) 中口径ビーム砲×2 対艦ミサイルランチャー

 特徴
  ウオディックは帝国の誇る初の魚型ゾイドで全身が厚い装甲で覆われており敵からの攻撃や深海での水圧に耐えられるようになっている。
  水中における活動能力は帝国、共和国の両軍中で最も優れており現時点において水中戦では無敵であるといえよう。
  背部に装備している強力なビーム砲は水上や海岸線にいる敵への攻撃に使用し、口の中に装備された音波砲は水中での戦闘に威力を発揮する。
  短時間での条件が許せば陸上での活動も可能ではあるが戦闘能力がいちじるしく低下することは避けられない。


前後より

帝国軍の魚型ゾイドにして高性能潜水艦です。両軍を通じて初めてHiユニットを搭載したゾイドでもあります。

Hiユニットとは内部のゼンマイの事です。
旧来のゼンマイゾイドは、マイクロゼンマイと呼ばれる小型ゼンマイを搭載していました。
しかし次第に大型化・ギミックの複雑化が進むゼンマイゾイドをみるに、次第にパワー不足になるであろう事は明らか。
そこで、大型化しトルクを大幅に上げたゼンマイが開発されました。これがHiユニットです。

なおマイクロゼンマイは玩具業界に多く普及していた既製品ですが、Hiユニットはトミーが独自に開発したニューゼンマイです。
それだけにトミーも自信を満っていたようで、このユニットを搭載したゾイドの箱裏には、Hiユニットのデータが大きな面積を使用し詳細に語られています。

さて先に書いた通り、Hiユニットを搭載した最初のゾイドです。
しかし、デザイン的には従来機と比べ大きな変化の無いものになっており、カラーリングも銀と赤であり、従来機と同じパターンです。
新ユニットを搭載したにしては、保守的に纏めてあるなと思います。
しかしそれはまた、規律を重んじる帝国の風潮や、「復活した帝国軍が再び共和国に挑む」という構図を強烈に印象づけていると思います。
Hiユニット搭載と共にデザインをガラッと変え、またカラーリングもどんどん個性化させていった共和国ゾイドと比べて非常に対照的です。

ただ唯一、赤の色合いは旧来機がゼネバスレットと呼ばれる暗い赤を使用していたのに対し、朱色に近い鮮やかな赤を使用しています。
これはディメトロドン、シーパンツァー、デスザウラーとも共通した色であり、ゼネバスの逆襲の中心を果たした機体の特徴として記憶すべき点だと思います。


側面より

カラーリングが銀・赤の帝国旧来機と同じカラーパターンであるとは先に書きましたが、このカラーを実在する地球の艦船と比べてみると非常に面白いです。
地球の軍艦は、基本的に「喫水線から上は灰色」「喫水線から下は赤」で塗装されるのが通例です。

画像は、旧日本海軍潜水艦“伊-53”

ウオディックのカラーと酷似しています。
もちろんこの一致は偶然ですが、実在する艦艇と潜水艦ゾイド・ウオディックが同じカラーであるというのは、非常に面白い事だと思います。

ちなみに赤い塗料はサビ止めに効果がある色と言われており、喫水線以下が赤で塗装されているのは、海水で錆びないようにする為です。
また、旧軍の軍艦では一部、赤ではなく緑が採用されていたという説もあります。
緑の塗料は他の色より毒性が高く、係留時に貝類が船底に付着するのを予防出来たという事です。
(港に数週間も係留すれば、貝類が大量に取り付いて船速が落ちるなどの影響が出る)

緑と言えば、もちろん暗黒軍の色。完全な偶然ですが面白いです。
ウオディックは最初に出たハイパワーユニット級ゾイドであり、しかも最後までリニューアルされる事はありませんでした。
個人的には、こういった実在兵器のカラーリングを知るに付け、暗黒軍参戦時にダーク・ホーンのようにリニューアルカラーされなかったのが惜しいなと思います。

かなり後年、2008年になって、ついに暗黒軍仕様カラーのウオディックは発売されています。
ただ上のような思いからすれば、ややズレたカラーになっていたというのが感想でした。


フェイス

ウオディックは顔つきは大好きです。
いかにもウオという感じの顔をしている所に加え、潜水艦型ゾイドとして相応しい、いかにも耐圧性に優れていそうなモールドの入り方が秀逸です。
特にコックピットハッチに入ったマイナスモールドは素晴らしい効果を出しています。
唯一欠点を言うなら、ゲート位置はもう一考して欲しかった所でもあります。銀色のパーツはゲート処理がかなり困難なので、目立つ位置に来ているのは少し気になります。

口を開けた時の表情も良く出来ていると思います。
口の中には、音波砲の砲身が見えます。
ゾイドで口内に武器を持つゾイドは少なくありませんが、ウオディックほど分かりやすく砲身が造形されているゾイドは、メカ生体期においては珍しい部類だと思います。

また、これは変な見方だと思いますが、目の斜め下にある丸モールドを目と捉えて頭部を見ると深海魚のような風貌にも見え、面白いと思います。

コックピットハッチはもちろん手動で開きます。中にはおなじみの銀色兵士が乗っています。

ウオディックは従来の常識を塗り替える画期的潜水艦ですが、その高性能潜水艦を操縦するのは、この頭部パイロットの1名のみ。
この点もなかなか特筆事項ではないかと思います。
また、孤独な深海でたった一人戦うウオディック乗りを思うと、様々なドラマが想像出来そうな気もします。


魚型ゾイド

ウオディックのモチーフは、「魚」と記載されています。
しかしよくよく考えると「魚」というのは非常に曖昧な表現です。実際、どの魚なのだろうと考えると、これがなかなか面白いです。

全体的な造形はいかにも魚ですが、ヒレの付き方が特徴的です。
魚でありながら陸上生物を思わせるような付き方になっており、かなり違和感を覚えます。

ただ、このような形をした魚は古代に生息していました。古代魚ユーステノプテロンです。
ユーステノプテロンは、まだ陸上には昆虫くらいしか居なかった時代の魚で、非常に発達したヒレを持っているのが特徴でした。
そのヒレは、短時間なら陸上でも活動できる程、強力なものでした。時として陸上に上がり、昆虫などを捉えていたといいます。

それまで水の中にしか居なかった動物が陸上進出を果たすきっかけとなったのがユーステノプテロンであり、ここから徐々に陸上動物が進化していったと考えられています。
ともかく、ユーステノプテロンの特徴を見ると、まさにウオディックのそれに近いように思えます。

ユーステノプテロンの特徴は先に記しましたが、造形的にはもう一つのモチーフも思いつきます。
ウオディックの装甲を見ると、ガッチリと固めた前部とほとんど装甲の無い後部で構成されており、よくよく考えればずいぶん極端な集中防御を採用したものだなと思います。

実はこのような特徴を持った魚も古代に生息しており、「甲冑魚」と呼ばれる魚がそれです。
甲冑魚は頭部を発達した骨で覆っており非常に強固な防御力を持ちました。
反面、頭部以外は軟骨で出来ており、やわらか。非常に両極端な存在でもありました。
最強の防御力を持つ頭と全く無防備な後部を持つアンバランスな魚で、このような形式は進化の過渡期ならではのものと言えます。

上の画像は甲冑魚・セファラスピス。

頭部だけをガッチリ固めたウオディックの装甲を見ると、まさに甲冑魚が連想されます。
ただ甲冑魚のヒレは、ウオディックのようではなく、普通の魚に近い形式になっています。

以上のような事から推測し、ウオディックのモチーフは、古代魚から幾つかの部分を繋ぎ合わせて出来た魚なのだと思います。


装備

様々な古代魚類をつなぎ合わせて造形されたウオディックですが、もちろん兵器でもあるので、強力な装備を多く持ちます。
その中でも、背中周りは特徴的であり魅力的です。

両サイドに中口径ビーム砲があり、中央には対艦ミサイルランチャーがあります。
巨大な装備であり、戦闘用メカである主張はたっぷりです。
しかし魚であるイメージを崩さないギリギリの大きさ・配置に留められており、そのバランス感覚は秀逸だと思います。
安易に巨大にしては元の生物のイメージが崩れるし、小さく留めすぎてはそれはそれで戦闘兵器としての主張に欠ける。
その点、ウオディックのバランスは理想的だと思います。

ただ設定的には少し疑問もあります。
両サイドの中口径ビーム砲ですが、これはバラストタンクか対艦用の大型魚雷発射管にした方が素直で良かったんじゃないかなと思います。
全然「中口径」であるようには見えないと思います。

キットとしては、この中には発泡スチロールを入れるように組み立て指示があります。
その理由はギミックと関連します。


ギミック

ゼンマイを巻くと元気に動きます。
連動ギミックとしては、尾ビレを大きく振りながら前進します。
こう書くと新型のHiゼンマイユニットを使用したにしてはずいぶん寂しい気もします。しかしウオディックの真骨頂は地上でなく水にあります。

先に書いたように背中の中口径ビーム砲内に発泡スチロールが入っており、これにより水に浮きます。
(このような構造になっているからこそ、余計にこの装備の設定はバラストタンクで良かったのではと思うものでもあります)

浮かべた状態でゼンマイを巻いて動かすと、みごと泳いでくれます。
アクアドン、フロレシオス、シンカーと、従来も水上/水中で運用される設定のゾイドは、キットも水の上に浮かべて遊べる仕様になっていました。
これは動く事にこだわったゾイドだからこその仕様。ウオディックでも、みごとその伝統を受け継いでいるのです。

また、先に出した3機よりも進化が見られると思います。
アクアドンは本物のカエルのように泳ぎますが、前足が無いとか全体のプロポーションがモチーフに忠実とは言い難いなどの問題があったと思います。
フロレシオスはプロポーションはモチーフに忠実ですが、ヒレではなく尾で泳ぐという点ではモチーフから逸脱しています。
シンカーもプロポーションはモチーフに忠実ですが、スクリューにより泳ぎます。
ウオディックは、プロポーションがモチーフに忠実なうえ、実際の魚と同じように尾ヒレを動かす事で前進します。
泳ぐゾイドとしては、最も理想的な仕上がりではないかと思います。

手動ギミックとしては、コックピットの開閉と口の開閉位で、正直少なめなのは否めないと思います。
ただ先に書いたように水における動きが特出しているので、総合的に見て、やはりゾイドの名に恥じぬギミックを持ったゾイドであると思います。

ウオディックは、風呂に浮かべて遊んだ思い出を持つ方も多いと聞きます。
そういった意味では、非常に特殊で特別な、非常に遊びがいのある面白いキットだと思います。
ただ風呂など実際に水で遊んだ後は綺麗に乾かさないと内部が錆びてしまうという弱点も当然あります。
Hiゼンマイは従来のマイクロゼンマイよりも大型なので、乾かすのは少し大変です。


戦歴

ウオディックの戦歴は、なかなか評価の分かれるところだと思います。
まず誰しもが第一に思いつくのは、D-DAY上陸作戦における鮮やかな活躍でしょう。
巨艦、無敵のウルトラザウルスを魚雷の一撃で撃破した姿は衝撃的でした。
かつてアイアンコングがあと一歩までウルトラを追い詰めたことはありました。しかし、最終的には敗北。
いまだかつて、ウルトラを完全な戦闘不能に追い込んだゾイドは皆無。
そのウルトラが明らかにサイズの小さなゾイドにやられる。

テレビCMやゾイドバトルビデオの映像も忘れられません。

ホエールカイザーから射出され、不気味に水中を泳ぎ中央大陸への上陸を果たす姿は、D-DAY…、ゼネバスの逆襲を強烈に印象付けました。
まさに、電撃的登場。後のデッド・ボーダーにも劣らぬインパクトだったと思います。

しかしその後があまり良くないものでもあります。 港に係留中のところを攻撃され全滅したりと、目立った戦果を残していないのは寂しいと思います。
また後年、共和国は対ウオディック用の追尾型水中魚雷の開発に成功しています。
これを装備したプテラス、またそのプテラスを搭載した空母型ウルトラザウルスなどの登場により、はやばやその優位性は崩れてしまっています。

暗黒大陸編でもさしたる活躍を見せておらず、いやむしろ、共和国水上部隊はもはやウオディックなど端から気にかけていない風でもあります。
初登場の華々しさから比べ、この扱い。実に哀愁を感じます。
同時に、それはゾイドや兵器の開発競争の激しさを何より物語っていると思います。

一見華々しいイメージを持つウオディックの戦歴ですが、こういった点で評価の分かれるところだと思います。
しかし、そうはいっても高性能潜水艦である事に変わりはなく、まさか全くの役立たずになったわけではないと思います。
完全に対潜装備を施した大部隊相手には厳しいが、輸送部隊など小規模部隊には十分な脅威たり得る…。

絶対的な優位が揺らいだ後も、様々な海に潜み地道な通商破壊など続けた等想像すると非常に面白いと思います。


深海攻撃メカ ウオディック

魚型の戦闘兵器というのは非常にマニアックです。
海の底に潜み、敵に気づかれないように忍び寄る。そして必殺の一撃…。
その戦い方も「待ち」が多く、ゴジュラスやサーベルタイガーのような豪快な白兵戦を得意とするゾイドが持つ派手さは無いように思えます。
しかしだからこそ、直球でカッコいい機体では無いかもしれませんが、ゾイド世界を盛り上げる傑作機なのだと思います。

新開発したHiユニットを搭載した第一号ゾイドでありながら、このマニアックさ。
安易に安牌を踏まず、このキットをHiユニット搭載第一号としてリリースしてしまった事こそ、メカ生体ゾイドの魅力を何より物語っているように思えます。


バリエーションモデル

 機獣新世紀ゾイド ウオディック

 暗黒仕様 ウオディック


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