メカ生体ゾイド ガイロス暗黒軍 強行偵察型 ガル・タイガー<GUL TIGER>

■ガル・タイガー(トラ型) データベース■

 発売年月 1989年9月  発売当時価格 1300円  動力 モーター

 型式番号 DPZ-16

 スペック 全長16.5m 全高7.4m 全幅6.0m 重量75.0t 最高速度260km/h 乗員1名

 主な武装
  超小型荷電粒子砲 連装ビーム砲 パラライザー サイドガーダー(×4) ドップラーレーダー(×4) パワーコネクター

 特徴
  すさまじい攻撃力を持つ戦闘機械獣。
  多くの武器を持ち、背部に超小型化された荷電粒子砲を装え、強力な破壊力を発揮する。
  装甲も強化されており、パワーも大きく、肉弾戦も得意としている。前線で敵の情報を集め、様々な作戦を単独で行うことができる。
  敵を完全に破壊するまで攻撃をつづける脅威の戦闘メカである。戦闘総合力は通常35ZEPである。


前後より

暗黒軍の重武装高速ゾイド、ガル・タイガーです。
「メカ生体ゾイド末期の象徴、衰退の象徴」とされる事も多く、非常に評価の低い機体です。

キットは共和国軍キングライガーと同じタイミングで発売されました。バトルストーリーにも、両者は同時に登場しています。
暗黒大陸編で新たに登場したライガーとタイガー。両ゾイドからは、シールドライガーとサーベルタイガーを更新すべく誕生した思惑が伺えます。

暗黒軍高速ゾイドとしては、少し前にジーク・ドーベルが登場していました。しかし両機を比べると、性能や性格に若干の差があります。
ジーク・ドーベルは、最高速度が実に350km/hを誇り、それはシールドライガーより100km/hも速いというとんでもない超超高機動ゾイドでした。
同機は、高機動を最大の武器として暴れまわっています。
対して、ガル・タイガーは最高速度は260km/hに留まっており、従来機と大きく変らない程度に留まっています。
しかしその分、武装が非常に強力です。火力として"あの"荷電粒子砲を装備しています。
格闘戦も、重パワーな上に防御力も強い為、非常に強力なものになっています。パラライザー(麻酔銃)が装備されているのも、格闘戦で役に立ちそうです。

ジーク・ドーベルが機動力で次世代的な高速ゾイドならば、ガル・タイガーは「従来機以上の砲力・格闘力を持ちながら、機動力は落とさない」という意味で次世代的です。
敵側の機体ですが、シールドライガーMK-IIの発展型というような気もします。
シールドライガーMK-IIはノーマルに追加装備を加えて強化した機体だったので、砲力と引き換えにバランスと機動力の低下が避けられませんでした。
ガル・タイガーは最初から大型火器を持った高速機というコンセプトで開発されている。それゆえにバランスの良い機体に仕上げる事が出来たと考えても面白いと思います。


側面より

姿勢が非常に特徴的です。
肩が異様に盛り上がっており、相対的に顔を低く落としているように見えます。
脚は大きく曲がっており、特に後脚の曲げ具合は大きな角度になっています。腰の上げ具合、尾のうねりも特徴的です。
低く落とした頭、大きく曲げた脚、腰を上げ尾をうねらせる…。まさに敵に飛びかかる直前といった感じです。
非常に躍動的なポーズに仕上がっており、肉食動物特有の息遣い・迫力を感じます。

特徴的なポーズが付けられた理由は、ガル・タイガーのキット仕様から考える事が出来ます。
ガル・タイガーのキットは、脚に関節がありません。尾部も可動しません。首の位置も完全固定です。
そんな厳しい仕様の中で、今にも動き出しそうな迫力を表現ようとしたのでしょう。
可動が無い中で必死に動きや生物らしさを表現した…。ガル・タイガーのポーズからは非常に熱いものを感じます。
この点は、安定感のある素立ちポーズで造られたジーク・ドーベルと対照的です。

躍動的なポーズで造形するべきかニュートラルなポーズで造形するか。どちらが良いかはなかなか判断が難しい所です。
(最も良いのは、キットに関節がありどちらの表現もできるという事だとは思いますが)
ただ個人的には、ガル・タイガーの躍動的なポーズでの造形は大正解だったと思います。


フェイス コックピット

頭部は、トラっぽいといえばトラっぽい形ですが、少し鼻先が長いような気がします。
トラはもう少し丸顔です。ここまで鼻先が長いのとイヌ科のような印象も持ってしまいます。
ただ、こめかみ部分の3本スリットがトラの縞模様を連想させるという事もあり、全体的にはトラに見えるようになっていると思います。

目つきが非常にけわしいのも特徴です。ここまでにらみを利かせた鋭い目をしたゾイドは他にありません。
ポーズの躍動感に加えてこの目の表情。 やはりガル・タイガーは独特のゾイドです。

頭部にはコックピットもあります。コックピットハッチは後方に開き、中にはパイロットが1名入っています。

ガル・タイガーのパイロットは1名で、ここからすべての操作を行います。


サーベルタイガーと共に

キングライガーと共に、従来の高速機を更新する役割・目的をもって登場したゾイド。しかし残念ながら、それをするには至りませんでした。
正直、並べてみると、サーベルタイガーの方があらゆる面で優れていると感じます。
サーベルタイガーにはトラを模したデザインの中に、多数の武器、装甲、エアインテークやエンジン、パイプ等の各種ディティールなどがあります。
とにかく、様々な要素が高次元で組み合さったものでした。それゆえに、リアルなメカ生体として存在し得たと思います。
ガル・タイガーにはそれがありません。

ガル・タイガーのデザインは、バイクを模している事が伺えます。流麗なカウルの付き方などは高速ゾイドらしいスピード感もあり、悪くないと思います。
武器の配置も、大型の武器を持っている割にはボディとのシックリ感もあり、秀逸な配置だと思います。
しかし圧倒的にディティールが少ないのが問題です。
パネルラインやパイプ類などのディティールは申し訳程度にしか付いておらず、リアルメカ・ゾイドとしての評価は低くならざるを得ないと思います。

装甲のディティールの少なさは、特に際立っています。
武器類のディティールも少な目です。最低限の量はありますが、もう一歩造り込んで欲しいと思います。

決して悪くはないんですが、設定に対して造り込みが足りていないと思います。
特に背中の超小型荷電粒子砲は、"あの"荷電粒子砲をせいぜい中型ゾイドのガル・タイガーが積んだという事が衝撃的でした。
なので、作り込みはもっと過剰に行い、高出力の砲をむりやり搭載した感じを演出した方が良かったと思います。

超小型という割に砲口が非常に大きいですが、おそらく超小型というのは荷電粒子砲のメカニック全体を指した言葉でしょう。
デスザウラーは「空気中の荷電粒子を集めるオーロラインテークファン」「荷電粒子を光速まで加速させるシンクロトロンジェネレーター」「発射口」を持っています。
それは上半身のほとんどを荷電粒子砲のために使っているといっても過言ではない程、大掛かりなでした。
超小型荷電粒子砲は、このシステム全体を徹底して小型化し、ガル・タイガーに何とか搭載できるまでに縮小したものだと思います。

超小型化と一言で言っていますが、おそらく並大抵の苦労ではなかったと思います。
超小型荷電粒子砲のデザインは、そのような苦労やむりやり感を感じさせるゴチャメカであれば良かったと思います。
暗黒ゾイドは、初期においてパイプを多用する傾向がありました。
砲まわりに多数のパイプを配置すれば、造り込みが増えリアルさが増す上に、暗黒軍ゾイドらしさもアップしたのではないかと思います。

腰の連装ビーム砲は、基部の形状に疑問を感じます。意図がいまいち分からない形状になっていると思います。

バイクを模したデザインなど見るべき部分もありますが、煮詰めが足りていないというような印象です。
それも、ちょっとやそっとではなく圧倒的にまだまだ足りていない印象です。

キャップの使用法にも疑問を感じます。仕様数はわずか4。もうちょっと使っても良かったと思います。
また、仕様数が少ないのもどうか思いますが、それ以上にキャップ位置のデザイン処理に疑問を持ちます。
従来のゾイドは、キャップを付ける位置には「そこに付ける意味」を感じさせるようなデザインがありました。
ガル・タイガーのキャップ位置は、単に「穴を開けて付けただけ」といった感じです。

デザインに溶け込ませるような努力は感じられず、むしろカウルの流麗さを削ぎながら無神経に配置されており、キャップ軽視が感じられます。
キャップと言えばゾイドの大きな特徴。それを軽視したガル・タイガー。やはりここでも、ゾイドとしての評価は低くならざるを得ないと感じます。

ハードポイントの少なさも問題です。
ゾイドの良さはカスタマイズの簡易さでもあります。武器取り付け用の共通径ハードポイントが各所にあり、自由に武器を取り付け交換できるのは大きな魅力でした。
ハードポイントに武器を差し込む程度では大掛かりな改造とは言えないかもしれません。しかし少年が自分カスタム仕様の機体を想像するには十分なものでした。
ガル・タイガーのハードポイントは実に0。一つもありません。これでは改造もしにくく、遊びにくい機体と言わざるを得ません。

良い部分はあります。
煮詰めが圧倒的に足りていないものの、全体的なプロポーションやバランスは非常に良いと思います。
また、脚部はキット的な可動はないものの、「実物はここが動くんだろうな」という事が分かりやすいデザインになっており、そういった部分は評価出来ます。
ライジャーやバトルクーガーのような、この装甲形状では可動出来ないのでは… と思ってしまうような脚と比べると、雲泥の差です。

しかし全体的に見ると、やはり煮詰めが足りなかったのは否定しがたいです。プロポーション自体は良いと思うため、非常に残念に思います。
もしガル・タイガーがこの状態を完成とせず、前期・中期の頃のような激しい作り込みで完成していたなら…。非常に惜しい事です。
ifは禁物かもしれませんが、そういった妄想をせずには居れません。


カラーリング

造形は見るべきところもあると思いますが、カラーリングは擁護できない仕上がりです。
黄色・オレンジ・黒の三色で、戦闘兵器としてのリアルさがまるで感じされません。

黄色は、100歩譲れば砂漠戦用のカラーと言えなくもないと思いますが、オレンジ色はどう考えても戦闘兵器として場違いです。
オレンジはオレンジでも蛍光オレンジで、組む時にまぶしいと思うほどの鮮やかさです。
あるいは、非戦闘用のレースゾイドだったら、このカラーでも良いと思いますが。

ガル・タイガーの色は批判されがちで、その多くは黄色い色を指摘したものです。
しかし実は、黄色も悪いが蛍光オレンジこそが決定的に戦闘兵器らしさを損わしていると思います。
仮にこの部分が銀であれば、少しは落ち着いたカラーになると思います。

黄色という色はトラというモチーフに近づけたい思いからの選択でしょう。
しかしその結果、従来のゾイドが持っていた戦闘兵器らしいリアル感を全く捨ててしまったのは、やはり批判を避けられないものと思います。
黒と黄色の配色と言えば、アイアンコングMK-II(量)と似た配色でもあります。
どうしても黄色を使いたかったのであれば、コングのように、全身を黒・内部フレームは黄色というような使い方をすれば、まだしも良かったと思います。


ギミック

電動ゾイドなので、もちろんスイッチを入れると動きます。しかしギミックは最低限といった感じです。

連動ギミックとしては「口を開閉しながら前進」のみで、まさに最低レベルです。モーターを使いながらこれは酷いレベルです。
最もこれはガル・タイガーだけの事ではなく、同じモーターを使用したハウンドソルジャー、ジーク・ドーベル、キングライガーとも共通する弱点です。
その代り、背中に、グレードアップパーツ対応用の回転軸付きのコネクターを持っています。
しかしやはり、出来れば超小型荷電粒子砲を上下させるなり、ガル・タイガー特有のギミックも基本状態で入れておいて欲しかったとは思います。

手動ギミックも極めて少なめです。コックピットの開閉、背中の連装ビーム砲の可動のみです。
コックピットの開閉は、先に所で書いた通りです。
連装ビームは良好に動きます。360度全方位に旋回可能なうえ、仰角・俯角も大きく付ける事が出来ます。

そのほか、強いて言えば、尾を付け根から回す事が出来ます。

これをギミックと言っていいのかどうかは分かりませんが…。
実物は、尾自体がムチの様にしなり、動くのだと思います。尾の先はパラライザーが装備されているので、角度を変えて敵を狙い撃つ といった所でしょうか。

連装ビーム砲は良い動きですが、しかしそれほどインパクトのあるものではなく、ゾイドではよくあるものです。
手動ギミックも凡作以上のものではなく、やはり寂しさを感じます。

総じて、ギミックに関しては残念ながら最低ランクの機体だと思います。


戦歴

戦歴は、なかなか勇ましいものです。
ジーク・ドーベルはライジャーを率いて集団で戦う事が多かったですが、ガル・タイガーは単独で戦っている事が多く、特徴的です。
学年誌では、小三では登場と同時にシールドライガーMK-IIを撃ち抜き、新鋭高速ゾイドの力を見せています。
その後、ガンブラスターの砲撃を凄まじい瞬発力でかわすなど、かなりの大物として描かれています。

ここから読み取れるのは、ジーク・ドーベルよりも高速性能では劣るが、瞬発力に優れており急激な機動や加速性に優れているのではないかという事です。
ジャイロクラフターの恩恵かもしれませんが…。
ガル・タイガーはストーリーに登場したほぼ全てのシーンで、ジャイロクラフターを装備しています。従ってノーマルタイプの検証がしにくいのは歯がゆいところです。

その外、偵察用に改造されキングゴジュラスの開発施設に乗り込んだり、更にてれびくんでは宇宙用に改造されていたりもします。
初登場時だけでなく、その後も偵察や特殊任務で地道に登場しているから、なかなかの性能を持った使い勝手の良い機体だった事が伺えます。
残念だった事をあげるとすれば、ライバルであろうキングライガーとの対決がいまいちクローズアップされなかった事です。


重戦闘高速ゾイド ガル・タイガー

やはりゾイドとしては「メカ生体ゾイド末期の象徴、衰退の象徴」という評価もやむなし。厳しい評価をつけざるを得ない機体だと思います。
しかし秘めた可能性は高いと思います。
非常に惜しいゾイドだと思います。造り込み・煮詰めが圧倒的に不足しているゆえに散々な仕上がりになっていますが、プロポーションやバランスは特徴的であり良好です。
散々な批判をされるガル・タイガーであり、実際、否定しがたい低い完成度ではありますが、良い部分もあるだけに、最も「惜しい」と思うゾイドでもあります。

プロポーションは現状を維持しつつ各部のディティールを増やす。
武器類の造り込みも激しく。
キャップの使用法も今一度考える。
ハードポイントも設けカスタマイズに対応する。
カラーリングを戦闘兵器然としたものに。
ギミックも一つくらい特徴的なものを付ける。

なかなか大変ですが、それが出来た時、本当に素晴らしい機体に化けると思います。
良い部分はある機体なので、意思を引き継ぎ完成度を高めた機体が出る事に期待しています。


バリエーションモデル

ゾイドリバースセンチュリー ガルタイガーGC


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