中央山脈駐屯部隊奮闘記


朝方、重爆(※PRZ-001サラマンダー)が我が中央山脈基地に補充機を空輸してきた。
その内訳を見て、俺は落胆せざるを得なかった。

「わざわざ最新鋭機で輸送してくれるのはありがたいんですが、これではね…」
部下のアラン准尉も、肩を落としながら俺に話しかける。
補充された機体はもはや骨董品というべきグランチュラ3機だった。

「こいつは前線より博物館に行くべきだ」
ぼやかずには居れなかった。
「センチュリオン中尉、しかし一応、内部回路が見直され再設計された最新タイプではあるようですぜ」
補充機の説明書を読みながら、アラン准尉が言う。
「生体コアからのエネルギー伝達効率に無駄なくなったみたいですな。稼働時間が1.3倍にまで向上、と」
「今更こいつに改良を施しても焼け石に水だ。コイツのラインはさっさと打ち切って、その分ガイサックを増産しろというのが最前線のすべての兵の望みだと思うんだが…、中央のお偉方はなんでこんな簡単なことに気づかないのかね」
「全くです。それに、稼働時間を増やしたってあまり意味はないですからな。こいつの格闘力と火力は絶望的ですから」

RMZ-04グランチュラ。
ロールアウト時はその走破力から画期的機体とされた。
実際、この険しい中央山脈でも少しも速度を落とさずに走り抜く構造は絶賛せざるを得ない。
ただ褒めるべきはここで終わる。
そもそも帝国との開戦前に作られた機体なので、とにかく武器がお粗末の一言に尽きる。
主武装のマクサー30mmビーム砲は、重装甲化が急速に進む帝国の新鋭機に全く通用しない。
格闘兵装に至ってはそもそも装備されていない。
その為、接近されれば全く成す術が無い。

この機体を次世代的に発展させたのがEMZ-12ガイサックだ。
基本フレームをグランチュラと同じとしながらも、フレームの強度ギリギリまで装備を増設し、火力・格闘兵装共に比較にならぬほどのパワーアップを果たした。
尾の先に付いたロングレンジガンは、正面から帝国の重装甲を撃ち抜く。
接近されたとしても、強力なレーザークローは格闘戦も可能としており、同クラスの帝国ゾイドと対等以上に戦う事が出来る。
あえて欠点を言うなら、限界まで装備を増設させている関係上、走破性に関してはグランチュラに劣る位だろう。
勾配の走破力は落ちたし、巡航速度も低下した。
瞬間的に出せる最高速度では実に220km/hも低下して120km/hとなったのは、追加装備の重量とバランス低下を物語っている。
だがそれでも多脚特有の安定感は、グランチュラと比べればともかく他ゾイドと比べれば格段のものであったし、総合的な性能アップを前にしては些細な事だった。
そもそも、グランチュラが瞬間的に330km/hの速度を出せると言っても、それは離脱時以外に使う事など全く無いのだ。

「中尉、さらに悪い知らせがあります」
「何だ」
不機嫌に返す俺に、アラン准尉は説明書の続きを読んだ。
「中尉、この紙、後半は指令書になっておりまして、その……、この機体を受領し、3日後に中央山脈・ライカン渓谷に進撃しつつある帝国部隊を攻撃せよ…、と」

 

我が中央山脈第102部隊、通称センチュリオン隊の装備機は至って貧弱だった。
そもそも、たかだか中尉である俺がトップなのだから、その規模の小ささは容易に想像できる。
今朝の補充機を合わせても、主力戦闘部隊としてゴドス1、ガリウス6、エレファンタス1、グランチュラ8。
偵察隊としてグライドラー2、ゴルゴドス1。輸送部隊としてハイドッカー4。これで全てだった。

過去にはゴルドスやマンモスが配備された事もあった。
ただ巨大ゾイドは聞こえはいいが中央山脈ではお荷物以外の何物でもなかった。
確かに索敵力や戦闘力は素晴らしいものがあった。
だがその巨体と作動時の騒音は許容し難く、敵に位置を知らせながら行動しているようなものだった。
またその巨体ゆえ、険しい山岳では満足に行動する事もできなかった。

ライカンに迫る敵部隊の陣容はおおよそ掴めていた。
すなわちマーダ2、モルガ3、ゲルダー3、あとは歩兵が百ほど。
数にすれば我が方の圧倒となるが、敵の驚異はその重装甲であった。
比較的装甲の薄いマーダでさえ、我が基地の所属機で正面から撃ち抜けるのはゴドスだけだった。
さらに重装甲化されたモルガやゲルダーは、ゴドスでさえ側面に回らないと撃ち抜けなかった。
しかも情けないことに、ゴドスを除く我が方のゾイドは、敵の砲撃であらゆる角度から容易に破壊された。

「歩兵百程度ならグランチュラで楽に対応できるが…、問題は対ゾイドか。ゴドス一機ではどうにもならんな」
一対一であればゴドスは最強だった。
だがあくまで敵が単機ならの話であり、部隊同士の戦いでは特に意味のない事だった。

「ガリウスは全機ゴドスと行動を共にさせよう。同タイプ同士だから連携もしやすい。これで上手くいけばマーダとモルガは叩ける」
ガリウスは単体ではマーダ、モルガに敵う要素が皆無だった。
だがゴドスと連携し、更に倍する数で対峙したならあるいは…。
「まぁ、目算どおりに事が進むように願いましょう」

「だが問題はゲルダーだな…。こいつは難しいな…」
帝国ゾイドの中でも最も装甲の厚いこの機体は、正面撃ち抜く事は不可能だった。
最もゴドスなら、側面から撃ち込む、あるいは接近しての格闘戦に持ち込めば優位に立てるが…。
「どうします?いっそゴドスはゲルダーにぶつけますか?」
「いや…、ゴドスはガリウスと連携して戦う必要がある。でないと中核不在のガリウスは的になるだけだ…」
議論は妙案が浮かばないまま、時だけが過ぎていった。

「そもそも装甲を撃ち抜けるゾイドが居らんから話にならんな」
「ゴドス以外、側面からでも撃ち抜けないとは情けない話です。ただゲルダーは側面に大きな排気口がありますからそこを狙えれば貧弱な火力でもあるいは…」
「…准尉、それ位は分かっているが…。ピンポイント射撃に必要な要素も分からないわけではあるまい」

狙撃するゾイドの射線上に、完全に気付かれない様にゲルダーを寸分狂わず誘い込む…。
起伏の多い山岳は岩山多く、隠れる場所こそ多いが潜んでの射撃に適した場所は少なかった。
その地理でゲルダーの排気口をピンポイントで狙うというのは、もはやゲルダーの動きを無理矢理に封じる事でもしない限り無理な話だった。
「くそ、やはりガイサックが欲しいな…」
「せめて一機いればこの作戦ももう少し前向きに考えられるんですがねぇ…」

ガイサックのロングレンジガンなら、側面に回れば排気口を狙わずとも装甲を貫通できた。
補充されたばかりの真新しいグランチュラを恨めしく見たが、事態は何も変わらなかった。

「中尉、准尉、申し訳ありませんがそろそろコイツを格納庫に移したいのですが」
整備班長の声で、議論はいったん打ち切りとなった。
「あぁ、いやすまなかったな。頼む」
通路を開けると、整備兵が手馴れた様子でグランチュラを輸送し始めた。
「皮肉なもんですな。グランチュラばかり補充されるから、我が部隊の整備速度は全く早い」
「無駄口を叩く暇があったらゲルダーを倒す案かガイサックを入手する方法でも――、まてよ、ガイサックを入手…」

「中尉?」
「上手く行けば何とかなるかもしれん。来い」

 

数刻の後、俺と准尉、そして整備班長はグランチュラの格納庫に居た。
「皮肉な事に、おそらくグランチュラの事に関しては、我が基地の整備員の右に出るものは我が軍の中に居らんだろう」
「中尉、研究所まで含めても、我々はこの機体に詳しい自信があります」
戦闘で破壊されるたび、グランチュラは何度も補充された。
この整備班長は、これまで何機のグランチュラを解体し、そして直してきたのだろう。

「結構。その整備班長の腕を見込んで頼みがある。こいつらをガイサックにしてくれ」

「中尉、無茶を言っては困ります。確かにガイサックはグランチュラをベースに開発されていますが、生体部分はそもそもコアからして違う…」
「いや、そうではない。こいつに尾とハサミのダミーを付け、見た目だけガイサックにしてくれればいいんだ」

 

作戦決行日、俺はガイサックに偽装したグランチュラに座り、中央山脈を移動していた。
ゴルゴドスのレーダーは既に敵部隊の位置を補足していた。

この作戦に当たり、俺は部隊を4つに分けていた。
まずはゴドス1、ガリウス6からなる第一小隊。
次にグランチュラ6、エレファンタス1からなる第二小隊。俺はこの隊として行動している。
そして対歩兵として、グランチュラ2、ハイドッカー4からなる対歩兵部隊。
最後に、グライドラー2、ゴルゴドス1の偵察隊。
以上は、基地の全ゾイドを投入したものだった。

既にゴドス、ガリウス連隊は俺たちとは別行動をとり、敵に向かっている。
俺たちに都合がいい事に、敵のマーダとモルガはある程度かたまって動いていた。
「ここまでは俺たちに女神が微笑んでるな」
これで、マーダ、モルガはゴドス、ガリウスに任せておけばひとまず問題ない。

そして今、俺たちの小隊はゲルダーに向けて動いていた。
グランチュラ6、エレファンタス1は、エレファンタスをやや後方に置きながらも、密集して行動していた。
そして小隊のグランチュラだが、うち3機は木製のハサミと尾のダミーを付け、見た目だけはガイサックに化けていた。

「しかし見事な偽装ですな。この位置からでも目を凝らさなきゃバレませんぜ」
「整備に無理言って塗装までしてもらったからな」
木製のダミーは塗装やマーキングまでされており、脚部が細い意外は、一見するとガイサックにしか見えない。
もちろん、ロングレンジライフルのダミーも装備されている。
「しかしこれで上手くいけばいいんですが」
「保証は無い。だが正面からぶつかるよりは可能性があるだろう」
「敵影3、ゲルダーと思われます。位置4000まで接近」

レーダーを持つエレファンタスからの通信が入った。
「ゴルゴドスで無いのは残念だが、やはり電子機がいるのは心強いな」
「敵さんは気づいているでしょうかね」
「まぁ、帝国の新鋭機だからな。もしかしたら全機にレーダーが装備されているかもしれん」
「それじゃぁ、そろそろですな。上手く行くように願いましょう」

「各機に告ぐ。ノーマル機は散開し、離れた位置から俺たちを追いかけろ。偽装機はこのまま直進し、ゲルダーに接近する。エレファンタスは後方から逐次敵位置の情報を回すのを忘れるな」
全機指示に従ったのを確認し、俺を含む3機の偽装機は一気にゲルダーとの距離を詰めた。

「敵、散開しました。10時、0時、2時の方向」
エレファンタスからの通信が入る。
「こちらの動きに対応しやがった。やっぱりレーダーを持ってやがるな」
「どうします?」
「散開したのは好都合だ。バラけた敵を各個叩く。まずは10時方向の敵からだ。行くぞ」

偽装機全てで敵に突っ込む。
程なく、肉眼で敵影が見えるほどに距離が詰まってきた。
「やはりゲルダーだな。よし、作戦通りに動け!」
俺の号令で、偽装機はゲルダーを囲うように動いた。

「エレファンタスは早く敵の通信に割り込め」
大き目の円を描くように、敵を包囲する。
もしこれが本当にガイサックなら、ロングレンジライフルを撃ち込んで仕舞いだ。
だが火力が絶望的なグランチュラでは、包囲したところでどうなるものでもない。

「通信、割り込めました。回します」
エレファンタスが敵の通信を傍受する事に成功した。
「敵はグランチュラじゃない、サソリだ!支援頼む!」
俺たちに怖気づいたゲルダーは、成すがままに取り囲まれ、ただその前頭部に備えた強力な砲を、どこに向けたらいいのか分からない様に首を振っていた。

「支援が来る前に叩く。全機突撃!」
俺の号令で3機の偽装機はゼロ距離まで一気にゲルダーに近づく。
ゲルダーは闇雲に砲を乱打したが、それを余裕を持って交わす。

「バカな…」
敵の声が聞こえる。
偽装して重量が増えているとはいえ、グランチュラなのだ。その俊敏性はガイサックの上をゆく。
作戦は、ガイサックに偽装して敵に混乱を与える。
そのまま敵に取り付いてゼロ距離からの射撃、だった。
今まさにその作戦は叶い、ゲルダーの側面、排気口に一機の偽装機が取り付いた。

「叩き込め!」
マキサー30mmビーム砲がうなる。
装甲にはダメージが無いが、排気口から直接内部に叩き込めば、さすがに効く。

ドン…!
ひときわ大きい音は、おそらくゾイド生命体を貫いた音だろう。
「よし、すばやく体制を立て直して増援に備えろ!」
ゲルダー一機撃破の喜びに浸る間は無かった。
言い終わるが早いか、駆けつけたゲルダーが現場に現れた。

「気をつけろ…、そいつら瞬発力がデータ以上だ。改良型かもしれん…」
ノイズ混じりの通信が、今しがた倒したゲーターから聞こえる。
「何せ特注品だからな。さぁ三機目が来る前にやっちまうぞ」
敵の通信に多少調子付きながら、同じ戦法でゲルダーを3機で取り囲む。
しかしこのゲルダーは想定外の装備を積んでいた。

ヴン…、
鋭い音を立てて機体をかすめたのは、間違いなくビームだった。
だが今はゲルダーの側面に居るはずだ。
ゲルダーの砲は強力だが、固定式の砲を正面にしか持っていない筈だ。
「くそっ、増設型か」
この機体はどうやら、背中に旋回式の砲塔を備えた改造型らしかった。

「メーデー、メーデー、ゲルダーに発見された。これより交戦に…」
エレファンタスから悲痛な通信が入ると共に、ブツリと通信が途切れた。
「くそっ、盛り上がってきたじゃねえか」
エレファンタスを介して傍受していた敵の通信はもう聞けなかった。
加え、我がグランチュラにはレーダーが装備されていない。
エレファンタスのレーダーを通信する事で成していたが、それも不可能となった。

ドォォオ…、
激しい爆音と爆風の中、見ると友軍機が一機被弾していた。
偽装した尾が吹き飛んで居る上、脚部も何本かもがれている。

くそったれ…!
旋回式の砲塔は便利だが、小型機に搭載するようなものはせいぜい低威力だ。
本物のガイサックなら数発は耐えただろう。
しかし我々はその実、防御力皆無のグランチュラなのだ。

「突撃だ!」
言って、生き残った俺とアラン准尉の機でゲルダーに突撃する。
旋回砲塔が唸りを上げて放たれる。
固定砲ならグランチュラの瞬発性をもって苦も無く避けられるものを…!

ドォォオ…、
再び爆音が鳴り、アラン准尉の機は脱落した。
「うぉぉぉおおお!」
それでも構わず突撃する。
ついにゼロ距離に接近し、ゲルダーの側面に取り付いた。

「全機、飛び出してこい!」
俺の号令で、散開していたグランチュラが一斉に飛び出してくる。
俺はその瞬間、コックピットに備え付けられているボタンを押した。

バンッ!
機体前方と後方で爆発音が鳴り、偽装パーツがゴロリと外れた。
偽装をパージするボタン。
ゲルダーは一瞬、何が起こったか分からず時を止めた。
エレファンタス無き今、通信は聞こえない。
だが恐らくこう言っただろう。
「一杯喰わされた…!」

次の瞬間、散開していた3機、そして偽装をパージしてグランチュラに戻った俺の機、合わせて4機の砲が飽和状態で火を吹いた。
ゲルダーはもがく。
だが4機のグランチュラが放つ8門のマクサー砲が、一発でも放熱口を捉えれば俺たちの勝ちだ。
そしてついに、ゲルダーから爆音と黒煙が上がった。

「やったぞ。だがすぐ残りが来る。撃破された機体からパイロットを救出し、すぐに離脱するぞ」
言ってコックピットから飛び降り、撃破された味方機の元へ駆け寄る。
片方は完全に爆発し、コックピットも無残に潰れていた。
だがアラン准尉機は脚部を破壊されただけで、コックピットは無傷だった。
脱出したアラン准尉が駆け寄ってくる。

「中尉、申し訳ありません。右側脚部全損で、ゾイド生命体は生きていますがもう動かせません」
「いや、あの状況では仕方がない。それより新手が来る前に逃げるぞ」
生き残った4機のグランチュラは、からがらその場を離れた。

「どうします?残りはゲルダー1機ですが」
窮屈そうに俺の機のコックピット奥に押し込まれるように座ったアラン准尉が問いかける。
「…グランチュラ4機じゃ厳しい。しかし逃げるにも相手はレーダー装備だからな…」

もはやガイサックに化ける戦法も通用しない。
だが…、
「おい、見ろ。あのゲルダー逃げていくぞ!」
間一髪、最後のゲルダーには、俺たちがガイサックに化けていた事は悟られていなかったようだった。
「何とか凌いだな……」

「ふぅ…」
息をつく俺たちに、味方からの通信が入った。
「こちらゴドス隊。敵マーダ2、モルガ3を撃破するもガリウス4を失いました。パイロットは負傷するも全員救助出来ました。これより合流点に向かいます」
続けて歩兵制圧隊からの通信。
「歩兵はほぼ制圧完了しました。地雷によりハイドッカー1とグランチュラ1が各小破ですが、行動には支障ありません。これより合流点に向かいます」
俺は両隊に向かって通信を送った。
「こちらグランチュラ隊はグランチュラ2、パイロット1を損失。また索敵のエレファンタス1とパイロット1を損失。だが敵ゲルダー2を撃破」
「一機洩らしたが、逃走していった。まぁ…、何とか勝ったな」

合流点で味方機と落ち合った。
「…ゴドスが手痛く被弾しているな」
「集中砲撃を喰らいました。よく耐えましたが中破です。何とか動けますが、本格的な修理が必要ですね」
「分かった。それにしても皆よく頑張った。さぁ、基地へ戻るか」
「中尉、次の司令が来たらどう戦います?」
「さあな。だがもう、ガイサックに化ける戦法は懲り懲りだ」
「本国から、次こそ本物が補充されてくる事を願いましょう」

 

本国から我が基地に待望のガイサックが補充されたのは、2年後。
既に敵にヘルキャットやサイカーチス、味方にはスネークスやカノントータス等の次世代機が開発された後の事だった。
「我が基地は何か本国のご機嫌を損ねるような事でもしたんですかねぇ」
「全くだ。だがまぁ戦うより他あるまい…」
「大尉、また作戦指令が一緒に入っています。またライカンに攻め入れとの事です」
「ライカンの敵勢力は…、たしかヘルキャットとハンマーロックが混じっている筈だな」
「今度はゴドスをイグアンに化けさせますか?」
「悪い冗談だ。だがそうでもせんととても戦い抜けんな」

我がセンチュリオン隊には、何故か旧式機しか配備されなかった。
重要拠点でないのは分かるが、明らかに優勢な敵ゾイドと交戦する指令書が送られている事も多い。
我々はその度、笑えるほどの奇策を打ち立てて何とか乗り切っていた。

「そういえば、グランチュラをガイサックに偽装したのが始まりだったかもしれんな」
「そうですな。あれ以来です。何度やったかはもう覚えていませんが」
「フッ…、さすがにアレは戦闘用からは外れたが、感謝すべきかどうなのかはよく分からんな。

あの時の俺の乗機は、今は作業用機としてまだこの基地に在った。
格納庫に佇むその機体を眺めたが、何を想っていいのか俺は分からなかった。
だが、二年前に補充された時に思った皮肉だけはかけないでおこうと俺は思っていた。

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