初めての方へのゾイド解説 ~ゾイドの雑学~


ゾイドについての基本は、既に紹介して来ました。ここでは、補足的にゾイドの雑学を紹介します。

 

★最初のゾイド
ゾイドは1983年に第一期シリーズ「メカ生体ゾイド」を展開しました。
これは厳密に言うと誤りです。

もともと、ゾイドはアメリカ市場向けに開発された玩具でした。
トミーは伝統的に海外市場に強く、そこで売る事がそもそもの目的だったのです。

最初に作られたゾイドは「ガリウス、グライドラー、エレファンタス」の三種類でした。

これにシリーズ名「ZOIDS」の名が付けられ、1981年にアメリカ市場で販売されました。
ちなみに「ZOIDS」という名は「ZOIC」「ANDROID」を略して付けられています。

ゾイドは目標通りの好評なセールスを記録します。そこで、日本市場でもこれを販売する計画が持ち上がりました。
1882年、日本でも三種類のZOIDSが販売されました。
ただし、その際は日本の子供により親しみやすいように、シリーズ名を「メカボニカ」に改変して販売しました。
名称もそれぞれ「メカギラス」「メカトロス」「メカファントス」になりました。何となく、チビッコ受けを狙って改変した印象がすると思います。

しかし残念ながらメカボニカはあまり注目されず、低調のまま展開終了してしまいました。
アメリカ市場と違い、不振だったのです。
それでも、トミーはこの玩具に秘めた可能性を大きく感じていました。 この玩具が日本市場でも売れる為には何が必要かを研究します。

その結果、シリーズ名称は海外と同じ「ゾイド」にした方が良いとなりました。
また、3種類ゾイドはどれもゼンマイ動力の小型機でした。これではインパクトが薄い事から、電動で動く大型ゾイドの開発も進められる事になりました。

最初に誕生した大型ゾイドは「ビガザウロ」です。

ガリウスと比べると、その大きさがよく分かると思います。

ビガザウロの開発時には面白いエピソードが残されています。
歩行時の安定感を求めるスタッフは、当初は6本足でビガザウロを試作しチェックを受けました。
しかし当時のトップに「こんな生物は居ない」と却下され、モチーフと同じ四本足スタイルになったそうです。
もしもこの時6本足のビガザウロが了承されていれば、現在のゾイドは全く違った姿になっていたかもしれません。
この一件を機に、ゾイドは「モチーフの姿の再現」を大事にするようになります。

こうして、日本市場向けに大幅にブラッシュアップされたゾイドは、1983年に「メカ生体ゾイド」として販売開始されました。

結果は大成功で、アメリカ市場を凌ぐセールスを記録しました。そしてこれ以降、ゾイドはメインターゲットを日本市場に開発される事になりました。

メカボニカは不振だった事から「当時は知らなかった」方も多く居られます。というか、大半です。
ですがその不振が大幅なブラッシュアップにつながり日本市場におけるゾイドの飛躍に繋がったのだから、ファンとしてはぜひ記憶しておきたいシリーズでもあります。

 

★動力を持つ理由
ゾイドは動力を持ちます。
玩具のメカは世の中にごまんとありますが、そのほとんどは動力ではなく「可動」を重視したものです。
手で自由にポーズをとらせる事を重視した感じ。可動仕様の玩具が大半です。

では何故、ゾイドは動力を持ったのでしょうか。この事は、雑誌「STARLOG」の1985年8月号の記事で詳しく紹介されています。

 

最初のゾイドが開発された頃、世間では「電子ゲーム」が最先端の玩具として大流行していました。
当時の電子ゲームとはLSIゲームです。LSIゲームの代表格は任天堂のゲームウォッチなので、それを思い浮かべてもらえば分かりやすいと思います。

80年代は、人々が今よりも明るい地球の未来を信じていた時代でした。
この時期の雑誌にはよく「未来予想図」が掲載されていました。
「あと数十年もすれば月面に都市が作られる。2010年には火星に有人ロケットが向かう。地球には地下都市や海上都市が作られる。砂漠にも町ができるだろう。etc.」
透明チューブ状の空中道路が作られエアカーが行きかう。そんな夢のようなイラストも頻繁に目にしました。
技術はどんどん進歩し、人々の生活を大きく変えると思われていた時代です。

宇宙ブームでもあり、その分野の技術は加速度的に発展し太陽系を調査しきるのも時間の問題だろうと思われていました。
電子ゲームは、そんな未来型思考の時代に「最新技術で作られた最先端の玩具」として大流行していたのです。

一方で、時代とは別の動きもありました。
トミーは数ある玩具メーカーの中でも「技術屋集団」と呼ばれる程の高度な開発力を持っていました。
最先端の玩具がもてはやされる時代の中で、あえて「手作りの良さを再確認したい」という思いからトミーはゼンマイ動力を持った玩具を開発しました。
ゾイドだけでなく、同時期に幾つかの動力玩具を販売しています。

ゼンマイは動かす時に「ツマミを回す」というなんとも言えない手作業が必須です。
手作り感、アナログ感、手で触れる楽しみ・喜び。こうした事の良さを再確認したい。
そんな想いから動力玩具・ゾイドは誕生したのです。

 

★最初の頃のゾイドのパーツ
さてビガザウロを筆頭に好調なスタートを切ったメカ生体ゾイドは、更なる新型機の開発を進める事になります。
ただしこの頃はまだ予算が少なく、新型機の開発は苦労の連続だったそうです。

ゾイドは「動力を持つ」という特徴があります。この事は開発費を圧迫しました。
通常の玩具よりも開発が大変なのです。
そこで、初期のゾイドは徹底して「パーツを使いまわす」事をしました。

例えば初期の大型ゾイド「マンモス」「ゴジュラス」「ゴルドス」は、ビガザウロからかなりのパーツを流用しています。

マンモスとゴルドスは、胴体や足回りのパーツを流用している事が分かりやすいでしょう。
しかし、ゴジュラスはどのパーツを流用しているか一見しただけでは分からないと思います。ビガザウロは四足型、ゴジュラスは二足型で全然形が違います。

実は、ビガザウロの胴体を「立てる」事で二足歩行恐竜型を再現しています。

開発費の削減は、特に初期のゾイドにおいて顕著です。使える部品は徹底して削減しているので、そこに注目しても面白いでしょう。
開発の苦労が見えてきます。
パーツ数を削減しているにも関らず、各機の個性が強いのも見事です。

また、設定としてゾイドは量産兵器です。
なので、「一部パーツが共通している」事は「部品の規格化で生産性を考慮している」というミリタリー的な雰囲気にも合致していました。

一部には「サーベルタイガー」「シールドライガー」のように、帝国軍と共和国軍なのに多くのパーツを共用している例もあります。

この二機は、実に半分近いパーツが共通です。
ですがこれは「鹵獲したサーベルタイガーをコピー改良して完成したのがシールドライガー」と設定されています。
「だから敵軍のゾイドでもパーツが共通しているのは当然」これもまた、ミリタリー的な雰囲気を盛り上げつつつ上手く開発費削減をした例でした。

開発費の削減とミリタリー的な見せ方が見事にかみ合ったのは幸運な事でした。
両者が上手くリンクした事で、ゾイドはより多くの機種が生まれ大きな盛り上がりをみせたのです。

ゾイドは大ヒットを記録し、年を追うごとに開発費が増えていったそうです。
なので、メカ生体ゾイド後期になるとこうしたパーツ数の削減は初期ほどは見られなくなっていきます。
それは喜ばしい事であると同時に、少し寂しい事でもありました。

 

★ゾイドのデザイン
ゾイドは、とにかく複雑な造形のゴチャメカです。表面にパネルラインがあるだけじゃなく、複雑な立体が複雑に合わさっています。
大型ゾイドはもちろん、小型ゾイドでもかなりの複雑さがあります。

この過剰なまでのゴチャメカは、ゾイドがアニメ化を断念した事で生まれたものでもあります。
80年代当時のアニメは、今と違って全て手描きによる作業でした。3DCGが使えない事はもちろん、色付けも全て手塗りでした。
当時のアニメでは動かせる限界がありました。メカデザインは、そこから逆算した「週間アニメで動かせる」ものである必要がありました。

例を言うと、「超時空要塞マクロス」にデストロイドモンスターというメカが登場します。

このメカは、「劇中では動かさない」という前提でデザインされています。
背景に置いておくだけの脇役メカでした。いやしかし、主役機にはない重厚さからかなりの人気を博しました。
そこで、スタッフはせめて1歩だけでも歩かそうと3ヶ月かけて格納庫の床板を踏み抜くカットを描いたというエピソードがあります。
素晴らしい熱意ですが、しかしこのデザインが一歩歩き転倒するシーンを描くだけで3ヶ月です。
デストロイドモンスター以上に複雑なメカであるところのゾイド。もはや動かせるはずがないという事がよく分かるでしょう。

「アニメを主な宣伝媒体として玩具を売る」これはよくあるパターンです。
ゾイドはそうじゃなく「玩具そのものをアピールして売っていこう」という考えで展開されています。
アニメを考慮していないので、ゾイドのメカは徹底して複雑にする事ができました。
結果として、アニメ主体の作品のメカとの差が強調され、独特の魅力をアピールする事ができました。
※ただし販促用ムービーとしては超短編のアニメも作られています。

・・・そして時は流れて1999年。
この頃には、3DCGを使用して複雑なメカを週間アニメで描写できる技術が確立されました。
この技術を使用してたアニメゾイドが放映され、大人気になりました。アニメの作画技術が発展し、ゾイドを動かせる時代になったのです。

元々、ゾイドはアニメとは別の道を歩んだから生まれたデザインでもありました。
しかし今では、ゾイドとアニメは切手も切り離せない重要なパートナーになっています。
現在、4つのテレビアニメが制作されています。もちろん、多くのユーザーが5つ目のテレビシリーズやOVAの実現を望んでいます。

 

ゾイドに関する雑学は、何か情報を得られ次第に随時更新します。

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