ゾイドワイルドの動力を考える-小型ゼンマイ編-

ゾイド大復活・ゾイドワイルド第一弾発売に至るまでの流れはこちらのコラム(ゾイドワイルド始動~ゾイド大復活!~)にまとめました。
さてゾイド復活の”噂”が流れたのが2/12。噂がより具体的になったのが2/13。コロコロコミックでプロジェクトZ起動の「予告」が出たのが2/15です。

コロコロコミック3月号では全貌は分からないながらも、謎の新型メカ(後のワイルドライガー)の写真が掲載されていました。

「Z」であり「ネコ科と思しきメカ」であり更にキャップまで付いているのだから、これはもうゾイドだろうと思いました。
一方で確信はなく、もしかしたら別のものかも……という不安もわずかにあったのがこの頃です。

ただゾイドかどうかは別として、「キット展開がされるだろう」とは思いました。
これだけ大掛かりな予告をしているのだから、それ位ないわけはなかろう。なので「ゾイドなのか!?」と共に「どういうキットなのか!?」ということも考えていました。

その時に思ったのは、「動力キットなのか、そうでないのか」ということでした。

予告画像をよく見ると、横に装甲車が転がっています。これはトミカの「No.114 自衛隊 軽装甲機動車」です。

ここから測ると新キットのだいたいの大きさが予想できます。
コマンドウルフ以上シールドライガー未満くらい………。動力は十分に仕込めます。

いやしかし、近年のシリーズは動力ギミックよりも手動ギミック……可動を優先していました。
これはゾイドオリジナルだけでなく、機獣新世紀ゾイド中期以降からの傾向でした。

もちろんゴジュラスギガやセイスモサウルスみたいな超ギミックゾイドもありました。が、全体的にいえば似たり寄ったりな機が増えたし「歩くだけ」な機も多く出ました。
そして完全に動力を省いたSSゾイドやブロックスも出て一定以上の成果を残しました。

「ゾイドリバースセンチュリー」はギミック重視でしたが、造りがあまり量産に適さないものでもありました。
ヴァルガやドスゴドスは同クラスのゾイドと同じ価格では提供できないでしょう。
またヴァルガは耐久性が低く、荒っぽく遊ぶと破損しやすいものでもありました。もちろん魅力を否定するつもりはありませんが……。

これらの事を考えて、予想は五分五分という所でした。動力キットかもしれないし可動キットかもしれない。

予想とは別に「子供が喜ぶものならどちらでもいいかな」とも思っていました。
ただ動力が持つ力は凄いものです。特に子供にとっては「作ったプラモが動き出す」というのはとてつもない魅力でしょう。夢中にさせます。
「どちらでもいい」というのは「可動キットで動力の魅力を超えるレベルが達成できるなら」というものでもありました。
可動キットで「作ったプラモが動き出す」感動を超えるのは並大抵の努力では達成できない。でももし、それが出来るなら可動でも構わないという考えです。

 

さて2/27、ゾイドワイルド展開が発表されました。
同時にキットの詳細も明かされました。
仕様は動力。
それを見た時の感想は、あぁ嬉しいなぁ…というものでした。
ゾイドワイルド発表は私にとって「自分は動力が好きなんだな」という事を再確認させてくれたものでもありました。

ギミックは各機とも凝った造りで各機とも特徴的な動き。「歩くだけ」じゃない。
しかも「第一弾を組んでの感想2」で書いた通り共通規格の動力を使っているのが凄い。
コスト面にも配慮し、職人技を感じさせる工夫でもって造り上げた最高のゾイドという感じがします。

前置きが長くなりましたが、ここからが本題。ゾイドワイルドシリーズの動力を考えたいと思います。
今回はまず、小型ゾイドについて。
 
小型ゾイドのゼンマイは、従来から変わりました。
下画像の黒い方が従来型、白い方がゾイドワイルド型です。

黒い方は「マイクロゼンマイ」と呼ばれる玩具業界の規格品です。
1970年代に開発されたゼンマイで、当時の規格品としては世界最小を誇りました。
ゾイドだけでなく、数多くの玩具がこのゼンマイを搭載しました。

ゾイドワイルドの小型も当然マイクロゼンマイだろうと思っていたのですが、まさかの新型ゼンマイでとても驚きました。
大きさはほぼ同じ。なのに変えた意味とは?

さてゼンマイとは製造に高い職人技を要するそうです。
正確に言うと作るだけなら出来る。でも同じゼンマイでも素人が作ると馬力が弱い。職人が作ると馬力が高い仕上がりになる。
そして職人は年々減っている…。ゼンマイ業界はそんな状況とのこと。

中型ゾイドが搭載しているHiゼンマイだと、多少馬力が下がったところでどうという事はありません。もともとが高馬力なので余裕があるからです。
ですが、マイクロゼンマイだと馬力低下は致命的です。
2008年に発売された「月刊ゾイドグラフィックス」のゼンマイはかなりの低馬力でした。
特にツインホーンは「3歩歩いただけで止まる」ようなものが続出して問題になっていました。
ゾイドはマイクロゼンマイを使う玩具としては大きいしギミックも多い。なので馬力低下のあおりをモロに喰らうわけです。


1980年代製造のマイクロゼンマイと2008年製造のマイクロゼンマイ。同じ製品だが馬力がまるで違う……。

今回のゼンマイはどうか…というと実に快調に動きます。十分な馬力と言えます。
馬力の低いゼンマイだと「地面に置いたら止まる→持ち上げたら動く」となりがちです。
それって凄く悲しい。ゾイドグラフィックスではそれが頻繁に起こった。
でも今回はしっかりと十分な距離を歩行してくれます。
今回の新型ゼンマイは、ほぼ同サイズながら馬力が高い(正確に言うと80年代マイクロゼンマイ相当の馬力がある)ということです。
ゼンマイを変えてまで馬力を確保した。この品質は動力玩具としてとても嬉しいところです。

 

互換性はどうでしょうか。これは残念ながらありません。まぁ形が違うので当然と言えば当然です。
ただ両ゼンマイを比べるとマイクロゼンマイの方が小型です。寸法は似ていますが、形がすぼまっている分だけマイクロゼンマイの方が小さいのです。
なので、「マイクロゼンマイを新型ゾイドに無理やり移植する」なら何とかできると思います。

逆に新型ゼンマイを従来ゾイドに移植するのは厳しそうです。
ゼンマイ内部にはミッチリと部品が詰まっているので、むりやり形を削ることは難しい。
どちらかというと、マイクロゼンマイを分解して手動でバネを最適に巻き直す(要職人技術)方がまだしも可能性があります。

気になるのは、今後既存ゾイドの「再販」が行われるとすれば一体どうなるだろうと言う事です。
・低馬力を承知でマイクロゼンマイを使用するのか。
・ゼンマイ搭載部分の形状を変えて新型ゼンマイ対応に改修するのか。
・あるいはどうにかしてマイクロゼンマイの馬力を再び上げるか。
これは気になるところです。

 

ゼンマイの話題を更に続けます。
マイクロゼンマイといえば、100均の玩具もよく採用していました。
規格品として凄まじく普及していた事がうかがえます。
いやしかし、最近こういうものを買いました。

これは2018年5月にダイソーで購入した「うごく3Dパズル トリケラトプス」という玩具です。
組み立てるとゼンマイ動力で動きます。これが実に良くできていて、動きの仕組みなんかはゾイドと同じようになっていて見所たっぷりでした。

さてこちらのトリケラトプスですが、ゼンマイが独自規格品でした(ゾイドワイルドのゼンマイと似ていますが、わずかに外寸が違う別物でした)。
重要なのはマイクロゼンマイじゃないということです。これは驚きました。
昔はマイクロゼンマイを搭載していたのに最近のものは違う……。

マイクロゼンマイの非搭載の動き。
玩具業界でこの動きが起きたのは極めて最近のはずです。

もう一つ例を出しましょう。

こちらはコトブキヤから出ている「M.S.G モデリングサポートグッズ MW-20ガトリングガン」です。2011年発売で、2014年には再生産もされています。
これは内部にゼンマイが入っていて回転ギミックを持つガトリングですが、そのゼンマイはマイクロゼンマイです。

色が違うだけで仕様はゾイドのマイクロゼンマイと全く同じです。
コトブキヤからは、他にも「ダイナミックチェーンソー」というマイクロゼンマイを搭載したウエポンユニットが出ています。こちらは2012年発売。
少なくともこの頃まではマイクロゼンマイが業界の規格品として使われていたのでしょう。

しかし現在は違う。ゾイドも100均の玩具もマイクロゼンマイ非搭載になってきた。
ゼンマイ業界の最新事情は分かりませんが、「職人減→マイクロゼンマイの馬力低下→製造を見直し仕上がりが強馬力になりやすいよう規格を見直した」なんていう動きがあったのかもしれないなぁ……と思いました。
現在は新世代の「ほぼ同寸法だがより強馬力仕様なゼンマイ規格」を生みだそうとしている過渡期なのかも……。

まぁ、実際どういう事情があったかは分かりません。これは想像です。
しかし、なんにしても馬力のあるゼンマイなので嬉しい限りです。
これで安心して動かす事ができます。

また一方でちらっと書きましたが、「再販」が検討されればその際どうなるかにも注目していきたいです。
ゾイドワイルドが始まったばかりで再販を考えるのは実に気の早い話ですが、「いつか」という事で。
個人的には「ゼンマイ搭載部分の形状を変えて新型ゼンマイ対応に改修する」が一番嬉しいかなあと思います。

 

さてゾイドワイルドの小型ゾイド用ゼンマイを見てきました。
マイクロゼンマイ廃止は改めて驚きましたが、馬力を考えると納得です。
色々書きましたが、一番重要なのは今回の小型ゼンマイは強力なので安心という事です。
そんなわけなので、これからもどんどんゼンマイ機も出して欲しいところです。
ゼンマイゾイドの新型では、カブターがギミックで魅せてくれました。
通常時は角を動かしながら歩行ですが、ワイルドブラストでは隠された二本目の角を展開。この二本の角を両方動かしながら歩行するのです。
とてもダイナミックな動きで魅了されました。

従来から、小型ゾイドはギミックでも魅せてくれる機種が多かったです。
うねるモルガ。羽ばたくプテラス。ワシャワシャするシーパンツァーなどなど。
これからも新型がどんどん誕生するでしょう。
このクラスでもっともっと傑作で構成の語り継がれるゾイドが誕生する事を願ってやみません。

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