HISTORY_メカ生体ゾイド1984

前史(~1982) メカ生体ゾイド始動(1983年) 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990~1991.03


ここでは、メカ生体ゾイドの2年目、1984年の動きについて解説します。
順調な滑り出しを見せたメカ生体ゾイドですが、この年は更なる飛躍をしてみせます。

前年、ゾイドが順調な滑り出しを見せた理由の一つに、「魅力的な世界観を分かりやすく伝えた」を挙げました。
1984年は、その点に、より力が入れられました。
 ■世界観とストーリーを練り込み、もっとユーザーに訴えかけるものにする
 ■それを、よりユーザーの目に触れやすいように、より伝わりやすいようにする

この二点は、この年の展開のキーです。

 

この年、ゾイドの世界観の設定は、前年よりも細かく設定され、よりユーザーに訴えるものに変わりました。
世界観は練り込まれ、様々な部分が補強されてゆきます。
それによって、前年の世界観は、漠然と「宇宙への憧れを抱かせる」ものだったものが、どんどん具体的になってきました。
まずは、この年におけるゾイド世界観の変化を解説します。

1983年のゾイド世界観は、「未知なる星域・ゾイドゾーン」を舞台としていました。
一つの星ではなく、多くの星の連なりからなる「星域」です。そして「各惑星にそれぞれ趣向の異なったゾイドが居る」というものでした。
1983年のカタログからは、それがよく伺えます。

左半分に記載されている文に注目。1983年における世界観がよく分かると思います。
この時点では、「未知の星域」が舞台。無限の宇宙へ限りないロマンを感じさせる一方、まだまだ具体性が無く曖昧であるのも確かでした。

また右半分にも要注目です。「4つの陸上戦闘メカに変身するパワー機械獣 パーツの向きを変えるだけで4つのメカに返信して作動するゾイド・ゾーンのニューモデル」
ゾイドシリーズの機体として、当初は「ビッグマンクス」というキットが発売予定されていた事が分かります。

1983年の世界観では、ガリウスやビガザウロは、「未知なる星域・ゾイドゾーンの第一惑星・ZP01に住まうゾイド」という設定でした。
そしてZP01のゾイドはガリウスやビガザウロだが、「星域中の他の惑星には、それぞれ趣向の異なった別のゾイドが居る」というものでした。
その中の一つがビッグマンクスが住まう惑星である、というものです。
※ビッグマンクスは、結局はメカ生体ゾイドシリーズとして発売はされませんでした。

このゾイドゾーンの設定が、この年の初めに変化します。

1983年において、ゾイドの世界観を伝える重要なアイテムに、製品に封入される「ゾイドカタログ」がありました。
この年も「カタログに世界観の設定が載る」というスタイルは継承されています。

この年の早々に、カタログ第二弾が登場しました。

カタログ第二弾には、以下の設定が掲載されました。

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その惑星では、金属生命体「ゾイド」が驚異の進化を遂げていた。

時代は地球人類が太陽系進出を果たして、恒星間飛行を目指す大航海時代に入った頃……太陽系の全く正反対の位置に、太陽系とそっくりなゾイドゾーンが発見された。
惑星ゾイドは地球によく似た大気を持ち、金属鉱脈の露出が多い星だ。
そのため、金属イオン濃度の高い海に誕生した生命は、いろいろな進化を経て、爬虫類型、昆虫型の金属細胞を持つ生物となった。
金属生命体『ゾイド』の出現である。
また一方では、進化の途中で枝分かれし、独自の発展の末、知的生命体である『ゾイド星人』も誕生した。

後にゾイド星人は、共和国側、帝国側に二分され勢力争いが始まった。
そして両陣営は、ゾイドを主要武器である戦闘獣へと改造していった。
そして今、飛来した地球人の手により、ゾイドはさらに改良され戦闘能力も強化されて、注目の『メカ生体・ゾイド』となっていったのである。
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この時からメカ生体ゾイドの舞台は、「広大な星域・ゾイドゾーン」から、その中の一つの星「惑星ゾイド(ゾイド星)」へ移りました。
ただゾイドゾーンそのものの設定は残っているので、「星域・ゾイドゾーンからゾイド星へスポットが移った」と捉えるべきでもあるでしょう。
そしてゾイド星の設定と共に、その星に住む「ゾイド星人」そして「共和国」「帝国」の設定も、ここで初登場しました。
共和国と帝国の設定が登場した事に併せ、既にリリースされていた全てのゾイドは、共和国側に編入されました。

 

また、第二弾カタログから少し遅れ、「ゾイド情報-HOBBY NEWS-」というミニ冊子も誕生しました。

このミニ冊子は一冊50円という安価で、多くの玩具店の店頭で配布されました(また無料配布していた店舗も多数あったようです)。
冊子の中には、カタログよりも詳細なゾイド世界観が掲載されています。
そしてその文を読むと、やはりカタログの内容と一致しており、世界観が前年の「星域・ゾイドゾーン」から「ゾイド星」へ移った事が分かる内容になっています。

ただこの冊子では、カタログよりも詳しい情報が記載されています。
 ■地球から出航した巨大宇宙船・グローバリーIII号が、地球からはるか6万光年の彼方で、ゾイド星を発見した事
 ■様々な要因により、グローバリーIIIは、多くの地球人を乗せたままゾイド星に不時着することになった事
 ■中央大陸、ヘリック共和国、ヘリック大統領、ゼネバス帝国、ゼネバス皇帝といった固有名詞

など、より詳しい設定も記載されています。

ともかく、前年と比べ、圧倒的に世界観は細かくなりました。この世界観の元で、今後、メカ生体ゾイドは発展してゆく事となります。

 

あわただしく世界観が変る中ですが、もちろんゾイドのリリースは勢い良く続いています。
4月には、伝説のゾイド・ゴジュラスが発売されました。

ゴジュラスは、力強いギミックや洗練されたデザイン、そして「最強」という謳い文句をまとって登場し、たちまち大人気になりました。
この機体は前年のビガザウロ以上の効果を上げ、ゾイドを更に人気・注目のシリーズへ押し上げました。

また、ゴジュラスから、キットの箱デザインが多少変更されました。その点も要注目です。
箱の形状や表面のレイアウトは変更されていませんが、裏面が大きく変わりました。


前年のマンモスと並べています。マンモスは上が表面で下が裏面、ゴジュラスは左が表面で右が裏面です。

ゴジュラスより前にリリースされた機種の箱裏は、「改造作例が大きく掲載さているのみ」という構成でした。
しかし、ゴジュラス以降のゾイドは、「機体の特徴やテクニカルデータ」「ゾイド世界観・ストーリー」が、必ず掲載されるようになりました。

これは非常に重要な事でした。
今までは、ゾイドの世界観を上手く作っても、「キットを買ってカタログを読まないと詳細を知れない」ものでした。
それが、キットを買わずとも、店頭で箱裏を見るだけで容易に知る事が出来るようになった という事です。

ゴジュラスより前に発売された機種の箱も、再生産ver.からは箱裏が改定され、ストーリーや機体データが記載されるようになりました。
その為、ゴジュラス以前の初期ゾイドは、同じメカ生体シリーズのキットでも2ver.の箱が存在しています。
(ただし、ビガザウロ、マンモスは箱のver.が変る前に絶版となっています)

箱裏の改定と、先ほど紹介したミニ冊子「ゾイド情報-HOBBY NEWS-」により、ゾイドの魅力的な世界は、より伝わりやすい体制になったのです。
メカボニカから比べれば、1983年のゾイドが採った体制も、確かな進化でした。
しかし1884年のゾイドの体制は、その更に上を行く素晴らしい進化を遂げたと言えます。

 

また、ゴジュラスの完成・発売と同時に、販促展開も動きを見せています。この年トミーは、新たなる販促の場として、小学館の雑誌に目をつけます。

コロコロコミックや学年誌・小学三年生で、ゾイドの特集が始まりました。

この内、コロコロは最初の頃こそゾイドを大プッシュしたものの、割と早期にゾイドを打ち切ってしまいました。
同誌では史上初のゾイド漫画「ゾイド創世記」の連載も行われましたが、こちらも早々と打ち切られてしまいました。
対し、小学三年生はメカ生体ゾイドが終了する1991年3月まで、ずっとゾイドを強力にプッシュし続けました。

ともかく、小学館の雑誌にゾイドが掲載されたのは大きな出来事でした。なにせ、多くの少年達が読んでいる雑誌です。
ここでまた、ゾイドの知名度は一気に上がりました。

「世界観の作り込み」「箱裏の改定」「ゾイド情報-HOBBY NEWS-」「小学館雑誌への掲載」これら全ての要素が、ゾイドを加速させてゆきます。
いつしか、ゾイドは玩具屋の一角を占める人気玩具へと成長しました。

 

7月には、またしてもゾイド界に重要な出来事が起こりました。
第二弾カタログで文字上の設定で登場した「帝国軍」ですが、ついにこの月、帝国側ゾイド第一号のマーダのキットが発売されたのです。

マーダは、従来の機体とは全く異なる色使いとシルエットをしていました。
従来機は、どちらかというと地味な色合いを使用し、メカニックも外部に露出気味でした。

しかしマーダは「銀と赤」というド派手なカラーを採用し、デザインも装甲で身を包んだ未来的なものでした。
新しく登場した帝国ゾイドは、従来機と比べ、対極的なデザインをしていました。しかし一点、旧来のゾイドと同じく、リアルメカである点は守られていました。
それゆえ、同じ世界観ながら敵対する二国という図式がユーザーに分かりやすく効果的に伝わる事となり、更に人気を高めていったのです。

マーダに続き、9月には帝国初の大型メカ・レッドホーンも発売され、いよいよ帝国軍ゾイドのリリースも本格的に始まりました。

世界観が構築され、ゾイドを象徴する最強ゾイド・ゴジュラスも発売され、帝国軍も登場し、いよいよゾイドに本格的な活気が出てきました。
比例してファンはどんどん増え、ユーザーも盛り上がってきました。

ここでトミーは、さらに手を打ちます。
帝国ゾイドが発売された頃に、ゾイド史上初の、ユーザー参加型のイベントが行われました。

84年8月から、「X-DAYコンテスト」というイベントが行われています。
これは「新型ゾイドのデザインをユーザーから募集する」というものでした。
こういったイベントは、ある程度人気でユーザー数も多くないと実行出来ないものです。
このイベントが行われたことこそが、ゾイドの人気が浸透していた事実を表しています。

他にも、この年のゾイドの人気を象徴するものとして、ゾイド本体以外の周辺アイテムの発売も挙げられます。

小型ゾイド用の改造パーツや、兵士のフィギュアセットが発売されています。
ゾイド本体と一緒でしか遊べない周辺アイテムが積極的にリリースされたのは、何よりゾイドの人気の高まりを象徴しています。
ゾイドの勢いは留まることを知らず、どんどん勢いを増してゆきます。

 

1984年に発売されたゾイドは以下の機種です。
  共和国側大型ゾイド
   RBOZ-003 ゴジュラス
   RBOZ-004 ゴルドス
  共和国側小型ゾイド
   RMZ-09 ガリウス
   RMZ-10 グライドラー
   RMZ-11 エレファンタス
   RMZ-12 グランチュラ
  帝国側大型ゾイド
   EPZ-001 レッドホーン
  帝国側小型ゾイド
   EMZ-13 マーダ
   EMZ-14 ゲーター
   EMZ-15 モルガ
   EMZ-16 ゲルダー
   EMZ-17 ザットン
  周辺アイテム
   RCZ-01 改造セットNo.1
   RFZ-01 フィギアセットNo.1(地球人一般兵士)
   EFZ-01 フィギアセットNo.2(帝国側一般兵士)

いよいよこの年、ゾイドの世界観は固まりました。
それに加え、帝国VS共和国の図式も出来上がり、「ゾイドと言えばゾイド星を舞台に帝国と共和国が戦っている」という図式が出来上がりました。

いよいよ加速してゆくゾイドですが、まだまだ勢いは衰えません。
翌年は、最強・ゴジュラスにライバルが誕生するなど、更なる発展をしてゆく事となります。

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