メカ生体ゾイド ゼネバス帝国軍 特殊部隊軽戦闘型 デスピオン<DEATHPION>

■デスピオン(サソリ型) データベース■

 発売年月 1987年7月  発売当時価格 3500円  動力 モーター

 型式番号 E24-01

 スペック 全長7.4m 全高4.9m 全幅4.4m 重量7.2t 最高速度120km/h 乗員1人

 主な武装
  パルスビーム砲 接近戦用機銃 電磁波発生アーム(×2) 発煙弾発射筒(×6) 複合センサー

 特徴
  帝国次期ゾイドの前進部隊として攻撃、護衛、偵察力にすぐれた軽戦闘機械獣が特殊部隊として編成されていた。
  森林、砂漠、山岳地帯、どのような不整地においても作戦行動可能なサソリ型重戦メカ。
  地をはう独特のスタイルは敵に発見されにくく、被弾経始の点からも好ましい。そして8本の脚はすぐれた高速機動性を生み出す。
  尾先端部に装備されたビーム砲は高性能の探知装置と連動し、抜群の命中精度を誇っている。
  防御面においても最新の複合装甲を使用。
  戦闘時にはコックピット部が完全に密閉されるシステムになっており、その独特のスタイルとあいまって徹底した生存性への対策が盛り込まれている。


前後より

24ゾイド第一弾、デスピオンです。特徴的な多脚が何とも魅力的です。

従来、ゾイドキットは1/72スケールで再現されていました。
しかし、スケールを1/24に変更した特殊シリーズが誕生しました。それが24ゾイドです。

発売されたのは87年。ゾイドがスタートして4年目にして誕生した新機軸です。
メカ生体ゾイドがスタートしたのは83年。以来、年を追う毎に人気は上昇し、既に定番アイテム化していました。
ビガザウロ、ゴジュラス、アイアンコング、ウルトラザウルス。毎年ヒットゾイドが誕生する中、更なる躍進を求めていた事が伺えます。

「既に定番アイテムと化していたゾイドに、更なる躍進を求めた」という事で、24ゾイドは、従来のメインターゲットよりも、少し年齢の高い層を狙って作られています。
24ゾイドのデザインには、モデラー/デザイナーとして人気の高い横山宏氏が起用されています。
氏が生み出した最も有名なものはSF3D(マシーネンクリーガー)でしょうか。その他にも映画・ゲームのメカデザインや小説の挿絵を描かれていたりもします。
いずれも共通するのは、熱狂的なファンが多数居る事。
そんな氏がデザインを担当したゾイドという事で、模型ファンからも一定の注目が集まったシリーズでした。


24ゾイド

スケールが従来ゾイドと違い、1/24な事は先に書いた通りです。
キットはかなりの大きさを誇ります。多脚のインパクトと相まって、その印象はかなり強烈です。

最も、スケールの違いから大型キットになっているだけで、設定上の実寸で合わせると、かなりの小型機です。

せいぜい、アタックゾイドよりやや大きい位です。

アタックゾイドは、その小ささが魅力でした。
ゾイドはリアル系の戦記。それを盛り上げる超小型ゾイドというのは戦場を見事に盛り上げるポジションでした。
これにより、どれだけリアル感が増したことか。しかし極小キットという事で、造り込みは大きさ相応といった感じでした。

24ゾイドは、設定上アタックゾイドと同程度の大きさです。しかし、キットのスケールを大きくする事で、細部まで入念に造り込まれたものに仕上がっています。

設定上の大きさで画像サイズを調整し、並べています。

その差は歴然。アタックゾイド以上に、小型ゾイドのリアルさを感じられるものになっています。
しかし、スケールが違うという事は、当然、通常ゾイドとは並べ辛い弱点があります。
そういった事を加味すると、アタックゾイドとどちらが良いかは評価の分かれるところでしょう。

個人的にはどちらも甲乙付けがたい魅力があると感じます。
ただ、世間的な評価としては1/24というスケールは受け入れがたかったようで、ゾイドとしてはやや異端なシリーズとして扱われています。
定番アイテムと呼ばれるほど浸透し、ラインナップもどんどん増えていたゾイド。
それら既存キットと「並べる」事をバッサリ捨ててしまったシリーズなので、そういった評価になるのは仕方ないのかもしれません。

願わくば、キットに「1/72スケールのミニキットも同梱されている」ような気の利いた仕様があれば良かったのですが。
例えばガンプラには、艦艇など大スケールキットにはオマケで同スケールのモビルスーツが数体付属していたりします。
せいぜい大きさ相応の出来でしかないものですが、それでも「並べられる」喜びが大きいものです。
もし、24ゾイドのキットに、1/72スケール版がオマケで入っていたら、世間的な評価もかなり違っていたのかなと思います。


24ゾイド兵士

24ゾイドには、専用の兵士フィギュアが付属します。
スケールの関係で、もちろん通常ゾイドより大型のフィギュアになっています。

スーツやヘルメットのデザインは、「特殊部隊兵士」を強くイメージしたものになっています。
スーツの色は、成型色+部分塗装で再現されています。ゾイドキットで部分塗装が行われた最初のものです。

このフィギュアは、単に大きくて色が付いているだけではありません。各部が可動します。
首、肩、ひじ、手首、足付け根、腰、膝が可動します。実に12箇所もの可動です。

様々なポーズを付けられる他、ゾイドと組み合わせても楽しめます。
この可動。この当時のフィギュアとしては、抜群に出来の良いものです。

後の24ゾイドには、これの構造を流用したフィギュアが付属する事になります。それだけ、出来が良かったという事でしょう。
1/24というスケールを活かし、色んなものと絡めるとより面白いです。

これは、1/24スケールのバイクに、ショットウォーカーの兵士を乗せています。先に書いたように、構造は同一です。
難なくバイクに乗せている事からも、可動の良さが伝わると思います。

ただ、あえて難点を言うなら足首が動かない事です。
その為、接地性に関しては劣悪です。様々なポーズを取れるのは嬉しいですが、自立させようと思うと苦労します。
この当時のフィギュアに求めるものとしては酷ですが、ここはもう少し考えて欲しかったです。

とはいえ、それを差し引いても素晴らしい出来のフィギュアです。


側面より

色んな要素のある24シリーズですが、デザインは最高です。モチーフの特徴を的確に再現しつつ、見事なメカに仕上がっています。
帝国ゾイドといえば美しい曲面装甲が特徴ですが、デスピオンの装甲も非常に美しいラインを描いています。もはや芸術的と言って過言でない域です。
帝国らしいデザインを推し進めていると同時に、いかにも被弾経始に優れていそうな実用性もイメージさせます。

サソリ型ゾイドといえばガイサックがまず思い浮かびますが、そちらと比較しても面白いです。

ゴチャゴチャした造りのガイサックと比べ、両軍のデザイン的な方向性の違いがよく分かります。

また、体形を比べると面白いです。デスピオンは胴体が非常に平べったく、また脚が低くなっています。よりサソリに近いフォルムに仕上がっています。
後発のサソリ型として、よりモチーフに近づいていると言えます。
(最も、ガイサックは蜘蛛型グランチュラからの改造でサソリ型にしたという経緯は理解すべきですが)

体形の他にも、クローに注目したい所です。ガイサックのクローが細い箸のような形になっているのに対し、デスピオンのクローは力強い万力のような形です。

この力強さはたまりません。また、ハサミ付近のメカニックのゴチャゴチャ感も素晴らしい仕上がりです。

ハサミ付近だけでなく、デスピオンのメカニックの造りは各部素晴らしい仕上がりです。
脚部の構造も見事な仕上がりです。
また、芸術的曲面を描く装甲も、局面に終始するだけでなく、リベットやモールドなどが的確に付いています。
装甲の隙間から見えるエネルギータンクやパイプなども見事です。それにより、リアル感ある仕上がりをしているのが素晴らしいです。


フェイス

頭部は、不気味な単眼をしています。
実際のサソリに近いかどうかはともかく、サソリらしい不気味さは満点です。
単眼の色は青です。青といえば共和国のイメージが強いですが、その色を帝国機が採用しているのは興味深いです。

下部には牙と接近戦用機銃があります。おそらく、どちらも対人用でしょう。
よく考えられた位置に付いていると言えます。

ほとんどのゾイドは頭部にコックピットを持ちますが、デスピオンは24ゾイドという特性上、頭部にはコックピットを持ちません。
背中の装甲を大胆に開く事ができます。この部分にパイロットが乗り込みます。

寝そべって操縦という、非常に特徴的な操縦を行います。
デスピオンの全高は低く、またこのコックピットは被弾経始に優れた装甲で覆われています。なので、生存率は極めて高いと設定されています。
ただ、生存率はともかく居住性は最悪に近い気がします。

生存性は良いにしても、あまり乗りたくない位置です。

実際、このような資料があったりします。

あまり万人向けではないのは確かなようです。
しかし、この改造機では生存率の大幅低下は避けられないでしょう。
フルに性能を発揮できる操縦性を取るか、それとも生存率を取るか。前線の兵士は大変そうです。


デザイン

デザインは、改めて隙のない見事な仕上がりをしていると思います。
武装も、小ぶりながら小気味良く配置されています。発煙弾発射筒や尾部先端のパルスビーム砲の配置などは特にニヤリとできるものです。

先に書いたように、24ゾイドのデザインには横山宏氏が起用されています。
「横山宏 Ma.Kスケッチブック」という画集には、デスピオンのデザインスケッチが多数収録されています。

キットで再現されている所、されていない所などあり、非常に興味深いです。同氏のコメントも付いており、そちらもかなり興味深いものになっています。

その特性上、24ゾイドの広告は学年誌よりもむしろホビージャパン等の模型誌での展開が多くなっているのも特徴です。

同時期のゾイドは、シールドライガーやデスザウラー。
学年誌では、これらのゾイドの広告が中心に多数掲載されています。その裏で模型誌へ積極展開していた24ゾイド。
(もちろん学年誌にもある程度載っていますが、割合の問題です)
そういった事情から24ゾイドを考えても面白いと思います。


ギミック

スケールが変わった24ゾイドですが、動力ギミックは健在です。
モーターゾイドなので、スイッチを入れると動き出します。ギミックは秀逸です。

連動ギミックは、腕を振り、ハサミを開閉させながら、尻尾を動かしながら、8本の足をそれぞれバラバラに動かしながら前進します。
やはり多脚のインパクトはすさまじく、これだけでも十分な見応えがあります。

アームの可動も、スタンダードなギミックながら非常に良い出来です。
先に書いたように、万力のようなデザインです。このハサミが圧潰させるように開閉するのは嬉しいギミックです。

尻尾は、各関節ごとでは動かず、付け根から角度が変わるのみです。
しかし、大型の尾部が大きく動くので、見ごたえは十分です。

手動ギミックは、コックピットの開閉と尾部先端のビーム砲の仰角/俯角をいじれる事です。
やや少なめですが、過不足なく良い出来です。

強いて惜しい点を探すなら、電飾ギミックが無い事だと思います。特徴的な単眼が光ったらさぞや魅力が倍加したと思います。その点は惜しいです。
また、尻尾の関節が固定なのも残念と言えば残念です。見た目上、いかにも動きそうな形をしていますが、ゴジュラスの尾部などと同じく完全固定で、キャップは飾り用です。


戦歴

戦歴は、なかなか華があります。
帝国24ゾイドを引き連れる部隊の中心機として華々しく登場しています。


超小型ながらゴドスなど重装甲SP級ゾイドを倒す活躍を見せ、共和国軍を大いに驚かせています。

アタックゾイドが、せいぜい攪乱するのが精一杯だったのに対し、ほぼ同サイズの24ゾイドは、状況によっては倒せる程の能力を秘めているのは大きな特徴です。
また、デスザウラー部隊の一員として有効に働くなど、他の24ゾイドともども使い勝手も非常に良いゾイドとして描かれています。

その後、共和国軍が対向して24ゾイド…特にメガトプロスを就役させると、苦戦する場面もみえ、その栄光の時代を終えています。
また、さらにその後ゴーレムが誕生した後は、帝国24ゾイドとしても中心から外れ、存在感を落としてゆく事になります。

それでも、第二次中央大陸戦争では最後まで活躍を続けており、名機である事は確かだと思います。


多脚戦車 デスピオン

異端なシリーズとされる24ゾイド、その第一弾ですが、個人的には大好きです。
デスピオンは、その24ゾイドの第一弾として相応しい素晴らしい完成度を誇っていると思います。

デザインもギミックも、またネーミングもオシャレです。
これで何故もっとヒットしなかったのか…。

残念な事に、当時の模型業界の空気としては「動くものは玩具」という一段低い目で見られていたのも確かです。
従来のメインターゲットよりも高い年齢層を狙ったのは、なかなか良い目の付け所だったと思います。
しかし、そういった空気の中で埋没していったのかもしれません。

しかし、傑作である事は間違いないと思います。
確かに1/72のゾイドと並べられないなど多くの弊害はありますが、それでも自信をもってお勧めできるゾイドだと思います。


バリエーションモデル

トイズドリームプロジェクト デスピオン

パンツァーティーア デスピオン


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