帝都防衛航空隊 5


ミーバロスが狙われたのは全くの予想外であった。
サーベルタイガーの活躍で、中央山脈は大部分が我が軍の支配下にある。
また悪魔の花園もあった。この位置を知る我が軍なら避ける事ができる。だが敵がこれを容易に突破するとは考えにくかった。

敵は何故ミーバロスに現れたのか。シンカーで急行する最中、その事ばかりを考えていた。
現場でそれは判明した。ウルトラザウルスは水上航行力を持っていたのである。
敵は海上ルートでミーバロスに現れたのであった。

事態は最悪と言えた。
今、帝国は戦力の大半を敵地に送っている。ミーバロスには小型ゾイドを中心としたわずかな留守部隊しか居ない。
爆撃で負ったダメージもいまだ回復していない。マトモな迎撃ができるはずはなかった。

しかも、我々はウルトラザウルスの数に衝撃を受けた。
黒い巨艦が沿岸部を埋め尽くしている。
帝国は量産に要する期間を二年と予想していた。
まだ一年しか経っていない。共和国の底知れぬ生産力は、予想の半分という驚異的な速さで量産を実現していたのであった。

ウルトラザウルスはキャノン砲を撃ちまくっていた。
またスネークス部隊が先陣を切って海岸に突撃していた。迎撃するわずかな数のイグアンではそれを止められない。

ウルトラザウルス艦隊後方には、大型輸送船団とそれを護衛するバリゲーターの群れがあった。
輸送船の中にはゴジュラスをはじめとする強力な陸上部隊が居るに違いない。

そうしている間に、輸送船は浜を目指して動き出した。
まずい、陸戦部隊が展開すればいよいよミーバロスは陥落する。そう思った途端、マイクに向かって叫んだ。
各機、輸送船を攻撃せよ。乗り上げる前になんとしても撃沈するのだ―――、

甲高い風切り音をたてシンカーが急降下する。
輸送艦は巨大な上に緩慢だ。攻撃は容易い。いやしかし、それは護衛が居ない場合だ。

濃密な護衛、バリゲーターがミサイルやビーム砲を一斉に撃ち進路を妨害する。
20を超えるバリゲーターの群れからの対空砲。数機のシンカーが黒い煙を吐きながら墜落した。
対空砲を減らさないことにはどうにもならない。
我々は目標を切り替えた。まずバリゲーターを叩き、その後に輸送艦を攻撃する。
もはや覚悟を決めたシンカーが、垂直角度でバリゲーターに突っ込みをかける。
爆弾を切り離し、海面スレスレから再び上昇に転じる。巨大な水柱の中で、一機のバリゲーターが真っ二つに折れていた。

見事。息を呑んだ。
無数に打ちあがる対空砲。もはや自力での回避は不可能だ。
当たるかどうかは運任せ。できる事は覚悟を決めて突っ込む事のみ。幸運を味方につけた者だけが戦果を挙げる事ができる。

だが喜びに浸る暇はなかった。
数機のバリゲーターと引き換えに、実に半数近いシンカーが失われていた。
また、生き残った機も既に爆弾を失いそれ以上の攻撃力を失った。
もはや残るは機銃のみ。これではもう何もできない。

敵艦隊はわずかに列を乱した。だがすぐに体勢を立て直して進み始めた。
輸送艦が浜に到着し、陸上ゾイドが次々と吐き出した。
もはや、上空から敵部隊の展開を眺める事しかできなかった。

敵の戦力は予想をはるかに超えていた。ゴドスやゴジュラスを中心とした陸戦部隊、カノントータスやゴルドスを中心とした火力支援部隊、グスタフを中心とした輸送部隊、etc. 数え切れない程のゾイドが海岸線を埋め尽くした。
陸戦部隊の展開が終わると、ウルトラザウルスと残存したバリゲーターも上陸してその中に加わった。
そして共和国部隊は、ミーバロス中心部への進撃を開めた。

 

(その6へ)

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