メカ生体ゾイド ガイロス暗黒軍 高速格闘戦型 ジーク・ドーベル<ZEEK DOBER>

■ジークドーベル(ドーベルマン型) データベース■

 発売年月 1989年8月  発売当時価格 1300円  動力 モーター

 型式番号 DPZ-13

 スペック 全長:15.2m 全高:9.0mm 全幅:6.1m 重量:61t 最高速度:350km/h 乗員:1人

 主な武装
  ヘルブレイザー(×2) フォトン粒子砲(×2) パルスガン 高機動ブースター ドップラーレーダー(×2) パワーコネクター

 特徴
  暗黒大陸軍、直属部隊所属メカ。凄まじい威力を発揮するフォトン砲2門を装備し、白兵戦では、背部のヘルブレイザーで敵を切り裂く。
  機動性に優れており、高速での格闘戦を得意としている。
  また、ボディはステルス機能を持ち、隠密行動による情報戦も得意とする。ブースター使用によって、最高350km/hでの走行を可能にしている。
  戦闘総合力は通常30ZEPである。


前後より

次世代高速戦闘ゾイド、ジーク・ドーベルです。
最高速度は実に350km/hで、シールドライガーを100km/hも上回る超スピードです。

暗黒軍ゾイド第四弾として登場しましたが、一つの転換点になりました。
というのはカラーリングです。

従来の暗黒ゾイドは、黒・緑のカラーリングを基本としていました。

しかし、ジーク・ドーベルはこのカラーをバッサリと捨てています。
最初に見た時は。「え…」という感想でした。どうしたの、暗黒軍? と。

採用しているカラーは、黒・赤・銀。これはゼネバス帝国最強部隊のカラーです。
暗黒軍は、当初は「帝国ゾイドを接収し自軍カラーに塗り替えていた」ものです。
ダーク・ホーンはキットとして発売されていますが、その他にも数多くの帝国ゾイドが黒・緑に塗られ劇中に登場しました。

暗黒軍のカラーがせっかく根付いた所だったのに、なぜゼネバス帝国カラーでリリースしたのだろう…。かなり謎です。そして残念です。

黒・緑のカラーは、「暗黒軍」未知の軍団という不気味なイメージに極めて合致した素晴らしくカリスマ感のあるカラーだったと思います。
これ以降の暗黒ゾイドは、各個に個性的なカラーリングを採用し始めます。
結局、これを機に二度と黒・緑のカラーをした暗黒ゾイドは発売されませんでした。

そういった意味で、ジーク・ドーベルは大きな転換点となったゾイドです。
個人的には、肯定的な評価を与えがたい難い転換点です。


側面より

全体的にスタンダードな造形をしていると思いますが、側面から見ると致命的な点を一つ感じます。
それは躍動感のないポーズです。
設定上、凄まじい最高速度を誇る次世代高速機ですが、それを全く感じません。
実に安定感のあるポーズで、どちらかというと基地でスタンバってるような印象を受けてしまいます。

ポーズというか、造形のせいかもしれません。
どうも「赤いブーツを履いたような」印象がぬぐえません。
また、脚も短いです。肘から先だけ色を赤にしているので、余計にその短さが目立ちます。


同じイヌ科のコマンドウルフと比べると、その長さの印象は歴然です。

また、脚部以外にもスピード感の無さを感じる部分があります。
頭部がちょっと大きすぎる。実際のモチーフあるいは他のゾイドと比べても、かなり巨大なバランスです。
顔が大きくて脚が短い…。高速機としてはちょっと致命的だと思います。


フェイス

頭部デザインは、いかにもドーベルマンで良いと思います。

ドーベルマンというと、軍用犬や番犬として多く利用されています。
そんな事から、大型で恐ろしいイメージが強い犬種です。暗黒軍のイメージとしては、妥当な犬種と言えます。

ピンと尖った耳、にらみを利かせた目つきなど、ドーベルマンの険しい部分を強調して造形されており、素直にカッコいい造形だと思います。
ただ、カッコいいのは確かですが、個人的にはそれ以上の魅力を感じません。

そのデザインは、あまりにも凶暴さを強調し睨みを効かせ過ぎていると思います。
その為、逆に小物感やチンピラ感が漂っているというか…、大物感をイマイチ感じないというのは正直な所です。

過度に表情を出し過ぎない方が、かえって頼もしさを感じるような気がします。
それはアイアンコングであったりサーベルタイガーであったりします。

頭部はコックピットになっています。ハッチは大きく後方に開きます。耳ごと開くのはちょっとシュールな気もします。

ハッチを開けると、中にはパイロットが1名座っています。
ジーク・ドーベルのコックピットは頭部のみで、全ての操作をここから行います。


グレートサーベルと共に

「次世代高速機」「黒・赤のカラーリング」という事で、どうしてもグレートサーベルと比べてしまいます。
グレートサーベルの発売は88年6月。ジーク・ドーベルの約1年前の登場で、そこまで古い機体ではありません。
同タイプのゾイドをあえて競合するようなカラーで出したのは何故だろうなぁ…と思います。

暗黒軍は「小柄なボディで超大型ゾイドをも打ち倒す」のが特徴でした。
デッド・ボーダーはウルトラザウルスをブン回し、ダーク・ホーンはマッドサンダーを苦戦させた。
その無茶苦茶な強さも、「黒・緑」の怪しいカラーに飲み込まれ納得できてしまうカリスマ感があったと思います。

ジーク・ドーベルは、グレートサーベルより一回り体格の小さい機体です。
にも関らず、より強力な暗黒軍次世代高速機である。そう考えると、やっぱり黒・緑のカラーでカリスマ感を与えた方が良かったんじゃないかなぁと思います。

まぁ、デッド・ボーダーやダーク・ホーンは未知の軍団の驚異的な強さをアピールする宿命を帯びたゾイドでした。
暗黒軍登場から暫くの猛攻もひと段落し、いつまでも「強すぎる」ゾイドばかりを登場させるわけにもいかなかったのかもしれませんが。

しかし、こうして並べると、申し訳ないですがグレートサーベルの圧勝かなと思ってしまいます。
「コンパクトで強力な機体」というジーク・ドーベルのコンセプトはとても良いと思いますが、あまり強力そうに見えない…。
色の事もありますが、先に書いたように脚が短く頭がデカい。それが高速機として致命的な事を改めて感じます。
グレートサーベル(サーベルタイガー)は、やはり各部のバランスや造り込みが凄い。脚のメカニックはいかにも力強い高速性能を発揮しそうです。


細部デザイン

ここまで辛口な事ばかり書いていますが、良い部分ももちろんあります。

ジーク・ドーベルの特徴的な装備に、後部のヘルブレイザーが挙げられます。これは面白い装備です。
機能としては、敵を切り裂く装備となっています。超高速で敵に接近し、すれ違いざまに切り裂き、そのまま離脱するものです。
高速機に付ける装備としては理に適ったものと言えます。

ドーベルマンなんだから、牙や爪で戦わないのか…という風には思います。
しかし、それはジーク・ドーベルが小柄なゾイドである事を考慮すべきでしょう。
ヘルブレイザーという装備は、「小型機に大型ゾイド並の攻撃力を与えようとした」装備と言えます。
しかも「大型火器を付ける」という安直な発想でなく、「高速機という特性にマッチした装備」なのだから、とても優れています。

可動は抜群です。普段は後に向けていますが、使用時は横に大きく展開させます。

かなり大きく横に出る事が分かると思います。

ウイングのようにも見え、スピード感も感じさせます。
高速走行時にはスタビライザーの機能も果たしそうです。

「小型高速機に強力武器を付ける」「しかもスピード感を殺さない装備である」というコンセプトは、同時期の共和国ゾイドも実現しています。
ハウンドソルジャーのクロスソーダです。

しかし、これはジーク・ドーベルの方が優れていると言えます。
クロスソーダは突き刺す装備です。突き刺すという動作は、その特性上、機体のパワーや質量が大きくものをいいます。
小柄なハウンドソルジャーでは、クロスソーダをヒットさせる事はできても、「押し込む・貫く」事は難しい印象を受けます。

しかし、すれ違いざまに切り裂くブレードなら、パワーや質量より速度がものを言います。
小柄な…、言い換えれば「自身の力だけでは大柄な敵に抗し難い」ジーク・ドーベルが、「しかし自身の強みである高速性とマッチした装備を得た事で大柄な敵にも勝てるようになった」のだから、最高の装備と言えます。

ただ、難点を言うなら、ブレードの造形が厚ぼったい事です。

これは実に惜しいです。
また、色が黄色い事も難点だと思います。ベタすぎるかもしれませんが、銀色にした方が良かったと思います。

二本のブレードの中央には、大型のブースターも付いています。

大型のノズルが力強さを感じさせます。
おそらく、全力でふかす事で強力なダッシュ力も得ているのでしょう。
「ブレードで切り裂く」ジーク・ドーベルのイメージをますます高めています。

しかし、使用すると尾部が焼けてしまう位置になっているのは残念です。
もうちょっと配慮できなかったものなのかと思います。
せっかく切り裂くイメージを更に高める最高の装備なのに、付き位置のせいでシュールな装備にも見えてしまいます。
ブレードもブースターも、コンセプトは良いがあと一歩煮詰めて欲しかったという感想です。

尻尾自体も、尾としての機能を完全に捨て去り砲にしてしまったのはどうなのかなぁと思ってしまいます。
砲にするより、尾として見せるものであって欲しかったです。

ディバイソンのように、尾を違和感なく砲にした例もあります。
しかし語弊を招く言い方かもしれませんが、牛の尾というのはそんなに印象的ではありません。すなわち、砲にしてもそこまでの違和感は生まれません。
しかし、イヌ科にとって尾は超重要な、極めて強い印象を持つ器官です。そういった器官だから、砲ではなく尾として造形すべきだったと思います。

ジーク・ドーベルは、その他にも煮詰めが足りない部分を随所で感じます。
例えば脚部です。

流麗で空力的に良さそうなカウルが前面にあり、後部にはアシスト用の小型ブースターが小気味良く付いています。
おそらくバイクの意識したであろうデザインですが、全体的な造りは悪くないと思います。
しかし、キャップの付き方が問題です。サスペンションの一部をえぐりながら付いている…。
このあり得ないメカの造りは残念すぎます。

全体的に、ジーク・ドーベルはコンセプトは良いが煮詰めが足りない印象です。
各部で煮詰めが足りない事が蓄積し、全体的な完成度を大きく落としている印象です。
もし、もう少し時間をかけて煮詰めていれば、傑作機に化けたのかなあと思う部分は多いです。
しかし、この状態で完成とされてしまった事は残念です。


ギミック

ギミックは凡作です。
連動ギミックは、口を開閉しながら歩くという電動としては最低限のものです。

これに加え、背中にはグレードアップパーツ対応用の回転軸付きコネクターを持っています。
ただ、コネクターは、通常時は覆いを付けるようになっています。

つまり普段はほとんど見えない。なので、これをギミックの一つに数えていいのかどうかは意見が分かれると思います。

連動ギミックは寂しい限りですが、手動ギミックはなかなかの充実です。
フォトン粒子砲の仰角、ヘルブレイザーの展開、尾部の上下、胸部ハッチの開閉、コックピットの開閉ができます。

フォトン粒子砲は、軸と砲の2箇所に可動があるので、かなり自由に射角が取れます。

残念ながら横には向けられません。しかし前方から後方まで広くカバーできる射角は魅力です。

軸は、後ろに倒しておくとヘルブレイザー展開時に干渉します。
ヘルブレイザー展開時は、フォトン粒子砲の軸を前に倒す必要があります。

胸部ハッチは、何のために開くのかは謎です。

が、まぁギミックが多いのは良い事だと思います。個人的には、エネルギー吸入口と解釈しています。

このクラスとしては、手動ギミックはなかなか楽しませてくれます。
連動は寂しいが手動はそこそこという印象で、総合的には凡作という印象です。


戦歴

戦歴は、やはり次世代高速機に相応しくかなりのものを持ちます。
新バトルストーリーではあまり見せ場のなかった印象ですが、学年誌掲載のストーリーでは大暴れしています。

登場時は各学年ともコマンドウルフやベアファイターを一方的に破壊し華麗な登場を果たし(ここでシールドライガーMK-IIじゃないのは何かの配慮なのだろうか…)、更に大型の敵にも抗せる強力さを見せ付けています。ちなみにライジャーとペアを組むことが非常に多かった印象です。
ウルトラザウルスの首をはねるシーンのインパクトは強烈です。

ライバルはハウンドソルジャーで、幾度となく激戦を広げています。
また、グレードアップパーツを付けての戦闘も多く見られました。

ただ末期には能力不足になっていたようで、特にオルディオスやキングゴジュラスの登場後はやられ役としても多数登場しました。
とにかく、活躍もあれば負けもある運用数の多いゾイドだった事は確実です。
これらの活動が新ゾイドバトルストーリーに収録されなかったのは惜しいなぁと思います。


次世代高速機 ジーク・ドーベル

コンセプトは悪くない…それどころか凄く良いものを持っていると思います。
デザインといいブレードを使う戦法といい、光るものがあります。
しかし、煮詰めが足りないのは本当に残念です。

コンセプトの良さを証明するものとしては、後年のブレードライガーが挙げられると思います。


背中にブレードとバーニアを持つ点で共通します。肩に丸い装甲を付けている事も、ジーク・ドーベルのコンセプトと共通します。
そしてブレードライガーは、非常に人気の高い機体として君臨しています。

ジーク・ドーベルは、煮詰めてさえいれば革新的名機として大人気のポジションに君臨できた可能性も強く感じます。
それこそ、暗黒編のゾイドを牽引できる位の。
それがそうなっていないのは改めて残念です。

評価したい部分もある、でもチグハグな部分も大きく感じモヤモヤしてしまうゾイドです。


バリエーションモデル

 ゾイドリバースセンチュリー ジークドーベル


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